コロンビア経済情勢
1.概要
(1)IMFはコロンビアとのスタンド・バイ取極に関してコロンビア政府から提出されたインテンション・レターを承認した。ウリベ大統領がIMF専務理事と会談し、IMFからの支援を要請した。パッテン欧州対外問題担当委員がコロンビアその他のCAN諸国を訪問し、CANはEUに対し、自由貿易協定交渉の開始を要請した。
(2)失業率は依然高水準であるが若干低下しつつ推移している。消費者物価上昇率は低水準で安定的に推移している。ペソの対ドル・レートはペソ高で推移した(月初1ドル2,778.21ペソ、月末1ドル2,742.47ペソ、5日1ドル2,778.92ペソ(月間最安値)、28日1ドル2,721.56ペソ(月間最高値))。
2.主な動き
(1)IMFによるインテンション・レターの承認
(イ)12日、IMF理事会は、コロンビアの2004年のウリベ政権の経済プログラムを高く評価した上で、経済成長率、債務水準等に関するコロンビア政府の目標等を内容とするインテンション・レターを承認した。右は2003年にコロンビアとの間で合意されたスタンド・バイ取極に関する手続の一つである。
(ロ)IMFは、コロンビア政府は高い経済成長率と社会分野の改善を図るために抜本的な経済改革プログラムを推進するとともに、財政赤字の削減及び持続可能な債務水準の維持を図るための構造改革の実施に断固たる意思で取り組んでおり、中央銀行はインフレを低水準に抑える金融政策を実施していると評価している。
(ハ)他方、IMFは更なる財政支出の削減及び債務水準の引下げが必要であるとし、そのために地方交付税交付金制度の更なる見直し、公的組織の統廃合、年金制度改革の更なる推進が必要であるとし、また、中央銀行の政府からの独立性の確保についても懸念を表明している。
(2)ウリベ大統領とIMF専務理事の会談
13日、ウリベ大統領はケーラーIMF専務理事と会談を行った。ケーラー専務理事は、コロンビア政府が不必要な支出の削減、腐敗の撲滅、国営企業の効率性強化に取り組むよう改めて表明した。他方、ウリベ大統領は、公正かつ衡平な社会を構築するための社会的投資の更なる拡充のために、過去の短期・高利の対外債務を長期・低利の対外債務への借換えに対するIMFその他の国際金融機関の支援を要請した。
(3)FTAA首脳会議
12日及び13日、メキシコ・モンテレーでFTAA首脳会議が開催され、FTAAの合意に関する全交渉を当初予定通り2005年1月1日までに終了することでベネズエラを除く各国が合意した。
(4)アンデス共同体(CAN)の動き
(イ)15日、バグネル前ペルー外相が、元コロンビア外相のフェルナンデス前事務局長に代わり、CAN事務局長に就任した。2月4日、新事務局長は2004年6月からの対外共通関税の実施の延期を促す目的でコロンビアを訪問した。その際同事務局長は対外共通関税の延期に関し、関税は現時点において最重要な課題ではなく、その他の競争、知的所有権、技術基準、原産地基準、政府調達に関する政策が重要であるとした他、自由貿易協定を検討する顧問グループの設置を提案した。
(ロ)30日、キトにおいてCANの鉱山エネルギー担当大臣会合が開催され、CANは石油埋蔵量で米国の4倍、メルコスールの8倍というエネルギー資源の豊富な地域であり、電力の相互融通、各国間のガス輸送等に関するアンデス地域のエネルギー統合の強化が議論された。
(5)パッテン欧州対外問題担当委員の当国訪問
(イ)パッテン欧州対外問題担当委員の21日~23日のコロンビア及びエクアドル訪問において、CANはEUに対し、既に開始している米国との交渉と同様の自由貿易協定交渉の開始を要請した。同委員から、一部の欧州諸国はアンデス諸国の統合程度の低さを交渉開始の大きな妨げとして挙げていることが言及された。今年5月に墨で開催予定のEU-ラテンアメリカ・カリブ地域サミットの場で交渉開始が宣言されることが期待されている。
(ロ)同委員は、ウリベ大統領、サントス副大統領、バルコ外相、ボテロ商工観光相と会談し、貿易面では、特恵関税措置(GSP)適用の検討及び対ユーロ・ペソ安進行に伴うコロンビアの欧州市場への参入拡大について議論された。コロンビアのGSP受益範囲は拡大されていないにも拘わらず、2003年1月から11月までの対EU輸出は対前年同期比で15億ドルから17億ドルに増加している。
(6)米国との自由貿易協定(FTA)交渉の動き
(イ)22日から26日まで、ボゴタ市でコロンビア、エクアドル(オブザーバー参加)及びペルー貿易担当省幹部(次官級)が集まり、米国とのFTA交渉における交渉事項について検討を行った。コロンビア及びペルー政府は3月前半に具体的なスケジュールを決定するために再度協議を行うことで合意した。
(ロ)コロンビアの著名なエコノミストであるルイス・ホルヘ・ガライは「農牧畜業政策に配慮した米国との自由貿易協定の交渉戦略デザイン」という研究を取り纏め、FTA交渉への民間セクターの積極的な参加を呼びかけた。セクター別の見通しとして、穀物類、牛乳、砂糖、植物油をはじめとする農業分野が最もセンシティブな分野であるとしている。
(ハ)27日、ボゴタにおいて、NAFTA発足10周年を記念した「NAFTAのこの10年とコロンビアにとっての教訓」という題のフォーラムが開催された。同フォーラムにおいて、墨の元貿易担当大臣はFTAの締結に当たり最もセンシティブなセクターに対する政府の助成を確保することが非常に重要であると述べた。また、参加した専門家は、FTAは投資の促進及び経済の改善にとって重要であるものの、急いで交渉してはならず、また全ての問題を解決する万能薬ではないことを踏まえるべきであると指摘している。ボテロ商工観光相は、米国との交渉スケジュールはほぼ固まっており、交渉は4月から5月にかけて開始されるであろうと述べた。
(7)2003年の税収の減少
アラングレン税関・国税庁(DIAN)長官は、2003年の税収が当初の見通し32.56兆ペソから3,800億ペソ減の32.18兆ペソに留まったと発表した。主な要因として、付加価値税(IVA)及び所得税の徴収額が目標に届かなかったことを挙げている。他方、的確な徴税を行うため、今年6月以降、流通業、銀行業等を中心とした取引監視のための情報システムを稼働する予定であるとも発表した。また、昨年末に国会承認された税制改革において、クレジットカード又はデビットカードでの商品の購入に対する16%のIVAの2%の引下げについては、4月末又は5月初に実施する予定であると述べた。
(8)繊維製品見本市の開催
20日から22日まで、メデジン市において、コロンビア繊維製品の見本市「コロンビア・テックス」が開催され、多数の国内外の輸出業者及びバイヤーが見本市に参加し、1,500万ドルの商談が具体化した。アンデス特恵関税法の拡大延長の効果により繊維製品の対米輸出は増加しており、繊維製品にとって対米市場は最重要市場となっている。
(9)格付け機関の動き
国際的な格付け機関S&Pは、コロンビアは今後3年間においても引き続き財政規律の維持のために大幅な税制改革、地方交付税交付金制度改革、年金制度改革に取り組むべきであり、これらの改革が実現しない場合、国債の格付けが引き下げられる可能性があると指摘している。現在、同機関はコロンビアの外貨建て国債の格付けをBB、内貨建て国債の格付けをBBBとしている。
(10)自動車販売台数の増加
2003年のコロンビアにおける自動車販売台数は対前年比2.2%増の93,893台となったと発表した。コロンビアの自動車組み立て業者(Sofasa、Colmotores、CCA)の販売台数は57,152台、輸入車台数は36,741台であった。
(11)鳥インフルエンザの感染防止のためのアジア諸国からの鶏肉等の輸入停止
コロンビアはアジア諸国から鶏肉等を輸入していないものの、鳥インフルエンザの感染防止のため、コロンビア農牧畜庁(ICA)は、韓国、日本、台湾、インドシナ3国、タイ、パキスタン、インドネシア、中国産の鶏肉、卵及びそれらの加工物の輸入を停止した。
3.主要経済指標
(1)経済成長率
(イ)一部のエコノミストは、石油の国際市場価格が好ましい動きを示していることを背景として、2003年の経済成長率を3.5%増と見通している。
(ロ)他方、フンギート元蔵相は、2003年の経済成長率が3.5%を超える可能性は非常に大きく、中南米諸国の平均1.1%を超え、1995年以降で最も高い経済成長率となるとの見通しを示した。また、ウリベ政権の経済政策及び治安政策が高く評価されていることを背景として、民間投資及び民間消費ともに増加しているとしている。他方、3.5%を超える経済成長率は評価できるものの、失業率の引下げのためには不十分であるとしている。
(ハ)26日、経済関係閣僚会議(CONPES)は2004年の主要マクロ経済指標の目標を承認した。2004年の経済成長率の目標は、一部産業セクターの回復が目覚ましいことから当初の3.3%より3.8%に引き上げられた。また、財政赤字対GDP比は2.5%、消費者物価上昇率は5.5%となっている。他方、ウリベ大統領はコロンビア政府は2004年の経済成長率が5%となるよう努力すると述べた。
(2)製造業
国家統計庁(DANE)は、2003年11月の製造業の生産高及び売上高が各々対前年同月比4.85%増、1.53%増となり、同年1月から11月までの製造業の生産高及び売上高は各々対前年同期比3.91%増、4.08%増となったと発表した。
(3)コーヒー
(イ)コーヒーの国際価格がコーヒーの収穫量の減少を要因として1月末に1ポンド75セントにまで回復した。2002年11月以降では最も高い価格水準となっている。こうした価格動向を踏まえ、コーヒー連盟(FNC)は、コーヒー生産者に対する補助金交付措置の廃止を決定した。
(ロ)コーヒー連盟(FNC)は、2003年のコロンビアのコーヒー生産量が対前年比0.39%減の1,158.6万袋(60kg入)、輸出量が対前年比0.59%減の1,021.3万袋(60kg入)となったと発表した。
(4)石油
(イ)Ecopetrolは、2003年の石油生産量が対前年比6%減の日産54万バレルとなったと発表した。生産量の減少は石油採掘量の減少と新規油田の発見の遅れによるものである。1999年の日産82万バレルをピークに生産量は減少傾向にある。
(ロ)コロンビアにおける石油探査は、2002年の10鉱区から2003年の28鉱区に増加した。ジャノビッチEcopetrol総裁は、年間平均で50鉱区の石油探査を目標としていると述べた。
(5)金利
23日、中央銀行理事会は2004年の消費者物価上昇率の目標を達成する可能性は高いとして、公定歩合を7.25%に据え置いた。DTF金利は月初7.96%、月末7.99%であった。また金融監督庁は、新規貸出金利最高限度を29.61%に引き上げた(12月29.50%)。
(6)貿易収支
(イ)国家統計庁によれば、2003年1月から11月までの輸入(FOB)は、対前年同期比7.9%増の117億7,930万ドルとなった。
(ロ)同期間の輸出(FOB)は、対前年同期比7.92%増の117億5,960万ドルであり、この要因は、石炭の輸出が46.35%増加した他、伝統的輸出産品の輸出が14.99%増加したことによるものである。他方、非伝統的輸出産品の輸出は2.42%増となっている。
(ハ)この結果、貿易収支は、1,980万ドルの赤字となった(前年は420万ドルの赤字)。最大の貿易黒字は米国(17億2,900万ドル)との間となっている一方、主な貿易赤字は、ブラジル(5億3,500万ドル)、中国(4億8,900万ドル)、日本(3億8,800万ドル)、ドイツ(2億9,000万ドル)との間となっている。
(7)失業率
国家統計庁によれば、12月の主要13都市平均の失業率は14.7%(11月14.1%)、全国平均の失業率は12.3%(11月13.3%)となっている。2003年12月の全国の失業者数は255万人である。
(8)為替
(イ)1月の為替レートは、月初1ドル2,778.21ペソ、月末1ドル2,742.47ペソ、5日1ドル2,778.92ペソ(月間最安値)、28日1ドル2,721.56ペソ(月間最高値)であり、ペソ高に変動した。
(ロ)13日、中央銀行は2億ドルのドル買介入を実施した。しかし、在外コロンビア人からの外貨の送金及びコロンビアの金利水準を利用した外国金融機関からの外貨の流入を要因としてドルが大幅に供給過剰である他、投機資金もペソ高を予想して動いていることから、中央銀行は2003年12月9日に1億ドル、12月30日に2億ドルのドル買介入を実施した。しかし、今回が3回目のドル買介入であったにも拘わらず、その効果は非常に限定的であった。
(ハ)23日、中央銀行理事会は市中銀行等に対し、ドル資産の貸方及び借方を3月31日までに均衡させることを義務付け、為替市場における銀行等の仲買人のドル取引に制限が付す措置を決定した。この措置により、今後、銀行等の金融機関は為替市場から約2億5,000万ドルを買わざるを得ないと見込まれている。
(ニ)28日、カラスキージャ蔵相は、現在の為替相場はドルに割安感が生じており、2月第1週以降に約22億ドルのドル買を行い、対外債務の支払への充当を以て、政府の債務の削減を図る予定であると発表した。
(ホ)一部のアナリストからは、ペソ高の進行により輸出業者はマイナスの影響を受けるものの、輸入業者、外貨建ての債務者はプラスの影響を受けることから、ペソ高は経済へのマイナス要因とみなしてはならないとしつつ、今後も引き続きペソ高傾向が続き、今年下半期に為替動向が正常化するであろうとの見通しを示している。
(ヘ)この結果、2003年2月から2004年1月までで6.9%のペソ高(名目)が進行したこととなった。こうした自国通貨高の現象はコロンビアに限らず、中南米諸国でもペルー、ブラジル、メキシコ、チリ等でも生じており、ドルの流動性超過による資本流入、米国の低金利、ドルに対するユーロ高がその要因として挙げられている。
(9)消費者物価指数
国家統計庁は、1月の消費者物価上昇率は0.89%、2003年2月から2004年1月までで6.19%になったと発表したが、右は引き続き減少傾向で推移している。
(10)対外債務
(イ)中央銀行は、2003年10月末の対外債務残高が381億9,100万ドル(内訳:民間債務142億3,800万ドル及び公的債務239億5,400万ドル)で、対GDP比で48.8%となったと発表した。
(ロ)13日、コロンビア政府は国際金融市場において5億ドルの外債発行に成功した。5億ドルの外債購入募集に対し、6倍の30億ドルの外債購入の応募があり、右は国際金融市場におけるコロンビアへの信任の証左である。カラスキージャ蔵相は期間20年、金利は1998年以降最も低い8.125%であり、好条件で外債発行ができたと述べた。
(ハ)29日、米州開発銀行(IDB)は、住宅・医療セクターに対する支出を目的とする総額2億2,000万ドルの対コロンビア借款を承認した。
(以上)