コロンビア経済情勢(6月分)
1.概要
(1)第1四半期の経済成長率が3.61%と公表されたが、右数値は投資、輸出及び雇用の伸びから鑑みるに低過ぎるとの批判がある。分野別では建設業が最も伸び10.6%であった。
(2)20日に閉会した国会は政治関連法案が議論の中心となり、財政改革関連法案の成立には至らなかったが、年金改革法等幾つかの経済関連4法が承認された。
(3)企業家を対象にした世論調査によれば、85.9%が現政権が行っている政策の継続を支持した。
(4)失業率は低下傾向(全国平均失業率12.5%、主要13都市平均失業率13.9%)、消費者物価上昇率も低下傾向(0.4%)に推移した。
(5)ペソの対ドル為替レートはペソ高傾向に推移した(月初2,338.89ペソ、月末2,324.22ペソ、月間最高値21日2,314.89ペソ、月間最安値9日2,361.41ペソ)。
2.主な動き
(1)対米FTA関連
(イ)6日~10日に行われた対米FTA第10回交渉(於:グアヤキル)は、最も交渉が複雑な農業分野での進展が見られず成果の少ないものと評されているが、ゴメス「コ」交渉代表によれば、主に次の分野での交渉において進展が図られた。(a)貿易障壁:工業製品に対する非関税障壁の縮小、(b)投資:社会的及び公共上の利益のための収用の権能を国家へ付与、(c)繊維:不正製品取締の協力合意、(d)知的財産権:著作権につき協議、(e)原産地証明:非農業生産品で新たな関税品目に対する一般原産地証明率90%につき合意等。
(ロ)今後、7月11~13日に二国間農業交渉(於:ワシントン)、同月18日~22日に第11回交渉(於:マイアミ)が予定されている。他方、ボテロ商工観光相が現在の対米FTA交渉の情況について危機的な時期を迎えていることを認めたために、今年中の交渉成立につき疑問が呈されている。
(ハ)22日、当国を訪問したビル・クリントン元米国大統領は、交渉期間に捕らわれた早急な合意よりも、より良い合意を得ることが最も必要且つ重要であり、また、知的財産権分野(特に医薬品)及び農業分野において譲歩しないようにウリベ大統領に忠告した。
(ニ)交渉開始以来初めて、「コ」政府は、FTA交渉の失敗の可能性及び米国市場への恒久的なアクセス確保に鑑み、アンデス特恵麻薬取締法の延長を要請する可能性を表明した。
(2)EUによるGSPプラスの発効
欧州委員会は、発展途上国に対する新なGSP制度を承認した。2008年まで有効となる右制度により、本年7月1日以降、「コ」は対EU向け輸出品の84%(約7,200品目)を非関税でEU市場へ輸出することが可能となる。現在高関税のマグロ(24%)、野菜・フルーツ・繊維製品(12%)等が非関税となる。
(3)CAN域内動向
(イ)2日、バルコ外相及びチャベス「べ」大統領は、30日にカルタヘナに於いて、二国間ガス・パイプライン建設のためのハイレベル委員会を開催し、また、国境付近における治安等のテーマを協議する旨合意した。
(ロ)EEB(ボゴタ電力会社)は、「コ」・エクアドル間の電力送電ラインの設計・建設・操業の入札を落札した。総投資額は4,150万ドル、操業開始は2007年からとなる。
(4)経済関連改革法案
(イ)20日に閉会した国会では政治的なテーマが議論の中心となり、公的財政問題を構造的に解決するための経済関連法案の成立には至らなかったが、主に以下の経済関連4法が国会承認された。
(a)年金改革法:今後50年間で46.7兆ペソの財政的な余裕が出来、公的財政の安定性に資することになる。年金給付上限制度の設置(最低賃金の25ヶ月分)、14ヶ月給付制度の廃止及び特別職給付制度の廃止(但し、大統領、軍・警察関係者及び刑務所職員は除く)等が新たに導入される。
(b)投資家のための法的安定化法:投資家からの信頼を獲得し、年間4%の対内投資増加が見込まれている。最低賃金7,500ヶ月分以上の投資を行う投資家及び政府は、投資家が投資額の1%の保険料を支払うことで、契約(最大20年間有効)を結び、政府は投資家を法的な不安定性から保護する。但し、主に例外的な国家的課税措置、間接税、社会的緊急事態及び公共料金は右法の保護対象とはならない。
(c)行政手続簡略法:法人及び個人が行政機関において行う諸手続を簡略化及び行政サービスの効率化を目的としており、約80の手続きが廃止される。
(d)市場株式法:起業後の3年間、株主の最低25%は外部の人物でなくてはならず、また、如何なる株取引代理業者も10%以上の株を保有出来ないこと及び右業者による監査人の指名等が定められた。本法により個人が安全に株式に対して投資出来るようになる。
(ロ)審議未了となった法案は国家予算構造改革法案(IMFとの合意事項)及び行政機関契約法案(法律第80号)、また、現在、審議待ちの改革法案は、税制改革法案及び地方交付税改革法案となっている。
(5)財政
(イ)税関国税庁(DIAN)によれば、本年1月から5月までの徴税額は、18.1兆ペソとなり、目標の17.9兆ペソを上回った。
(ロ)蔵相は、第1四半期における財政赤字は対GDP比0.6%の1.5兆ペソと公表した。右は、IMFと合意した目標1.6兆ペソを達成している。他方、同相は、来年の財政支出につき、調整は順調に進んでいるものの、本年比11.3%増となると述べた。
(ハ)18日、カルタヘナに於いて開催された銀行協会総会において、金融取引税の撤廃が金融セクターより要請されたが、ウリベ大統領は、税収源の確保の観点から右税制度の廃止は困難であると述べた。
(6)企業動向
(イ)世論調査会社YanHassが企業家1,543人を対象にウリベ大統領の政策等につきアンケート調査したところ、85.9%が現政権が行っている政策の継続を支持、また、62.4%がウリベ再選によりビジネス上恩恵を受けると回答した。
(ロ)29日、コロンビア証券取引所において、IGBC(「コ」株価)指数が史上最高値5,492.91を記録した。右は、ババリア(当国有数の飲料メーカー)売却の可能性及びカリブ・セメントによるセメント業界統合の報道が影響した。
(7)「コ」・ベネズエラ及びブラジル商交渉会(MACRORUEDA)
(イ)20日~22日、第2回「コ」・ベネズエラ商交渉会(於:ボゴタ)が開催された。両国から850人の輸入業者及び320人のバイヤーが参加、約5千件の商談成立が予想され、右取引総額は5億1,900万ドルに上るものとされている。主な取引は、PDVSA、ECOPETROL、シェル及びテレペル(「コ」)等の企業が交渉に参加した炭化水素分野であり、右商談総額は4億6,100万ドルとなる。
(ロ)27日、伯アモリン外相及び「コ」バルコ外相の参加の下、伯・「コ」商交渉会(於:ボゴタ)が開催された。両国貿易関係の強化のみならず、CAN及びメルコスール間の貿易補完協定の機会活用の必要性につき、両国製造業セクターは意見を一致させた。本商談会の取引総額は、6千万ドルと見積もられている。
(8)ガソリン価格
鉱山エネルギー省は、7月1日以降、31ペソのガソリン価格の値上げを承認した(1ガロン5,416.54ペソ)。一部アナリストは、今回の値上げは急激な国際石油価格の値上がりと比べた場合、緩やかなものであったと考えているが、他方、今年末までには6,300ペソにまで到達すると予想している。
(9)自動車販売台数
本年当初5ヶ月間の自動車販売台数は、前年同期比26.1%増の5万3,395台となった。メーカー別では、GMの約1万9千台、次いでルノー約8千台、ヒュンダイ、マツダ及びトヨタの順となった。右好調な販売の主な理由は、ペソ高、G3自動車関税撤廃の漸次的開始及び低金利等が挙げられる。本年全体では、12万台の販売が見込まれている。
(10)インフラ整備
(イ)30日に開催されたフォーラム「21世紀のコロンビアの港湾」において、ビジェガス運輸相は、今後10年間で民間部門及び政府は港湾拡張事業に10億ドルの投資を行うと公表した。また、今年、港湾貨物取扱量が1億トンに達するものと期待されると述べた(前年9,200万トン)。他方、同フォーラムにおいて、ブエナベントューラのアグアドゥルセ工業港湾プロジェクトに政府が着手し、CAFが投資総額の70%を融資すると公表された。
(ロ)政府は、ボゴタ-ビジャビセンシオ間幹線道二車線化プロジェクトの事実調査を開始した。右事業により、両区間の走行時間が20分間短縮されると試算されているが、複雑な設計のために未だ総事業費の見積もりが出されていない。
(ハ)全国コンセッション機構(INCO)は、今年下半期、8つの新たな道路プロジェクト(2.2兆ペソ)を入札にかけると公表した。右の内、主なプロジェクトは、ボゴタ-プエルト・サルガール間二車線化、ヒラルド-イバゲ間二車線化、及びアトランティコ県及びボリバル県周回路建設である。
(11)中国関連
(イ)中国製履物の大量の輸入及び密輸、更には需要の低下により、国内履物産業は深刻な情況に陥り、生産が8%減となっている。DIANは、中国及びパナマ産の輸入履物に対して最低価格帯(3ドル)を設定し、また、家電及び繊維製品の密輸品に対しても必要措置を講ずると公表した。
(ロ)Wu在「コ」中国大使は、中国製縫製・繊維製品の輸入を規制する政令1480号の発出につき懸念を表明し、右政令は、中国から「コ」への投資を抑制すると述べた。
(ハ)中小企業産業振興協会(ACOPI)は、Wu大使、及び中国と取引のある「コ」中小企業24社と会談を行い、両国中小企業間の連携強化及び「コ」から中国への輸出機会拡大について協議した。
(12)「コ」の投資環境等
(イ)ウリベ大統領及びプラタ貿易振興公社(Proexport)総裁、各国200名以上の企業関係者が参加した「エコノミスト」誌主催セミナー(9~10日、於:カルタヘナ)において、各企業家は、「コ」が魅力的な投資対象国となる条件として、減税及び税制の簡素化、更なる治安対策、法的安定性、インフラ整備の促進等を挙げた。
(ロ)米国USAIDが実施した調査によれば、各国の投資家は「コ」を経済的に安定した国家とは見なしていない。現政権の政策努力は認めるものの、国内紛争のみならず、マクロ経済、法律及び税制の安定性への懸念を表された。
(ハ)Duggin在「コ」英国大使は、二国間投資保護促進協定の再交渉を表明した。右協定は、一度1994年に両国政府間で署名されたが、「コ」の憲法裁判所で否認された経緯がある。
(13)その他
(イ)ウリベ中央銀行総裁は、2004年における海外からの送金額を、確定的な数値として、31億7千万ドル(対GDP比3.3%)と公表した。同総裁によれば、右数値は、「コ」がラ米に於いてメキシコ(166億1,300万ドル)に次ぐ第2位、また、世界全体では第8位の送金受け入れ国となったことを示している。
(ロ)政府は、2005年の海外からの観光客数受入目標を100万人と定めた(2004年は76万8千人。)。現政権による治安対策(Seguridad Democratica)による成果として、今後、国際観光客の増加傾向の維持が見込まれている。
(ハ)大蔵省は、銀行監督庁(Superintendencia Bancaria)及び株式監督庁(Superintendencia de Valores)の統合につき、本年9月から右統合プロセスを開始し、2006年1月から新たに「金融監督庁」(Superintendencia de Finaciero)として業務を開始する旨を公表した。また、現在、同省は、金融セクター近代化プログラムの作業を開始しており、2006年3月に法案の国会提出を検討しているとも公表した。
(ニ)DIANは、本年以降の密輸品差押の相当総額が800億ペソにのぼったと公表した。右の内、22.5%が自動車、14%が繊維製品、8.6%が家電製品であった。
3.主要経済指標
(1)経済成長率
(イ)IDBは、2005年のラ米・カリブ地域の経済成長率を4.6%、「コ」の場合は3.5%から4%を予測している。
(ロ)中央銀行総裁は、選挙の前段階の時期は、財政支出及び経済活動にネガティブな影響を与えると警告し、「コ」の漸進的な経済成長の失速の可能性に対する懸念を表明した。しかしながら、同総裁は、2005年は前年に比べ消費及び需要が伸び、目標4%を維持することを考えている。
(ハ)国家統計庁(DANE)は、第1四半期の経済成長率を前年同期比3.61%増と公表した。セクター別で最も成長したのは、建設業10.6%であり、商業7.27%、鉱工業5.08%、運輸・通信業3.53%及び農業3.36%となり、他方、製造業は-0.99%であった。鉱工業においては、石炭6.6%及び石油0.51%であった。また、製造業においては、自動車26.92%及び家具10.94%に対し、加工食料品-3.61%及びタバコ-15.44%であった。
(ニ)第1四半期の経済成長率について、アナリストの間で議論が起こっている。ロス・アンデス大学エチェベリ経済学部長は妥当且つポジティブな数値と見なす一方で、カルデナス高等教育開発財団(Fedesarrollo)理事長は、経済の停滞、特に製造業の低迷及び家庭必需品の需要低下が現れており、本数値は憂慮すべきものと考えている。
(2)製造業及び建設業
(イ)DANEは、本年4月期の製造業の生産、売上及び雇用は、対前年同月比10.96%、2.38%及び0.86%、また、全体の成長率は2.4%と公表した。生産が大きく伸びたのは、今年4月が聖週間のあった昨年よりも実労働日数が多かったためである。他方、全国工業協会(ANDI)による企業アンケート調査によれば、同月の生産及び売上は、7.9%及び7.6%であった。
(ロ)DANEは、第1四半期における建設承認面積が対前年同期比7.4%、また、同業における公共工事は同期比19.9%と公表した。
(3)コーヒー
コーヒー連盟(FNC)は、欧州における高付加価値製品の新たな販売戦略のために、EU農業委員会に対して、新たな原産地名(DO)を申請した。DOは、農産加工品に生産地名、人的且つ自然上の要素等の質的な信頼性を付与するものである。
(4)石油
メヒア鉱山エネルギー相は、本年以降、既に16の油田において掘削が開始されたと公表した。最も期待されている油田は、北サンタンデール県のタンガラ(Tangara)及びカグイ(Cagui)である。他方、炭化水素庁(ANH)は、本年以降、石油探索、生産及び技術評価に関し、15契約を承認したと公表した。
(5)金利
銀行監督庁は、7月の新規貸出金利最高限度額を前月から0.53%引き下げて27.75%に決定した。
(6)貿易
(イ)DANEによれば、本年第1四半期における輸出額(FOB)は、対前年同期比35.2%増の46億410万ドルとなった。右増加は、対ベネズエラ非伝統産品輸出が59.7%増、また、対米輸出全体が19.3%増になったことが主な要因である。他方、同期における輸入(FOB)は、42億5千万ドルとなり、結果、第1四半期における貿易収支は、3億5,360万ドルの黒字となった。
(ロ)「コ」・ベネズエラ商工会議所は、本年の両国貿易額は33億ドル、その内、「コ」の対「ベ」輸出は20億ドルに達すると予測している。右数値は、歴史的な数値であり、今年初めの外交上の軋轢が両国貿易関係には影響していないことを示している。
(7)失業率
DANEは、本年5月末の全国平均失業率12.5%(前年同月13.6%)、また、主要13都市平均失業率13.9%(前年同月14.5%)と公表した。
(8)為替
6月の対ドル為替レートは、月初2,338.89ペソ、月末2,324.22ペソ、月間最高値(21日)2,314.89ペソ、月間最安値(9日)2,361.41ペソとなり、ペソ高傾向で推移した。今年に入って既に70ペソ上がり、2004年1月以降の18ヶ月では461ペソ上昇したことになる。年末までに1ドル2,406ペソまで回復するという予測がある一方で、現在の水準が維持されるとも考えられている。直近5ヶ月間における中央銀行の市場介入によるドル買総額は13億3,270万ドルであるが、昨年同期間におけるドル買総額29億400万ドルと比較して著しく少ない。
(9)消費者物価指数
DANEは、6月の消費者物価上昇率を0.4%、当初6ヶ月間では3.93%、最近12ヶ月では4.83%と公表した。
(10)対外債務
(イ)中央銀行は、3月末の対外債務残高を対GDP比33.2%の392億6千万ドル(公的債務:255億3,600万ドル、民間債務:137億2,400万ドル)と公表した。2004年12月末の対GDP比は40.6%、また、前月末は33.6%であり、徐々にGDPに占める対外債務の割合が減少している。
(ロ)10日、大蔵省は、2005年及び2008年に償還期限が到来する5億8,300万ドル相当の外債(ドル及びユーロ建)をTES(内国)債(償還期限2008年及び2015年)をもって借り換えを行った。現在の対ドル・ペソ高傾向を利用した右債券の借換えにより、短期的な支払負担及び将来の為替リスクの軽減が可能となる。
4.今後の予定
対米FTA交渉
第12ラウンド:9月(於:コロンビア)