コロンビア経済情勢(7月分)

 

1.概要

(1)29日、蔵相は、総額105.4兆ペソの2006年度国家予算案(対前年比13.1%)を国会に提出。主な使途の内訳は、35%37兆ペソ)が債務支払、11.3%が年金支払、及び15%が社会投資となっている。他方、蔵相は、今年の補正予算提出の可能性を否定し、反対に、今年の好調な税収益次第では本年度歳出予算を5,500億ペソ削減する可能性があると述べた。

(2)対米FTA交渉において、米国側より初めて農業分野に関する提案がなされたが、アンデス諸国側にとり内容の乏しいものであった。他方、米国側よりATPDEAの延長の可能性につき明確に否定された。次回、9月中旬に当国カルタヘナで第12回交渉が行われる。

(3)世界第2位のビール・メーカー、サブミラーが当国飲料メーカー・ババリアを吸収合併した。右の影響を受け、「コ」株価指数(IGBC)が史上最高値を記録する共に、ペソの対ドル為替レートがペソ高傾向に推移した(月初2,324.22ペソ、月末2,308.49ペソ(月間最高値)、月間最安値(6日)2,338.86ペソ)。

(4)失業率は低下傾向(全国平均失業率11.4%、主要13都市平均失業率14.0%)、消費者物価上昇率も安定的(0.05%)に推移した。

 

2.主な動き

<対外関係>

(1)第11回対米FTA交渉(18日~22日、於:マイアミ)関連

(イ)今交渉において、アンデス諸国から米国市場への生産品アクセスの問題となっている検疫問題について検討する二国間委員会の設置につき米国が受け入れたこと等、動植物検疫分野における大きな前進が見られた。また、今交渉においては、中古品の扱いにつき協議され、米国側が1,400品目を提示したのに対し、アンデス側は291品目のみの受入を検討している。

(ロ)「コ」の繊維業界は、20071月の見通しとなっているFTAの発効に関し、中米及び米国とのFTA発効の見通しに鑑み、繊維製品に関するアンデス諸国と米国とのFTAの効果は20051月まで遡るべき(実質上の関税の払い戻し)と提案した。右に関し、全国工業連盟(ANDI)は、次回第12回交渉において、繊維製品のみならず全ての工業製品に対する遡及を提案する。

(ハ)農業分野におけるアンデス側の提案に関する米国の対案が提示されたが、右は、内容に乏しく、不均等なものであると評価されている。他方、ボテロ商工観光相は、同分野における立場の違いはますます乖離してきていることを認めつつも、10月までの交渉終結の見通しを維持した。

(ニ)ウッド駐「コ」米大使は、もし「コ」が米国とFTAを締結出来なければ、世界で最も(貿易に関しては)劣勢な国となると述べた。右コメントは、FTA締結のための圧力と理解されている。また、同大使は、アンデス特恵麻薬取締法(ATPDEA)が更新されることはなく、準備の出来た国から米国はFTAを署名するとも述べた。先立って、5日、ウリベ大統領と会談を行ったウィリアム・トマス米国下院議員も、ATPDEAの延長はあり得ず、右期限までのFTA発効の必要性を明言した。

(ホ)今後、88日~10日に二国間農業交渉(於:ワシントン)、9月中旬に第12回交渉(於:コロンビア)が予定されている。本年10月までの交渉終結が目標となっているが、知的財産権、原産地規制及び投資分野の交渉の遅れが指摘されている。

(2)ウリベ大統領の西及び英訪問

(イ)11日、西を公式訪問したウリベは、西企業に対して「コ」国内の治安回復及び商取引の透明性をアピールすると共に、エルドラド空港のコンセッション事業への入札参加等投資を呼び掛けた。また、本訪問において両国政府は、トリマ県の三角地帯灌漑事業等のインフラ事業に対する25,300万ユーロの融資に関する協定に署名した。

(ロ)14日、西を後にしたウリベ大統領は、英国を訪問し、200名以上の企業関係者に対して、「コ」の経済改革及び社会的結束につき説明した。他方、英国政府は、「コ」との投資保護促進協定の再交渉に関心を示した。

(3)EUのバナナ関税率引き上げ問題

EUがラ米諸国から輸入するバナナの関税を1トン当たり75ユーロから230ユーロに引き上げることにつき争われているWTO仲裁調停は、81日、右EU提案を不当なものであるとして却下した。主な理由として、EUが関税率引き上げの根拠とした数値に誤りがあるとされた。右判決はラ米諸国から好意的に受け入れられた。今後、9月にEU側より新たな提案が示されることになる。

(4)マレーシア・マハティール元首相の訪問

2022日、マレーシアのマハティール元首相が、20名の企業関係者等を伴い、「コ」を訪問した。同元首相は、ウリベ大統領及びバルコ外相等と会談、また、セミナー等に参加し、過去22年間でマレーシア政府が達成した経済成長、ゲリラの撲滅、輸出の拡大及び貧困の削減等の経済モデルをプレゼンテーションした。今訪問の主な目的は、石油化学、パーム油及びインフラ部門等の分野におけるマレーシアの対「コ」投資の可能性の模索にあった。ナランホ駐マレーシア「コ」大使は、両国間には多くの共通点があり、「コ」はマレーシアから学ぶべき点が多くあると述べた。

(5)IDB総裁選挙

27日、イグレシアスIDB総裁の後任を決めるIDB臨時総会における選挙において、モレノ駐米「コ」大使が、米州票28票中20票を獲得し当選した。モレノ氏は、IDB総裁としての最優先課題として貧困対策を掲げた。任期は、101日以降、5年間となる。

 

<国内情勢>

(1)通常国会の開会及び2006年度国家予算案等

(イ)20日に開会した通常国会において、ウリベ大統領は、現政権最後の年に政府が推進すべき主な計画等につき演説を行った。右計画中の主な点は、送金税の廃止、投資誘致及び雇用創出を刺激する税制改革、石油自給能力の継続のための石油開発計画の拡大及び「ラ・リネア・トンネル」計画のような幹線道路整備計画の推進である。また、国家社会政策審議会によって承認された2006年の投資計画中、2,500km幹線道路整備計画及び病院網強化等に多くの資金を充てると同大統領は述べた。

(ロ)29日、蔵相は、総額105.4兆ペソの2006年度国家予算案(対前年比13.1%)を国会に提出した。全体の内、45兆ペソが国独自の税収等の収入によるものであり、残りは国債により調達される。また、主な使途の内訳は、35%37兆ペソ)が債務支払、11.3%が年金支払、及び15%が社会投資に向けられることとなる。

(ハ)蔵相は、今年の補正予算提出の可能性を否定し、反対に、今年の好調な税収益次第では本年度歳出予算を5,500億ペソ削減する可能性があると述べた。また、同相は、2006年度予算に関わる経済政策として、送金税(7%)の廃止、一時的な法律であった会社破産法(法律第550号)の恒久化及び税制改革等を挙げた。

(ロ)税関国税庁(DIAN)によれば、本年上半期の税収は、対前年同期比13%増の22.4兆ペソとなり、目標としていた21.9兆ペソを超えた。

(2)「コ」建国200周年ヴィジョン

共和国成立200周年を迎える2019年までの国家目標「「コ」建国200周年ヴィジョン」のアウトラインが公表された。右の内、主なマクロ経済目標は、2005年から2019年まで年平均5.3%の経済成長、2019年までに国民一人当たりの所得3,811ドル、2019年までに貧困率を15%までに削減及び失業率5%等である。

(3)「コ」株式指数(IGBC)の最高値更新、企業動向、金融機関の統合等

(イ)21日の取引の終わりにおいて、IGBCはババリア社売却の影響を受け6,008.19ポイントとなり、史上最高値を記録した。右により本年以降のIGBC伸び率は38.25%となった。

(ロ)世界第2位のビール・メーカー、サブミラーは、当国飲料メーカー・ババリア(Bavaria)との1年近い交渉の末、18日、ババリア株71.8%を約80億ドルで取得することによりババリアを吸収合併することとなった。また、ババリアの筆頭株主であるサント・ドミンゴ・グループは、サブミラー株15.1%及びある程度のキャッシュを受け取る予定。右取引は、「コ」史上最大のものとなる。更に、サブミラーは、残りの少数株29.2%の取得にも関心を示すと共に、ババリアがペルー及びエクアドルで操業しているビール事業への資本参加も検討している。

(ハ)ナショナル・チョコレート社は、当国クッキー・メーカのノエル(Noel)社を吸収し、ラ米第8位の食料品メーカーとなった(総資産2.5兆ペソ)。今回の吸収により、同社は、競争力を強化し、国内外での存在感を高めることになる。

(ニ)携帯電話市場に参入するための提携者を探している通信公社テレコム(Telecom)は、現在の国内3事業者(OlaComcel及びMovistar)の内、コムセル(墨Telmex)に大きく接近しており、今後数ヶ月の後に具体的な交渉に入る可能性がある。

(ホ)政府は、5年間の金融投資銀行(FOGAFIN)の管理下にあった公的金融機関エスタード銀行(Banco de Estado)の解散を最大2年後までに実施することを決定した。

(ヘ)25日、関係閣僚会議はグラナオラール(GRANAHORRAR)銀行の民営化手続の開始を決議した。売却金額は4,290億ペソと見積もられたが、当初の設定額より50%以上低く、また、数年前、政府が同銀行の破産回避のために使用した公的資金1.3兆ペソよりも遙かに低いため多くの議論を引き起こしている。

(4)ガソリン税減税の検討等

鉱山エネルギー省は、81日以降、ガソリン価格の32.86ペソ値上げを承認した。右により1ガロン5,449.40ペソとなる。他方、メヒア鉱山エネルギー相は、現行のガソリン税38%10%に引き下げろことを検討しており、今国会に右関連法案を提出する予定と公表した。

(5)中国製履物の密輸問題

一足約500ペソの超低価格な中国製履物が密輸等により国内市場に大量に流入してきており、国内生産者の不安を招いている。本年以降、中国製履物は国内に約5千万足が入っていると見積もられており、右は国内1年間の消費量の半分にあたる。右状況に対して政府は、中国製履物に対する最低価格制度(2.5ドル)、また、パナマ及び中国製の繊維製品及び履物の国内受け入れ地をバランキージャ港及びボゴタ税関だけに限定する等の密輸品対策を講じているが、生産者は、救済制度、割当制度及び高関税措置等の更なる対策を政府に対して求めている。

(6)マラガ港湾建設プロジェクト

政府関係者及び投資家の高い注目を集めている同プロジェクトに対して、環境保護団体から反発が起こっており、特に毎年マラガ近海を回遊するザトウクジラへの影響が懸念されている。同港湾は深度の高いものとなり、大型船の寄港が可能となる。また、同プロジェクトの初期投資額は3億ドルと見積もられ、アンデス公社(CAF)は右融資に関心を示している(注:マラガ港は太平洋岸ブエナベンテューラの北に位置。)。

(7)上半期自動車販売台数等

(イ)送電公社(ISA)によれば、上半期における電力消費量は、製造業における需要が大きく伸び、対前年同期比3.9%増の23,911.4gw/hとなった。

(ロ)全国商業者組合(FENALCO)によれば、上半期の自動車販売台数は、対前年同期比28%増の65,950台となった(右台数の内、国内組立車52.8%、輸入車47.2%)。

(ハ)中央銀行によれば、本年第1四半期の対内外国投資は822百万ドルとなり、前年同期よりも約2億ドル多かった。分野別では、鉱工業分野への投資が大半を占め、石炭に対して488百万ドル、石油に対して188百万ドルとなった。

 

3.主要経済指標

(1)経済成長率

全国金融協会(ANIF)は、本年第2四半期の経済成長率を4.5%から5%と予測している。右数値は、第1四半期の3.6%より高いものであるが、昨年同期5%を下回っている。

(2)製造業及び建設業

(イ)国家統計庁(DANE)は、5月期の製造業の生産、売上及び雇用をそれぞれ対前年同月比2.12%2.95%及び0.21%と公表した。また、本年当初5ヶ月では2.34%2.51%及び0.74%となった。他方、全国工業協会(ANDI)の統計では、本年当初5ヶ月の製造業の生産及び売上は、8.4%及び8.1%であった。

(ロ)DANEは、本年当初5ヶ月における建設承認面積は対前年同期比4.08%の約530万平方メートルと公表した。

(3)石油

(イ)石油公団(Ecopetrol)によれば、本年当初5ヶ月の石油日産量は約52万バレルとなり、前年同期比では0.4%減となった。また、同期における輸出高は国際価格の高騰により同比20%増の93,810万ドルとなったが、輸出量は2,549万バレルから2,368万バレルに減少した。

(ロ)ルコイル社(露)は、13日、クンディナマルカ県メディナ市コンドル(Condor)において、石油掘削を開始した。右地域は、現在BP社が探査しているクシアナ(Cusiana)及びクピアグア(Cupiagua)と近接しており、有望視されている。本プロジェクトの重要性は、原油及びガスの埋蔵可能性に加え、ロシアの企業が「コ」で石油探索するのが初めてという点にある。同プロジェクトの投資額は55百万ドルと言われ、ルコイル社が70%、当国石油公団(Ecopetrol)が30%を出資する。今回の契約はパストラーナ政権時の20027月に署名されたものである。昨年半ばに環境影響調査が終了し、その後、当国環境省によりライセンスが発給された。

(4)金利

銀行監督庁は、8月の新規貸出金利最高限度額を前月から0.39%引き下げて27.36%に決定した。

(5)貿易

(イ)DANEによれば、本年当初4ヶ月の輸出額(FOB)は、対前年同期比35.5%増の633,310万ドルとなった。右は、伝統産品輸出が同比43.3%増になったことが主な要因とされる(特に石炭77.4%増、石油25.6%増及びコーヒー77.8%増)。また、非伝統産品輸出は28.8%増であった。他方、同期における輸入(FOB)は596,960万ドルとなり、結果、同期における貿易収支は、36,350万ドルの黒字となった。

(ロ)貿易振興公社(Proexport)によれば、世界的に中国製繊維製品の輸出が急増している中で、本年当初4ヶ月の「コ」同製品の輸出は前年同期比16%増の43,400万ドルとなった。主な輸出先は、米国とベネズエラである。

(6)失業率

DANEは、本年6月末の全国平均失業率11.4%(前年同月14.1%)、また、主要13都市平均失業率14.0%(前年同月12.2%)と公表した。

(7)為替

7月の対ドル為替レートは、月初2,324.22ペソ、月末2,308.49ペソ(月間最高値)、月間最安値(6日)2,338.86ペソとなり、ペソ高傾向で推移した。本年初から同月末までのペソ高率は3.28%78ペソ)となる。為替市場関係者によれば、サブミラー社によるババリア社の少数株の獲得による14億ドルの市場流入の見通し、及び高価格を維持している石油・石炭・コーヒーの輸出増加が、今月の為替動向に影響を及ぼした。本年残りの期間の見通しは明らかではないが、大統領再選に関する憲法裁判所の判決が否定的なものであれば、ペソ安傾向に傾くものと考えられている。

(8)消費者物価指数

DANEは、7月の消費者物価上昇率を0.05%、当初7ヶ月間の上昇率を3.98%(前年同期4.56%)、及び過去1年間の上昇率を4.91%1965年以来の低い伸び率)と公表した。

(9)対外債務

(イ)中央銀行は、4月末の対外債務残高を対GDP31.6%3779,600万ドル(公的債務:2413,900万ドル、民間債務:1365,800万ドル)と公表した。

(ロ)25日、大蔵省は、幹線道路2,500km整備計画の一部資金調達のためにCAF15千万ドルの借入に関する契約を締結した。