コロンビア経済情勢(8月分)

 

1.概要

(1)4日、ウリベ大統領はブッシュ米国大統領と会談を行い、FTA交渉の促進を要請したが、810日、ワシントンで行われた二国間農業交渉では、米国側の柔軟な姿勢が見られなかった。10月までの交渉終了が危ぶまれている。

(2)今国会提出予定の税制改革法案は、所得税減税、フリーゾーンにおける法人税減税、及び外国企業家に課せられている送金税7%の廃止等が盛り込まれた。他方、IVAの改変は2006年以降の実施となる。

(3)本年4月に「コ」政府と締結したスタンド・バイ合意のレビューのために「コ」を訪問したIMFミッションは、好調な経済指標を評価すると共に、税制及び年金分野における構造改革の継続及び選挙期間中における規律的な財政運営の継続等を政府に対して求めた。

(4)18日、政府は、国内繊維業界の深刻な損害に鑑み、中国製の輸入繊維製品に対するセーフガード発令した。本年上半期の輸出額(FOB)が対前年同期比37.2%増の1019,400万ドルとなった。

(5)失業率は改善傾向(全国平均失業率11.8%、主要13都市平均失業率14.1%)、インフレ率は安定的に推移(0.0%)した。

(6)対ドル為替レートは、中央銀行の度重なるドル買介入により、2,300前後で推移し、月初2,308.49ペソ、月末2,302.78ペソ、月間最高値2,299.75ペソ(10日)、月間最安値2,315.52ペソ、また、本年以降のペソ高率3.6%、過去12ヶ月では11.8%となった。

 

2.主な動き

<対外関係>

(1)ウリベ大統領の訪米

(イ)3日、「コ」、米国及びカナダの3カ国による商交渉会が、ウリベ大統領出席の下、開催された。約500名の企業家が参加し、約2,500件の商談成立及び右総額5,800万ドルと見積もられている。最も盛んに取引された分野は、縫製、農産加工品及び食料品であった。他方、同日、同大統領は、米国のエネルギー及びガス・セクターの企業家約180名と会談を行い、「コ」における同セクターに対する投資を呼び掛けた。

(ロ)4日、ウリベ大統領はブッシュ米国大統領と会談(於:テキサス州クロフォード)を行った。右会談においてウリベ大統領はブッシュ大統領に現在進行中のアンデス3カ国と米国とのFTA交渉に関し、可及的速やか且つ積極的な形での交渉促進のための協力を要請した。

(2)対米FTA交渉

(イ)810日、ワシントンで行われた二国間農業交渉の結果に関し、「コ」側の農業分野代表者らは、米国側の柔軟な姿勢が見られなかったため、懸念を表明した。農業は「コ」経済の根幹であり、また、数百万の雇用を抱えているために、農業分野の交渉は「コ」にとって最優先テーマと考えられている。「コ」側が米国に示している基本的な提案の一つは、アンデス特恵麻薬取締条約(ATPDEA)の枠での特恵保護の維持にある。他方、次回第12回交渉(91923日、於:カルタヘナ)において、農業交渉が外されることが決まり、また、次回二国間農業交渉の日程が決まっていないために、「コ」政府が想定している10月までの全体交渉終了は困難とされ、11月まで延期されることが確実視されている。

(ロ)モンテネグロ国家企画庁(DNP)長官は、9日、対米FTAのような通商協定を有効に活用し、国内の生産力及び競争力を向上させるために実施すべき事業等をまとめた「国内行動計画」(Agenda Interna)の第1案を公表した。右計画の最終案は、対米FTA交渉の署名時に向けて準備されている。

(3)EUのバナナ関税率引き上げ問題

EUは、1日に出されたWTO仲裁の第1判決を受け、「コ」等のラ米各国に対して新たな提案を行った。右提案では、当初の1トン当たりの関税230ユーロが199ユーロに引き下げられている(2006年以降)。また、EUは、ラ米各国によるWTOに対する第2回の調停要求は9月まで可能としている。

 

<国内情勢>

(1)税制改革法案等

(イ)カラスキージャ蔵相は、今国会提出予定の税制改革法案に含まれる内容について、所得税の30%水準までの減税、フリーゾーンにおける法人税減税、各種免税措置の廃止及び外国企業家に課せられている送金税7%の廃止等を挙げ、また、IVAの改変については今回の本法案には盛り込まずに2006年以降実施する旨公表した。

(ロ)フランコ税関国税庁(DIAN)長官は、アンデス共同体(CAN)の枠での協定によって、2008年以降、CAN各国はIVAのような消費税率を2種類以内(現行8種類)に簡素化する義務があると述べた。

(2)IMFミッションの訪問(823日~91日)

IMFミッションは、本年4月に「コ」政府と締結したスタンド・バイ合意(期間18ヶ月間)のレビューのために「コ」を訪問した。本年の財政赤字目標は当初2.5%であったが、好調な税収(対前年比13%増)及び石油価格の上昇に鑑み、1.5%2%に変更することになった。また、同ミッションは、税制及び年金分野における構造改革の継続及び選挙期間中における規律的な財政運営の継続等を政府に対して求めた。他方、同ミッションは、政府が中央銀行から外貨準備金を買い取り、右を債務の事前支払いに充てるオペレーション(近日中に実施予定)を適切なものとして容認した。

(3)財政問題

(イ)DIANは、本年1月~7月の税収が目標を6,800億ペソ上回る259,200億ペソになったと公表した。

(ロ)エルナンデス会計検査院長は、2006年度予算案審議において、中央政府の財政赤字が6.5%になる点を批判し、また、対外債務の減少は、政府の財政政策の結果ではなく為替の影響に因るものであると述べた。

(ハ)大蔵省公債局は、本年3月に続き、中央銀行から外貨準備金を買い取り、右資金を国債の前倒償還に充てると公表した。未だ正式な要請は中銀には為されていないが、約10億ドルになると試算されている。

(4)テレコム民営化問題

(イ)テルメックス(墨)のカルロス・スリム社長は、26日、同社とテレコムが戦略的パートナーとなるための両社の事前協定文書の内容を明らかにした。右によれば、同社は総額約33億ドルを出資し、テレコム株51%の取得及び年金債務の支払等を引き受けることになる。右により同社は「コ」における携帯事業を強化し、他方、テレコムは携帯電話事業に参入する。更に、同社長は、将来的にはテレコム全体を買収を希望しているとした。

(ロ)31日、ボゴタ通信公社(ETB)は、ETBがテルメックスより優位な条件でテレコムの戦略的パートナーとなる提案をテレコムに対して行った。また、同様にメデジン公社(EPM)、中距離電話会社オービテル及びテレフォニカ(西)もテレコムに対してテレコムとの業務提携に関する関心を表明した。他方、エルナンデス会計検査院長は、テレコムとテルメックスとの業務提携に関し、そのプロセスの不透明さ、関心を示す他の企業との交渉排除及び算出されたテレコムの資産価値について疑義を表明した。

(ハ)テレコム役員会は、同院長による批判を受け、テルメックスとの業務提携に関する協定書への署名の中断を決定した。ゴメス・テレコム社長は、今後、テレコムとの業務提携に関心を示す企業との協議を継続すると述べた。

(5)中国製の輸入繊維製品に対するセーフガード発令等中国関連動向

(イ)関税・貿易問題委員会は、政府に対して中国製の輸入繊維製品により深刻な損害を受けている国内繊維生産を保護するために、一時的な救済措置導入を勧告した。その後、商工観光省は、17日付け政令2839号(翌日発効)によって、同繊維製品に対する61%87%の高関税賦課を決定した(最大200日間)。右に対し、在「コ」中国大使館は、本措置はWTOの理念に反し差別的であり、WTOへの提訴も辞さない、また、来月中に本問題につき「コ」政府と協議するためにミッションが来訪すると表明した。

(ロ)貿易振興公社(PROEXPORT)北京事務所のバレンシア所長は、事務所開設一周年にあたり、最初の一年間は中国市場における商機会の模索のために「コ」から3企業ミッションが中国を訪問した、また、今後は、中国の政府高官及び企業関係者のミッションの「コ」訪問、更にその後、トランスミレニオ、鉱物資源及び花卉分野等のミッションの「コ」再訪問が検討されていると述べた。

(6)エタノール混合ガソリン使用義務化の実施延期

鉱山エネルギー省は、エタノール(10%)混合ガソリン(90%)の使用を義務づけた法律の施行に関して、国内エタノール生産体制が遅れているために、当初予定していた本年927日の開始の延期を決定した。バジェデカウカ県及びコーヒー地帯においては本年11月からの開始、ボゴタでは来年1月、その他の都市においては来年以降暫時開始予定となる。

(7)その他

(イ)ウリベ大統領は、本年の外国からの投資は、50億ドルに達するであろうと述べた。

(ロ)鉱山エネルギー省は、91日以降、ガソリン1ガロン当たり46.77ペソの値上げを承認した。右により、1ガロン5,469.17ペソとなり、本年初以降で409.28ペソの値上がりとなる。また、本年全体では約600ペソの値上がりが予測されている。

(ハ)銀行監督庁によれば、本年1月~7月までの金融機関の収益は、対前年同期比10.73%増の1.96兆ペソとなった。

(ニ)7月の自動車販売台数は、対前年同月比23.5%増の11,766台であった(国内組立車5,056台、輸入車6,710台)。また、本年上半期においては、同期比26.4%増の77,083台であった。

 

3.主要経済指標

(1)経済成長率

(イ)中央銀行理事会による最新の経済成長予測調査は、本年の経済成長率が確実に4%を超えることを示した。また、イネス大蔵相代理は、製造業、輸出、雇用及びエネルギー需要の好調な伸びにより、成長率は目標値を超えるであろうと述べた。更に、同代理は、金利を変えずともインフレ率の低下傾向は維持されると述べた。

(ロ)ウリベ大統領は、本年第2四半期の成長率について、政府の暫定値によれば少なくとも4.5%になると述べた。本数値は、今後国家統計庁(DANE)により正式に公表される。

(2)製造業及び建設業

(イ)DANEによれば、本年1月~7月までの製造業の生産、売上及び雇用の成長率は、対前年同期比2.51%2.92%及び0.6%となった。他方、全国工業連盟(ANDI)のビジェガス総裁は、本年全体の同業の成長率は5%を超えるであろうと述べた。

(ロ)DANEによれば、上半期における建設承認面積は、対前年同期比10.96%増の668万平方メートルであった。

(3)コーヒー

コーヒー連盟(FNC)によれば、本年7月の生産高は776千袋(45kg)(昨年同月774千袋)、また最近12ヶ月の生産高は1,166万袋(昨年同期1,017万袋)となった。

(4)石油・石炭関連

(イ)会計検査院長は、本年以降の石油輸出量の減少及び実質的な歳入の不足が貿易収支及び財政収支等の経済に与える影響について警告を発した。また、石油生産量に関し同院長は、2011年までは国内自給が満たされると言われているが、2004年の日量約53万バレルから10年は同約36万バレル、15年には同約14万バレルに減少、特に2007年以降の「コ」政府・企業所有の油田での生産が無くなると述べた。

(ロ)ベネズエラ石油公社(PDVSA)が当国カルタヘナ精油所改修事業及びエコガス民営化事業に関心を示していることが非公式ながら明らかになった。右に対して「コ」国内では、国内エネルギーセクターにベネズエラの資本が流入し、国家の主権を脅かすのではないかと議論されている。

(ハ)伯ペトロブラス(PETROBRAS)は、シェル(SHELL)が「コ」国内で所有する38カ所のガソリンスタンドの買収につきシェルと交渉を行っている。最近、ペトロブラスは、潤滑油の新たな商品の発売及び石油開発への増資等当国におけるプレゼンスを高めている。

(ニ)カルタヘナ精油所改修事業に関し、民間資本の導入を検討していた石油公団(ECOPETROL)は、事業を容易に進めるために、新たな会社の設立を決定し、右会社に51%を出資する共同経営者を探すことになった。新たな共同経営者には、PDVSAやペトロブラスが候補に挙がっているが、来年の上半期までに決定される。他方、石油公団労働組合は、今回の決定を公団自体の民営化への端緒として反対している。

(ホ)「コ」技術者協会が主催した「コ」エネルギー会議において、石油のさし迫った枯渇の危機及び右に代わる石炭輸出促進が確認された。本年の石炭輸出額は、今後予定されている新たな6鉱区の開放により、昨年よりも約5億ドル増の25億ドル、また、量にして5,700万トンに達すると試算されている。

(5)金利

銀行監督庁は、9月の新規貸出金利最高限度額を先月から0.03%引き下げて27.33%に決定した。

(6)貿易

DANEによれば、本年上半期の輸出額(FOB)は、対前年同期比37.2%増の1019,400万ドルとなった。伝統産品の輸出は同期比48.4%増、特に石炭97.6%増及び石油24.8%増、他方、コーヒーは減少した。非伝統産品の輸出は27.8%増、特に自動車180.7%増及び花卉46.9%増となった。また、同期の輸入額(FOB)は、93200万ドルとなった。右の結果、貿易収支は89,190万ドルの黒字となった。

(7)失業率

DANEは、本年7月末の全国平均失業率は11.8%と前年同月(12.9%)より1.1%改善したが、不完全就業者数は655万人から705万人に増加したと発表した。また、主要13都市平均失業率は14.1%(前年同月15.3%)となった。

(8)為替

(イ)8月の対ドル為替レートは、中央銀行の再三に亘るドル買介入により、2,300前後で安定的に推移し、月初2,308.49ペソ、月末2,302.78ペソ、月間最高値2,299.75ペソ(10日)、月間最安値2,315.52ペソとなった。本年以降のペソ高率は3.6%、また、12ヶ月では11.8%となった。一部アナリストは、中銀の介入にも拘わらず、本年末は2,200ペソに達すると予測している。

(ロ)市場アナリスト及び中銀理事は、中銀のドル買い介入を以てペソ高を抑制するには限度があり、根本的な対策として政府の財政調整、即ち、外債発行の削減が必要であると述べた。他方、当国を訪問していたIMFミッションは、「コ」の好調な経済指標(輸出・インフレ率・投資・財政赤字等)に鑑み、「コ」経済は順調に推移しており敢えてペソ高を回避する理由はないと述べた。

(9)消費者物価上昇率

DANEは、8月の消費者物価上昇率は全体平均では動きがなく(0.0%)、当初8ヶ月の上昇率は3.98%(前年同期4.59%)、及び12ヶ月間の上昇率は4.88%1962年以来の最低数値)と公表した。

(10)対外債務

(イ)中央銀行は、5月末の対外債務残高を対GDP31.5%3781,600万ドル(公的債務:241100万ドル、民間債務:1371,600万ドル)と公表した。

(ロ)大蔵省はアンデス公社(CAF)との間で、対米FTA交渉の発効に備えた競争力改善及び技術革新プログラムに向けられる25千万ドルの融資協定、及び港湾拡張計画・通信網拡大等の各種プログラムに向けられる1億ドルの融資協定に署名した。

 

4.今後の予定

対米FTA交渉

1031011日:アンデス諸国調整会合

1019日~21日(於:ワシントン):各国代表者(Jefes)会合