コロンビア経済情勢(9月分)
1.概要
(1)第12回対米FTA交渉(19日~23日)において、貿易保護等幾つかの分野で交渉が終結したが、知的財産権分野及び農業分野における進展は見られなかった。工業製品の関税撤廃スケジュール交渉が終了。本年11月下旬までの全体交渉の終了が期待されている。
(2)政府はフリーゾーン及び輸出経済特区における法人税減税及び送金税の廃止を盛り込んだ税制改革法案を国会に提出した。蔵相は本年の好調な税収及び債務減少に鑑み財政赤字目標を当初の対GDP比2.5%から1.6%に変更した。
(3)国家統計庁は本年第2四半期の経済成長率を対前年同期比5.3%増(セクター別では商業・ホテル・レストラン10.23%、金融業9.81%及び建設業7.75%)、また、本年上半期の成長率は4.58%(建設業9.2%及び商業8.98%)と公表した。
(4)失業率は低下傾向で推移(全国失業率11.3%及び主要13都市平均失業率13.8%)、インフレ率も安定的に推移(0.43%)した。
(5)対ドル為替レートは、1ドル2,300ペソを割るペソ高で推移した(月初2,302.78ペソ、月末2,288.22ペソ、月間最高値2,286.61ペソ(6日)、月間最安値2,305.09ペソペソ(9日))。
2.主な動き
<対外関係>
(1)ウリベ大統領の訪米
16日、国連第60回総会出席のために訪米したウリベ大統領は、同国の国会議員及び行政官等と会談を行い、現在進行中のアンデス諸国と米国とのFTA交渉の促進を要請した他、プラン・コロンビアⅡについても協議を行った。また、NY証券取引所において、同大統領は、米国企業関係者に対して、「コ」のマクロ経済成長及び治安の回復等を強調し、「コ」に対する投資を呼び掛けた。
(2)第12回対米FTA交渉(19日~23日、於:カルタヘナ)関係
(イ)本交渉においては、貿易保護(救済制度)及び技術的貿易障害の分野の交渉が終結する等大きな前進がみられた。ゴメス「コ」交渉代表は、「本交渉は期待通りのものとなり、全ての分野において幅広い作業が行われ重要な進展があった」と述べた。また、Vargo米国交渉代表は、米国は「コ」をアンデス地域における最良の同盟国と再認識し、FTAが両国にとって有益なものとなるよう模索すると述べた。他方、懸案の知的財産権分野では大きな進展はなく、また、農業分野は、今後の二国間交渉での進展が期待されている。
(ロ)今後の予定に関し、10月19日~21日(於:ワシントン)の各国代表者会合の後、本年11月下旬までの交渉終了、2006年2月の署名、同年3月の国会提出、同年6月までに国内法的手続きの終了、同年下半期における憲法裁判所の承認、2007年からの発効が確認された。
(ハ)他方、Vargo米国代表は、今後のWTO交渉及び来年のアンデス各国での大統領選挙等に鑑み、11月までの交渉の終了の必要性を強調し、右に間に合わない場合、交渉の再開が来年の下半期まで延期される可能性があると述べた。
(ロ)28日、ゴメス「コ」交渉代表は、工業製品の関税撤廃スケジュール交渉が終了した旨公表した。「コ」から米国への輸出品に関し、99.99%が即時関税撤廃となった。残りの品目は、プラスティック製履物及びツナ缶等で、撤廃期間は10年に定められた。他方、米国から「コ」への輸出品に関し、81.8%が即時関税撤廃となった。残りの品目に対しては5年、7年、及び10年の関税撤廃期間が設けられた。例えば、自動車及び部品は10年後(但し、四輪駆動車や国内非生産部品に関しては即時撤廃)、化学製品及びパルプは7年後に関税撤廃となる。
(3)EUのバナナ関税率引き上げ問題
26日、EU委は、2006年以降のバナナ関税率引き上げに関して、新たな提案(1トン当たり187ユーロ)のもとでWTO仲裁に2回目の調停開催を要請した。今後、ラ米諸国側は右提案を検討することになるが、「コ」生産者は、EU側が大きな歩み寄りの姿勢をみせていないことに懸念を表明した。
<国内情勢>
(1)2005年経済見通し
アナリスト及び企業関係者は、「コ」経済は好調な時期を迎えつつあるとの共通認識を示し、右の根拠として次の分析指標を掲げた。本年の経済成長率予測4%、ペソ高にも拘わらず輸出の増加、好調な税収、財政赤字の減少、エネルギー需要の増加、金融分野の収益増加、低金利、投資の増加及び製造業分野の回復及び雇用の増加等。また、中央銀行によって行われたアンケート調査においても、民間セクターの今年の見通しも改善されている。
(2)税制改革法案等財政状況
(イ)15日、政府は税制改革法案を国会に提出した。右法案の一つの柱は、フリーゾーン及び輸出経済特区における法人税減税措置であり、現行から約10%減の25%になる予定。また、もう一つの柱は、送金税7%の廃止である。
(ロ)カラスキージャ蔵相が公表した次期国会提出予定の構造的税制改革法案の方針によると、主にIVAの課税対象範囲の拡大、所得税減税及び金融取引税の廃止並びに収益全体からの再投資部分(30%)に対する非課税措置の廃止が検討されている。
(ハ)同蔵相は、財政審議会報告を通じ、本年の財政赤字目標を当初の対GDP比2.5%から1.6%(4.32兆ペソに相当)に変更した。右は、課税収入が当初予測よりも約1.3兆ペソも多く、また、ペソ高傾向及び石油価格高により債務が6,110億ペソ減少したことに因る。
(ニ)税関国税庁(DIAN)によれば、本年8月までの税収は対前年同期比14%増の29.8兆ペソとなり、当初予測を約1兆ペソ超えた。右は、IVA税収、輸入の増大に伴う関税収入及び脱税の減少に因る。
(3)テレコム合併問題等
2日、ウリベ大統領とアリエルタ(Alierta)テレフォニカ社長(西)との会談が行われた際、同社のテレコムとの業務提携に関する関心が表明された。もし、右が実現すれば、テレコムの戦略パートナーの候補としてテレメックス(墨)に続く第2の提案となる。また、同社長は、ボゴタ及びメデジン両市長の他、今後の業務提携の可能性を検討するためボゴタ通信公社(ETB)総裁及びメデジン公社(EPM)総裁とも面談を行った。
(4)企業動向
(イ)27日、ボゴタ証券取引所は、取引高が5,424億ペソとなり1日の取引額過去最高を記録した。但し、右の内の4,406億ペソは、ベネズエラのMercantil銀行が保有していたBancolombia銀行の株式4.4%を売却したものである。
(ロ)「コ」第2位の発電企業ISAGENは、昨年の高収益を受けてアンデス諸国及び中米諸国向けにそのサービスを提供する準備を進めており、現在その最終段階に入っていると公表した。右サービスは発電のみならず、発電所のオペレーション及び維持管理にも及ぶことになる。
(ハ)伯シネルジー・グループは、「コ」コーヒー関連協会が所有していたアヴィアンカ株25%を2,300万ドルで購入した。右により同グループは、アヴィアンカを完全に買収したことになる。
(ニ)伯のアンドラーデ・グティエレス(Andrade Gutierrez)・コンソーシアムは、エルドラド空港のコンセッション事業に関心を表明した。右入札図書は明らかにされていないが、本事業の必要投資額は、5億8,700万ドルと見積もられている。なお、右コンソーシアムは、新キト空港のコンセッション事業の落札企業の一つでもある。
(5)中国関連動向
(イ)ウリベ大統領は、中国の上海区共産党事務局長Zhang Gaoliが率いるミッションと会談を行った。右ミッションは、先月の中国製の繊維製品に対するセーフガード発令を受けて、両国繊維製品の利害を一致させるために「コ」を訪問した。同大統領は、密輸製品への懸念を表明し、今回の措置はあくまで国内繊維産業の救済にあり、政治的な意図は全くないと述べた。他方、同局長は、今回の措置が中国から「コ」への投資に悪影響を及ぼすと懸念を表明した他、中国企業は、「コ」の木材、炭化水素及び鉱物資源セクターに関心があるとも述べた。
(ロ)中国産輸入製品の「コ」市場への大量流入は、繊維及び履物業のみならず、デザイン、出版、家電及びバイクのような工業製品にも影響を及ぼしてきている。
(ハ)中国の大手通信器機メーカー・中興通訊(ZTE)は、「コ」の通信機器近代化及び新たなビジネス発掘に関心を示している。また、同社は、「コ」における携帯電話の急速な普及、及び送電サービス及びデータ通信の近代化・拡張プロセスの観点から「コ」を南米において最も有望な市場として考えている。
(6)ガソリン価格及び電力需要等
(イ)鉱山エネルギー省は、10月1日以降、ガソリン1ガロン当たり20.57ペソの値上げを承認した。右により、1ガロン5,516ペソ、本年初以降で429.28ペソの値上がり、また本年全体では約600ペソの値上がりが予測される。また、同省は、ガソリン補助金制度の2007年末までの延期を決定した。他方、全国金融協会(ANIF)は、今後の政府による補助金撤廃及び国際石油価格の上昇によりガソリン価格は早い時期に、1ガロン7,000ペソ台になると試算した。
(ロ)航空局は、石油価格高騰の影響により航空チッケト料金の値上げを決定した。また、同価格が今後も上昇し続ければ将来的に更に値上げする可能性もあると公表した。
(ハ)送電公社ISAによれば、8月の電力需要は対前年比4.18%増となった。セクター別では製造業の需要が同比8.2%増と最も伸びた。右状況は「コ」全体の経済の復調振りを示している。
(7)その他
(イ)銀行監督庁によれば、8月期の金融セクターの売上は、対前年同月比29.3%の2.29兆ペソであった。同セクターの堅実な復調が見られる。
(ロ)本年8ヶ月の自動車販売台数は、対前年同期比26.2%増の8万9,566台となった。本年全体では13万5,000台の販売が予測されている。
(ハ)世界投資報告2005年によれば、2004年の「コ」に対する外国からの投資総額は対前年比96.7%増の37億4,800万ドルであった。また、直接投資に限った場合、同比53%増の27億3,900万ドルとなった。
(ニ)貿易振興公社(Proexport)によれば、本年1月から7月までの当国への観光客数は、前年同期比19.5%増の約49万人であった。右は政府のプロモーション及び信頼の回復の結果と言える。主な到来国は、米国、ベネズエラ、エクアドル及びスペインとなっている。
(ホ)カラスキージャ蔵相は、世銀・IMF合同開発委員会の委員長(任期2年)に任命された。右により、「コ」が両国際機関の援助方針の議論において積極的な役割を果たすことになる。
(ヘ)6日、西と「コ」の社会保障・労働担当大臣は、年金協定に署名した。現在、西における「コ」人労働者は約14万5千人、また「コ」における西労働者は約1万人いるが、今後、双方の労働者の労働日数が両国の年金システムにカウントされることになる。同協定は国会及び憲法裁判所の承認を得て発効となる。なお現在「コ」は同様の協定をチリ及びウルグアイと署名している。
3.主要経済指標
(1)経済成長率
国家統計庁(DANE)は、本年第2四半期の経済成長率を対前年同期比5.3%増と公表した。セクター別では最も成長した商業・ホテル・レストランが10.23%、次いで金融業9.81%、また建設業7.75%、製造業4.66%、農業2.84%及び鉱工業1.69%等となった。また、第1四半期の成長率が3.61%から3.86%に修正され、右により上半期の成長率は4.58%となった。セクター別で建設業(9.2%)と商業(8.98%)が最も成長した一方、製造業が1.88%と低成長となった。右に関し、各経済シンクタンクは、特に衣類及び履物等の軽工業製品分野の低成長に注意を促した。
(2)製造業及び建設業
(イ)DANEは、本年1月から7月までの製造業の生産、売上及び雇用の成長率を対前年同期比2.44%、2.58%及び0.5%と公表した。最も成長した産業は、自動車、非金属及び石油精製関連業であった。また、本年7月における同業の生産、売上及び雇用の成長率は、-0.19%、1.53%及び0.16%となった。
(ロ)DANEは、本年1月から7月までの建設承認面積が対前年同期比8.96%増と公表した。また、本年7月のみでは-2.79%であった。右は主に住宅建設承認が4%減少したことに因る。
(3)コーヒー
シルバ・コーヒー連盟(FNC)総裁は、コーヒー価格の不安定さにも拘わらず、9月末までの「コーヒー年」の「コ」コーヒーは、満足の行く輸出高を示したと述べた。昨年が13億ドルであったの対して、今年は16億ドルとなった。他方、同総裁によれば、政府は2006年度予算において、ペソ高及びコーヒー価格の下落による影響を軽減するために、生産者に対する補助金として420億ペソを計上した。
(4)石油・石炭関係
(イ)石油公団(ECOPETROL)は、本年1月から7月までの石油輸出量は3,360万バレル、また、同額は14億1,580万ドルと公表した(前年同期の同量3,600万バレル及び同額11億6,400万ドル)。
(ロ)ECOPETROLは、30億ドル近い投資が必要とされる重油増産プロジェクト(ジャノ地域西部及びマグダレナ川中流域)のためのパートナーを選定している。既に10の多国籍企業が関心を表明している。当国には約1億バレルの埋蔵量の存在が見積もられている。
(ハ)炭化水素庁(ANH)は、ジャノ地域西部及びマグダレナ川最上流域において、新たに4契約を承認した。1契約は探査及び生産、他3契約は技術評価となっており、総額150万ドルの投資となる。
(ニ)地質鉱山機構(INGEOMINAS)会長は、政府が鉱工業分野に対する投資誘致策として、石炭3鉱区及び金1鉱区を開放したと公表した。過去、同業においてエメラルドや金が主役であったものが、石炭に変わりつつある。
(5)金利
(イ)銀行監督庁は、10月の新規貸出金利最高限度額を先月から0.43%引き下げて26.90%に決定した。
(ロ)16日、中銀理事会は、当国への投機的な外貨流入を抑制するために公定歩合を6.5%から6.0%に引き下げると共に、外貨準備高30億ドルの政府への売却を決定した。中銀はドル買市場介入をインフレに影響を及ぼさないものとし、蔵相は金利の低下は経済の短期的な成長要因の一つであると述べた。
(6)貿易
DANEによれば、本年1月から7月までの輸出額(FOB)は対前年同期比32.1%増の118億4,430万ドルとなった。右は主に伝統産品の輸出が大きく伸びたためであり、同輸出額は同比40.7%増となり、また、非伝統産品の輸出額は同比24.8%増となった。また、同期の輸入額は同比28%増の116億4,140万ドル(CIF)となった。右の結果、同期の貿易収支は、9億7,620万ドル(FOB)の黒字となった。
(7)失業率
DANEは、本年8月末の全国失業率を11.3%(前年同月13.1%)、また、主要13都市平均失業率を13.8%(前年同月15.01%)と公表した。
(8)為替
(イ)9月の対ドル為替レートは、中銀によるドル買い市場介入にも拘わらず1ドル2,300ペソ台を割る高いペソ高傾向で推移し、月初2,302.78ペソ、月末2,288.22ペソ、月間最高値2,286.61ペソ(6日)、月間最安値2,305.09ペソ(9日)となった。本年以降のペソ高率は4.6%、また、12ヶ月では10.7%となった。
(ロ)中銀は、8月のペソ高回避のための市場におけるドル買総額が9億9,960万ドルに達し、月間過去最高の市場介入額となったと公表した。また、本年初以降では総額28億4,000万ドルとなる。他方、7日時点の外貨準備高は152億8,500万ドルとなり、これも過去最高額を記録した。
(ハ)ウリベ中銀総裁は、本年初以降、当国に麻薬マネーが約30億ドル流入し、右がペソ高圧力となっていると述べた。
(ニ)全国輸出業者組合(ANALDEX)総会において、ペソ高傾向と密輸増加が国内生産業に深刻な影響を与えていると表明された。花卉業代表が今年上半期においてペソ高のために1,700億ペソの損害を受け雇用にも危険が及んでいると公表した他、コーヒー、バナナ及び材木生産業代表もそれぞれの損害を報告する共に、政府の更なるペソ高対策及び支援措置を求めた。
(ホ)カラスキージャ蔵相は、政府の2006年為替の見通しについて、平均2,498ペソから平均2,400ペソに下方修正した旨公表した。
(9)消費者物価上昇率
DANEは、9月の消費者物価上昇率は0.43%、当初9ヶ月では4.42%、及び過去12ヶ月では5.02%(前年同期5.97%)(1955年以来の最低数値)と公表した。また、同月において高い数値を示した分野は、教育(0.84%)、食料(0.63%)及び住宅(0.59%)であった。
(10)債務状況
(イ)中央銀行は、上半期末における対外債務残高が対GDP比30.8%の370億5,900万ドルになったと公表した(公的債務:233億6,600万ドル、民間債務:136億9,300万ドル)。昨年同期(対GDP比%40.4%)から大きく減少したのは、大蔵省がペソ高を利用して外債を国債に切り替えた政策のためである。
(ロ)大蔵省は、14日、米国において7億ドルの「コ」外債を事前償還したと公表した。またその後、更に4億3,300万ドルの外債を事前償還した。右は外債から国債への借換及び政府自前の資金によるオペレーションであるが、長期的に見て為替損を減少させる等の外貨建ての対外債務のリスクを改善させると共に、債務の持続性を可能とする。
(ハ)IMFラ米担当理事は、「コ」はその財政管理を通じ対外債務をGDP比40%以下に急速に減少させつつあり、「コ」政府機関は当初の目標を達成するであろうと述べた。また、会計検査院長は、ペソ高により上半期において対外債務支出が3.5兆ペソ減少したと公表した。
(ニ)TES国債の発行残高は2004年の70.7兆ペソから本年末には86.5兆ペソとなり、2006年に国債償還が集中することになる。つまり、2006年度予算案において内外債務支払いのために全予算の37%、即ち、39兆ペソが計上され、また、その72%がTES国債の支払いに充てられる。
(ホ)カラスキージャ蔵相は、IDBのクレジットは機動的な性質が求められているにも拘わらず、過度の手続の存在や官僚主義的組織であるために、そのクレジットの貸与手続きが遅くなっていると述べた。右批判は、モレノ前駐米コロンビア大使がIDB総裁に就任した際に述べられた。