コロンビア経済情勢(11月分)
1.概要
(1)アンデス3カ国と米国とのFTA交渉につき、最終交渉とされていた第14回交渉では最終的な合意に至らず、12月末までの交渉終結が期待されている。特に動植物検疫の方法、知的財産権における医薬品及び農業分野の協議が難航している。
(2)24日に行われたウリベ「コ」大統領及びチャベス・ベネズエラ大統領会談では、二国間ガス・パイプライン建設事業及び新たな代替エネルギー等につき協議され、更にウリベ大統領はチャベス大統領に対米FTA交渉につき理解を求めた。
(3)2006年の「コ」経済につき、好調を維持するが米国等の国々の低成長により、同年の成長率は2005年よりも低い3~4%と予測されている。しかし、内需の拡大及び民間投資の増加傾向は維持される。また、同年の経済に与える不確定要素として、外需低下による輸出の減少、「コ」及び南米各国における大統領選挙、金融緩和から引き締めへの政策転換、及び一次産品の価格低下等が挙げられている。
(4)失業率は漸次低下傾向で推移した(全国平均失業率10.0%、主要13都市平均失業率12.1%)。インフレ率は安定的に推移した(0.11%)。また中銀は2006年のインフレ率目標値を4.5%と定めた。
(5)対ドル為替レートは緩やかなペソ高傾向で推移した(月初2,287.51ペソ(月間最安値)、月末2,274.71ペソ、月間最高値2,273.08ペソ(28日))。本年初頭以降のペソ高率は4.86%、また、過去12ヶ月では同率9.08%となった。
2.主な出来事
<対外関係>
(1)対米FTA交渉関連
(イ)米国交渉団は、今回のアンデス諸国との自由貿易交渉の名称を「米国・アンデス通商促進協定」(United
States/Andean Trade Promocion Agreement(USATPA))とした。
(ロ)最終交渉とされていた第14回交渉(於:ワシントン)では最終的な合意に至らなかった。右結果につき、ゴメス「コ」交渉代表は、今次交渉は22日に終了し、幾つかの分野で前進が見られたが、「コ」交渉団が求めた最終合意には至らなかったとした。それ故、ペンディングとなった分野につき、本年末までに協議が行われることが期待され、近日中に繊維、投資及び労働等の分野の交渉が再開される。
(ハ)最も困難な分野及び事項は、主に動植物検疫の方法、医薬品に関する知的財産権、及び農業等となっている。特に農業は最もセンシティブな分野で、関税の段階的撤廃及び適切な保護措置に対してより柔軟な姿勢が求められている。「コ」農業関連団体は、米国の不寛容且つ柔軟性に欠ける対応を厳しく批判した。また、同団体は、米国がどれほど貿易赤字を持っていたとしても、米国はその主要同盟国としての「コ」に対しては政治的要素を考慮しなければならず、対米FTAは麻薬対策、貧困対策及び新規雇用創出のスキームとして解釈出来ると述べた。
(ニ)ウリベ大統領は、「コ」が望むのは交渉の早期終了ではなく、多面的且つ平等な条件の下での合意であるとして、落ち着いて我慢強く交渉に取り組むように「コ」交渉団に対して指示した。また、同大統領はアンデス諸国及び米国に対して、全ての国にとって有益となる平等な合意を獲得するまで交渉を継続するように呼び掛けた。
(ホ)全国工業協会(ANDI)や全国輸出業者組合(ANALDEX)等の民間セクター団体は、「コ」の場合、2006年の大統領選挙及び米国議会の承認の複雑さに鑑みるに、本年末までの交渉終了が重要であると考えている。
(ヘ)ボテロ商工観光相は、クリスマス前までには交渉を終えるべく、継続的に米国とコンタクトを取り、また、センシティブなテーマにつき提案の交換を続けると述べた。
(2)ウリベ「コ」大統領及びチャベス・ベネズエラ大統領会談(24日、於:「ベ」プント・フィホ)
(イ)両国大統領は、数年に渡る調査の後に、グアヒラ及びマラカイボを結ぶガス・パイプライン建設につき合意した。「ベ」石油公社(PDVSA)により2006年上半期から工事が開始され、2008年の操業予定。全長230km、建設総費用3億ドル、当初は「コ」から「ベ」へ輸出され、その後、「ベ」から「コ」へ輸出されることになる。ウリベ大統領は、本計画はプラン・プエブラ・パマナの枠組みで中米のエネルギー統合にも資すると述べた。また、両国大統領は、「ベ」産石油の対アジア輸出を促進する二国間石油パイプライン建設を検討する旨合意した。
(ロ)通商面に関し、チャベス大統領は「コ」の対米FTA交渉につき理解を示した。ウリベ大統領は対米FTAは「ベ」と「コ」の二国間貿易に悪影響は与えず、反対に「ベ」が米国に一次産品を大量に輸出していることに鑑みれば、重要な機会となると述べ、また、CAN内部の統合、及びCANとメルコスールとの統合の深化の重要性を強調した。
(ハ)上記の他、風力発電のような新たなエネルギー・スキーム、「コ」の経験を生かした生物燃料生産の促進、国境附近における燃料の密輸問題等のテーマが協議された。
(3)フェルナンデス・ドミニカ共和国大統領の「コ」訪問
8日、「コ」を公式訪問したフェルナンデス・ドミニカ共和国大統領はウリベ大統領との間で、「コ」が知見を有する風力発電及びアルコール燃料等の代替燃料の他、二国間通商関係強化等につき協議した。
(4)EUのバナナ関税率引き上げ問題
2006年1月以降のバナナの関税率引き上げに関し、EUはラ米諸国側に対して1トン当たり176ユーロの新提案を行った。しかし、ラ米諸国側は右提案を拒否し、EU側と引き続き協議を行うとした。
<国内情勢>
(1)2006年経済見通し
(イ)当地全国紙「エル・ティエンポ」は、2006年の「コ」経済は好調を維持するものの、通商関係の深い国々(主に米国、ベネズエラ及びエクアドル)の成長の減速により、同年の成長率は2005年よりも低い3~4%を予測している。しかしながら、内需の拡大及び民間投資の増加傾向は維持される。また、インフレ率は安定を維持するものの、金融緩和政策及び農産品価格の上昇により同目標値(4.5%)の達成は困難としている。為替は、名目ペソ安率4%を予測。また、大きな問題点としては、財政状況、高失業率及び不完全就業者の増加を挙げた。
(ロ)23日、多数の経済アナリスト及び中銀等政府関係者が参加したセミナーにおいて、2006年の「コ」経済の不確定要素として主に右の点が指摘された。(a)外需低下による輸出の減少、(b)「コ」及び南米各国における大統領選挙、(c)金融緩和政策から引き締めへの政策転換、(d)一次産品の価格低下、(e)インフレの上昇傾向、及び(f)国内への資本流入の減少。
(2)法定最低賃金交渉
12月より政府、労働者代表及び企業代表による2006年の法定最低賃金交渉が始まる。政府側は、交渉のベースを来年のインフレ率予測4.5%に1.5%前後を積み上げると公表した。
(3)税制改革法案及び財政状況
(イ)カラスキージャ蔵相によれば、現在、国会で審議されている税制改革法案の法人税減税に関する部分は右の通り。(a)輸出特区(ZONAS FRANCAS)における法人税を25%に減税、(b)全収益中30%を設備機器等に対する投資に向けた場合には法人税28%に減税。南米において「コ」の法人税は非常に高く、減税措置により外国投資を刺激し競争力を高めることを目的としている。
(ロ)税関国税庁(DIAN)によれば、本年1月~10月までの税収は対前年同期比15%増の36兆ペソとなった。ペソ高による輸入増加による関税収入の増加が目立っている。また、経済全体の復調により所得税収入も増加している。
(4)企業動向
(イ)「コ」の株式市場は、近年の経済成長、企業の高収益及び外国からの直接投資増加を背景に、歴史的な高値を示しており、株式は本年における最大の投資対象となっている。18日、「コ」株式指数(IGBC)は史上最高値の8,317.67となった。
(ロ)銀行監督庁によれば、本年10月までの金融機関全体の収益が対前年同期比27.7%増の2.94兆ペソとなった。特に民間銀行は同比40.3%増であった。
(ハ)「コ」携帯電話会社「OLA」を共同経営しているメデジン公社(EPM)及びボゴタ通信公社(ETB)は、新たな出資者としての戦略的パートナーを模索しているところ、マイアミにおいて欧州系MillicomInternacional社とコンタクトを取っている。
(ニ)発電公社(ISA)は、伯における送電建設に参入するためにサンパウロに新たな子会社を創設した。ISAは伯において過去7回の入札に参加しているが一度も落札したことがない経緯がある。なお、ISAはエクアドル、ペルー及びボリビアに同系列会社を持っている。
(5)ガソリン価格及び電力需要等
(イ)鉱山エネルギー省は、12月1日以降、ガソリン1ガロン当たり24ペソの値上げを承認した。右により本年初以降で476ペソの値上がり、1ガロン5,641.32ペソとなる。
(ロ)1日以降、「コ」南西部各県及びコーヒー地帯において、エタノール混合ガソリンの使用が開始された。本政策が「コ」の石油自給能力の持続及び地球温暖化対策に貢献するものと期待されている。また、同ガソリンが使用されていない地域においてはガソリン価格が100ペソ値上がりしたのに対して、同使用が開始された上記地域においては生物燃料使用による免税措置等により12ペソ値下がりした。
(ハ)同省によれば、本年10月の電力需要は対前年同月比4.17%増、特に製造業において9.66%増となった。また、過去12ヶ月では対前年同期比3.98%増であった。
(6)インフラ整備事業等
(イ)国家社会政策審議会報告(CONPES)は、資金調達を保証して戦略的に進める右の3つのインフラ事業を決定した。(a)国家幹線道路整備事業、(b)メタ川航行整備事業、及び(c)「ラ・リネア・トンネル」建設計画。
(ロ)インフラ協会(CCI)により主催されたセミナーにおいて、ラミレス道路公団(INVIAS)総裁は、国家の発展と競争力強化のために幾つかの新たなプロジェクトを公表した。ボゴタ西部環状道路(AOL)事業、ブリセーニョ・トゥンハ・ソガモソ二車線化事業、「ラ・リネア・トンネル」フェーズⅡアクセス事業、及びブガ・ブエナベンテューラ間道路事業。
(ハ)米国政府は、カルタヘナ港湾協会に対して、10億ペソの資金を供与した。右は主にコンテナ内を検査するための警備機材等、港湾における治安対策に充てられる。
(7)アジア各国関連動向
(イ)サルディ大蔵省公債局長は、「コ」政府は本年末までに日本の機関投資家向けに2億6千万ドル相当のサムライ債を発行すると公表した。右資金は主に治安対策等に充てられる。
(ロ)23日、ボゴタ商工会議所等の主催によりセミナー「日本:アジアへの扉」(本年4月の大統領訪日フォローアップ事業)が開催された。本セミナーには多数の企業家約700人が参加し、「コ」企業関係者及び当地JETRO等の講演者により日本市場へのアクセス及び投資機会等日本におけるビジネスの成功の秘訣及び経験談が述べられた。
(ハ)16日以降、DIANにより中国製履物に対する新たな不法輸入防止規制(主にパナマ経由)が開始される。右により輸入業者は、輸入請求書類に名前、企業番号、住所及び購入通貨等の記載が求められる。また、29日、DIANは、主に中国、インドネシア及びパナマから当国に流入する学習ノートに対して指定価格を設定した。右措置により不当競争及び密輸を防止する。
(ニ)韓国家電メーカーLGは、当国における家電市場でサムソンを抜きトップになったと公表した。同社は本年全体の売上目標を前年比30%増の2億7千万ドルとしている。
(8)自動車販売台数等
(イ)低金利による内需の回復及び経済全般の好調により、「コ」における自動車市場は拡大傾向にあり、本年10月における販売台は対前年同月比27.4%増の1万4,168台であった。
(ロ)CAN域内、特にベネズエラ及びエクアドル向け自動車輸出が増え続けている。例えば、マツダ及び三菱車を組み立てている「コ」・オートモーター社(CCA)は、過去3年間漸次輸出を伸ばし続け、2003年の655台から2004年は4,544台となり、更に本年初以降既に5,362台となった。同社の本年全体の輸出台数は7,500台が期待されている。
(ハ)中国製自動車販売会社Cinascarは、「コ」市場に家族及びタクシー向けの新たな3車種(Chamghe,SAIC,BYD)を販売するために300億ペソを投資する旨公表した。
3.主要経済指標
(1)経済成長率
モンテネグロ国家企画庁(DNP)長官は、本年第3四半期の経済成長率は内需の拡大により約4.5%になると評価し、本年全体の成長率予測を当初の4%から4.5%以上と上方修正した。また、同長官は、中期的に「コ」経済を強化するには、米国のみならずEU及びアジア諸国とも通商協定を締結しなければならいと述べた。他方、ビジェガス全国工業協会(ANDI)総裁は、本年第3四半期の経済成長率を6%前後と予測している。
(2)製造業及び建設業
(イ)国家統計庁(DANE)によれば、本年9月までの製造業における生産、売上及び雇用の伸率は対前年同期比2.91%、3.33%及び0.36%となった。分野別で最も生産が伸びた部門は、主に自動車、非金属製品、プラスティック製品及び食料品であった。他方、ANDIによるアンケート調査によれば、同期間の生産及び売上の伸率は同比7.7%及び8.2%であった。
(ロ)DANEによれば、本年9月の建設着工承認面積は対前年同月比-11.99%であった。また、本年9月までの同面積は対前年同期比5.88%増となった。
(3)コーヒー
アナリストは、今後2年間、世界のコーヒー市場において7百万~9百万袋の不足が生じるために国際価格は1ポンド約1ドルを維持出来ると予測している。他方、現時点で少なくとも急激な値上がりを予測するのは困難であるが、生産の急増により需要が相対的に低下する可能性がある。
(4)石油及び石炭
(イ)炭化水素庁(ANH)及びANHが契約した国際コンサルタントによる調査によれば、国際的な石油関連企業は、炭化水素セクターにおける最も魅力ある南米投資対象国として「コ」を挙げた。他方、同セクターにおける競争力の世界ランクにおいて、「コ」は第7位に位置する。また、治安問題に対する懸念は存在し続け、34社による「コ」の平均評価(5段階)は、2.2ポイントのみであった。
(ロ)航空会社アビアンカのエフロモヴィッチ社長(伯シネルジー・グループ)は、2002年から操業しているルビアレス(RUBIALES)及びピリリ(PIRIRI)油田に対する10億ドルの増資を公表した。
(ハ)アルゼンチンで開催された米州サミットにおいて、ウリベ大統領と会談を行ったボラニョス・ニカラグア大統領は、同国のエネルギー計画において石油を代替させるエネルギーとしての石炭を「コ」から輸入する可能性を検討していると公表した。
(5)金利
銀行監督庁は、12月の新規貸出金利最高限度額を先月より0.48%引き下げて26.24%に決定した。
(6)貿易
(イ)本年9月までの輸入額は、対前年同期比30.2%増の155億4,630万ドル(CIF)となった。主な輸入国は、米国(約34億ドル)、墨及び中国の順となっている。
(ロ)チアペ(Chiape)「コ」ベネズエラ商工会議所総裁は、本年全体の「コ」の対「ベ」輸出は、石油価格の高騰に支えられた「ベ」内需の拡大により、対前年比35%増の約22億ドルとなるであろうと述べた。他方、同年全体の「コ」の対「ベ」輸入は約11億ドルと見積もられる。
(ハ)貿易振興公社(PROEXPORT)の試算によれば、2006年の輸出額は約250億ドル、その内の125億ドルは非伝統産品が占める。また、2010年までには非伝統輸出産品は、対米FTAの恩恵により、その額が現在の約3倍に膨れあがるとしている。
(7)失業率
DANEによれば、本年10月末の全国平均失業率は10.0%(前年同月12.4%)、また、主要13都市平均失業率は12.1%(前年同月14.1%)であった。右両値ともに測定開始以来最低値であった。
(8)為替
(イ)11月の対ドル為替レートは、月初2,287.51ペソ(月間最安値)、月末2,274.71ペソ、月間最高値2,273.08ペソ(28日)と緩やかなペソ高傾向で推移した。右により本年初頭以降のペソ高率は4.86%、また、過去12ヶ月では9.08%となった。
(ロ)ホセ・エチャバリア中銀理事は、中銀は為替の大幅な変動を回避し外的要因から国内経済を守るために、市場介入を強めると表明した。また、同理事は、本年10ヶ月で37億3,100万ドルの市場でのドル買実施(10月のみでは1億8,090万ドル)、また、政府の対外債務事前償還のために本年初以降外貨準備高から29億5千ドルを政府に対して売却したと公表した。
(ハ)一部アナリスト及び経済学者は、当面、対ドル為替レートはペソ高で推移するものの、2006年以降、より確実な投資先へ資金が流れる傾向が現れ、ラ米諸国の通貨が下落する可能性があると予測している。
(9)消費者物価指数
(イ)DANEによれば、11月の消費者物価上昇率は0.11%(前年同月0.28%)、本年初以降11ヶ月4.78%、過去12ヶ月5.12%となった。高い数値を示した分野は娯楽0.65%、運輸0.42%、及び医療0.22%であった。
(ロ)18日、中銀理事会は2006年のインフレ率目標値を4.5%と設定した。右数値を基に同年の法定最低賃金交渉が行われた。また、右は家賃等の値上げの基準となる。ウリベ中銀総裁は、過去12ヶ月のインフレ率の上昇傾向につき、幾つかの食料品が一時的に上昇して全体を押し上げているだけであって、懸念する必要はないと述べた。なお、2007年においては3~4.5%の目標が設定された。
(10)債務状況
中央銀行によれば、8月末における対外債務残高は対GDP比31.6%の379億1,300万ドルとなり、先月比で微増となった(前月末31.4%)(前年同月末40.7%)(公的債務:241億5,900万ドル、民間債務:137億5,400万ドル)。また、5日時点のTES内国債の発行残高は前年同日比31%増の77兆ペソと増加を続けている。右傾向は、外国債の事前償還、及び内国債の比率を高めて、為替損を回避するという政府の方針である。