コロンビア経済情勢(12月分)

 

1.概要

(1)国家統計庁は、2005年第3四半期の経済成長率を対前年同期比5.75%、産業分野別では建設業が最も伸び16.13%、次いで商業8.90%、運輸5.91%と公表。当地を訪問したIMFミッションは、マクロ経済調査を行い、「コ」経済は順調に発展を続けており、予想以上に改善していると判断した。国家企画庁は、2005年の成長率は5%強、貧困率も48%に低下(前年52%)したとした。

(2)20061月以降の法定最低賃金が対前年比6.95%増の408,000ペソに決定。

(3)日本の機関投資家向け225億円(約2億米ドル)のサムライ債が発行。

(4)2005年全体のインフレ率は4.85%となり目標値を達成した(20045.5%)。また、2005年全体の対ドル為替レートは年始1ドル2,389.75ペソ~年末1ドル2,284.22ペソとなりペソ高傾向で推移した(年間名目ペソ高率4.41%)。

(5)2006年の見通しにつき当地BBVA銀行は、財政赤字等の構造的問題はあるも4.2%の成長率、インフレ率4.5%を予想している(全国工業協会は6.5%の成長率を予測)。

 

2.主な出来事

<対外関係>

(1)対米FTA交渉関連

(イ)アリアス農業相は、2006123日にワシントンに於いて、米国とのFTA交渉を再開し、20071月からの発効を目指すと公表した。なお、7日付け米国通商代表部HPによれば、米国はペルーとの交渉を終え、2006年初頭から「コ」及びエクアドルとの交渉を再開する由。

(ロ)ゴメス「コ」交渉代表は、ペルーは「コ」程に農産品に多様性がないため交渉終結は理解出来るとした他、ペルーの交渉終結が「コ」の交渉を加速化させると述べた。また、ボテロ商工観光相は、ペルーと米国との合意テキストの詳細分析を行うとした。

(ハ)交渉の焦点は、農業(センシティブな農産品に対する米国内の補助制度を代償する「コ」国内制度)、知的財産権(医薬品特許権の期間と条件)、動植物検疫、繊維製品(中米製品との条件の違い)、投資(国家収用)及び中古品(履物及び衣服等)となっている。

(2)ルーラ・伯大統領の訪「コ」

14日、「コ」を訪問したルーラ大統領はウリベ大統領と会談を行い、「コ」の南部越境道路プロジェクトに関し伯開発銀行が「コ」へ2億ドルを貸与することに合意した他、二国間エネルギー問題(カルデロン川流域での水力発電建設プロジェクト)及び二国間経済・貿易関係につき協議が行われた。

(3)チャベス・ベネズエラ大統領の訪「コ」

17日、シモン・ボリバル没後175周年記念式典の機会に、チャベス・ベネズエラ大統領が当国サンタ・マルタを訪問し、ウリベ大統領と首脳会談を行った。同会談において、「コ」国境地帯に対する燃料供給計画及びグアヒラ-マラカイボ間ガスパイプライン計画等二国間プロジェクトにつき協議が行われた。

(4)EUのバナナ関税率引き上げ問題

ムニョス商工観光省次官は、EUによるバナナの関税率引き上げ問題につき、現在EU側と何の協議も行われておらず、EU側が1トン当たり176ユーロを一方的に決定したことになっていると述べた。他方、「コ」のバナナ栽培労働者は、EUの関税率引き上げは雇用に深刻な影響を与えるとして、国際労働機関(ILO)による本件への介入を求めた。

(5)「メソアメリカ・エネルギー・イニシアティブ」首脳会合

13日、「メソアメリカ・エネルギー・イニシアティブ」に関する首脳会合(於:カンクン)が開催され、墨、SICA(中米統合機構)加盟各国、ドミニカ共和国及び「コ」は、同地域のエネルギー分野における統合を目的とした共同宣言に署名した。本会合は、9日に当国メデジンで開催されたエネルギー関係閣僚会合に続くもので、右で採択された各種プロジェクトが本宣言に盛り込まれ、次回首脳会合(20065月)に向け技術的調査等が実施される予定。

 

<国内情勢>

(1)2006年経済見通し等

(イ)2006年の経済見通しにつき、同年が選挙の年であることを背景に財政赤字等の構造的問題があるにも拘わらず、2005年並の経済成長が維持されると期待される。右要因として、外需の回復、一次資源価格の高騰、「コ」に対する信用の回復及び右に伴う外国投資の増加等が挙げられる。「コ」BBVA銀行の予測では、経済成長率4.2%、インフレ率4.5%及び年末の対ドル為替レート1ドル2,372.8ペソ。ベルナルド同行総裁は、2006年、対「コ」投資誘致のために米国、日本及び英国等の投資家の「コ」訪問を検討していると述べた。

(ロ)全国工業協会(ANDI)による企業者調査によれば、2006年は6.5%の成長が可能であるとし、また、製造業全般につき、堅固で確実な成長を遂げており、良好な経済環境及び対米FTA等の新たな市場開拓が同業の成長に寄与するとした。

(ハ)株式証券市場アナリストの予測によれば、2006年における債券及び株式の収益性は全般的に高くなるであろうが、110%も収益性が伸びた2005年ほどではなく、約20%増位が期待されている。対ドル為替レートにつき、約4%の名目ペソ安の予測。不動産関連につき、富裕層向け不動産価格の上昇が継続するという見解がある一方で、それ程大きな上昇はないとする意見もある。2006年全体では、2005年程ではないにせよ順調な年となり経済成長率45%、インフレ率4.4%、年末為替レート1ドル2,374ペソから2,450ペソとの予測。

(2)税制改正法案の国会承認

14日、国会両院において、フリーゾーンにおける税制改正法案が可決された。従来同地域においては、輸出財に係る所得税が免除されていたが、本改正により15%が課税されることになる。また、送金税については従来通り免税のまま。設備投資に係る減税措置案について、国会の理解を得られる環境にないとの大蔵相の判断により、法案から削除された。2006年においては、IVAの税率・対象の改正及び金融取引税等のより広範且つ構造的な税制改革が求められる。

(3)2006年法定最低賃金の決定

14日、労使及び政府の合意により、20061月以降の法定最低賃金が対前年比6.95%増の408,000ペソに決定。また、通勤手当は同比7.2%増の47,700ペソで合意された。更に2006年1月末まで60品目の生活必需品の値上げ凍結、及び教育費及び公共料金のインフレ率以内の値上げにつき政府約束がなされ、右決定等は好意的に受け止められた。他方、本決定につき高等教育開発財団(FEDESARROLLO)の調査によれば、最低賃金の上昇は企業に過度なコストを強いることになり新規雇用創出に悪影響を及ぼす可能性がある。

(4)財政状況

(イ)税関国税庁(DIAN)は、200511月までの税収が対前年同期比14.7%増の40.6兆ペソになったと公表した(所得税17.4兆ペソ、IVA11.7兆ペソ、関税2.6兆ペソ及び金融取引税2.1兆ペソ)。フランコDIAN長官は右税収の増加は好調な経済によるとした。

(ロ)中央銀行はその報告により、中央政府の財政状況が悪化していると明らかにした。2003年~05年までの財政赤字の平均は5.3%2006年は6.4%と予想されている。また同報告において、2005年の税収が14%増と予測される一方で、歳出が21.3%増となり、同年の財政赤字率の増加が示された。他方、カラスキージャ蔵相は、経済成長の速いリズムに鑑み、政府としては歳出の水準は安定していると述べた。

(5)IMFミッション

(イ)5日~9日まで当地を訪問したIMFミッションは、スタンド・バイ・クレジット合意(20054月)におけるマクロ経済目標の達成状況の調査を行った。同ミッションは、「コ」経済は順調に発展しており、予想以上に改善していると判断した。2005年の経済的成果の諸要因として右が挙げられた。(a)投資及び輸出に牽引された経済成長(4.5%)、(b)失業率低下、(c)インフレ率目標のほぼ達成(5%)(c)財政赤字の減少(対GDP比が目標の1.6%を下回る1.2%との予測)、(d)本年末の外貨準備高の増加等々。

(ロ)カラスキージャ蔵相は、本ミッションは「コ」の経済運営につき何の異議も唱えなかったと述べた。他方で同ミッションは、「コ」は税収及び国の競争力をより高めるためには、現在国会で審議されている以上の根本的な税制改革が必要とした。

(6)サムライ債の発行

大蔵省公債局は、21日、225億円(約2億米ドル)のサムライ債を発行した旨発表。本債券は、ラテンアメリカ初の「格付けなし」債券である。同省によれば、同債の条件は、7年満期(2012年)、半年の利率は1.94%。本債券により調達された資金は、2006年予算に組み入れられ、道路建設、保健所、学校、上水道整備等のインフラ事業への投資、中小企業に対する支援、治安の改善等に充当される予定。「みずほ銀行」が同債を発行し、JBICが右を保証する。

(7)電力需要

発電公社(ISA)によれば、200511月の電力需要は対前年同月比4.14%増となり、産業別では製造業が最も伸びた(9.11%)。右増加は活発な製造業によるものであり、同業は直近12ヶ月では4.08%増となっている。

(8)自動車販売台数

200511月末時点の販売台数は対前年同期比27.5%増の約131千台となった(右の内国内組立数は約86千台)。SOFASA社(トヨタ及びルノーの組立)の場合、同期の販売台数は同比13.7%増となった。

(9)観光関連

1日、2007年の世界観光機関(WTO)第18回総会の開催地として、カルタヘナが選出された。また、プラタ貿易振興公社(PROEXPORT)総裁は、20051月から10月までの海外からの訪問者数は対前年同期比24.2%増の約84万人となり、年間目標の100万人に近づいていると述べた。旅行者の主な出所国は米国、ベネズエラ及びエクアドル、また、「コ」内の主な訪問先はカリブ沿岸、メデジン及びコーヒー地帯となっている。

(10)その他

(イ)21日、通信公社(TELECOM)は主要メディアを通じ、移動通信体事業参入を目的とした資金確保とサービス拡大のための戦略的パートナーを模索していると発表した。テレフォニカ(西)、テルメックス(墨)及びイタリア通信公社が右パートナーの候補として期待されており、2006年上半期までに決定される。

(ロ)金融監督庁によれば、200511月までの金融セクターの売上は対前年同期比23%増の31,862億ペソとなった。

(ハ)中央銀行は、「コ」は2005年において9月期までに約333千万ドルの外国投資を受け入れたと公表した。セクター別では鉱業に対する投資が最も多く146,300万ドル、次いで石油94,200万ドルであった。

(ニ)アリアス農業相は、為替損を受けた農産品に対する補助制度の対象が約20品目になったと公表した。本制度の2006年度予算として910億ペソが確保されており、特に花卉及びバナナに多く配分され(各460億ペソ及び290億ペソ)、その他に玉蜀黍、小麦、大豆、椰子及び砂糖黍等が対象となっている。

 

3.主な経済指標

(1)経済成長率

(イ)国家統計庁(DANE)は、2005年第3四半期の経済成長率を対前年同期比5.75%と公表した。産業分野別では、建設業が最も伸び16.13%、次いで商業8.90%、運輸5.91%であった。また、農業は3.09%、鉱業3.11%及び鉱工業2.97%となった。因みに同年第1四半期の経済成長率は3.93%、第2四半期は5.62%であり、同年全体で5%超が期待される。

(ロ)モンテネグロ国家企画庁(DNP)長官は、2005年の経済成長率は5%を超え貧困率も48%まで下がるであろうと述べた(2004年の貧困率52%)。右理由として、失業率の低下、インフレ率目標の達成、投資の増加、内需の拡大、治安の改善、ババリア(飲料メーカー)やアビアンカ(航空会社)のような大企業の外資化、自動車の記録的な売上、建設業の持続的成長、株式市場での驚異的な収益性及び財政赤字の減少等を挙げた。また、ドルに対するペソ高の進行に拘わらず、輸出が著しく伸びた点も強調した。

(2)鉱工業

DANEは、200510月までの鉱工業の生産、雇用及び売上の伸び率を対前年同期比2.66%0.34%及び2.97%と公表した。分野別では自動車、鉱業製品、石油製品、製鉄及びプラスティック製品の生産が大きく伸びた。他方、全国工業協会(ANDI)が行った企業調査の結果では、同期間の生産及び売上は、同比7%及び6.8%となり、過去5年間で最高の伸びとなった。

(3)コーヒー

コーヒー連盟(FNC)によれば、次のコーヒー年(200610月~20079月)における伯の生産量は、当初予測(4,400万~5,000万袋)よりも低い4,040万袋となる可能性がある。右は世界全体の供給量の減少及び2006年における高値の維持を意味し、更に「コ」経済、特に「コ」コーヒー産業にとっては良い知らせとなる。同年における「コ」コーヒー価格は、1ポンドにつき85セント~1.1ドルで推移するものと予測されている。

(4)石油

(イ)石油公団(ECOPETROL)は、200511月の石油生産は日産528千バレルとなり昨年同月(523千バレル)よりも増加したと公表した。右は、同公団による新たな油田開発に伴うものではなく、既存の油田からの生産の増加によるものである。また同月までの平均は527千バレルとなり、対前年同期比0.33%減に留まっている。

(ロ)「コ」石油協会によれば、2005年の石油生産活動は15年振りに回復し、右投資額は10億ドルに達した。同年末において、ボーリングされた油井36、ボーリング中の油井3、また、石油開発契約数が30契約となった(通常年平均1520契約)。右は、国内治安情勢の改善と炭化水素庁(ANH)の政策が功を奏した結果である。他方、新たな油田は未だ発見されず全体の生産量は減少し続けている。

(ハ)「コ」シェル石油は、同社の同国における石油関連施設(ガソリンスタンド及び潤滑油製造施設等)の売却に関して伯ペトロブラスと合意したと公表した。また、ペトロブラスはカルタヘナ精油所近代化事業計画への入札参加に関心を表明した。

(ニ)石油公団は、カルタヘナ精油所近代化事業計画の入札プロセスが開始された旨公表した。20066月までに本事業に係る新たな戦略的パートナーが選ばれることになる。他方、ベネズエラ石油公団(PDVSA)は、本入札への不参加を表明した。

(5)金利

16日、中央銀行理事会は、インフレ率の目標範囲内での推移を考慮しつつ、公定歩合の維持を決定した(6.0%)。

(6)貿易

DANEは、20051-10月までの輸出額を対前年同期比28.9%増の1742,400万ドルと公表した(伝統産品37.7%増及び非伝統産品21.4%増)。輸出先シェアーとしては、米国が全体の4割を占め、次いでCAN19.1%)及びEU13.2%)となる。同期間の貿易収支は131,060万ドルの黒字となった。

(7)失業率

DANEによれば、200511月末の全国平均失業率は10.2%(昨年同期11.7%)、主要13都市平均失業率は12.1%(同13.9%)となった。カラスキージャ蔵相は、近い将来一桁代の失業率になると述べ、また、不完全就業者数の比率が高くなっている一方で、社会保障システムへの加入者数が増加していることも確認した。

(8)為替

(イ)2005年全体の対ドル為替レートは1ドル2,389.75ペソで始まり、年末1ドル2,284.22ペソと依然ペソ高傾向で推移した。また、年間名目ペソ高率は4.41%となり、前年度よりはペソ高傾向は減速した(2004年の同率13.98%)。

(ロ)16日、中央銀行理事会において、今後更に市場介入(ドルの売買)を淡々と行う旨決定した。従来は直近20日平均で4%の為替変動が起こった時点で介入が為されていたが、今後は2%の変動が介入の基準となる。右により更なる為替の安定化及びペソ高対策の継続が期待される。

(ハ)アナリストは2006年の為替動向につき、名目ペソ安率46%、同年末1ドル2,374ペソを予測している。また、為替市場関係者に対するアンケート調査によれば、同年末1ドル2,397ペソと予想されている。

(9)消費者物価指数

DANEは、2005年全体のインフレ率が4.85%になったと公表した。右数値は前年(5.5%)よりも0.65%低く、50年振りの低い伸びとなり、中央銀行が設定した目標範囲値(4.55.5%)を達成したことになる。グループ別で最も高い数値を示したのは食料品の6.56%、次いで運輸5.60%、教育5.15%及び医療5.11%であった。また、200512月単月では0.07%の伸びであった。

(10)外貨準備高

中央銀行は、6日時点における外貨準備高は対前年比12.9%増の1475,100万ドルと公表した。右額は、本年末の目標値120億ドルを超え、且つ、最近のIFMの評価に近いものとなっている。

(11)対外債務

(イ)ガルシアCAF総裁は、2004年におけるCAFの貸付総額実績が対前年比40%増の46億ドルに伸びたと公表した。また、右の内対コロンビアは113,700万ドルであった。

(ロ)6日、IDBは、コーヒー地帯における小規模生産業者の競争力向上プログラムに600万ドルの融資を承認した。また、米州投資公社(ICC)は中小企業支援のためにペソ建債券を発行する旨公表した。右は新たな中小企業支援策として位置付けられる。

(ハ)世界銀行は、20068月の新政権以降の平和プロセスに関する各種プロジェクトを支援するために10億ドルの融資を承認した。