コロンビア経済定期報告(2月分)

 

1.概要

(1)27日、対米FTA交渉が終了した。今後3ヶ月間のテキスト・レビューを経て各々の国会に提出される。ウリベ大統領は、対米FTAにより競争力の劣る農産品に対する保護策等を公表した。

(2)中央銀行は2006年の経済見通しにつき4.5%5%の経済成長率を予測し国家企画庁は4.5%、インフレ率目標を4.5%とした。経済全体を牽引する分野は2005年に続き建設業及び金融業となる。総体的に2006年の「コ」経済は、2005年に較べて緩やかな減速が見られるが、インフレは低下傾向を維持する。

(3)2005年の財政収支が11年振りに均衡した。大蔵省は2006年の財政状況については対GDP1.8%の財政赤字と予測している。他方、国家企画庁は石油公団の収入減少により同比2.0%の財政赤字を予測している。22日、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、コロンビアの長期外貨建てソブリン格付け見通しを「安定的」から「ポジティブ」に変更した。

(4)2005年全体の輸出総額(FOB)は、対ドル為替のペソ高にも拘わらず、石油及び石炭等の伝統産品の輸出増を受けて、対前年比26.6%増の2118,710万ドルとなった。

(5)2月の消費者物価上昇率は前年同月比0.66%増(前年の同比1.02%)、過去12ヶ月では同期比4.19%増(前年の同比5.25%)と引き続き漸減傾向にある。本年1月の全国平均失業率は前年同月を0.2%上回る同比13.4%となり、数ヶ月続いた低下傾向に歯止めが掛かった。

(6)2月の対ドル為替レートは、月初1ドル2,267.33ペソ(最安値)及び月末1ドル2,245.71ペソ(最高値)となり、依然緩やかなペソ高傾向で推移した。

 

2.主な動き

<対外情勢>

(1)対米FTA交渉関連

(イ)227日早朝、14回に及ぶ交渉の末、コロンビアと米国のFTA交渉は終了した。商工観光省は、「世界最大の市場が「コ」の生産品に特権的に開かれる歴史的な合意」、「「コ」にとり有利な条件での合意であり、このツールは「コ」経済の成長を補強し、国民の生活を豊かにする」と公表した。FTA発効後3年間で対米輸出が50%増加し、GDP1%成長すると試算されており、また、右が失業率及び貧困率の低減に貢献すると期待されている。

(ロ)医療分野、農業分野及び文化保存等のセンシティブなテーマにて「コ」の利益が確保された。また、最終14回目の交渉においては、投資、政府調達、知的財産権、アルコール品、コーヒー及びタバコ等で成果が得られた。コーヒーについては商標「コロンビア・コーヒー」の使用権が保護され、また、タバコにおいては原産地調達率が軽くなった。

(ハ)今後の作業につきボテロ商工観光相は、「今後3ヶ月間でFTAテキストのレビューが行われ、その後、国会に提出される。米国議会もまた、200711日の発効を目指し、至急検討に入らなければならない。」と述べた。

(ニ)ウリベ大統領は、対米FTAに合わせた幾つかの国内政策を公表した。即ち、(a)生物燃料生産特区、(b)医療サービス特区、及び(c)農業保護基金。(a)及び(b)は税制優遇措置を設け、また、(c)は米国からの輸入品が国内農産品に影響を及ぼした際に政府が右国内産品を買い取る制度である。

(2)「コ」・ベネズエラ二国間石油パイプライン建設関連

本年71日、グアヒラ県バジェナスの給油所とマラカイボ製油所の間を繋ぐパイプライン建設着工セレモニーが開催され、両国大統領の出席が予定されている。本工事は「べ」石油公団(PDVSA)により実施され、二国間石油パイプライン統合事業の一部を為す。全長215km、投資総額3億ドル、2008年中旬までの工事完了が期待されている。

<国内情勢>

(1)2006年経済見通し

(イ)ウリベ中央銀行総裁は、定例理事会後の記者会見において、2005年の「コ」経済の成果を高く評価すると共に、2006年において「コ」経済は4.5%5%の成長を予測すると述べた。右は主に、国内消費の増加、公的・民間部門からの投資の増加、国際一次産品価格の高騰による輸出の増加及び輸入の増加によって牽引される。また、更に外国人投資家からの「コ」に対する信用の回復、低金利及び流動性に富む市場経済も挙げられた。

(ロ)中銀は、コーヒー(1ポンド平均1.10ドル)、石油(1バレル平均52ドル)及び石炭(1トン平均47ドル)の高価格帯が維持されると予測しており、また、国内消費及び投資のみならず輸入も伸び続けると予測している。また、同総裁は、インフレ率の目標につき4.5%前後を掲げ、また、経済成長に伴い新規雇用も増加していると強調した。総体的に2006年の「コ」経済は、2005年に較べて緩やかな減速が見られるものの、インフレはコントロールされ続ける。

(ハ)モンテネグロDNP長官は、全国金融協会(ANIF)及び高等教育開発財団(Fedesarrollo)の開催による定例セミナーにおいて、2006年の経済成長率を4.5%と見込み、右予測は非常に守りに入った目標値として解釈されている。最も成長する分野は建設業及び金融業(共に6%)、また、鉱工業、通信業及び運輸業も成長する見込み。他方、鉱業及び農業は緩やかな成長となる(3.5%及び3%)。投資は14.9%、輸出8.4%及び輸入15.9%の増加が見込まれている。

(ニ)また、DNPは、財政につき、主に石油公団の収入減少により対GDP2.0%の財政赤字を予測している。総体的に2006年の「コ」経済は、2005年に比べて減速するものの、好調さを持続する。また、同長官は、経済成長の水準は貧困を削減させるための根本的な要素であり、対米FTAは「コ」の雇用創出及び競争力強化のために重要であると強調した。他方、Fedesarrolloは、2006年の経済成長率をDNPよりも高い4.8%と試算している。

(2)経済税制改革及び財政状況等

(イ)大蔵省は、新たな年金改革案を国会に提出する必要性はないとの認識を示した。右見解は、学術界及び元蔵相との意見と一致しており、将来に渡り年金支払いの持続性は確保されたとされている。よって、次期政権の政策課題は、税制構造改革及び地方交付金改革が中心となる。

(ロ)大蔵省によれば、2005年の財政収支が11年振りに均衡し、当初予測の財政赤字目標の対GDP1.2%を下回る結果となった。右要因として、中央政府の財政状況の改善、税収の増加及び国際石油価格の高騰等による歳入の増加が挙げられる。右公表に先立ち、財政政策最高諮問会議(CONFIS)は、2005年の中央政府の財政状況を対GDP4.9%の財政赤字と公表していた(当初予測5.1%20045.5%)。他方、大蔵省は、2006年の財政状況につき同比1.8%の財政赤字と予測している。

(ハ)税関国税庁(DIAN)によれば、20061月期の税収は対前年同月比21.6%増の43,980億ペソとなった。

(ニ)22日、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、コロンビアの長期外貨建てソブリン格付け見通しを「安定的」から「ポジティブ」に変更した。S&Pアナリストは、「コロンビアの良好な経済条件及び対外状況によりコロンビアの見通しを改善した。治安対策に支えられ、国内の信用が高まり、民間投資が二桁台に伸びている。」と説明した。

(3)インフラ整備関連

(イ)国家経済社会審議会(CONPES)は、ブエナベントューラ港のインフラ整備及びサービス改善のために今後15年かけて35千万ドルの予算を配分する旨決定した。初年の2006年には410億ペソが充てられる。

(ロ)運輸省によれば、エルドラド空港のコンセッション事業(約65千万ドル)に関し、現在、4社が入札図書を購入したと公表した。本年9月の工事着工を目指し、入札は7月の第1週目に実施される予定。

(ハ)ガジェゴ運輸相は、本年3月から5月にかけて3つの幹線道路二車線事業の入札図書が公表されるとした。即ち、(a)イバゲ・ヒラルド間(ボゴタ・ブエナベントューラ間の一部を形成)、(b)ルミチャカ・パスト・チャチャグイ間、及び(c)ブカラマンガ市内。

(4)ガソリン価格

鉱山エネルギー省は、31日以降のガソリン価格を39.70ペソ値上げし5,562.62ペソとすると公表した。

(5)自動車販売台数等

(イ)1月における自動車販売台数は、対前年同月比32%増の12,286台となった(国内組立8,122台、輸入3,369台)。

(ロ)SOFASA社(トヨタ及びルノー車の自動車組立会社)は、アンデス諸国における2005年の売上及び販売台数は、66,030万ドル、5147台になったと公表した。

(6)その他

(イ)中央政府は、鉱山エネルギー省を通じ、本年中に予定されていた政府系ガス会社エコガスの株式売却(民営化)に関し20076月までの延期を決定した。

(ロ)アリアス農業相は、農産輸出品目の多様化の必要性及び新規市場の開拓等を盛り込んだ、2006年の農産品輸出計画を公表した。右計画は、輸出強化農産品目を特定する他、右農産品目の耕地面積を新たに1855,350ヘクタール獲得する目標を掲げている。

(ハ)バジェ大学及び農業試験研究所(CIAT)等による共同研究において、ユッカ芋をプラスチックの一次原料として利用する研究が行われている。右は主に自動車部品として利用することが想定されており、更に手術用縫合糸、パソコンのフレーム及びビニール袋等への活用の可能性も模索されている。ユッカによる一次原料はバイオプラスティックとして完全に生物分解性を持ち、環境上の観点から重要性がある。

 

3.主要経済指標

(1)鉱工業及び建設業

(イ)全国鉱工業協会(ANDI)による企業調査によれば、2005年全体の鉱工業の生産及び売上は、対前年比7.6%及び6.6%増となった。

(ロ)国家統計庁(DANE)によれば、20051月から11月までの建設承認面積は、対前年同期比6.91%増の1,150万平方メートルであった。右の内、住宅向けは910万平方メートルであり、更にその内、住宅補助基金の対象は200万平方メートルとなった。

(2)コーヒー

(イ)コーヒー連盟(FNC)によれば、2月末までの「コ」コーヒー国際価格の平均は、1ポンド1.186ドルとなり緩やかな低下傾向を示した。また、1月の輸出量は対前年同月比24.2%減の827千袋となった。他方、同月の国内生産量は同比0.18%増の1102千袋となった。

(ロ)シルバFNC総裁は、「コ」は初めてブラジルに対して、少数量(500袋)ながらも高品質の「コ」コーヒーを輸出したと公表した。ブラジルは世界最大の生産国であるが、他方で世界第2位の消費国でもあり、近い将来、第1位の消費国になり得る。今後、このブラジル市場への輸出は徐々に増加すると期待されている。

(3)石油及び石炭

(イ)石油公団(ECOPETROL)によれば、2005年全体の石油輸出額は、国際価格の高騰を受け、対前年比33.6%増の282,200万ドルに達し、前年より約7億ドル増となった。他方、同輸出量は対前年比1.37%減の日産169,430バレルであった。また、国内生産量は同比0.4%減の日産526,162バレル(2004528,290バレル)であったが、政府目標値の日産51万バレルを超えるものとなり、減産ペースは低く抑えられている。なお、2006年の生産見通しについて、2005年における油井の開発増加にも拘わらず、日産519千バレルと予測されている。

(ロ)サモラ炭化水素庁(ANH)長官は、2006年における石油開発は、昨年よりも5油井多い、40油井の調査・開発等が期待されており、投資額も昨年の歴史的な額の15億ドルを超えると公表した。

(ハ)ドゥルモンド社は、今後5年間にかけて「コ」の石炭セクターに11億ドルを投資する旨公表した。右はラ・ロマ炭田の生産力拡張及びデスカンソ炭田の開発となり、更に石炭輸送に係る港湾及び鉄道インフラにも充てられる。

(4)金利

(イ)17日、中央銀行理事会は、インフレ率の安定、経済成長及び良好な国際環境に鑑み、公定歩合の現状維持(6.0%)を決定した。他方、中銀の公式見解は出されていないものの、市場関係者の間では、大統領選挙後若しくは米国の金利動向に合わせて、公定歩合の引き上げが予想されており、右により市場における資金量が低下し、インフレ圧力が高まるとされている。

(ロ)金融監督庁は、3月期の新規貸出金利最高限度額を前月期より0.39%ポイント引き下げて25.88%とすると公表した。

(5)貿易

(イ)DANEによれば、2005年全体の輸出総額(FOB)は、対ドル為替のペソ高にも拘わらず、対前年比26.6%増の2118,710万ドルとなった。右の内、伝統産品の伸びが著しく同比35.3%増の1036,500万ドルであった(石油31.5%、石炭40%及びコーヒー54%)。また、非伝統産品は同比19.3%増の1082,200万ドルとなった(自動車58%、花卉28.8%及び食料品15%)。主な輸出先国は、全体の約4割(約84億ドル)を占める米国であった。

(ロ)2005年全体の輸入総額(CIF)は対前年比26.6%贈の212400万ドルとなった。また、2002年比では約67%増であり、国内市場の拡大傾向が見られる。よって、2005年の貿易収支は、前年を僅かに上回る138,800万ドルの黒字となった。最大の輸出超過国は米国(約28億ドル)、他方、最大の輸入超過国は中国(約12億)であった。

(6)失業率

DANEによれば、本年1月の全国平均失業率は前年同月を0.2%上回る同比13.4%となり、数ヶ月続いた低下傾向に歯止めが掛かった。また、不完全就業率も同比28.4%0.2%増となった。他方、主要13都市平均失業率は同比16%(前年同月16.1%)、また、不完全就業率は同比28.6%となり0.7%減少した。

(7)為替

(イ)2月の対ドル為替レートは、月初1ドル2,267.33ペソ(最安値)及び月末1ドル2,245.71ペソ(最高値)となり、依然緩やかなペソ高傾向で推移した。市場アナリストは、本年上半期は、好調なマクロ経済数値、外国投資家からの信用回復及び関心の高まりにより、ペソ高傾向は継続し、下半期はペソ安傾向に変わり、年末には2,316.50ペソになると予想している。

(ロ)中央銀行によれば、本年1月、極端なペソ高を回避するために、市場において45,470万ドルのドル買が実施された。右は昨年同月の26,790万ドルに比して著しく増加している。また、2005年全体では同操作により465,840万ドルのドル買が行われ、右の内、325千万ドルが政府に売却された。大蔵相は、2006年においても、インフレ目標に影響を及ぼさない範囲内で中央銀行による断続的な市場介入は継続されると強調した。

(8)インフレ率

DANEによれば、本年2月の消費者物価上昇率は前年同月比0.66%増(前年同月1.02%)、本年2ヶ月では同期比1.20%増(前年同期1.85%)、また、過去12ヶ月では同期比4.19%増(前年同期5.25%)となり、引き続き漸減傾向が確認されている。なお、本年2月において最もインフレ上昇が大きかった分野は、教育3.11%、医療1.05%及び食料品0.68%であった。

(9)対外債務

(イ)中央銀行によれば、200511月末の対外債務残高は対GDP30.2%3733,700万ドルとなり、昨年同月末の390億百万ドルから減少した(公的債務2302,400万ドル、民間債務1431,300万ドル)(長期債務3143百万ドル、短期債務593,400万ドル)。

(ロ)カラスキージャ蔵相は、2006年における多国籍金融機関(世銀、IDB及びCAF)からの借入資金調達は249,700万ドルになると公表した。右の内、16900万ドルはプログラム・クレジット、また、残り88,800万ドルは特定目的事業に充てられる。また、同年における対外借入資金調達の総額は569,300万ドルとされる。なお、昨年における多国籍金融機関からの借入総額は20300万ドルであった。他方、同相は、本年も対外債務の前倒償還を継続し、上半期において58,000万ドルを実施すると述べた。