コロンビア経済定期報告(3月)

 

3月のコロンビア経済の動きは以下の通り。

 

1.概要

(1)ボテロ商工観光相のグアテマラ訪問によりFTA交渉開始の目処が付けられた他、ホンジュラス及びエルサルバドルとのFTA交渉の準備を進められている。

(2)16日に始まった通常国会において、「農業収入保障法案」及び「公共事業管理契約法改正案」の成立が目指されている。税制改革、地方交付金及び金融法案、更にFTAの国会承認については次期国会提出に向け準備が進められている。他方、政府は新たな治安対策税の創設につき検討を行っている。

(3)2005年全体の経済成長率は5.13%となった。ウリベ政権4年間で最も高い数値となり、1996年以来の高成長となった。分野別では建設業(12.57%)及び商業・レストラン・ホテル(9.21%)が最大の牽引役となった。

(4)3月の消費者物価上昇率は前年同月比0.70%増(前年同月0.77%)、過去12ヶ月では同期比4.11%増と引き続き漸減傾向にある。2月の全国平均失業率は前年同月を0.8%下回る13.2%、主要13都市平均失業率は前年同月を1.9%下回る14.2%となり低下傾向に戻った。

(5)3月の対ドル為替レートは高い変動を示し月初1ドル2,245.71ペソ(最高値)及び月末1ドル2,293.38ペソ(最安値)となり、月末には2005年末水準に戻った。

 

2.主な動き

<対外情勢>

(1)対米FTA関連

(イ)本年末のアンデス特恵麻薬取締条約(Atpdea)の失効と右以降におけるFTA発効の状況を想定し、米国市場への「コ」製品の特恵的なアクセス条件を維持するために、ボテロ商工観光相は、2つの選択が政府として検討されていると公表した。一つはAtpdeaの延期、もう一つはFTAの遡及適用である。

(ロ)「コ」が進めている対米FTAに対してベネズエラ及びボリビアでは、CANの統合を妨げるものであると批判が相次いでいる。右に対してウリベ大統領は、対米FTAによる「コ」経済の発展はアンデスの他国にも裨益し、特に「コ」によるアンデス諸国の製品購入の可能性拡大に繋がると述べた。また、同大統領は、知的財産権分野における医薬品問題において、ジェネリック薬及び公衆衛生につき好条件で合意出来たとして、FTACAN諸国に何らデメリットにならないと表明した。

(ハ)交渉期間中、貿易能力強化分野において設置が決定された中小企業援助基金(SEAF)につき、3日、駐「コ」ウッド米国大使が正式に右基金設立をウリベ大統領他ドナー国代表の出席の下で公表した。右基金に対して既に「コ」政府が1,700万ドルを拠出しており、今後、更に1,000万ドルが主に米国の他ベルギー及びスイス等官民双方から拠出されることになる。

(2)中米各国とのFTA交渉

28日、ボテロ商工観光相はグアテマラの同担当相と間で「コ」と「グ」のFTA締結に向けたプロセス開始に関する文書に署名した。交渉期間は、交渉開始から最大で1年間とされ、第1回目の交渉は「コ」に於いて6月上旬において行われる。また、ボテロ同相は、グアテマラの後、エルサルバドル及びホンジュラスを訪問し、同様の手続きを行った。

(3)ウリベ大統領のボリビア訪問

14日、ウリベ大統領はボリビアを訪問し、モラレス大統領と会談を行った。ウリベ大統領は、米国とのFTAにつき理解を求めると共に、雇用創出及び貧困削減のための2国間協定の必要性を確認した。また、同大統領は、「コ」輸出銀行(Bancoldex)が「ボ」企業家 に対して「コ」への輸出促進(特に大豆)のためのクレジット・ラインを設けると公表した。

 

<国内情勢>

(1)経済関連法案の国会提出時期

16日に始まった通常国会における経済関連法案につき、政府は、対米FTAにより損害を受けるセクターに対する補助を定める「農業収入保障」法案及び「公共事業管理契約法(ley80号)改正案」の速やかな成立を目指している。他方、税制改革、地方交付金及び金融法案、更にFTAの国会承認については次期国会に付されるよう準備が進められている。

(2)税制改革法案及び治安対策税

(イ)ウリベ大統領は、7月から始まる次期通常国会に提出予定の税制改革法案の骨子を広範な議論に付す為に公表した。本法案の目的は税制の平等性と国際競争力の確保にある。主な改革内容は、所得税、IVA及び金融取引税の変更にある。即ち、(a)所得税につき、より競争力のある税率水準にすることが求められており、現行、一時的に設けられている再投資に向けられる所得に対する減税優遇措置(38.5%30%)の維持が検討されている。また、(b)IVAにつき、税率の簡素化と課税対象範囲の拡大が提案されている(但し、貧困層への悪影響を抑えるためのシステムとして、税の還付、最低生活必需品目の非課税若しくは2%のみの課税が検討されている。)。更に(c)金融取引税につき、現行の0.4%から0.3%への減税若しくはデビットカード利用に対する段階的撤廃等が検討されている。

(ロ)他方、同大統領及びカラスキージャ蔵相は、上記税制法案とは別に、国軍の装備を近代化し治安対策を強化するために一回限りの富裕層に対する特別課税措置を検討していると公表した。右提案に対して、アナリストは2つの税制法案を同時に成立させるのは困難であり、重要な税制改革法案の成立に悪影響を及ぼすとしている。

(3)「農業収入保障」法案Agro Ingreso Segro

3日、農業省は、経済のグローバル化、特に対米FTAに対して農業セクターを保護するための必要な資金を確保する「農業収入保障」法案を公表した。右法案において、10年間で5,000億ペソの資金が主に農業セクターの競争力改善に利用される。

(4)財政問題

(イ)財政諮問最高会議報告(Confis)によれば、2005年の財政収支は1994年以降初めて均衡し、また、中央政府の財政収支は対GDP4.8%の赤字となり、前年の5.5%及び目標値4.9%を下回り、近年でもっとも良い結果となった。

(ロ)IMFミッションは、昨年4月に締結されたスタンド・バイ・クレジット合意における各マクロ経済目標及び経済状況を調査するために227日から39日まで当国を訪問した。ロバート・レンハック同ミッション代表は、コロンビア政府は2006年の財政赤字目標を2%から1.5%に下方修正し、財政調整プログラムを強化する旨約束したと公表した。また、同代表は、2005年の「コ」経済の結果は全ての面で当初見通しを超える好成績であり、2006年の経済成長率は約5%になるとした。

(ハ)税関国税庁(DIAN)によれば、本年当初2ヶ月の税収は、対前年同期比21.3%増の79,530億ペソとなり、「コ」経済の成長傾向の持続が伺われる。他方、世銀の報告によれば、社会発展水準と比較した徴税率の低い南米の国として、アルゼンチン及びグアテマラに次いで「コ」は第3位となった。

(5)主要企業・金融機関動向

(イ)企業金融機関監督庁による主要企業98社を対象とした調査報告によれば、2005年はドルに対するペソ高傾向がネガティブな影響を与えたにも拘わらず、同年において各社は前年よりも著しく業績を伸ばし、各社全体の収益は2004年の約28兆ペソから2005年は約34兆ペソとなった。最も成長した企業として、エクシト(卸・小売)、コムセル(携帯)、ババリア(飲料)、テキサコ(石油)及びカルージャ(卸・小売)が挙げられている。

(ロ)16日、当国最大の金融グループであるサルミエント・アングロ(SarmientoAngulo)グループは、同グループ系列金融機関を通じて、公的機関「メガバンコ」(Megabanco)を8,080億ペソで買収した。「メガバンコ」は貧困層に対するマイクロ・クレジットを主要業務としており、同グループの金融機関がその業務を引き継ぐことになる。

(ハ)「コ」金鉱山会社オロ・ミネロの株主総会は、同社の株式の一部(1.5%)を300万ドルで世界第3位の金鉱山会社アングロゴールド・アシャンティ(英アングロ・アメリカンの子会社)に売却することを承認した。右オペレーションを通じて、両社はセゴビア・アンティオキア金鉱山プロジェクトを促進する。

(ニ)企業金融機関監督庁によれば、2005年全体の銀行機関の収益は、対前年比16.5%増の33,890億ペソとなった。また、年金基金及び証券機関等を含めた金融機関全体の収益は5.5兆ペソであった。

(ホ)ウリベ大統領のイニシアティブの下、政府は貧困層向け銀行(El Banco de los pobres)の設立を検討している。本銀行は、全ての金融機関を通じた2スップローンにより、マイクロ・クレジット等の全ての金融サービスを低階層向けに実施することになる。

(6)インフラ関連

(イ)国家社会経済審議会報告(CONPES)第3413号において、新たに11区間の幹線道路2車線化事業が決定した。右は、ブカラマンガ首都圏、ヒラルド-イバゲ間及びコルドバ-スクレ-バランキージャ間等となっており、右事業全体で10兆ペソのコストが見積もられ、国家コンセッション機構(INCO)が3.5兆ペソを支援し、残りを民間セクターから資金調達することが予定されている。

(ロ)「コ」北部鉄道の売却先が、ドルムンド及びグレンコール等当国における石炭関連会社の企業グループとなった。右により、線路の修復、サンタ・マルタ港湾と内陸部の輸送促進が図られる。また、今後同グループは35千万ドルの投資を行い、チリグアナ及びサンタ・マルタ港湾間の第2線路を建設する予定。

(7)自動車販売台数等

(イ)本年2月の自動車販売台数は、対前年同月比34%増、各月の記録で史上最高となる14,480台となった(国内組立9,351台、輸入5,129台)。

(ロ)「コ」スズキ・モーターによれば、2005年の同社製造オートバイの国内売上台数は前年比24.9%増の56,000台となった。

(ハ)「コ」ブリジストン販売代理店は、2005年の売上及び販売量は対前年比11.5%及び7%増となり、また、「コ」市場における同社のタイヤのシェア率が15%になったと公表した。同社によれば、「コ」における販売・サービス店は約170あり、売り上げの大半はボゴタ(46%)が占め、次いでアンティオキア(22%)となっている。

(8)その他

(イ)27日及び28日、カルタヘナにおいて貿易振興公社(PROEXPORT)主催によるアグロビジネス商談会が開催された。約200名のバイヤー及び約300名の「コ」輸出業者が参加し、約6千件の商談が実現したと公表された。国別で商談額が最も大きかったのはスペイン(特に椰子油及びエビ等)であり、次いで米国(特に砂糖菓子及び酪農製品等)であった。

(ロ)貿易振興公社(PROEXPORT)の試算によれば、本年、「コ」を訪問する外国人観光客数は同公社によるプロモーション及び治安の改善により150万人となり、約14億ドルの外貨がもたらされることになる。他方、同公社は、426日及び27日、ボゴタにおいて観光ビジネスフォーラムを開催する。

(ハ)23日、ボゴタ商工会議所において、「コ」と台湾の中小企業による商談会が開催された。台湾商務事務所によれば、「コ」から企業家250名、台湾から45名が参加し、約400件の商談が具体化した。

 

3.主要経済指標

(1)経済成長率

国家統計庁(DANE)は、2005年全体の経済成長率を5.13%と公表した。ウリベ政権4年間で最も高い数値となり、1996年以来の高成長となった。国内消費、政府支出、輸出及び外国投資の増加が右高成長の最大の原動力となった。また、分野別で見た場合、最も成長した分野は、建設業の12.57%、特に土木工事が27.87%であった。次いで、商業・レストラン・ホテル9.21%、金融業8.52%、運輸・倉庫・通信5.08%、鉱工業3.95%、農業2.12%、鉱業3.2%となった。

(2)鉱工業及び建設業

(イ)全国鉱工業協会(ANDI)の企業調査によれば、本年1月の生産及び売上は対前年同月比5%及び6.8%となり、昨年1月と比べ生産の伸び率(昨年値6.5%)は減速したが、売上の伸び率(昨年値3.4%)は改善した。

(ロ)DANEによれば、昨年一年間の建設申請面積は、対前年比5.91%増の1,290万平方メートルであった。右の内、住宅・アパート建設の高い需要が記録されている。

(3)石油及び石炭

(イ)石油公団(ECOPETROL)によれば、本年2月の生産量は対前年同月比3.6%増の日産532,102バレルとなり、減産傾向に歯止めが掛かっている。

(ロ)2005年全体のECOPETROLの収益は、オペレーションの改善及び管理コストの削減及び価格の高騰を受けて、対前年比54%増の32,500億ペソとなった。他方、本年、ECOPETROL16千万ドルを海外における石油開発に投資し、また、15千万ドルを国内開発に向けると公表した。

(ハ)在「コ」ベネズエラ大商務官によれば、ガス・パイプライン事業のような二国間石油及びエネルギー・プロジェクトを支援するために、「べ」石油公団(PDVSA)は本年4月よりボゴタに事務所を開設する。

(4)金利

(イ)17日に開催された中央銀行理事会は公定歩合の維持を決定した(6.0%)。また、同理事会は経済の現状を分析し、本年以降の経済動向は堅調、右は鉱工業分野のエネルギー消費率の増加(8%増)、内需の増加及び民間部門による投資の増加によって牽引されるとした。また、為替動向に関し、インフレ目標を達成する一定の範囲内で引き続き断続的に市場介入を継続すると強調した。

(ロ)企業金融機関監督庁は、4月期の新規貸出金利最高限度額を前月期より0.75%ポイント引き下げて25.13%にすると公表した。

(5)貿易

DANEによれば、本年1月の輸出額(FOB)は対前年同月比20.9%増の166,600万ドルとなった。伝統産品は同比23.9%増(右の内、石油及び石油関連50%増、石炭58.7%増、コーヒー30.4%増)、また、非伝統産品は18%増であった。他方、同月の輸入額(CIF)は対前年比22.8%増の179,700万ドルとなった。この結果、同月における貿易収支は1,020万ドルの赤字であった。

(6)雇用

DANEによれば、本年2月の全国平均失業率は前年同月比で0.8%低い13.2%となり、また、主要13都市平均失業率は前年同月比で1.9%低い14.2%となった。(先月は上昇傾向が見られたものの)全国及び主要13都市共に低下傾向で推移し始めた。

(7)為替

(イ)3月の対ドル為替レートは、月初1ドル2,245.71ペソ(最高値)及び月末1ドル2,293.38ペソ(最安値)となり、高い変動を示すと共に、月末には2005年末水準に戻った。最近12ヶ月のペソ高率は4.4%となり、右傾向はラ米全体でも現れている。一部アナリストはこの傾向は一時的であり、米国の金利引上の観測に起因していると考えている。

(ロ)中央銀行は、本年2月中為替市場において極端な為替変動を回避するために65,590万ドルのドル買いを行い、本年2ヶ月間での右買取額は111,070万ドルになったと公表した。他方、中銀は政府に対して本年2ヶ月間で10億ドルを売却した。因みに、昨年一年間で中央銀行は465,840万ドルを市場で買取る一方、政府に対して325,000万ドルを売却した。

(8)インフレ率

DANEによれば、本年3月の消費者物価上昇率は前年同月比0.70%増(前年同月0.77%)、本年3ヶ月間では同期比1.91%増、また、過去12ヶ月間では同期比4.11%増であった。なお、本年3月において最も上昇率が高かったのは食料(1.11%)及び教育(0.94%増)であった。

(9)対外債務等

(イ)中央銀行によれば、2005年末時点における対外債務残高は対GDP31.4%3877,000万ドルとなり、昨年同時期(同比40.6%)に比べ大幅に減少している(公的部門:2413,500万ドル、民間部門:1423,500万)。他方、310日時点におけるTES国債発行残高は84.8兆ペソとなり、昨年同日よりも29.1%増となっている。

(ロ)国際格付会社ムーディーズは、「コ」外貨建長期国債の見通しを「ネガティブ」から「安定的」に変更する一方で、内国通貨建長期国債の見通しを引き下げる可能性があるともした。他方、メリルリンチ及びクレディ・スイスは、各社の投資ポートフォリオの中に「コ」国債を入れ込むと共に、顧客に対して同債の購入を推薦した。

(ハ)国家社会経済政策審議会(CONPES)は、政府に対して2006年から2009年の間25億ドルを上限とする対外借款の契約を承認した。右資金は主に社会的平等、持続的発展、インフラ及び国際競争力強化等の分野の事業に充てられることになる。