コロンビア経済定期報告(4月)
1.概要
(1)ベネズエラのCAN脱退により国内企業関係者の間で不安が生じており、「ベ」による関税プログラム継続と早期の二国間協議が期待されている。また、ウリベ大統領がブラジルを訪問した際、ルーラ大統領に対して本問題解決の協力を要請した。
(2)CONPESは2006年マクロ経済成長目標を4.5%とした。分野別では昨年に引き続き建設業、商業、金融業、鉱工業及び運輸業の高成長が予想されている。
(3)2005年の外国から「コ」に対する直接投資額は、過去最高水準の対前年比226.9%増の101億9,200万ドルとなった。
(4)3月の全国平均失業率は11.3%、主要13都市平均失業率は12.2%と低下傾向ではあるものの、不完全就業者数の増加が懸念される。4月のインフレ率は0.45%、最近4ヶ月は2.37%、過去1年間では4.12%と低下傾向で推移しているが、食料品価格が上昇傾向にある。
(5)4月の対ドル為替レートは月初1ドル2,293.38ペソ、月末1ドル2,375.03ペソ、月間最安値1ドル2,375.66ペソ(27日)、月間最高値1ドル2,288.67ペソ(4日)となり、ペソ安傾向で推移した。
2.主な動き
<対外関係>
(1)ベネズエラのCAN脱退
24日、「ベ」政府は「コ」、ペルー及びエクアドルの対米FTAに抗議してCAN事務局及びCAN加盟各国に対してCAN脱退を表明した。商工観光省は、CAN通商担当大臣会合の開催及び「ベ」による5年間の継続が義務付けられている関税プログラムの履行が期待されると公表した。「ベ」のCAN脱退は直ぐに二国間貿易関係に悪影響を及ぼすとはされていないが、企業関係者の間では不安が生じている。現在、同省は本問題が与える影響(税関制度、植物検疫及び輸送問題解決等)につき調査を行っている。
(2)ウリベ大統領のブラジル訪問
25日、伯を訪問したウリベ大統領は、ルーラ大統領との会談において、経済関係及び地域統合等につき協議を行ったところ、主な事項は右の通り。(a) 航空会社サテナ(「コ」空軍が経営)による伯製旅客機(エンブラエル)の購入、(b)伯からの太平洋アクセスが可能となる道路建設プロジェクト促進(プエルト・アシス-モコア間、モコア-パスト間)、及び(c)メソアメリカ・エネルギー・イニシアティブにおける「コ」の役割(PPPとCSNの結節点)等。他方、ウリベ大統領はベネズエラのCAN脱退問題の解決のための仲介をルーラ大統領に要請した。
(3)対中米FTA等
(イ)3日、サカ・エルサルバドル大統領は「コ」を訪問し、二国間FTA交渉開始に関する文書にウリベ大統領と共に署名した。同二国間のFTA交渉は、グアテマラ及びホンジュラスと同様の交渉形式を取り、本年11月までに6回の全体交渉が実施される。また、同大統領は、二国間の投資関係機関の間で「エ」に対する投資誘致プログラムに署名したことを明らかにした。
(ロ)5日、ボテロ商工観光相はキューバを訪問し、キューバのラミレス同担当相と二国間経済関係の深化及び経済補完関係強化のための交渉プロセス開始につき合意した。右交渉の主なテーマは、関税、動植物検疫、技術基準、紛争解決及び原産地証明等となっている。
<国内情勢>
(1)CONPESによる2006年マクロ経済成長目標の正式設定等
国家社会経済政策審議会(CONPES)は、2006年マクロ経済成長目標を4.5%とした。右は、昨年に引き続き建設業(予測値6%)、商業(同6%)、金融業(同6%)、鉱工業(同4.7%)及び運輸業(同4.7%)によって支えられる一方、農業は低成長に止まる。また、右経済成長率を受け失業率の全国平均は10%を下回ると予想される。輸出の成長率予測は9.28%、輸入の同率は15.9%。予想為替値はインフレ率目標4.5%の達成を前提に年末1ドル2,250ペソ、中央政府の財政支出目標は赤字1.5%となっている。
(2)税制改革案
カラスキージャ蔵相は、7月20日から始まる国会へ提出する予定の税制改革案において、金融取引税に関し右税率を1000分の4から1000分の1に引き下げる方向であると公表した。他方、カルデナス高等教育開発財団(FEDESARROLLO)理事長は、国家歳入を増加させるために所得税課税対象者の数を増やす必要があり、そのために本改革案において、課税対象者を最低賃金2ヶ月以上の所得者にすべきと提案している。
(3)財政状況
(イ)イネス大蔵次官は、本年10月にIMFとのスタンド・バイ・クレジット合意が終了することに関し、従来より「コ」政府はIMFと約束した合意事項及びマクロ目標(特に財政部門)を達成してきたとして、今後は一般的な関係、即ち、如何なる協定締結もなく、また、マクロ経済の管理を受けることのない関係が期待されると述べた。
(ロ)税関国税庁(DIAN)によれば、本年第1四半期の税収は対前年同期比約20%増の11.7兆ペソとなり、また、目標値も超えた。
(4)エルドラド空港コンセッション事業
航空当局は、ボゴタ・エルドラド空港コンセッション事業の入札期限を4月18日から5月18日までに延期することを決定した。右事業に対しては、中国のキャピタル・エアポート・ホールディング社(CAH)が関心を表明しており、同社は同空港をラ米における空路コネクションとして位置付けているとした。
(5)テレコムの戦略的パートナー
7日、国営通信公社テレコムの株主総会は、同社の戦略的パートナーとしてテレフォニカ(西)を正式に承認した。テレフォニカは、8,535億7,700万ペソによりテレコムの過半数株を獲得し筆頭株主となる。ピント通信相及びカラスキージャ蔵相等は、今回のオペレーションによりテレコムの存続可能性、全国的な通信サービス提供及び年金支払等が保証されたと述べた。
(6)2005年外国直接投資他
中央銀行によれば、2005年における「コ」に対する外国からの直接投資額は、過去最高水準の対前年比226.9%増の101億9,200万ドルとなった。分野別で鉱工業、炭化水素及び通信が右全体額の84%を占めた。最も大きな投資は、外国企業による大手国内企業の株式買収であり、主にサブミラーによるババリア(飲料)買収、及びフィリップ・モリスによるコルタバコ(国営タバコ会社)買収等であった。また、好調な国内経済を背景に、2005年に民間セクターが設備投資に充てた投資額は70.4兆ペソに及んだ。
(7)自動車販売台数他
(イ)本年第1四半期の自動車販売台数は、対前年同期比35%増の14,150台となった。
(ロ)鉱山エネルギー省は、5月1日以降のガソリン価格を42ペソ値上げし5,725ペソに決定した。
(8)その他
(イ)26日及び27日、商工観光省及び貿易振興公社(Proexport)の主催で観光ビジネスフォーラムが開催され、米国、英国、伊、墨及びペルー等の世界27各国から150名の観光関係者が参加した。Proexportによれば、本年第1四半期に「コ」を訪問した外国人数は前年同期比12.1%増の238,596人となった。
(ロ)米州開発銀行(IDB)の創立50周年にあたる2009年の総会が当国メデジン市で開催されることになった。
(ハ)パナマ経由(特にコロン地区)で「コ」国内に流入している密輸品に対する取り締まり措置に関し、パナマ政府は本措置がWTO規則に違反するとして同紛争調停機関に「コ」を訴えた。
(ニ)新たな大蔵省公債局長にフリア・アンドレス・トレス(民間銀行出身)が任命された。前任のサルディ氏はコーヒー連盟(FNC)に移った。
3.主要経済指標
(1)経済成長率
カラスキージャ蔵相は、IDB年次総会(於:伯、3日~5日)において、「コ」は継続的に経済成長率5%を達成する途上にあり、世界経済の影響に対してそれ程脆弱ではなくなっていると述べた。他方、高等教育開発財団は、「コ」経済は順調な成長を維持しているものの、本年及び2007年は2005年を僅かに下回るとして、本年4.7%及び2007年4.5%と予測している。
(2)鉱工業
国家統計庁(DANE)によれば、本年当初2ヶ月期における鉱工業の生産及び売上高は前年同期比5.91%及び6.77%増となり過去3ヵ年で最も成長した。調査対象48部門中34部門が好業績を示した。また、2月単月の生産及び売上高は前年同月比5.58%及び8.07%増となった。
(3)コーヒー
(イ)コーヒー連盟(FNC)によれば、3月の生産量は前年同月比1.8%減の88万7千袋、また、輸出は大幅に減少し同比7.4%減であった。
(ロ)CONPESはFNCが実施する「コ」コーヒー品質向上プログラムのために1,140万ドルの対外借入を承認した。右は西政府(「コ」政府補償付)によって農業基金(FINAGRO)経由でFNCに融資される。同プログラムでは、世界の需給変動の波に影響されないコーヒー豆の品質向上による競争力強化が目指されている。
(4)石油
(イ)「コ」石油公団(ECOPETROL)は、本年の生産見通しを前年比2%増の日産32万バレルとした。右は国全体の減産傾向の抑制に貢献しているが、本年の国全体の生産見通しは前年比1%減の日産52万バレルとされている。
(ロ)米国政府は、ECOPETROLによる石油製油及び輸送についての調査、及び炭化水素庁(ANH)による投資誘致戦略に対する130万ドルの支援を決定した。
(ハ)伯石油公社(PETROBRAS)は、約4ヶ月間の移行期間を経て、シェル石油が「コ」に所有するガソリンスタンド38箇所、ボゴタにおける配給施設及びサンタマルタにおける備蓄庫を買収した。また、この移行期間において同公社は潤滑油販売のために700万ドルの投資を行った。
(ニ)コロンビアOMIMEX社(米)によれば、VIDESH社(インド石油・天然ガス公社の海外子会社)と中国石油化工集団(SINOPEC)の両社が、OMIMEX社が所有する全ての油田若しくは一部を取得する可能性がある。
(5)金利
(イ)28日、中央銀行理事会は公定歩合を0.25%引き上げて6.25%に決定した。今回の引き上げの要因としては、経済の好調振り(民間投資、輸出及び内需の増加傾向等による5%以上の経済成長ペース)及び国際的な金利上昇による対外圧力が考えられている
(ロ)企業・金融機関監督庁は5月期の新規貸出金利最高限度額を先月から1.02%引き下げて24.11%とした。
(6)失業率
DANEによれば、3月期の全国平均失業率は前年同月(13.1%)から大幅に減少し11.3%となったが、全国不完全就業者率は29.5%から30%に増加した。また、同月期の主要13都市平均失業率は12.2%(前年同月15.1%)、同不完全就業者率は29.3%となった。
(7)為替
(イ)4月の対ドル為替レートは高い変動を示しつつ、先月よりもペソ安傾向で推移し、月初1ドル2,293.38ペソ、月末1ドル2,375.03ペソ、月間最安値1ドル2,375.66ペソ(27日)、月間最高値1ドル2,288.67ペソ(4日)となった。同月が全体的にペソ安傾向に振れた理由として、聖週間期における外国への旅行者のドル需要及び米国金利上昇による世界的なドル需要の高まりが挙げられる。しかしながら、今後同傾向が継続するのか、ペソ高傾向に戻るのかは不透明とされている。
(ロ)「コ」政府は、世界銀行が推奨している対外債務における為替スワップ・リスク及び金利変動リスクを回避するための政策を取り入れるために、世銀と協定を締結した。世銀加盟国中、世銀と同協定を締結したのは「コ」が初めてとなる。
(8)消費者物価上昇率
DANEによれば、4月期のインフレ率は0.45%となり昨年同期より0.01%上昇したが、最近4ヶ月では2.37%(前年同期3.09%)、過去1年間では4.12%(前年同期5.01%)となり、良好に推移している。また、4月期で上昇傾向を示したのは食料品(0.88%)であった。
(9)債務
(イ)中央銀行によれば、2006年1月末の対外債務残高は、前年同月末よりも7億1,600万ドル少ない385億8,500万ドルとなった(公的債務:241億5,600万ドル。民間債務:144億2,900万ドル)。また、同残高は対GDP比では28.5%(前年同月末32.1%)。
(ロ)TES国債残高(内国債務)は、近年、実質的に増加傾向であったが、最近3ヶ月は減少しており、本年3月7日におけ残高84.8兆ペソから4月7日では同82.8兆ペソとなった。