コロンビア経済定期報告(5月)

 

 

1.概要

(1)ウリベ大統領再選は同大統領の政策への信任として受け止められている。第2次ウリベ政権は税制及び地方交付金等の税財政改革に着手することになるが、議会においてはウリベ派が多数を占めていることにより、同改革の成立の可能性は極めて高い。また市場は更なる投資環境改善を期待している。

(2)ボテロ商工観光相はスイス及びロシアを訪問し、スイスとは二国間投資保護促進協定に署名、欧州自由貿易連合とは共同協力宣言に署名、ロシアとはWTO二国間交渉等を実施した。6月の第1週目、中米3カ国(グアテマラ、エルサルバドル及びホンジュラス)との第1回目のFTA交渉がボゴタにおいて開催さる。

(3)大蔵省は2007年の国家予算総額案を111兆ペソと公表した。

(4)マチネアCEPAL(国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会)委員長は近年の「コ」経済の成長振りを評価し、2006年は4.8%から5%の経済成長率となると予測した。

(5)BP社は国内初となる液化天然ガス事業(於:クシアナ)を公表。ECOPETROLは同事業への参画を表明した。

(6)4月の全国平均失業率は12.1%、主要13都市平均失業率は12.7%と低下傾向。5月のインフレ率は0.33%、本年5ヶ月では2.71%、最近12ヶ月では4.04%となり漸減傾向。

(7)5月の対ドル為替レートは月初1ドル2,373.03ペソ、月末1ドル2,486.07ペソ、月間最安値1ドル2,518.34ペソ(24日)、月間最高値1ドル2,329.35ペソ(10日)とペソ安傾向で推移し極めて大幅な変動性を示した。

 

2.主な動き

<対外情勢>

(1)対米FTA関連

(イ)農業分野に関するテキスト問題につき米国との交渉が難航し、「コ」農業セクターに大きな不安を引き起こしている中、ウリベ大統領は、ボゴタ商工会議所主催の会合において、米及び鶏肉については農業補償法及び長期関税保持による保護措置を確認し、他の多くの農産品は米国市場へのアクセスにより高い利益を得ることになると述べた。

(ロ)ウリベ大統領の再選が決定した後、新たな閣僚人事の憶測が飛び交う中、ボテロ商工観光相は少なくとも対米FTAに対する国会の承認が得られるまでの約1年間は大臣の任に留まると推測されている。

(ハ)エルナンド・ゴメス交渉団長は、エクアドルと米国とのFTA交渉の停止は、「コ」の交渉事項及びタイムスケジュール等に悪影響を与えることはないと明言した。

(2)ボテロ商工観光相の欧州訪問他

(イ)ボテロ商工観光相は第4EU・中南米カリブ首脳協議(511日~13日、於:ウィーン)に合わせてスイス及びロシアを訪問した。(a)スイスとは二国間投資保護促進協定に署名、(b)欧州自由貿易連合(EFTA)とは共同協力宣言に署名、(c)ロシアとはWTO二国間交渉等を実施した。また、スイスとの協定署名後、ムニョス商工観光次官は、「コ」はドイツ、オランダ、フランス、フィンランド及び英国と同様の協定の交渉の準備を進めていると公表した。

(ロ)「コ」及びEUは、ブユッセルにおいて「コ」における中小企業育成のための協力作業合同協定に署名した。右は「コ」の各地に所在するユーロセンターによって実施されていく。

(3)ベネズエラのG3脱退問題

チャベス大統領のG3脱退表明に関して、ボテロ商工観光相は、右は「コ」に悪影響を与えることはなく、「コ」と「ベ」の経済関係は5年間継続するCANの規則によって現状で推移するとした。他方で「ベ」のG3脱退により墨製自動車の「ベ」への流入が少なくなることにより、「コ」自動車セクターに利益が生じるものと考えられている。

(4)対中米FTA関連

(イ)商工観光省は、中米3カ国(グアテマラ、エルサルバドル及びホンジュラス)との第1回目のFTA交渉が65日から9日にかけてボゴタにおいて開催されると公表した。右交渉は合計で6回実施される予定で(最終の第6回は本年11月の予定)、交渉分野は6分野、即ち、市場アクセス、原産地規則・関税手続、貿易障壁、紛争解決、政府調達及びサービス・投資となっている。「コ」にとって中米への輸出拡大の可能性は、主に製造業分野にある。

(ロ)コスタリカ大統領就任式への出席のため同国を訪問したウリベ大統領は、同国が既に米国とのDR-CAFTA(ドミニカ・中米自由貿易協定)に署名していることに鑑み、二国間貿易・投資関係の更なる促進及びFTA交渉の重要性を強調した。また、同大統領は、米国議員団と会合を行い、米国議会における早急なFTA承認を求めた。

 

<国内情勢>

(1)ウリベ大統領再選に対する経済界の反応等

(イ)経済アナリストによれば、ウリベ大統領再選は同大統領の政策への明らかな信任として国内外で受け止められ、また、「コ」の更なる投資環境改善が期待され市場にとっても朗報になっている。第2次ウリベ政権は税制及び地方交付金等の税財政改革に着手することになるが、議会においてはウリベ派が多数を占めていることにより、同改革達成の可能性は極めて高い。

(ロ)上記の他に第2次ウリベ政権が推進すべき経済的な優先課題は次の通りとなる。5%台の経済成長維持、財政赤字の削減、失業率削減及び雇用の質の改善、対米FTAの発効、対中米諸国とのFTA交渉、EUとのFTA交渉開始、農業融資の強化、生物燃料の利用促進、インフラ部門への投資拡大及び石油の増産等。

(2)中央銀行の2006年経済見通し

(イ)ホセ・ダリオ・ウリベ中銀総裁は、2006年当初数ヶ月における「コ」経済は消費者及び企業家からの信用回復により予想以上に順調に展開しているとした。右要因として国際市場における「コ」の主要輸出産品の価格(原油、金属等の一次産品)の高騰、他方、主要貿易パートナーである米国及びベネズエラの経済の好調振りがあげられる。また、国内においては、昨年同時期よりも消費者の信用が益々回復しており、右により内需は拡大を続けている。

(ロ)中銀の経済成長予測は、第1四半期は5.5%、第2四半期は減速して約4%2006年全体では4.8%としている。

(3)2007年国家予算案

大蔵省は、2007年の国家予算の総額案を111兆ペソと公表した(2006105兆ペソ)。7月から始まる国会に提出されることとなる。

(4)企業・金融機関の動向

(イ)最近の「コ」に対する投資の関心の高まりを受け、外国企業は相次ぎ「コ」に支店を開設したり炭化水素や鉱物資源分野における契約に参加している。直近ではベネズエラ石油公社(PDVSA)、JPモーガン(米)、TaghmenEnergy(英)及びUAZトラック(露)が支店を開設した。また、今後、支店を設置する主な企業として、El Roble(エルサルバドルのホテル・グループ)、De Beira Goldfields(米)、GoldOil(英国)及びリアイアンス・インダストリー(印の民間大手石油企業)。De Beira社は、アンティオキア県ティティリビにおける金鉱プロジェクトの権益70%8百万ドル)の獲得を予定している。また、先月TaghmenEnergyは「コ」の石油企業Petroleos del Norte32百万ドルで買収している。

(ロ)アンドレス・フェリペ金融機関保障基金(Fogafin)総裁は、グランバンコ・バンカフェ(Granbanco Bancafe)の売却基本価格が19億ペソとなると公表した。第1フェーズ(2ヶ月間)では、現行員、元行員、組合関係者及び年金基金等が優先的に株式を購入出来る。その後、第2フェーズにおいて一般投資家が公募の対象となる。

(ハ)企業・金融機関監督庁によれば、本年第1四半期の金融機関の収益は対前年同期比35.32%増の12,700億ペソとなった。また、同期における国内資本銀行の収益が対前年同期比37.13%増であったのに対し、外国資本銀行は同比86.81%の伸びとなった。

(5)ガソリン価格及び電力消費

(イ)鉱山エネルギー省は、61日以降のガソリン価格を55.2ペソ値上げし5,781.05ペソに決定した。

(ロ)本年第1四半期の電力消費量が増加したのに対して、4月期の消費は聖週間の影響を受け減少した。他方、過去12ヶ月間の消費量は対前年同期比3.94%増となっている。

(6)その他

(イ)ガジェゴ運輸相は、「コ」において初めての陸輸コンテナ・ターミナル建設が着工したと公表した(於:フンサ。ボゴタ近郊の都市でカジェ80に繋がる)。第1フェーズの工期は1年、投資額は750億ペソとなる。

(ロ)スイスの国際経営開発研究所(IMD)の調査報告によれば、ラ米において「コ」はチリに次ぎ競争力のある国として位置付けられた。ちなみに調査対象となった世界61各国中、チリ19位、「コ」40位、ブラジル52位、メキシコ53位、アルゼンチン55位。

(ハ)トヨタ及びルノー車を組立生産するソファサ(SOFASA)社は、「コ」及びアンデス各国の自動車需要の増加に合わせ、操業を24時間体制に変更し、また、従業員も増加させた。右により日産244台が可能となる。2005年の同社の組立台数は44,735台であったが、本年は5万台を目指している。

 

3.主要経済指標

(1)経済成長率

(イ)マチネアCEPAL(国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会)委員長は、近年の「コ」経済の成長振りを評価し、2006年は4.8%から5%の経済成長率となると予測した。

(ロ)モンテネグロ国家企画庁(DNP)長官は、内需拡大、投資増加及び輸出増加により「コ」経済は好調さを持続しており、本年第1四半期の経済成長率を5.37%と予測し、中央銀行の予測とほぼ一致させている。

(2)鉱工業及び建設業

(イ)国家統計庁(DANE)によれば、本年第1四半期における鉱工業の生産は対前年同期比8.07%増となり近年で最も高い成長を記録した。また、同期における売上及び雇用は8.44%及び0.25%増となった。他方、全国工業協会(ANDI)の企業調査によれば、同期における生産及び売上は同比5.7%及び6.7%増であった。

(ロ)DANEによれば、本年第1四半期における建設着工申請は対前年同期比15.03%増の370万平方メートルとなった。この内、280万平方メートルが住宅建設に該当した。

(3)コーヒー

全国コーヒー連盟によれば、長期間続いた雨の影響を受け、4月期のコーヒー生産量は前年を大幅に下回る779千袋となった(前年同月873千袋)。また、同月の輸出量も前年比で減少を記録した。

(4)炭化水素・鉱物資源

(イ)石油公団(ECOPETROL)の報告によれば、第1四半期における公団の収入は、国際価格の高騰を反映し対前年同期比25%増の42,600億ペソ、また、同期の輸出は同比31%増となった。他方、同期におけるロイヤリティー及び石油安定化基金への支払いにより、収益は同比5%減の8,260億ペソであった。他方、同報告によれば、公団自体による直接生産は昨年及び一昨年と比べて増加して日産15万バレル、国全体の生産量も日産529千バレルとなり、昨年及び一昨年の平均生産高を超えるものとなっている。

(ロ)イサック・ジャノビッチECOPETROL総裁は、BP社が提案しているクシアナにおける液化天然ガス事業に参画を予定していると公表した。右事業の投資総額は約30億ドルと試算され、2008年の工事着工、2011年の生産開始が目指されている。

(ハ)GasNaturalComprimido社(プロミガスの系列企業)は、当国における自動車ガス・スタンド100か所設置に係る式典を行った。また、同社によれば、本年更に2,000万ドルの投資により更に40スタンドを設置する。

(ニ)22日、石炭大手ドルムンド社の労働者約3,500名は、労使交渉が合意に至らなかったためにストライキを開始した。日産7万トン(94億ペソ相当)の石炭生産が中断することになり、輸出量の低下及びロイヤリティー収益の減少等「コ」経済全体への影響が懸念される。

(ホ)MetroGold社(加)は、アンティオキア県セゴビアに位置する金鉱床ラ・エスペランサの権益を取得した。現在、地質調査が実施されているが、同社は、「コ」は南米で最も豊富な金鉱床を持つ国としてみている。

(5)金利

中央銀行理事会はインフレ率の低下傾向に鑑み公定歩合の維持を決定した(6.25%)。また、企業・金融機関監督庁は6月期の新規貸出金利最高限度額を先月から0.69%引き下げて23.42%とした。

(6)貿易

DANEによれば、本年当初2ヶ月の輸出高は前年同期比21.2%増の352,800万ドルとなった。右の内、伝統産品は24.2%増、非伝統産品は18.4%増であった。伝統産品中最も伸びた品目は石油33%増、及び石炭53.7%増。他方、同期の輸入高は前年同期比19.5%増の349,900万ドルとなった。この結果、本年当初2ヶ月の貿易収支は25,800万ドルの黒字となった。

(7)失業率

DANEによれば、4月の全国平均失業率は12.1%となり、昨年同月(12%)よりも微増となった。他方、不完全就業者率は31.9%となり昨年同月(32%)よりも僅かに改善した。また、同月の主要13都市平均失業率は昨年同月(14.5%)よりも1.8%減少し12.7%となった。

※ウリベ第1次政権期の全国失業率の推移は右の通り。2002416.1%2003年同月14.8%2004年同月14.7%及び2005年同月12.0%

(8)為替

(イ)5月の対ドル為替レートはペソ安傾向で推移しつつ極めて大幅な変動を示し、月初1ドル2,373.03ペソ、月末1ドル2,486.07ペソ、月間最安値1ドル2,518.34ペソ(24日)、月間最高値1ドル2,329.35ペソ(10日)となった。同月内での変動幅は113ペソで、また、本年初以降のペソ安率は10%となる。

(ロ)アナリストによれば、国内的には大統領選挙による国内情勢不安、及び対外的には米国金利の上昇見通しによる米国への資本流出等が、今回の大きな変動の原因となった。大統領選挙後もペソ安傾向は継続し、中央銀行は同月内に2度も市場介入(ドル売)を実施した(16日及び25日、合計18千万ドル)。対外的な要因が国内為替市場に影響を与え続けていると考えられているため、米国の経済情勢及びインフレ率と共に、今後数ヶ月内の更なる米国金利上昇の可能性が注目されている。

(9)消費者物価上昇率

DANEによれば、本年5月のインフレ率は対前年比0.33%(前年値0.41%)、及び本年5ヶ月では同期比2.71%(前年値3.51%)となった。また、最近12ヶ月では4.04%(前年値5.04%)となり、中央銀行が設定した2006年目標値(4%5%)の達成が見込まれる。

(10)債務

中央銀行によれば、本年2月末の対外債務残高は対GDP28.5%3865,300万ドルとなり昨年同期(対GDP31.4%)から減少傾向にある(公的債務2416,300万ドル、民間債務1449,000万ドル)。他方、428日時点におけるTES国債の発行残高は83.5兆ペソとなり、昨年同日よりも19%増加している。