コロンビア経済定期報告(6月分)

 

1.概要

(1)14日のウリベ大統領とブッシュ米国大統領の会談ではAPDEAの延長、二国間FTAの米国議会への早期提出、及び麻薬・テロ対策等がテーマとなった。5日〜9日、対中米3カ国との第1回目のFTA交渉がボゴタで行われた。

(2)本年第1四半期の経済成長率は前年同期比5.23%増。分野別では金融業が最も成長し13.64%、次いで運輸・倉庫・通信業9.74%、商業・レストラン・ホテル業8.43%。また生産活動分野において鉱工業は7.34%となり、過去15ヶ月間で最も高い成長であった。他方で本年残りの期間の見通しにつき金融業及び建設業の相対的な低成長、農業及び鉱業の低い伸び率等の懸念材料が指摘されている。

(3)20日、中央銀行理事会は公定歩合を6.25%から6.50%に引き上げた。右はDTF金利等に影響する一方、中期的には最近のドルに対するペソ安傾向及び雨期の影響によるインフレ上昇傾向を抑制することになる。

(4)本年5月の全国平均失業率は前年同月よりも0.7%改善し11.8%、主要13都市平均失業率では13.1%と減少傾向。本年6月のインフレ上昇率は0.30%(前年0.40%)、本年6ヶ月では3.02%(前年期3.93%)、過去12ヶ月では3.94%(前年期4.83%)。

(5)6月の対ドル為替レートは月初1ドル2,486.07ペソ、月末1ドル2,579.08ペソ、月間最高値1ドル2,443.72ペソ(5日)、月間最安値1ドル2,634.06ペソ(28日)となり、米国金利上昇見通しの影響により大きな変動を示しペソ安傾向で推移した。

 

2.主な出来事

<対外関係>

(1)「コ」・米国首脳会談

13日に開催されたCAN首脳会合の結果を受け、14日にワシントンでブッシュ米国大統領と会談を行ったウリベ大統領はブッシュ大統領に対してアンデス特恵麻薬取締協定(ATPDEA)の延長を要請した。右に関しブッシュ大統領は明確な回答を行わなかった。この他、同会談ではFTAの米国議会への早期提出、及び麻薬・テロ対策等がテーマとなった。

(2)CAN関連動向

13日、キトにおいてアンデス共同体(CAN)首脳会合が行われ、米国に対するATPDEAの延長の要請及び対EU・通商協定につき協議が為されると共に、CAN自体の共同体としての継続性が確認された。また、28日にはリマに於いてCAN通商大臣会合が開かれ、対EU通商協定の提案文書が協議された。右協定は対米FTAとは異なり、通商のみがテーマではなく、民主主義の浸透、移民、マイノリティー保護及び麻薬対策等の政治的且つ社会的なテーマが含まれている。他方、欧州委のBenita Ferrero氏は、CANの共同体としての不安定性等のためにEUCANとの交渉は容易ではないとした。

(3)第1回対中米FTA交渉

5日〜9日、ボゴタにおいて対中米3カ国(エルサルバドル、グアテマラ及びホンジュラス)との第1回目のFTA交渉が実施され、次の交渉テーブルが設置された。市場アクセス(工業製品及び農産品)、原産地規則及び関税手続、貿易障壁(動植物検疫、貿易上の技術的障害)、貿易手続及び救済手段(制度的紛争解決措置)、政府調達、サービス及び投資。

(4)その他二国間関係等

(イ)3日、ドミニカ共和国で行われた中米統合機構(SICA)に参加したウリベ大統領は、中米送電線建設事業及び中米ガス・パイプライン建設事業等を通じて、「コ」はプエブラ・パナマ計画の現在のオブザーバー資格から正加盟国を目指すと述べた。

(ロ)5日、「コ」及びグアテマラ政府は二国間投資促進保護協定に署名した。既に「コ」は同様の協定をペルーとの間で発効させており、スペイン及びスイスとは署名を了している。今後、ドイツ、フランス及び英国等との同協定の合意を目指す予定。

(ハ)15日、カラカスに於いて第2回「コ」・ベネズエラ二国間ハイレベル委員会会合(COBAN)が開催された。通商担当相会談では、二国間通商関係の高い補完性につき確認が行われ、「ベ」のCAN脱退の後の義務及び権利等を協議するためボゴタにおいて再度会合が実施されることとなった。また、二国間ガス・パイプライン建設につき、78日からの着工につき合意された。

(ニ)「コ」及びウクライナ政府は二国間通商協定に合意し、多くの「コ」製品が関税0%でウクライナ市場に輸出されることとなった。

 

<国内情勢>

(1)第1次ウリベ政権の評価及び次期政権の課題等

(イ)当地経済専門紙「ラ・レプブリカ」は、第1次ウリベ政権の経済運営につき次の通り評価している。持続的な経済成長、インフレ率の安定化、治安の改善と信用の回復による国内外からの投資の増加、失業率の著しい改善、財政赤字の削減及び税収の増加等。また、次期政権の課題として、対米FTA、対EUとの通商協定、貧困削減に繋がる社会投資の拡大、石油埋蔵量及び生産の増加、財政改革及び観光業の強化等が挙げられている。

(ロ)イネス・アグデロ大蔵次官は、全国鉱工業協会(ANDI)及び格付け機関スタンダード&プアーズ(S&P)社に答える形で、政府は、過去4年間において予算に占める年金支出の水準が削減されたことに鑑み、年金受給要件の変更のための年金改革を短期的には計画していないと述べた。他方、年金給付対象者の25%(※注:75%は過去に年金を収めていない等の理由で給付資格を有していない)しか実際に給付を受けておらず、中期的には右問題の解決が検討されるべきとした。

(ハ)S&P社の「コ」担当リチャード・フランシス氏は、「コ」が7年前に失った投資格付けを再び獲得するためには、税制及び地方交付金改革の実現、及び年金支出の削減が必要であるとした。また、同氏は未だ「コ」政府の債務水準は高いと主張している。

(ニ)会計検査院及びナショナル大学により実施された調査は、ウリベ政権4年間の経済的な成果は、一般的に評価されているほど良いものではないとしている。例えば、(a)一次産品の国際価格の高騰を適切に活かせなかった(「コ」の場合、石油、フェロニッケル、石炭及びコーヒー等)、(b)同期間における経済成長率はラ米全体の観点からは低い伸びであった、(c)一部富裕層に富が偏在する高い不平等性及び高い貧困率が継続している、(d)今後、一次産品価格の国際的な高騰が続くか否かは不明であり、また、国内石油埋蔵量が枯渇しつつある中、今後数年間、5%の経済成長リズムの維持は困難等としている。

(2)2007年財政計画等

(イ)税関国税庁(DIAN)によれば、本年5ヶ月の税収は対前年同期比18.9%増の215,565億ペソとなった。経済の好調振りを背景に目標よりも7,274億ペソの増収であった。

(ロ)国家企画庁(DNP)の報告によれば、2005年における県・市町村の財政は幾つかの指標において前年よりも改善した。また、貯蓄、税収及び投資の増加と共に支出及び債務は減少したとして、右は財政規律の改善及び地方交付金システムによる資金配分によるものとしている。

(ハ)フリオ・アンドレス・トレス大蔵省公債局長は、2007年の財政計画を公表した。2007年における債務残高は約9.5兆ペソ増加(対名目GDP7%)するが、右水準は償還期限及び契約条件等の観点から支払い可能なものであり、持続的且つマネージブルなものとされる。2007年の名目経済成長予測は7.5%とされ、債務全体は対名目GDP比で減少する。他方、政府の債務残高目標は2005年の対名目GDP34.1%から2015年には同比30%となっている。また、同計画は31兆ペソの資金調達を見込んでおり、右の内、75%TES国債による調達及び25%が対外調達(IDB及び世銀等のマルチ金融機関及び外貨建て債権)となっている。

(3)企業関連動向

(イ)大蔵省は、ガス輸送公社エコガス(ECOGAS)の民営化手続きを2007年以降まで延期すると公表した。現在、エコガスの労働者及び年金基金関係団体等が75千万ペソで全株式の購入を申し出ている。

(ロ)送電公社(ISA)は、ブラジルの送電企業Enrgia Electrica PaulistaCTEEP)社の株式50.1%53,500万ドルで取得した。ISAにとってブラジルは同系列通信企業も含めラ米で5ヶ国目の進出先となる。今回の買収により、ISA29千キロの送電線網を持つことになりラ米において主要な送電企業となる。

(ハ)当国主要飲料メーカーのポストボン(Postobon)は、同じく主要飲料メーカーであるババリア(Bavaria)系列の果実飲料メーカーProductora de Jugos S.A.5,530万ドルで買収すると公表した。同買収には2つのブランドTutti FrutiOrenseが含まれている。

(ニ)メデジン公社(EPM)理事会は、長距離電話会社Orbitel(「コ」)の株式50%取得(約8,500万ドル相当)を承認した。右によりEPMOrbitelの筆頭株主となり通信業界での地盤を強化する。

(4)金融機関関連動向

(イ)鉱工業・金融機関監督庁によれば、本年5ヶ月の金融機関の収益は前年同期比1.58%減の13,652億ペソとなった。右減収は、最近の株式・為替市場における大幅な変動がTES国債を保有する金融機関に影響を与えたことが一因となった。

(ロ)当国金融グループAvalは、本年中に2つの金融機関の買収を実現する。一つは同グループ・オクシデンテ銀行によるバンコ・ユニオンの吸収、もう一つは同グループ・ボゴタ銀行によるメガバンコの買収である。

(5)自動車販売台数等

(イ)DANEによれば、本年第1四半期における自動車販売台数は対前年同期比26.4%増の48,771台となった。右の内、輸入車が同比37.73%増の2269台であったのに対し、国内組立車は同比19.55%増の28,502台と比較的低い伸びとなった。

(ロ)鉱山エネルギー省は、71日以降の1ガロン当たりのガソリン価格を110.4ペソ値上げし5,891.51ペソに決定した。

(6)その他

(イ)DIANは、過剰に流入している中国製玩具の密輸を防止し国内製品を保護するために、玩具製品の最低価格帯制度を設定した。

(ロ)OA情報関連機器総合メーカーのリコーはボゴタに新たな事務所を開設した。

(ハ)貿易振興公社(PROEXPORT)によれば、本年4ヶ月間における「コ」への外国人訪問数は対前年同期比15%増の約317千人となった。主な来訪国は米国(22%)、次いでベネズエラ、エクアドル及びスペイン等。また、「コ」国内の主な訪問先はボゴタ(48%)、次いでカルタヘナ、カリ、メデジン及びサン・アンドレス等となっている。訪問者数増加の理由につき、プラタPROEXPORT総裁は、治安の回復、観光インフラの発展及び観光プロモーションの成果としている。

 

3.主要経済指標の動向

(1)経済成長率

(イ)国家統計庁(DANE)によれば、本年第1四半期の経済成長率は前年同期比5.23%増となり、過去6年間の同期間の成長率として最も高い数値を記録した。分野別では金融業が最も成長し13.64%、次いで運輸・倉庫・通信業9.74%、商業・レストラン・ホテル業8.43%

(ロ)本年第1四半期中、生産活動分野において鉱工業は7.34%となり、過去15ヶ月間で最も高い成長であった。同分野中、運輸製品は26.47%、砂糖製品14.09%及びガラス製品6.93%となった。この他、建設業5,74%、農業0.78%(コーヒーの不作が原因)、鉱業1.67%

(ハ)本年第1四半期は近年で最も高成長を遂げたものの、アナリストによれば、幾つかの不安要素は存在する。即ち、金融業及び建設業の相対的な低成長、また、農業及び鉱業の低い伸び率により、本年残りの期間の経済は失速する可能性があるとされ、未だ「コ」経済は持続的に成長していないというもの。アナリストの予測では本年第2四半期は約3%となっている。

(2)鉱工業及び建設業

DANEによれば、本年4ヶ月における鉱工業の生産、売上及び雇用は対前年同期比5.42%5.99%及び0.39%増となった。また、DANEによれば、本年第1四半期における建設着工申請面積は前年同期比3%増であった。

(3)コーヒー

(イ)全国コーヒー連盟(FNC)によれば、過去12ヶ月におけるコーヒー生産量は前年同期比3%減の10,156,000袋となった。他方で本年5月のみの生産量は前年同月比13.38%増となり著しく増加した。また、今年一年間の生産量につき、雨期がコーヒーの開花に悪影響を及ぼし約60万袋の減産になる可能性があるとした。

(ロ)シルバFNC総裁は、本年下半期に北京若しくは上海にFNC事務所を開設すると公表した。また、同総裁は、最近、少量ながらもブラジル及びベトナム向けにコーヒーを輸出したと公表した。

(4)石油及び石炭

(イ)米国エネルギー庁はその報告書において、OPEC非加盟国中、ラ米において今後25年間で有望な石油生産国として、ブラジル及びアルゼンチンに次ぎコロンビアを挙げている。同庁の予測によれば、2015年における「コ」の生産量は日産61万バレルまで拡大される(現在、536千バレル)。

(ロ)石油公団(Ecopetrol)の報告によれば、「コ」石油生産は回復傾向を示し、本年4月の生産量は日産536千バレルとなり、過去2年半で最も高い数値となった。他方、政府は2011年以降も石油自給を継続させるために、2010年までに埋蔵量を15億バレルにするとした。

(ハ)Gran Tierra Energy社(加)は、「コ」Argosy Energy International社(米)の株式を買収した。「コ」Argosy社は20年以上プトゥマージョ及びマグダレナ川流域で石油開発を行ってきていた。他方、BHPビリトン石油は、ボゴタに支社を開設した。

(ニ)シェブロン・テキサコ社(米)は、グアヒラ県の海上(チュチュパ)において開発を進めている3つのガス田を以て、生産量は現在の日産420百万立法メートルから同約600百万立法メートル(国全体の約35%に相当)に拡大すると公表した。また、右生産量の内約150百万立法メートルは、現在建設が進められているベネズエラとの二国間ガス・パイプラインを通じて、「ベ」に輸出される計画となっている。

(ホ)Omimmex社(米)は、本年、天然ガス探査、生物燃料生産への参入及び石油開発のために7千万ドルの投資を行うと公表した。

(ヘ)22日、石炭大手ドルムンド社の労働ストライキは、社会保障相の仲介により解決された。

(5)金利

20日、中央銀行理事会は公定歩合を6.25%から6.50%に引き上げた。カラスキージャ蔵相は本年下半期以降の経済成長リズムにマイナスの影響を及ぼすことはなく、インフレ率目標にも問題ないと確認した。他方、今回の金利上昇は、多かれ少なかれDTF金利等に影響するものと考えられているが、中期的には最近のドルに対するペソ安傾向及び雨期の影響によるインフレ上昇傾向を抑制するとされている。

(6)貿易

DANEによれば、本年第1四半期の輸出額は対前年比17.8%増の545,400万ドル(FOB)となった。右の内、伝統産品は同比16.2%増となり、主に石油及び石炭が増加、他方、コーヒー及びフェロニッケルは減少。非伝統産品は同比19.3%増であった。また、同期における輸入額は同比24%増の529,000万ドル(CIF)となった。自動車輸入の増加(47.8%)が主因。この結果、同期における貿易収支は16,300万ドル(FOB)の黒字となった。

(7)失業率

DANEによれば、本年5月の全国平均失業率は前年同月よりも0.7%改善し11.8%となった。また、主要13都市平均失業率は13.1%であった。

(8)為替関連

(イ)6月の対ドル為替レートは先月に引き続き極めて大幅な変動を示し、月初からペソ安傾向で推移したが月末には反転した(29日まで1ドル2,600ペソ台)。月初1ドル2,486.07ペソ、月末1ドル2,579.08ペソ、月間最高値1ドル2,443.72ペソ(5日)、月間最安値1ドル2,634.06ペソ(28日)、年始めからのペソ安率は14%となった。右傾向は米国金利上昇の見通しを受けた高いドル需要によるものであり、中銀による18千万ドルのドル売り介入が実施された。

(ロ)6月の証券取引においては、証券指数が月初9,045.16ポイントから月末7,332.7ポイントとなり歴史的な下げ幅を記録し、政府は一時取引制限措置を発動した。

(ハ)大蔵省によりレビューされた2006年及び2007年財政計画では、本年全体の平均為替を1ドル2,373.49ペソ、2006年経済成長率を4.8%及び2007年同率4.0%2006年の財政赤字を対GDP1.5%とした。

(ニ)最近の株式市場で起こっている大幅な変動を抑制するために、政府は2つの手段を講じた。一つは、2004年政令第4210号(2000年政令第2080号の改正)が定めていた最低1年間の有価証券投資の国内保持規制の撤廃、もう一つは、当事者間の合意に基づく期限前有価証券売買の許可。

(9)消費者物価上昇率

DANEによれば、本年6月のインフレ上昇率は0.30%(前年0.40%)、また、本年6ヶ月では3.02%(前年期3.93%)となった。また、過去12ヶ月では3.94%(前年期4.83%)であった。

(10)債務

(イ)中期財政計画によれば、本年のTES国債発行等による国内市場からの調達額は当初予測よりも1.9兆ペソ少ない23.8兆ペソになる。

(ロ)格付け会社Moody'sは、「コ」の自国通貨立て債務格付けを「Baa2」から「Baa3」に格下げした。右理由として、(a)自国通貨債権の増加に伴い外貨建て債権の格付けを自国債権の水準に一致させる、(b)外国人及び在外「コ」人による自国通貨債権の所有の増加、及び(c)金利上昇による債権の名目価値の低下が挙げられている。右に対し、「コ」政府は今回の決定を単なるMoody's社内部の基準等に因るものであり、本決定が政府の財政政策に影響を及ぼすことはないとした。他方、格付会社Fitchは、「コ」の長期外貨建ソブリン格付け見通しを「安定的」から「ポジティブ」に格上げした。