コロンビア経済定期報告(7月)
1.概要
(1)7日、コロンビア及び米国政府は、FTAテキスト中ペンディングであった農業分野の附属書について合意に至り、テキスト・レビューを終了させた。今後、米国政府が早期にその議会に対してFTA締結の意思を表明することが期待される。チリとコロンビアは、従来二国間貿易の障害となっていた砂糖の関税問題が解決されたことを受け、二国間FTA交渉を開始すると発表した。
(2)11日、ウリベ大統領は第8回トゥクストラ・サミット(於:パナマ)にゲストとして参加した。同日、PPP首脳会談が行われ、「コ」がPPPの正式メンバーとして承認された。
(3)28日、大蔵相は、総額117.6兆ペソとなる2007年国家予算案を国会に提出した(対前年比11.3%増)。また、同日、税制改革案が国会に提出され、所得税及びIVAの抜本的な改革が期待される。
(4)石油公団の株式一部売却が検討され始めた。右により同公団が資金調達、経営及び予算面での自律性を確保し、国際競争力を高めることが期待される。
(5)本年第1四半期における外国直接投資額は対前年同期比6.8%増の978百万ドルとなった。分野別では鉱業(採石及び石炭を含む)が最も多く451百万ドルであった。
(6)本年6月の全国平均失業率は10.5%(前年同月11.4%)、主要13都市平均失業率は12.5%となり(前年同月14%)低下傾向にあるものの、不完全就業者数の増加が懸念される。7月の消費者物価上昇率は0.41%(昨年同月0.05%)、本年7ヶ月では3.44%(前年同期3.98%)及び過去12ヶ月4.32%(前年同期4.91%)となり、漸次低下傾向であるが、交通及び食料品分野等において上昇傾向が見られる。
(7)7月の対ドル為替レートは月初1ドル2,579.08ペソ(月間最安値)、月末1ドル2,426.52ペソ、28日1ドル2,426.00ペソ(月間最高値)となり、ペソ高傾向で推移した。証券指数は回復を示し前月末の7,332.4から7月末には9,015.64となった。
2.主な出来事
<対外関係>
(1)対米FTA関連
(イ)7日、コロンビア及び米国政府は、FTAテキスト中ペンディングであった農業分野の附属書について合意に至った。商工観光省によれば、ペンディングであった諸事項は、昨年2月に至った両国の合意を尊重しながら解決された。米国は、鶏肉の輸出に関して、鶏肉の輸出割当には骨の有無に拘わらず、生、冷蔵、冷凍、加工及び味付けを含むことを受け入れた。また、事前に米国と合意していた砂糖の割当管理制度は選択制資格を以て実行される。
(ロ)FTA交渉のテーマ外として同時並行的に協議されてきた牛肉問題に関し、コロンビア側は、米国産生後30ヶ月以上の牛肉の輸入制限の必要性につき、技術的且つ科学的な論拠を米国に提出した。
(ハ)今後、両国交渉団は、法的整合性及び言語(英語・スペイン語)の観点からテキストを検証する。その後、テキスト全体が公表されることになる。また、米国政府が早期にその議会に対してFTA締結の意思を表明することが期待される。その後、本年10月を目途に両政府により署名が行われ、両国国会の審議に附されるとの見通しが持たれている。
(2)第2回中米3ヶ国FTA交渉(3〜7日、於:グアテマラ)
(イ)エルサルバドル、グアテマラ及びホンジュラスと2回目のFTA交渉が行われ、ムニョス商工観光省次官によれば、右の通り幾つかの交渉テーブルで重要な前進があった。(a)市場アクセス:8月4日までに完全撤廃リストを交換、(b)政府調達:中米側からテキストを提出、(c)貿易促進:ほぼ合意、また、(d)ビザ:ビジネスマンの各国間移動の自由に係る現行基準の見直しについて研究会を発足させ、次回の交渉から検討が行われる。第3回交渉は、8月14日〜18日、当国メデジンにおいて実施される。
(ロ)関係4ヶ国は既に2回の交渉を実施しているが、ペルー及びエクアドルは同交渉への参加を公表し、また、中米の数カ国は同交渉参加への関心を表明した。
(3)対チリFTA関連
リマにおける「コ」及びチリ大統領会談の後、ウリベ大統領は、8月7日に二国間FTA交渉を開始すると公表した。右公表は、従来二国間貿易の障害となっていた砂糖の関税問題が解決されたためであった。なお、既に両国間では経済補完協定が発効しており、95%の品目について関税が撤廃されているところ、投資・サービス、政府調達等の章が追加されて交渉が行われる。
(4)その他
(イ)本年以降、「コ」、エクアドル、グアテマラ及びコスタリカ産のEU向け輸出のバナナには1トン当たり176ユーロの高関税が賦課されているところ、既に当国生産者及び販売者の間では損失が生まれている。そのため、右EUの措置に対して新たにWTO仲裁裁判への申し立てが検討されている。他方、EUは仲裁裁判による争いを回避するために、上記各国に対して新たな提案を申し出ている。右内容は明らかになっていないが、段階的に20%の関税を引き下げるものとされている。
(ロ)8日、ウリベ大統領は、チャベス大統領と共にスリア(ベネズエラ)とバジェナスを繋ぐ二国間ガス・パイプライン建設計画の着工式に参加した。本パイプラインは全長220km(内89kmが「コ」領内)となり、費用総額330百万ドルの全てを「ベ」側が負担する。
(ハ)11日、ウリベ大統領は第8回トゥクストラ・サミット(於:パナマ)にゲストとして参加し、関係各国とプエブラ・パナマ計画(PPP)の強化、二国間植物検疫基準の統一、及び電力の売買等につき合意した。また、同日、PPP首脳会談が行われ、「コ」がPPPの正式メンバーとして承認された。ウリベ大統領は、電力網の統一、ガス・パイプライン建設計画及び汎アメリカ・ハイウェイ計画等地域統合に資するプロジェクトに参加していく意思を強調した。
<国内情勢>
(1)ウリベ大統領の国会所信表明演説
20日のウリベ大統領の所信表明演説において、今後4年間における経済関連の主要テーマとして右を掲げた。(イ)社会的平等及び国際投資格付け獲得等のための税制改革、(ロ)地方交付金改革、(ハ)金融機関の業務簡素化及び融資アクセスの容易化等のための金融制度改革、(ニ)対米FTA等の二国間若しくは地域経済統合政策の促進等及び農業補償法案。
(2)税制改革案
(イ)28日、カラスキージャ大蔵相は、税制改革案を国会に提出した。ウリベ大統領は、国会議員に対して本案の支持を求めると共にその目的を右の通り説明した。(a)経済成長の刺激、(b)社会目標達成への支援、(c)構造的税制度の確立、(d)国際的な投資格付けの獲得、(e)予算制度の簡素化、及び(f)経済的予見性の向上。
(ロ)政府改革案骨子は以下の通り。なお、金融取引税(1000分の4)につき、金融業界から撤廃の声が強いものの、政府は税率を維持したままでの制度継続を検討している。
(a)所得税:最低賃金7ヶ月分未満の所得者は非課税、同7ヶ月以上25ヶ月未満の税率は15%、及び同25ヶ月以上の税率は初年34%、2年目33%、3年目以降32%。また、法人及び自営業者は、月280万ペソ以上(最低賃金7ヶ月以上)の所得から課税対象となり、初年34%、2年目33%、3年目以降32%となる。
(b)IVA:現在の9税率を4つに簡素化(10%、16%、20%及び25%)すると共に、家庭内必需品目の課税対象範囲拡大、住宅費・公共サービス・新聞等に対する非課税措置の継続、500万ペソ以下の所得者若しくは低社会階層への還付制度。
(c)財産税:税制改革案を補完するものとして位置付けられており、税率0.4%で15億ペソ以上の財産所有者を対象。これにより2兆ペソ以上の徴税が期待され、主に軍隊装備の近代化に充当される。
(3)2006年国家予算案等
(イ)28日、カラスキージャ大蔵相は、2007年国家予算案を国会に提出した。右総額は、対前年比11.3%増の117.6兆ペソとなった。燃料費補助(2.9兆ペソ)及び低所得者向けIVA還付(1.2兆ペソ)の項目が今回初めて計上された。また、社会投資は、燃料費補助が加わり、更に社会援助及び農業関連への手厚い補助のため、前年比40.9%増の21兆ペソとなった。全体の内訳として、行政費57.1兆ペソ(この内地方交付金は40.3兆ペソ)、債務支払い39.5兆ペソ、及び社会投資21兆ペソとなっている。
(ロ)大蔵省によれば、本年第1四半期の財政収支は対GDP比0.5%の赤字(1.76兆ペソに相当)となった(前年同期0.5%)。他方、税関国税庁(DIAN)によれば、本年上半期の税収額は対前年同期比18.5%増の26.6兆ペソとなり、また、右税収額はDIANが目標としていた徴税額の25.7兆ペソを超えた。
(4)第1四半期の外国直接投資額
中央銀行によれば、本年第1四半期における外国直接投資額は対前年同期比6.8%増の978百万ドルとなった。分野別では鉱業(採石及び石炭を含む)が最も多く451百万ドルであった。更に右の内、炭化水素関連への投資は、前年同期比69.7%増の331百万ドルとなり、同関連に対する外国投資家の関心の高さが表れているところ、本年全体では1,500百万ドルの投資が見込まれている。鉱業に次ぐ主な投資対象分野は製造業(129百万ドル)であった。
(5)第1四半期の企業業績
金融機関・企業監督庁によるアンケート調査によれば、本年第1四半期における企業の業績(販売、輸出、生産及び収益)は、同時期の大幅な為替変動(対ドル・ペソ高傾向)にも拘わらず、前年同期に比べ大幅に成長した。調査対象中、大手41社の売上は24%増の一方、純利益は19%減となった。また、調査対象全企業(約1000社)は、ウリベ大統領の再選という好材料を受け、今年残りの時期における業績につき明るい見通しを示した。
(6)石油公団の株式一部売却
(イ)政府はコロンビア石油公団(Ecopetrol)株式20%を売却すると公表した。これにより民間資本がEcopetrolに注入され、民営化のプロセスが開始される。第1段階として、株式の一部は年金基金及び労働者福祉団体等の機関投資家に対して提供される予定。現時点では売却オペレーション及び売却価格等のメカニズムは決定されていないが、鉱山エネルギー相によれば、送電公社(ISA)の民営化と同様のプロセスで実施されることになる。
(ロ)従来、Ecopetrolは政府の予算・財政面における政策や目標等に縛られており独自の資金調達が不可能であった。今回の株式への第3者参加は、政府の財政規律等からの独立を意味し、Ecopetrolが資金調達、経営及び予算面の自律性を手に入れ、国際競争力を高めることを可能にする。
(7)自動車・二輪車販売台数等
(イ)本年6月期における自動車販売台数は対前年同期比32.07%増の15,884台となった。また、本年上半期においては対前年同期比32.11%増の87,489台となった。本年全体の見通しは17万台とされる。他方、本年5ヶ月間における自動車輸入台数は前年同期比40%増となった。右は主にメキシコからであり、現在の関税率は8%、2011年に右は撤廃される。
(ハ)2005年における二輪車販売台数は224,255台となり(2003年85,000台)、本年は30%増の30万台になる可能性がある。右急成長の理由として、ガソリン価格の高騰による自動車離れ、仕事への活用及び新車販売とされる。また、「コ」は南米においてブラジルに次ぐ同保有台数を持ち、約180万台となっている。
(8)ガソリン価格及び電力需要
鉱山エネルギー省は、8月1日以降のガソリン価格を1ガロン当り89.18ペソの値上げを承認した(1ガロン5,980.69)。また、送電公社(ISA)によれば、本年上半期における電力需要は対前年同期比3.39%増となった。
(9)その他
(イ)貿易振興公社(PROEXPORT)によれば、本年5ヶ月間において当国を訪問した外国人数は対前年同期比14.3%増の390,304人であった。右の内、観光客は同期比11.5%増の227,723人であった。また、主な訪問都市は、ボゴタが最も多く全体の49.4%となり、次いでカルタヘナ、メデジン及びカリとなった。更に、商工観光省によれば、本年第1四半期における観光分野の収入は、対前年同期比23.3%増の417百万ドルとなった。
(ロ)通信省は、短・中期的に携帯電話事業ライセンスを新たに賦与する意図はないと公表した。右決定は、既に市場に十分な企業が参入していること及び低水準の料金を受けて、当面新たな事業者が参入する可能性が低いとの同省による検討の結果であった。他方、通信省によれば、本年第2四半期における携帯電話利用者数は、前期よりも294万3,517人多い2,795万8,640人となった(前年同期比79.4%増)。
(ハ)農業省によれば、本年上半期における農業基金(FINAGRO)の農家に対する新規貸出額は対前年同期比0.7%増の9,908億ペソとなった。右の主な使途は、小規模農家支援、輸出振興及び機材購入等となっている。また、同期における農業銀行の融資額は同期比18%増の4,854億ペソとなった。
3.主要経済指標の動向
(1)経済成長率
(イ)27日に行われた中央銀行理事会は、資金調達需要の増加、内需拡大、資本財の輸入増、雇用の増加、消費者及び投資家の信用の拡大及び輸出の増加を受けて、「コ」経済は順調に推移していると評価した。他方、大蔵相は、本年全体の経済成長率は5%台になるものの、第2四半期は前期よりも低成長に止まると予測されていると述べた。また、全国金融協会(ANIF)も、第2四半期の低成長率を予測し3.5%としており、右理由として、債券及び株式市場の下落の金融機関に対する悪影響、消費者及び企業の購買能力の低下を挙げている。
(ロ)ECLACは、「コ」経済は治安対策の成果及び国内外からの信用の回復により、順調に推移しており、2006年全体で4.8%の経済成長率を予測している。しかし、右はラ米及びカリブ全体の平均成長率5%を下回っている。
(ハ)高等教育開発財団(Fedesarrollo)は、今後4年間の平均経済成長率を税制及び金融機関改革の実現、及び対米FTAの効果により5%と予測している。
(2)鉱工業
国家統計庁(DANE)によれば、本年5ヶ月間における鉱工業の生産、雇用及び販売は対前年同期比6.61%、0.59%及び11.57%増となった。
(3)コーヒー
全国コーヒー連盟(FNC)は、本年6月の生産高を前年同月比24%増の117万4千袋と公表した。他方、過去12ヶ月では前年同期比0.8%減の1,123万7千袋となった。
(4)石油
(イ)石油公団(ECOPETROL)の調査によれば、本年5月期の石油生産量は2003年8月以来最も高く日量53万8,709バレルとなった。また、本年5ヶ月間の平均生産量は日量53万2,806バレルであった。
(ロ)ECOPETROLの本年5ヶ月間の輸出額は、石油価格の高騰及び輸出量の増加により前年同期比45%増の1,360百万ドルとなった。また、同期間における輸出量は同比7.9%増の日量169,228バレルであった。更に本年1月期における原油輸出量は日量平均161,872バレルであったのに対して、同5月期には174,022バレルであった。
(ハ)サモラ炭化水素庁(ANH)長官は、最近ANHにより実施された調査により、今後の「コ」の石油自給年限が当初の2012年から延長されて2017年までになる可能性があると公表した。現在の原油埋蔵量14億3,000万バレルでは2012年までとされているが、今後5年間で投資を拡大することにより5年間延期することが可能となる。右を達成するためにANHは年間60油田の掘削及び生産のための30契約締結を目指している。
(5)金利
27日、中央銀行理事会は、安定的なインフレ、年間4〜5%の経済成長予測、国際情勢及び為替市場の動向を受けて、公定歩合の維持を決定した(6.5%)。また、金融機関・企業監督庁は、8月期の新規貸出金利最高限度率を先月よりも0.09%引き下げて22.53%とした。
(6)貿易
(イ)DANEによれば、本年4ヶ月間における輸出額(FOB)は対前年同期比15%増の7,311百万ドルとなった。右の内、伝統産品は同比16.1%増、非伝統産品は同比13.9%増となった。また、主な輸出先は米国(41.8%)、CAN(17.8%)、次いでEU(13.5%)となった。
(ロ)また、本年4ヶ月間における輸入額(CIF)は対前年同期比18.6%増の7,587百万ドルとなった。右要因として自動車の輸入増加(37.9%増)が挙げられる。主な輸入先国は、米国、メキシコ及び中国となった。これにより同期間における貿易収支(FOB)は、204百万ドルの黒字となった。
(7)雇用
DANEによれば、6月の全国平均失業率は10.5%となった(前年同月11.4%)。他方で不完全就業者率は、前年6月から本年同月にかけて31.5%から34.4%に上昇した。他方、主要13都市平均失業率は12.5%となった(前年同月14%)。都市別で最も高い失業率を示しているのは、イバゲ20.1%、次いでパスト16.6%であった(ボゴタ11.1%)。
(8)為替
7月の対ドル為替レートは、ペソ高傾向で推移し、月初1ドル2,579.08ペソ(月間最安値)、月末1ドル2,426.52ペソ、28日1ドル2,426.00ペソ(月間最高値)となった。これにより、本年7ヶ月間のペソ安率は6.2%、過去12ヶ月間のペソ安率は5%となった。7月におけるこの著しいペソ高傾向により、月末31日、中銀は180百万ドルのドル買市場介入を実施した。他方、証券市場も回復を示し、証券指数は前月末の7,332.4から7月末は9,015.64となった。
(9)消費者物価上昇率
DANEによれば、7月の消費者物価上昇率は0.41%(昨年同月0.05%)、本年7ヶ月では3.44%(前年同期3.98%)及び過去12ヶ月4.32%(前年同期4.91%)となった。また、7月において分野別では運輸・通信が最も上昇し(1.06%)、次いで食品及び医療であった。
(10)債務
(イ)中央銀行は、本年3月末時点における対外債務残高を対GDP比28.7%の376億2,400万ドルと公表した。右は前年同期の金額及びGDPと比べて著しく減少している(前年同期は対GDP比32.0%の391億1,100万ドル)。
(ロ)21日、大蔵省は、2007年財政計画への一部充当のために、10億ドルのソブリン債券(2017年1月償還、年利4.47%)を国際市場にて発行したと公表した。右発行総額に対して3倍の30億ドルのオファーがあり、好調な「コ」経済を背景に国際市場における「コ」国債の評価の高さが伺える。主な引受先は米国が全体の64%、次いでEUが32%となった。