コロンビア経済定期報告(9月分)

 

1.概要

(1)2006年第2四半期経済成長率は対前年同期比5.96%となり、同期過去10年間で最も高成長を記録した。最大の牽引産業は建設業(28.20%)であった。

(2)地方交付金改革案が国会に提出された。2007年予算案の第1回審議が終了し当初案の総額117.6兆ペソに変更はなかった。税制改革案審議において、一般税率10%の適用範囲が縮小されることになった。

(3)石油公団の一部株式売却のための法案が国会に提出された。右によりECOPETROLは外国への投資及び支店の設置等柔軟に事業に取り組むことが可能となる。他方、株式の大半を政府が所有することが条件となる。

(4)エル・ニーニョ現象が農作物の収穫に悪影響を及ぼす可能性があると指摘される一方、電力供給の面では問題は生じないとされる。貿易振興公社によれば、本年上半期における外国人来訪客数は対前年同期比12%増の477,304人となった。

(5)29日、中銀理事会は公定歩合を0.25%引き上げて7%とした。蔵相によれば、今回の措置は最近の過剰な資金流動を調整するための中銀による通常の通貨政策の一環であり、今回の金利引き上げの市中金利への影響は少ないと考えている。

(6)本年8月末の全国平均失業率は12.9%(前年同月11.3%)、主要13都市平均失業率は12.7%(前年同月13.8%%)となった。また本年9月期の消費者物価上昇率は0.29%%(昨年同月0.43%)、本年9ヶ月では4.15%、過去12ヶ月では4.58%となった。

(7)本年9月の対ドルの為替レートは月初1ドル2,398.56ペソ、月末1ドル2,394.31ペソ、最安値1ドル2,420.25ペソ(25日)、最高値1ドル2,371.18ペソ(5日)となり、緩やかなペソ高傾向で推移した。

 

2.主な出来事

<対外関係>

(1)対米FTA関連

(イ)14日、米国政府は一般特恵関税(GSP)及びアンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)等を2年間延長するための2006年貿易プログラム緊急延長法案 (ETOPEA)を提出した。

(ロ)ボテロ商工観光相は、1122日にFTAが両国政府により署名され、その後、本年末までに米国議会へ提出されるとの見通しを示した。ウリベ大統領は、全国輸出業者協会(ANALDEX)総会において、政府はATPDEAの失効及びFTAの未発効に伴う関税上の損失を、輸出入銀行(BANCOLDEX)を通じて補償すると述べた。

(2)対中米3カ国FTA交渉(エルサルバドル、ホンジュラス及びグアテマラ)

2529日、第4回交渉がホンジュラスにおいて行われ、貿易技術的障害につき交渉が終結した。また、植物検疫、原産地規則及び投資・サービス分野の交渉で大きな進捗があった。次回第5回交渉は1030日〜113日(エルサルバドル)で実施される予定であり、また、市場アクセス分野の交渉を促進させるために、11月中に個別交渉が開催される。

(3)対チリFTA交渉

21日、ウリベ大統領は、ニューヨークにおけるバチェレ・チリ大統領との会談後、1127日にはFTAを署名すると公表した。交渉スケジュールは101013日(サンチアゴ)及び1113日〜17日(コロンビア)。交渉分野は市場アクセス、原産地規則・税関手続、貿易技術的障害、セーフガード、政府調達及び投資・サービス。

(4)アンデス共同体(CAN)関連

20日、CAN外相会合において、チリのCAN準加盟が決定した。また、同会合において、メキシコの準加盟の可能性につき協議が行われ、本年11月に行われるイベロアメリカ・サミットにおいて再度本件が検討される。

 

<国内情勢>

(1)地方交付金制度改革案・税制改革案・2007年予算案の審議状況

(イ)8日、レンテリーア国家企画庁(DNP)長官は、地方への教育、医療及び上下水道普及のための補助金となっている地方交付金の制度改革案を国会に提出した。2008年末に現行制度が失効するところ、本改革案では、2008年度における交付金総額をベースに、20092010年における同額はインフレ率+3.5%2011年以降の同額はインフレ率+2%とされている。本法案が成立しない場合、2009年以降は国家財政収入に比例する仕組みに戻ることになり、交付金支出が急増し国家財政に著しい影響を及ぼすことになる。

(ロ)カラスキージャ蔵相は、現在国会審議中である税制改革案に関し、国会議員との事前合意につき右の通り説明した。()IVA10%(一般税率)の対象となる生活必需品の内、37品目を適用外とする。これによりIVA全体の課税対象率が73%から約60%に減少する。()個人所得税率に関し現行案を維持する(他方、法人税率につき合意は為されていない。)。()住宅貯蓄及び個人年金基金に対する免税措置の廃止につき同意。

(ハ)20日、上下両院合同委員会は2007年予算案の第1回目の審議を終え、当初の政府案と同じ総額の117.6兆ペソを承認した。但し、総額に修正はなかったものの、農業収入補償法案の一部(500億ペソ)が道路建設計画に移されることになった。

(2)財政及び公的機関の民営化等

(イ)税関国税庁(DIAN)は、今年8ヶ月間の税収は目標額を1.6兆ペソ上回る35.3兆ペソになったと公表した。右は経済全体の好調振りの現れとして見られ、特に生産部門の活動が活性化している。

(ロ)鉱山エネルギー相は、地方発電公社5社の民営化を推進すると公表した。右公社はボヤカ、メタ、北サンタンデール、クンディナマルカ及びサンタンデールとなる。

(ハ)カラスキージャ蔵相は、ガス輸送公社エコガス(ECOGAS)民営化手続きの第一プロセスが終了したと公表した。当初、年金・福利厚生基金等が株式売却の対象となったが、同基金等からのオファーは政府の想定額を下回るものとなり、取引は成立しなかった。第2プロセスとして、今後、国内外の投資家向けに株式が売却される予定。

(3)コロンビアのビジネス環境

世銀の調査報告によれば、ビジネス環境ランキングにおいて、世界175ヶ国中コロンビアは、高税率及び税手続の煩雑さ等の観点から前年よりも3つ順位を下げ79位となった。また、スイスで開催された世界経済フォーラムにおいて、125ヶ国を対象とした国別競争力ランキングにおいて「コ」は前年よりも7つ順位を下げて65位に位置した。ラ米について、チリ、コスタリカ、パナマ、墨及びエルサルバドルに次いで「コ」がランクされている。

(4)エル・ニーニョ現象の影響

陸水・気象・環境問題機構(IDEAM)は、本年末にかけてエル・ニーニョ現象(雨量の減少及び乾燥)が農作物等に影響を及ぼす可能性がある旨公表した。また、農業省によれば、10月以降の雨量の減少によりジャガ芋、玉蜀黍及び綿の収穫に悪影響が生じる恐れがある由。他方、鉱山エネルギー省は電力供給の面での問題は生じないと公表した。

(5)その他

(イ)メデジン市長及びボゴタ市長、メデジン公社(EPM)及びボゴタ通信公社(ETB)の幹部は、両社の通信部門の統合のメリット等を再度分析するため、海外のコンサルタントと契約すると公表した。

(ロ)高等教育開発財団(FEDESARROLLO)による消費者信用調査によれば、8月の指数は極めて高い数値を示した。右はコロンビア経済に対する消費者の高い信用の現れであり、全ての消費財の販売増加に反映されている(特に耐久消費財)。本年末に向け生産活動の活発化が期待される。

(ハ)運輸省によれば、101日以降、当国各地の港湾管理局による税関手続サービスが24時間体制で提供される。

(ニ)本年8ヶ月間の自動車販売台数は34.3%増の12385台となった。また、8月単月では前年同月比44.8%増であった。本年全体では18万台の販売が期待される。

(ホ)貿易振興公社(PROEXPORT)によれば、本年上半期における外国人来訪客数は対前年同期比12%増の477,304人となった。右の内、36%が南米からの訪問、33%が北米、17%EUとなっている。

 

3.主要経済指標の動向

(1)経済成長率

(イ)2006年第2四半期経済成長率は対前年同期比5.96%となり、同期過去10年間で最も高成長を記録した。最大の牽引産業は建設業(28.20%)であり、公共土木が33.6%及び建築が25.15%となった。また、同業に次ぎ高成長を遂げた分野は、運輸・倉庫・通信の9.95%、商業・レストラン・ホテルは8.98%、鉱工業は6.00%となった。他方、鉱業は、金属及び石炭関連の生産が大幅に減少したために▲4.43%となった。

(ロ)IMFは、2006年コロンビア経済成長予測を4.5%から4.8%に上方修正する一方、2007年を4%に下方修正した。他方、レンテリーア国家企画庁(DNP)は本年予測を5%から5.2%に上方修正し、今後数年間、6%台の経済成長リズムの維持が国家目標となるとした。

(2)鉱工業

(イ)本年7ヶ月の鉱工業生産部門における生産は対前年同期比8.32%増となった。特に非金属及び製糖業が大きく伸びた。また、同期間における販売及び雇用は9.14%及び1.44%増であった。また、7月単月では前年同月比13.61%増であった。

(ロ)全国鉱工業協会(ANDI)による企業アンケートによれば、鉱工業関連企業は本年下半期も上半期同様に好調さを維持すると予想している。本年上半期における生産及び売上は対前年比5.8%及び6.3%増であった。下半期の好調な見通しの要因として、最近数ヶ月続いているドルに対するペソ安傾向及び自動車の高い需要が挙げられる。他方、不確定要因としての米国の景気低迷及び石油価格の上昇が国内企業の競争力に影響を及ぼすとしている。

(3)建設業

本年7月期の建設着工申請面積は対前年同期比34.85%増の1366千平方bとなり過去3年間で最も高成長した(住宅向け32.64%増、それ以外42%増)。また、7ヶ月では前年同期比11.90%増であった。

(4)コーヒー

(イ)コーヒー連盟(FNC)によれば、本年8月期の輸出量は▲5%となり、また、12ヶ月では▲2%となった。他方、本年8ヶ月の生産量は9.9%増であった。シルバFNC総裁は、本年全体の生産量は前年比3%から6%増が見込まれるとした。

(ロ)コロンビア・コーヒー店「フアン・バルデス」を経営するプロカフェコルのリカルド・オブレゴン社長は、国内外での出店を拡大するために来年以降に戦略的パートナーを模索すると公表した。また、同社は2007年に中国、及び日本に複数出店する目標を掲げている。

(5)石油・石炭

(イ)12日、政府は石油公団(ECOPETROL)の法人格変更、即ち、一部株式売却のための法案を国会に提出した。右が実現することによりECOPETROLは半民半官の組織となり、外国への投資及び支店の設置等柔軟に事業に取り組むことが可能となる。他方、如何なる場合においても株式の大半は政府が所有することが確認されている。

(ロ)ECOPETROLによれば、本年6月の生産量は対前年同期比1.41%増の日産538,198バレルとなった。また、上半期における平均生産量は日産533,988バレルであった。右増産傾向は、マグダレナ川流域及び国境カタトゥンボ附近における生産回復傾向によるものとされる。

(6)金利

(イ)中央銀行は29日の理事会において公定歩合を0.25%引き上げて7%とした。大蔵相は、今回の措置は、最近の過剰な資金流動を調整するための中銀による通常の通貨政策の一環であると説明した。また、同相は、今回の金利引き上げは市中金利への影響は少ないと考えている。

(ロ)中銀は企業・金融機関監督庁に対し新規貸出金利最高限度率の適用期間を拡大するように勧告した。従来は1ヵ月毎に同金利を変更していたところ、10月より四半期毎になる。これにより10月の同金利22.61%922.58%)は本年第4四半期中適用される。

(7)貿易

国家統計庁(DANE)によれば、本年7ヵ月の輸出額(FOB)は対前年同期比15.2%増の1365,100万ドルとなった。右の内、伝統産品は16.4%増、非伝統産品は14.1%増であった。また、伝統産品中、石油及び同関連製品37%増、フェロニッケル4.6%増、他方、コーヒー▲14%、石炭▲0.1%であった。同期における貿易収支は31,190万ドルの輸出超過となった。

(8)雇用

DANEによれば、本年8月期の全国平均失業率は前年同月(11.3%)よりも悪化し12.9%となった。アナリストによれば右は農業部門における失業者の拡大が原因とされる。また、同期の主要13都市平均失業率は前年同月(13.8%)よりも改善し12.7%となった。

(9)為替

本年9年の対ドルの為替レートは、月初1ドル2,398.56ペソ、月末1ドル2,394.31ペソ、最安値1ドル2,420.25ペソ(25日)、最高値1ドル2,371.18ペソ(5日)となり、ペソ高傾向で推移した。

(10)消費者物価上昇率

DANEによれば、本年9月期におけるインフレ上昇率は前年同月よりも0.14%低い0.29%となった。また、本年当初からの累月では4.15%、過去12ヶ月では4.58%となった(いずれも1955年以来の低数値)。分野別では教育(0.60%)、運輸・通信(0.50%)及び住宅(0.35%)の3つで高い伸びを示した。他方、中銀は、本年末に向けて、燃料価格の上昇が更に公共交通機関の料金に影響し、全体のインフレ率を押し上げる可能性があると指摘した。

(11)債務

(イ)中央銀行によれば、本年6月末時点における対外債務残高は対GDP28.2%372億ドル、前年同期よりも金額にして微増となり、また、昨年末よりは減少を記録した(20056月末の同残高は対GDP30.1%370億ドル、2005年末では対GDP31.1%382億ドル)。

(ロ)大蔵省は、20日、「コ」政府は4.68億ドル相当のドル建ソブリン債の事前償還を完了したと公表した。右償還の対象は、2020年、2027年及び2033年期限ものであった。他方、「コ」政府は約10億ドル相当のグローバル国債(ドル建ペソ払)を発行した(2037918日期限)。過去3回実施した同様のオペレーションの中で今回は最も高いオファーを受け、オファーの総額は約24億ドル相当に達したところ、「コ」国債のリスク減少及び国際投資家の関心の高さが伺われる。この資金は2007年国家予算に組み込まれる。