コロンビア経済定期報告(10月分)

 

 

1.概要

(1)米国政府とのFTA署名は1122日に実現する見通しであるが、労働関連の規定でテキスト修正が行われる可能性がある。27日、チリとのFTA交渉が終了した。

(2)英国経済誌「エコノミスト」は、2007年及び2008年の経済成長を4.7%及び4.1%、また、2019年までの平均経済成長率を3.2%と予測した。他方、政府は両年の経済成長予測を5.2%及び4.8%としている。

(3)18日、2007年予算案(総額117.6兆ペソ(2006年比11.3%増))が承認された。社会投資費は、燃料費補助が加わり、また、社会援助及び農業関連への手厚い補助のため、前年比40.9%増の21兆ペソとなった。31日、IMFは、スタンド・バイ・クレジット協定に基づく最後の調査ミッションを終え、2006年のコロンビア経済は順調に成長を遂げており、中期的に公的債務を対GDP40%まで削減し、インフレ率を国際水準にまで引き下げることを目指すべきとした。

(4)本年上半期における直接外国投資額は昨年同期よりも減少し244,800万ドルになった。また、同期における海外からの送金は対前年同期比22.2%増の187,500万ドルとなり、石油輸出に次ぐ外貨取得源となった。

(5)27日、中央銀行は本年5回目となる公定歩合の引き上げ(0.25%)を実施した。本年10月期におけるインフレ率は▲0.14%(前年同月0.09%)、本年10ヵ月間では4%(前年同期4.66%)、過去12ヵ月間では4.19%(前年同期5.27%)となり低水準で推移した。本年9月期の主要13都市平均失業率は12.8%(前年同月13.5%)、全国平均失業率は12.9%(前年同月11.2%)となった。

(6)本年10月の対ドルの為替レートは、月初1ドル2,394.31ペソ、月末1ドル2,308.49ペソ(月間最高値)、月間最安値1ドル2,403.43ペソ(4日)となり、大幅なペソ高傾向で推移した。

 

2.主な出来事

<対外関係>

(1)対米FTA関連

(イ)ボテロ商工観光相は、米国政府とのFTA署名は1122日に実現する見通しであり、また、米国側において、本年12月末で失効となるアンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)の延期に対して理解が醸成されている模様と述べた。ATPDEAの失効は、「コ」各セクターに深刻な影響を及ぼすものとされる。特に繊維産業は、本年上半期の対米輸出は、インド及び中国等からの輸出製品に押され、対前年同期比▲15.1%となり、同産業にとってATPDEAの延期は極めて重要となる。

(ロ)ボテロ同相は、両国政府はFTAテキストに関し一度合意されたテキストを修正するために協議を再開する意図はないと明言した。他方、ゴメス「コ」交渉代表は、米国議会の政策変更に対しては柔軟であると述べた。右発言は、一部修正、特に環境及び労働関連のテーマで修正はあり得ると解釈されている。また、REGINA VARGO前米国交渉代表は、米国議会選挙の結果に拘わらず、FTAの議会承認を得るためには、世界労働機関(ITO)の基準に従い、労働組合に対する違法行為に関する規定を調整しなければならないとした。

(2)対中米及び対チリFTA交渉

(イ)30日から113日にかけ、エルサルバドル、ホンジュラス及びグアテマラとの第5回交渉が行われる(於:エルサルバドル)。中米3カ国は、市場アクセス交渉でにおいて「コ」に対し、農産品目の23%(主に米、菜種及び小麦粉)及び工業品目の11%(主に自動車関連、電化及び繊維製品)を交渉から排除するように要請している。

(ロ)27日、チリとのFTA交渉が終了した。2007年初頭までの両国国会承認が期待される。

(3)その他

(イ)CAN加盟諸国及びベネズエラは、セーフガード、検疫、原産地、紛争解決及び貿易技術的障害をテーマにした各国商務次官級会合を16日に開催し、今後、1178日及び16日の2回実施する。

(ロ)5日、ボゴタにおいて、「コ」及び欧州自由貿易連合(EFTA)のFTA交渉を目指した両者による第1回専門家会合が実施された。

(ハ)ボテロ商工観光相は、今後の通商交渉の見通しにつき、数ヶ月以内のキューバとの通商協定及びカナダとの交渉の可能性につき言及すると共に、太平洋岸のラ米各国の統合を目指した商務大臣級会合を提唱しているとした。

 

<国内情勢>

(1)経済見通し

(イ)レンテリーア国家企画庁(DNP)長官は、来年国会に提出される新国家開発計画において2006年から2010年までの平均経済成長率の目標を5%に設定する予定と公表した。また、高等教育開発財団は、本年及び2007年の成長率を5.6%及び5.2%、そして、続く2008年及び09年を4.8%及び4.5%とその見通しを公表した。右減速の理由として、石油の減産を挙げている。

(ロ)英国経済誌「エコノミスト」は、2019年までの平均経済成長率を3.2%と予測した。これは政府の目標の6%を大幅に下回っている。また、同誌は、2007年を4.7%及び2008年を4.1%と予測し、中期的には更に減速する見通しを持っている。更に同誌は、現在の経済成長は対外経済の恩恵に支えられており、今後もこのリズムを維持するためには医療、教育及びインフラ環境の整備、税制改革を通じた外資誘致が求められているとした。なお、インフレ率については、4%台で推移すると推測している。

(2)2007年予算成立

18日、両院国会は、2007年予算案につき総額117.6兆ペソ(2006年比11.3%増)を原案総額のままに承認した。今回、燃料費補助及び低所得者向けIVA還付の項目が初めて計上された。また、社会投資費は、燃料費補助が加わり、更に社会援助及び農業関連への手厚い補助のため、前年比40.9%増の21兆ペソとなった。他方、全体に占める債務支払(39.5兆ペソ)の割合(33.6%)の高さが批判される。また、治安対策関連予算総額は2006年比10.9%増額の11.5兆ペソとなった。

(3)地方交付金制度改革及び税制改革案

(イ)上院本会議は、30日、地方交付金制度改革を承認した。本案では、施行期日を現行よりも1年遡り200811日となる。本案は憲法改正を伴うため、今会期において下院を通過した後、次会期においても審議が行われる。

(ロ)政府は、治安対策強化、軍備の近代化に向ける資金として8.6兆ペソを徴税するために財産税を国会に提出する。当初は、税制改革案からは独立した国会提出が検討されていたが、手続きの煩雑さ及び憲法裁判所の承認の見通しに鑑み、同改革案に組み込まれた法案となる。同税案の課税対象は15億ペソ(その後30億ペソに変更)、課税率は1.2%、期間は2007年以降4カ年となっている。

(4)財政

(イ)31日、IMFは、コロンビア政府と合意したスタンド・バイ・クレジット協定(2005429日から2006112日までの18ヵ月間)に基づく最後の調査ミッションを終えた。今後、「コ」政府は同協定を更新しない。同ミッションは、2006年のコロンビア経済は順調に成長を遂げており、また、短期的には需要面の過熱が見られるものの、政府のインフレ目標は達成されるとした。また、中期的に公的債務を対GDP40%まで削減し、インフレ率を国際水準にまで引き下げることを目指すべきとした。

(ロ)税関国税庁(DIAN)によれば、本年9ヵ月の税収は対前年同期比19.8%増の40.46兆ペソとなった。また、同徴税額は目標38.3兆ペソを大幅に上回った。フランコDIAN長官は、本年全体の徴収額は50兆ペソを超えると予測している。

(5)企業動向

(イ)大手銀行DAVIVIENDAは、国営GranbancoBancafeの民営化プロセスにおいて、当初予定価格の約2倍、2.21兆ペソで買収した。カラスキージャ蔵相は、今回のオペレーションは「コ」金融機関の強化に繋がり、今後国内外の投資家にとって「コ」金融市場は魅力あるものになると満足の意を表明した。なお、DAVIVIENDAは過去2年間で、2つの金融機関(Bansuperior及びConfinanciera)を買収している。

(ロ)携帯電話会社OLAEPM及びETB共同出資)を買収したミリコム・インターナショナル・セルラー社(ルクセンブルグ)は、来年第1四半期以降にその企業名を「TIGO」に変更すると公表した。

(ハ)チリ・センコスッド(CENCOSUD)グループは、「コ」市場参入のために「コ」の大手小売業エクシト社(EXITO)の株式24.5%を買収することを決定した。これにより同社の株式63%が外国資本となる。

(6)燃料価格及び生物燃料関連

(イ)鉱山エネルギー省は、20086月以降のガソリン価格の自由化、及び同年12月以降のディーゼル燃料価格の自由化を決定した。

(ロ)同省は、111日以降のガソリン価格を1ガロン当たり36ペソの値上げを承認した。これにより1ガロン6,174.81ペソとなる。なお、同省によれば、石油の国際価格の低下、アルコール燃料の混入及び対ドル・ペソ高により今回の引き上げは低く抑えられた。

(ハ)政府はガソリンへのE10全国普及を2007年までに完了する目標を掲げていたが、少なくとも更に1年の期間が要するものとされる。現在、10のエタノール製造プラントが稼働しているものの、新規の投資不足によるプラント建設の遅延により日産80万リットルの不足が生じている。右要因として、米国政府が農産品目に替わりセルロース由来のエタノール・プラント建設に対する補助政策を打ち出したため、投資家の注目がこの政策に集まったことが挙げられる。

(ニ)パーム連盟(FEDEPALMA)によれば、2007年第1四半期、セサール県においてLas Flores社は、未だ実験段階であるが、日産5万トンの製造能力を持ったバイオ・ディーゼル製造プラントを稼働させる。その後、2008年までには6つの同様のプラントが稼働を開始する予定。これは2008年以降、ディーゼル燃料への5%のバイオ・ディーゼル混入制度が施行されることに伴う活動である。

(7)2006年上半期における直接外国投資額及び海外からの送金

(イ)中央銀行によれば、2006年上半期における直接外国投資額は昨年同期(255,100万ドル)よりも減少し244,800万ドルになった。最も多くの投資を受けたセクターは、石油、鉱物及び通信であった。他方、同期における「コ」から海外への投資は47,100万ドルとなり昨年の41,500万ドルを超えた。

(ロ)中央銀行によれば、本年上半期における海外で働く「コ」人による国内への送金総額は、対前年同期比22.2%増の187,500万ドルとなった。この額は、コーヒー輸出額の2.7倍、また、石炭輸出額の1.4倍となり、即ち、海外からの送金は石油輸出に次ぐ外貨取得源となった。

(8)エル・ニーニョ現象

マルティネス鉱山エネルギー相は、98年と同様に今回のエル・ニーニョ現象は深刻であり日照時間も非常に長いものの、昨年下半期から本年上半期における降雨により貯水池における水力発電に要する水量は十分に確保されており、電力の使用制限措置は不要であると強調した。更に同相は、火力発電を最大限稼働させるためにガス・パイプラインを調整していると述べた。他方、今回の異常気象はエネルギー取引市場における価格転嫁が予測され、来年以降の価格に影響が及ぶものと懸念されている。

(9)自動車販売台数

(イ)本年9月の販売台数は前年同月比40%増の19,855台、また、同9ヶ月では前年同期比35%増の約14万台となり、本年以降、歴史的な販売台数を記録、更新し続けている。本年全体では18万台になると期待されている。また、自動車セクターは、2007年の販売は、本年同様に好調さを維持し年全体で20万台を突破する可能性があるとした。右理由として、消費者の信用、低金利及び輸入車に有利な為替傾向が挙げている。

(ロ)当地日産販売代理店は、本年全体の販売台数見通しを対前年比38.5%増の約7,200台と公表した。

(10)その他

(イ)貿易振興公社(PROEXPORT)によれば、29日及び30日(於:カルタヘナ)に実施された米国及びカナダとの商談会(Macro Rueda)における商談金総額は約45百万ドルとなった。セクター別では、軽工業品(家具、日用雑貨及び工芸品等)の取引が全体の4割を占め、次いで農産品及び縫製品となった。

(ロ)米国Sunlandグループ社はバランキージャ港湾の浚渫工事第1フェーズを落札した。右第1フェーズの総工費は18千万ドルとされる。

(ハ)貿易振興公社によれば、本年7ヵ月間における外国人訪問数は対前年同期比12.5%増の586千人であった。

(ニ)ドール・フーズ(Dole Food)社は、ラ米における切花生産の戦略方針の転換として、「コ」における花卉生産を減産する方針を公表した。また、同社はエクアドルにおいては高価格の面から完全に生産活動を撤退する由。右は、アジア及びアフリカにおける切花生産の競争力が向上していることが理由とされる。

 

3.主要経済指標の動向

(1)鉱工業

国家統計庁(DANE)によれば、本年8月期の鉱工業部門の生産は対前年同月比12.47%増となった。調査対象48分野中41分野の生産がプラスとなり、特に非金属46%、鉄鋼34.6%及び砂糖精製41.84%であった。また、売上及び雇用は対前年同月比15.06%及び3.83%であった。更に同年8ヵ月の生産及び売上は前年同期比8.87%及び9.91%であった。

(2)コーヒー

コーヒー連盟(FNC)によれば、過去12ヵ月の輸出量は対前年同期比2%減の1,0839千袋となった。

(3)石油

(イ)石油公団(ECOPETROL)の事前統計調査によれば、8月の生産量は日産506千バレルとなり、本年以降で最低の生産高となった。また、9月の生産量は日産523千バレルであった。なお、同調査では言及されていないものの、8月の減産は、Cano Limon-Covenasのパイプラインに対するゲリラの襲撃が原因とされる。

(ロ)31日、両院合同第5委員会においてEcopetrol株式一部売却関連法案に関する最初の審議が開始された。審議に附された法案は原案に一部修正が為され、「政府は最低80%の議決権付き株式を保有する」が明示された。

(ハ)本年以降掘削調査が行われた38カ所の油田の内、20カ所は枯渇であることが判明し、8カ所のみがテスト段階にある。また、残り10カ所は調査結果の分析段階にある。これらの結果により石油自給力延長の見通しに不安が生じている。また、鉱山エネルギー省は、本年末から2007年初めにかけてカルタヘナ及びバランカベルメハ製油所に原油を供給し国内需要を賄うために当国における提携外国企業から国際価格に従い原油を購入することを決定した。他方、炭化水素庁(ANH)は、2006年及び2007年以降、地質調査のために1,500億ペソ投資すると公表した。また、ANHは、本年12月に向けて、カリブ海上において天然ガス生産の可能性のある1015ブロックを投資家に提供するとした。

(ニ)ECOPETROL及びグレンコール社は、最終的にカルタヘナ製油所拡張事業のために新会社を設立し株式の各持分を49%及び51%とすることを決定した。本事業により同製油能力は日産8万バレルから14万バレルに拡大する。

(ホ)17日、コロンビア石油公団(Ecopetrol)と伯ペトロブラス社は、生物燃料分野及び石油関連製品の流通分野において両社が協調して業務を展開していくために、2つの業務協定を締結した。生物燃料分野において、両社は、今後12ヶ月間、生産、販売、輸送、調査及び技術援助のための新たなビジネスを構築する可能性につき検討することを合意した。ペトロブラスは本年半ばの「コ」シェル石油の株式購入に伴う既存施設の買収に続き、スタンドの未配置地域への進出及び天然ガスの配給に力を入れる。

(4)金利

27日、中央銀行は公定歩合を0.25%引き上げて7.25%に設定した。右引上げは本年以降5回目となる。カラスキージャ蔵相は、今回の措置につき将来的なインフレ圧力を回避するための適切な通貨政策と説明した。経済アナリストは、一部生産分野において散見される過熱気味な活動によりインフレ圧力が高まっているとして、中銀による公定歩合引上げを本月当初より予測していた。

(5)貿易

(イ)DANEによれば、本年8ヵ月間の輸入額は対前年同期比21.9%増の1657,400万ドルとなった。最も伸びた輸入品は自動車及び同部品であり同比48%増の約18億ドルに上った。

(ロ)商工観光省によれば、本年7ヵ月、アンデス特恵関税協定(ATPDEA)による対米輸出の総額は前年同期比33.5%増の344,300万ドルとなった。右は同期の対米輸出全体(573,800万ドル)の半分以上を占めており、FTA未発効期間中のATPDEA延長の重要性が明らかに現れている。

(6)雇用

DANEによれば、本年9月期の主要13都市平均失業率は12.8%となり前年同月(13.5%)よりも低下した。他方、同月期の全国平均失業率は12.9%となり前年同月(11.2%)よりも悪化した。約6%近い経済成長のリズムに雇用改善が伴わない現状につき、政府側は明らかな説明を行っていないが、フェリペ農業相は、この原因の一つとして、農作物の収穫サイクルから生じる農業分野における一時的な失業の悪化を挙げている。

(7)為替

本年10月の対ドルの為替レートは、月初1ドル2,394.31ペソ、月末1ドル2,308.49ペソ(月間最高値)、月間最安値1ドル2,403.43ペソ(4日)となり、29日の中央銀行による18,000万ドルのドル買市場介入が実施されたにも拘わらず、大幅なペソ高傾向で推移した。一部アナリストは、このペソ高傾向は、大規模インフラ事業(カルタヘナ精油所拡張事業及びエルドラド空港コンセッション事業)、BANCAFE売却及び海外からの送金による国内への大きなドル流入の見通しに因るものとしている。

(8)消費者物価上昇率

DANEによれば、本年10月期におけるインフレ率は前年同月期よりも0.23%低い▲0.14%となった。また、本年10ヵ月間では4%(前年同期4.66%)、過去12ヵ月間では4.19%(前年同期5.27%)であった。

(9)債務

(イ)中央銀行によれば、本年7月末における対外債務残高は前年同期によりも72,300万ドル増加し3851,400万ドルとなった。他方、対GDP比においては前年よりも減少しており、前年30.8%から29.2%となった。

(ロ)トレス大蔵省公債局長は、本年9月末の公的債務残高は前年同月よりも0.2%減少し145.07兆ペソと公表した(対外債務52.47兆ペソ、内国債務92.6兆ペソ)。また、同局長によれば、本年末における同残高は約147兆ペソになる。