コロンビア経済定期報告(11月分)

 

 

1.概要

(1)22日、米国政府及び「コ」政府は貿易促進協定(CTPA)に署名した。30日、「コ」商工観光省は米国との貿易促進協定を国会に提出した。他方、本年1231日に失効するアンデス特恵関税協定(ATPDEA)の延長承認に関する米国議会の動向が注目される。

(2)27日、ウリベ大統領及びバチェレ・チリ大統領はFTAに署名した。

(3)16日、ウリベ大統領及びレンテリーアDNP長官は、新たな国家開発計画(2006-10)「共同体国家−全国民のための発展」の基本案を国家計画会議に提出した。本計画における総投資額は現計画の2倍の約222.2兆ペソ。

(4)21日、両院合同委員会はコロンビア石油公団の法人格変更のための法案を承認した。国民による株式取得の参加を図るために、株式取得に対し幾つかの制限条項が設けられた。次期ECOPETROL総裁としてハビエル・グティエレス氏(現ISA総裁)が任命された。

(5)本年10月期の全国平均失業率は11.4%、主要13都市平均失業率は12.7%となりそれぞれ前年よりも悪化している。本年11月期のインフレ上昇率は対前年同月比0.24%、過去12ヵ月では4.31%となり、低下傾向を継続し本年全体の政府目標値4.5%が達成される見通し。

(6)本年11月のペソ・対ドル為替レートは、月初1ドル2,308.49ペソ、月末1ドル2,295.99、最安値1ドル2,320.6527日)、最高値1ドル2,268.47ペソ(9日)となり比較的ペソ高傾向で推移した。

 

2.主な出来事

<対外関係>

(1)対米FTA関連

(イ)22日(於:ワシントン、IDB本部)、米国政府(ベロノーUSTR次席代表)及び「コ」政府(ボテロ商工観光相)は貿易促進協定(CTPAthe United State-Colombia Trade Promotion Agreement)に署名した。今後、両国は各国会手続きに入り、その承認を得ることとなる。在「コ」米国大使館商務参事官は、「まずコロンビアにおける国会承認が重要となり、それが米国の新議会へのメッセージとなるであろう。」と述べた。他方、米国においては、民主党議員より、ペルーとのFTAも含め労働関連規定をゼロから交渉すべきとの要求が出ている。

(ロ)30日、「コ」商工観光省は米国との貿易促進協定を国会に提出した。他方、本年1231日に失効するアンデス特恵関税協定(ATPDEA)の延長に対する米国議会の承認が当座の課題となり、「コ」政府関係者は米国の両党国会議員へのロビー活動を積極的に実施している。

(2)対チリ及び中米3カ国FTA交渉関連

(イ)27日、ウリベ大統領及びバチェレ・チリ大統領はFTAに署名した(於:サンティアゴ)。ウリベ大統領は、本協定交渉が僅か二ヶ月間で終結したことを賞賛し、本協定がチリのCANへの参入等地域統合促進のために重要と強調した。また、同大統領は、チリ企業関係者との会合において、「コ」生物燃料分野に対する投資及び電力網の統合を提案した。

(ロ)3日、中米3カ国との第5FTA交渉(於:エルサルバドル)が終了した。次回交渉(124日〜8日、於:グアテマラ)において、市場アクセス分野の協議進展が期待される。

(3)対EU関連

Benita FerreroEU通商代表は、2007年初頭よりCAN及び中米と通商協定交渉の開始、また、メルコスールとの交渉再開が期待されると公表した。他方、EUとの交渉前に、EUによるラ米産バナナの関税引き上げ問題が同交渉開始の障害となっている。

(4)サントス副大統領の中国訪問

19日〜26日、中国を公式訪問したサントス副大統領は、曾慶紅国家副主席等と会談を行い、観光地としての「コ」をピーアール、中国からの投資を要請すると共に、資金洗浄対策に関する情報交換の場を設けることで一致した。

 

<国内情勢>

(1)2006年及び2007年経済見通し

(イ)当地「EL TIEMPO」及び「PORTAFOLIO」紙主催の経済セミナーにおいて、「コ」経済は順調に推移しているものの、いくつかの危険性があると指摘された。まず第一に、世界経済情勢、特に米国経済の減速及び外貨流出の可能性が挙げられ、右が金利及び為替に与える影響が懸念される。他のリスクとして、GDPに占める公的債務比率の高さ、パラミリタリーと国会議員との繋がり疑惑による政治危機と政権イメージの悪化等が挙げられた。

(ロ)中央銀行は、2006年の経済成長率は約6%との予測を公表した。右要因として、内需の実質的な拡大、投資の増加及び貿易パートナー諸国の好景気による輸出の拡大を挙げた。また、2007年については4.3%5.7%として、10年前の金融危機は既に脱しているとしつつも、米国経済の減速及び石油等主要輸出品目の国際価格の低下により、本年より減退すると説明している。

(2)国家開発計画(20062010)原案の公表

16日、ウリベ大統領及びレンテリーア国家企画庁(DNP)長官は、新たな国家開発計画(2006-2010)「共同体国家−全国民のための発展」の基本案を国家計画会議に提出した。本計画における総投資額として約222.2兆ペソが計上され、現計画(投資額約112兆ペソ)の約2倍となっている。本計画案はコロンビア全国民のための発展及び平等の達成、主に貧困削減、持続的な経済発展及び治安対策の強化等を目指している。また、本計画案における4年間の経済成長率目標は、20075%20085.2%20095.2%、及び20105.3%とされる。

(3)税制改革法案及び地方交付金改革法案等

21日、両院合同委員会は税制改革法案を承認した。残る国会手続きは両院の本会議採決となる。また、22日、下院第1委員会は地方交付金改革法案を承認した。残る手続きは下院本会議の承認となる。なお同法案は憲法改正を伴うため、次期国会でも審議に附される。

(4)2007年法定最低賃金交渉の開始

社会保障省によれば、23日、政府及び労使間による2007年の法定最低賃金に関する協議が始まった。中央銀行は2007年のインフレ予測4%に生産性向上率を加算した調整上昇率を勧告した。他方、労働者代表は、調整上昇率10%を要請し、また、ガソリン及び生活必需品価格の凍結を要求している。

(5)石油公団の株式一部売却関連法案

(イ)21日、両院合同第5委員会はコロンビア石油公団(Ecopetrol)の法人格変更のための法案を承認した。残る国会手続きは、両院本会議による審議及び承認となる。本案において、ダミー会社による株式所有を防ぎ、また、多くのコロンビア人による株式取得の参加を図るために、株式取得に対し幾つかの制限条項が設けられた。(a)個人の上限は、法定月間最低賃金の5千ヵ月分(約20億ペソ相当)までの株式取得。(b)法人による株式取得最高限度は3%(c) Ecopetrolの元労働者による年金ファンド等は特別に全体の15%の取得が可能。(d)全ての株式取得者は、取得後2年間、株式の再売買が禁止。

(ロ)また、今回修正された部分において特筆すべき事項として、2007年のEcopetrolの投資額は、2006年の額を下回らない、若しくはインフレ上昇率を上回る増額との規定がある。これに基づけば、2007年の投資予算額は152,200万ドル以上になるとされる。

(6)自動車販売台数他

(イ)本年10月期の自動車販売台数は21,407台、同10ヶ月間では161,667台となり(右の内輸入車は87,585)、歴史的な販売台数を記録。本年全体で19万台超と期待される。

(ロ)鉱山エネルギー省は、121日以降のガソリン価格を1ガロン当たり13.7ペソの値上げを決定した。これにより1ガロン6,188.52ペソとなる。

(7)パナマ及び中国製繊維品等への輸入規制解除

「コ」、パナマ及び中国の税関当局は、従来より全国の空港及び港湾で実施してきたパナマ及び中国製の繊維、縫製及び履物等に対する輸入規制を解除することで合意した。

(8)その他

(イ)税関国税庁(DIAN)によれば、本年10ヵ月の税収は前年同期比20%増の44.2兆ペソとなり、目標の41.6兆ペソを大幅に超えた。

(ロ)ガス輸送公社エコガス(ECOGAS)の民営化に伴う株式売却に関し、国内外の企業7社が関心を示していたが、ボゴタ電力公社(EEB)、及びプリズマ・エナジー社(米国)とプロミガスの2社に絞られた。

(ハ)マウリシオ・ラミレス道路公社(INVIAS)総裁に関する道路工事計画を巡る不正疑惑報道により、同総裁は辞任を表明し、右を政府は受け入れた。ガジェゴ運輸相は、全ての関連契約に対する徹底的な調査を命じた。

(ニ)貿易振興公社(PROEXPORT)によれば、本年9ヶ月間の当国への外国人訪来者数は、対前年同期比12%増の約768千人であった。南米からの訪問者が全体の37.5%であり、次いで北米の32.1%及びEU17.3%であった。最も訪問者が多かった都市はボゴタであり、次いでカルタヘナ及びメデジンとなった。

(ホ)当国の競争力強化の観点から求められるインフラ整備事業のための資金不足に鑑み、DNP及び民間年金基金団体は、同基金の資金を利用したインフラ整備を促進する可能性を模索しはじめた。

 

3.主要経済指標の動向

(1)鉱工業及び建設業

(イ)国家統計庁(DANE)によれば、本年9月期の鉱工業生産は対前年同月比14.91%増となり、前年同月(4.79%)よりも大き伸びた。調査対象48分野中41分野がプラス成長となり、特に非金属、自動車及び機械が大幅に成長した。同月期の雇用及び売上は4.63%及び14.35%であった。また、同年9ヶ月間の生産、雇用及び販売は9.53%2.07%及び10.53%であった。

(ロ)本年9月期の建設着工申請面積数は対前年同月比28.08%増となり、右の内、84%が住宅向け申請であった。また、同年9ヶ月間では同期比17.94%となった。

(2)コーヒー

コーヒー連盟(FNC)によれば、本年10ヶ月間の生産高は前年同期比8.2%増の881万袋となった。29日、全国コーヒー協議会において、シルバFNC総裁は、国際市場における地位を確保するために、今後10年間で年間生産高を1,700万袋としなければならないとした。右は本年比で約41.6%増となり5百万袋の増産を意味する。

(3)石油・石炭等

(イ)石油公団(ECOPETROL)によれば、本年10ヵ月間の全国の平均日産生産量は53万バレルとなり、昨年同期間の528千バレルを上回った。

(ロ)ECOPETROL理事会は、新たな総裁としてハビエル・グティエレス氏を正式に任命した。同氏は、現在、発電公社(ISA)の総裁を務めており、来年118日よりECOPETROL総裁の職に就く。

(ハ)ECOPETROLは、伯北部BahiaTucano地区における探査権の30%を取得した(残りの70%は伯石油公社が所有)。

(ニ)パーム協会によれば、2008年初頭からのバイオ・ディーゼル使用開始に向け、当国大西洋沿岸及びジャノ地域において同プラント建設が開始されており、また、中心部においても建設計画が進んでいる。また、ECOPETROLは、バランカベルメハ精油所敷地内において、同プラントを建設すると公表した。右計画には23百万ドルの投資を要し、アフリカ椰子を原料にして年間10万トンのバイオ・ディーゼル生産が可能となる。また、カルタヘナ精油所においても同様の計画を検討している由。

(ホ)当国石炭大手ドルムンド社は、今後数年間の投資計画を公表した。右によれば約15億ドルの投資により、年間生産量を2倍(現在の22百万トンから50百万トン)に拡大し、また、ロマ炭田及びサンタマルタ港湾間での鉄道輸送網及び同港湾を整備する。

(へ)鉱山エネルギー省によれば、エルニーニョ現象に因る水不足で起こった水力発電所からの電力供給不足を補うために、政府は火力発電所へのガス供給によって電力供給を確保する。そのためのパイプライン建設が既に2区間で着工しており(バジェナ/バランカベルメハ間及びクシアナ/エル・ポルヴェニール間)、来年2月には完工し操業を開始する予定。

(4)貿易

DANEによれば、本年8ヶ月間の輸出額(FOB)は対前年同期比15%増の15789百万ドルとなった。右の内、伝統産品は15.6%増、非伝統産品は14.4%増であった。主な輸出国先として、米国が全体の41.9%を占め、次いでCANが同17.8%及びEUが同13.2%となった。同期の収支は23,630万ドルの黒字となった。他方、本年8月単月の輸出額は前年同月比12.8%増の2122百万ドルであったが、同月収支は9,100万ドルの赤字であった。

(5)雇用

DANEによれば、本年10月期の全国平均失業率は11.4%と前年同月より1.4%悪化した。また、主要13都市平均失業率は12.7%となり、これも前年同月(12.2%)と比べて悪化した。

(6)為替・株価

(イ)本年11月のペソ・対ドル為替レートは、比較的ペソ高傾向で推移し、月初1ドル2,308.49ペソ、月末1ドル2,295.99、最安値1ドル2,320.6527日)となった。また、9日、最高値1ドル2,268.47ペソを記録したが、これは2001年並のペソ高水準であった。ペソ高を引き起こす国内へのドル流入の要因として、内国金利の上昇及び米国金利の低下の見通し、送金の増加、及び外国人投資家からの信用の高まり等が挙げられている。

(ロ)2007年の為替見通しにつき、一部アナリストは、本年に引き続き石油・石炭の輸出増加及び公的機関の民営化等によりドルの大きな流入は止まらず、ペソ高傾向が続くものとした。また、同年の株価見通しについては、最近、国会議員のパラミリタリーとの関係疑惑により一時下がったものの、過剰な資金流入及び外国人投資家の高い関心は相変わらずであり、バブルに近い雰囲気が醸成され引き続き高値で推移するとした。

(7)消費者物価上昇率

(イ)DANEによれば、本年11月期のインフレ上昇率は対前年同月比0.24%となった(前年同月0.11%)。また、同11ヵ月間では4.24%(前年同期4.78%)、過去12ヵ月では4.31%となり、本年全体の中央銀行の目標値4.5%が達成される見通しとなった。

(ロ)17日、中銀理事会は2007年インフレ率範囲目標を3.5%4.5%と決定した。右数値は2007年の法定最低賃金交渉の基準となり、また、主要消費物価の指標となる。また、ウリベ中銀総裁は、長期的にもインフレ率の低下傾向が予測されるとしつつ、2008年については3%4%となるであろうと述べた。

(8)対外債務

大蔵省公債局によれば、国家社会経済政策審議会(CONPES)は2007年及び2008年の予算の一部となる35億ドル相当の対外債権発行を許可した。また、国債発行に関する国会両院委員会は、右35億ドルの内、12.5億ドルのグローバル債(ドル建てペソ払い)の発行を承認した。