コロンビア経済定期報告(06年12月分)

 

 

1.概要

(1)06年第3四半期の経済成長率は前年同期比7.68%増となった(06年第1四半期5.49%及び第2四半期6.06%)。主な牽引分野は建設業(18.96%)、鉱工業(13.30%)及び商業(11.53%)であった。

(2)米国議会は、アンデス特恵麻薬取締協定(ATPDEA)に対する6ヶ月間の延期を承認した(07630日まで有効)。今後、両国政府によるFTA国会承認及び発効が目指される。

(3)経済の競争力強化、対内投資誘致及び税収確保を目指した税制改革法が成立した。法人税減税、軍隊装備の近代化及び増強のための資金となる財産税の創設、及び送金税の廃止等を内容とする。

(4)2007年の法定最低賃金は前年比6.3%増の433,700ペソとなった。

(5)ガス輸送公社(ECOGAS)の売却先はボゴタ・エネルギー公社(EEB)となった。石油公団(ECOPETROL)の法人格変更に関する法案が成立した。2007年第3四半期を目処に、最初の株式公開が実施される見通し。

(6)中銀理事会は、本年6回目となる公定歩合を引上げ(0.25%7.50%とした(15日)。12月の対ドル・ペソ為替市場は、28日、前年同期より2%のペソ高の1ドル2,238.9ペソで取引きを終えた。

(7)11月末の主要13都市平均失業率は11.3%、全国平均は11.0%となった。06年全体のインフレ上昇率は4.48%となり目標(4.5%)が達成された(054.85%)。

 

2.主な出来事

<対外関係>

(1)FTA関連

(イ)8日、米国議会は、31日が失効期限であったアンデス特恵麻薬取締協定(ATPDEA)に対する6ヶ月間の延期を承認し、また、20日、ブッシュ大統領はこれに署名した。今後、ATPDEA2007630日まで有効となるところ、右期限までに両国政府はFTAの国会承認及び発効を目指すことになる。他方、ATPDEAが更に半年間、つまり2007年一杯まで延期される可能性も出てきた。

(ロ)14日及び15日、カナダ及びコロンビア他CAN3カ国は、FTA交渉開始を検討するための実務会合を開催した。商工観光省によれば、様々なテーマが分析され非常にポジティブな会合となり、07年以降、交渉開始時期を決める会議が開催されることとなった。他方、交渉形態、即ち、CANレベル、バイ若しくは米国とFTA交渉を終えた「コ」及びペルーの二国間になるかは明らかにされなかった。

(ハ)14日、ボテロ商工観光相は、先月27日に交渉を終えたチリとのFTA協定を国会に提出した。

(ニ)10日に終了した中米3カ国との第6FTA交渉につき、ムニョス商工観光次官は、交渉終了が期待されていた鉱工業製品及び農産品の市場アクセスは前進したものの終結にまでは到らなかった、と述べた。次回協議は、20072月に当国メデジンで開催予定。

(2)対EU包括的経済協定交渉

Adrianus Koetseruijte 在コロンビアEU大使は、EUは来年2月からCANと包括的な経済協定交渉を開始する可能性があると公表した。また、右交渉は20085月にリマ開催予定のEU・ラ米・カリブ首脳会合までの終了を目的している由。

(3)その他

(イ)14日、第3CAN及びベネズエラ・ワーキング会合が開催され、「ベ」のCAN脱退後の両者間の貿易の技術的規則が協議された。本会合により協議終了が期待されていたが、「べ」側からの自由貿易期間の5年から2年への短縮提案は、合意には到らなかった。

(ロ)鉱山エネルギー省によれば、20077月から8月までに、パナマとの電力網統合事業に関する技術、エンジニアリング及び環境上の調査が終了する。本事業の送電線距離は613kmとなり、その内、340kmが「コ」側となる。

 

<国内情勢>

(1)2006年経済評価及び2007年経済見通し

(イ)カラスキージャ蔵相は、06年経済は成長率6%以上、外国からの対内投資約25%増、内需約6.5%増で終えるとして、同年経済を高く評価、これらは主に国の信用回復及び税収の増加に因るものと述べた。税収は当初目標(48.7兆ペソ)より大幅に増加し51.7兆ペソになる見通し。また、同年の財政赤字GDP比も当初予測より1.1%改善し0.4%になる見通し。また、06年の対外資金調達の総額は243,600万ドルとなり、その内、37,800万ドルが債権発行によるもの、残りがマルチ金融機関からの借入であった。更に07年経済の全体を明るく見通しており、財政赤字1.3%及び税収57.5兆ペソを予測している。

(ロ)銀行協会は、07年経済を楽観的に予測しており、経済成長率を5.5%、インフレ上昇率を4.3%とし、また、対ドル為替につきペソ高率4.2%、年間平均1ドル2,403ペソと予測している。産業別では本年に続き建設業及び鉱工業が牽引分野となり、各成長率を9%及び6%と予測している。

(2)2007年法定最低賃金

政府は、政令第4580号(061227日)を以て、0711日以降の法定最低賃金を前年比6.3%増(25,700ペソ)の433,700ペソと定めた。また、同賃金2ヶ月以下の所得者に対する交通費手当ては、同比6.5%増の47,700ペソとなった。政府は、同賃金が過去4年間続けてインフレ上昇率を超える上昇率、即ち、実質的に賃金が上昇傾向にあることを強調した。

(3)税制改革法の成立(詳細は客年往電第1420号参照。)

経済の競争力強化、対内投資誘致及び対GDP16%の税収確保を目指した税制改革法は、12日の上院の承認により成立、また、27日、ウリベ大統領による署名が行われた。主な改正概要は右の通り。(a)法人税:200734%及び2008年以降33%(b)財産税:期間は2007年〜2010年、対象者は30億ペソ以上の財産所有者、税率は1.2%、その使途は軍隊装備の近代化及び増強に限定。(c)付加価値税(IVA):生活必需品目の多くは非課税のままとなり、課税対象の拡大は実現されず。(d)金融取引税は継続、送金税は廃止。

(4)地方交付金制度改革、農業保障プログラム及び観光法の成立

(イ)7日、下院本会議は地方交付金制度改革を承認した。これを以て同案の一回目の審議が終了し、次期国会において再度審議に図られ成立の運びとなる(※同案は憲法改正を伴うために2回の国会審議を要する。)。

(ロ)ウリベ大統領は、本国会で成立した農業保障法に基づくプログラムを公表した。同プログラムは、市場開放、特に対米国FTA発効の「コ」農産品に対するネガティブな影響を補償するものであり、2007年は4,000億ペソの予算が確保され、また、FTAが発効する2008年以降は5,000億ペソとなる。右予算の大半は、センシブルな農産品(米、玉蜀黍、モロコシ、大豆、小麦及び玉葱等)への補助金支給に充てられる。

(ハ)4日、観光業の法的枠組みを定め、同業の競争力促進を図ることを目的とした新しい法律、観光法にウリベ大統領は署名した。同法に基づき、この目的を達成するために外国人旅行客に対する課税制度が設けられ、また、観光促進基金(FPT)が設置される。

(5)財政

(イ)財政審議会(CONFIS)によれば、本年第3四半期までの中央政府財政収支は対GDP2.2%の赤字となった。他方、中央銀行によれば、同期までの国家財政収支は同比0.9%の黒字であった。

(ロ)税関国税庁(DIAN)によれば、本年11ヶ月間の税収は前年同期間比20.8%増の491,385億ペソとなった。右徴税額は本年全体目標値を既に4億ペソ超えた。また、大蔵省によれば、今回成立した税制改革法の影響による来年以降の税収減少は生じず、2007年の税収額目標は57.5兆ペソ、2008年は60.4兆ペソとなる。

(6)企業動向

(イ)ガス輸送公社(ECOGAS)の売却先は、プリズマ・エナジー及びプロミガス連合に競り勝ったボゴタ・エネルギー公社(EEB)となった。EEBによる落札価格は、政府による基本価格(22千億ペソ)を大幅に上回る32,500億ペソであった。ECOGASは、ジャノ平原及びカリブ沿岸から産出される天然ガスを国の中央部へ運ぶ輸送公社であり、同社が所有するガス・パイプラインの総距離は3,662kmとなる。EEBの主要株主構成は、81%がボゴタ市となっており、その他石油公団7%及びEndesa11%等となっている。

(ロ)政府は、2007年第1四半期に発電公社(ISAGEN)の株式19.22%を売却すると公表した。右売却金額は約5,920億ペソとされる。

(ハ)TELMEX社(墨)は、「コ」の放送業界への参入を表明し、今後、少なくとも4企業(TV Cable及びSuperview等)を買収すると公表した

(ニ)送電公社(ISA)理事会は、新たな総裁にルイス・フェルナンド・アラルコンを任命した。同氏は、大蔵相を経験し、現在、年金基金協会(ASOFONDS)総裁及びISA理事長を務めている。また、現在のISA総裁ハビエル・グティエレス氏は、石油公団総裁に就任する予定。両者は071月の就任予定。

(ホ)国家TV委員会(CNTV)は、当国におけるデジタルTV方式導入に関し、同方式を決定するための諮問委員会設置を決定した。

(7)20069ヶ月間の対内直接投資額

中央銀行によれば、20069月までの「コ」に対する外国からの直接投資額は、前年同期比24.8%増(86,600万ドル)の434,900万ドルとなった。最も多く投資を受けた産業は、石炭(約139千万ドル)及び石油(129千万ドル)であった。同年全体では60億ドルに達するものと期待される。

(8)自動車販売台数等

(イ)本年11ヶ月間の自動車販売台数は、輸入車販売の好調振りを背景に、182,336台となり、既に昨年全体の販売台数を18千台上回る結果となった。

(ロ)鉱山エネルギー省は、200711日以降のガソリン価格の1バレル当たり11ペソ値上げを決定した。これにより1バレル6,199.32ペソとなる。

 

3.主要経済指標の動向

(1)経済成長率

国家統計庁(DANE)によれば、2006年第3四半期の経済成長率は前年同期比7.68%増となり、四半期毎の統計で史上最も高い成長となった(06年第1四半期5.49%及び第2四半期6.06%)。同期における牽引分野は建設業であり18.96%(建築22.62%及び公共土木13.61%)、次いで鉱工業(13.30%)及び商業(11.53%)であった。農業、鉱業及び金融業はそれぞれ5.93%3.28%及び2.40%となった。また、需要面において、国内消費は5.28%、設備機器投資は24.9%、輸出は10.51%となった。

(2)鉱工業

(イ)06年第3四半期における同業の成長率は13.3%増と高成長を記録したが、生産品別では、ガラス(40.59%)、化学製品(15.47%)、食料(7.96%)、金属(23.47%)及び砂糖(26.62%)が大きく伸びた。

(ロ)同年10月における同業の生産、販売及び雇用は、17.35%17.14%及び4.38%となった。また、調査対象48分野中41分野が生産を増加させ、特に自動車、非金属、化学製品が大きく伸びた。

(3)コーヒー

全国コーヒー連盟(FNC)によれば、0611月の輸出高は前年同月から著しく減少し(▲17%82万袋となり、他方、過去12ヶ月間の生産高は同期比4%増の1,185万袋となった。また、FNC06年全体を好調な年であったと評価し、その主な要因として、国際価格が年間を通じ1ポンド1ドルで維持されたことを挙げた。更に06年全体の輸出額を過去8年間で最も高い約17億ドルと予測している。

(4)石油・石炭等

(イ)12日、国会両院本会議は、石油公団(ECOPETROL)の法人格変更に関する法案を承認した。今後、同公団の株式20%売却のプロセスが開始されるが、政府が80%以上の株式を保有することにより、政府は同公団をコントロールし続ける。また、株式取得に対する各種要件により寡占取得が回避され、コロンビア国民の資本参加が促される。本プロセスの最初の手続きとして、同公団の資産評価及び株式売却手続きを担う金融機関の選定及び契約がある。その後、2007年第3四半期を目処に、最初の株式公開が実行される見通し。(詳細は客年往電第1314号及び第1400号参照)。

(ロ)ECOPETROLは、2007年の投資額を03年比で4倍の20億ドルとする。これは、同年において生産量を日産52万バレルに維持し、埋蔵量を増加させるために新たな開発、新規油田探索に向けられる。

(ハ)グレンコール社(瑞)が公表した2007年の「コ」における事業計画によれば、ラ・ロマ炭田の鉄道輸送の第2路線建設、ハグア炭田及びセレホン社への石炭増産のための投資が実施される。

(5)金利

(イ)15日、中銀理事会は、本年6回目となる公定歩合の0.25%引上げを決定し、これを7.50%とした。また、同理事会は、インフレ率目標の達成に支障の無い範囲で為替市場への介入を継続すると表明した。

(ロ)金融監督庁は、新規貸出金利最高限度制度のモダリティーを2タイプ(商業及び消費、マイクロ・クレジット)に分割し、07年第1四半期の商業及び消費に対する同上限金利を20.75%(前期22.61%)にすると決定した(07年政令第18号)。

(6)貿易

(イ)DANEによれば、0610ヶ月間の輸出額は対前年同期比15.6%増の2015千万ドル(FOB)となった。右の内、伝統産品は15.2%増の98億ドルとなり、石油及び同関連製品18.9%、フェロニッケル33.5%及び石炭11.5%の増加となった。また、非伝統産品は16%増の103億ドルであった。同期における収支は18,740万ドルの黒字となった。

(ロ)また、同期における輸入額は同比23.3%増の2127,600万ドル(CIF)となった。最も増加した輸入品目は、自動車及び同関連部品51%、ボイラー及び機械22.1%、電気部品17.7%であった。

(7)雇用

0611月末の主要13都市平均失業率は前年同月よりも0.8%改善し11.3%となった。また、全国平均は11.0%となり前年同月(10.2%)よりも悪化した。

(8)為替

0612月の対ドル・ペソ為替市場は、28日に取引きを終了、終値1ドル2,238.9ペソと前年同期(2,284.22ペソ)より2%のペソ高となった。一部アナリストによれば、少なくとも07年第1四半期は、ECOGAS及びBANCAFEの民営化によるドルの大量流入によりペソ高傾向は継続するものと予想される。

(9)消費者物価上昇率

(イ)DANEによれば、2006年全体のインフレ上昇率は4.48%となり、中銀が設定した目標(4.5%)が達成された(054.85%)。主な分類別では、食料品価格が最も上昇し5.68%、次いで健康・医療5.28%、その他4.75%、教育4.7%及び運輸・通信4.39%となった。都市別ではククタが最も上昇し6.63%、次いでバランキージャ5.99%、他方、上昇率が抑えられた都市は、メデジン3.75%であった。因みにボゴタは4.13%となった。

(ロ)農業省及び主な中央食料市場の合意に基づき、15日から07131日まで、主要生活食料90品目の価格が凍結されることになった。右は年末における価格上昇傾向を回避するために図られた措置である。

(10)対外債務

中銀によれば、069月末における対外債務残高は3956,600万ドルとなり、前年同月よりも21億ドル増加した(公的債務:2514,100万ドル、民間債務:1442,400万ドル)。他方、対GDP比で比較した場合、前年同月の30.4%に対して29.5%となり、実質的には減少傾向にある。