コロンビア経済定期報告(1月)
1.概要
(1)対米国FTAの国会批准を前に、米国民主党議員よりテキスト修正要求が高まっている。シャノン米国務次官補は、現時点での再交渉の可能性を否定し議会で解決する旨表明した。
(2)臨時国会(2月6日〜3月15日)におけるウリベ第2期政権の新たな国家開発計画の審議が注目される。2006年の税収は前年比21%増、政府目標を約4兆ペソ上回る52兆7,393億ペソとなった。
(3)2006年の石油生産量及び埋蔵量は共に前年比で増加、各日産52万9千バレル及び埋蔵量約15億バレル(暫定値)となり石油自給能力の年限は2015年まで延長された。
(4)昨年の自動車販売台数は、前年比37.6%増(約5万5千増)の20万1,637台となり、「コ」の史上年間最高販売台数となった。同年末の携帯電話加入者数は約2,772万であった。
(5)新たな商工観光相にギジェルモ・プラタ氏(前貿易振興公社総裁)、また、新たな石油公団(Ecopetrol)総裁にハビエル・グティエレス氏(前ISA総裁)が就任した。
(6)26日、中銀理事会は公定歩合の0.25%引き上げを決定し7.75%とした。また、最近の急激なペソ高傾向に鑑み、ドル買市場介入の継続及び公的機関民営化プロセスの凍結を決定した。
(7)2006年12月末における全国失業率は12%(昨年同期11.7%)、主要13都市では13%(同13.9%)となった。1月の消費者物価指数は前年同月比0.77%上昇(前年0.54%)、過去12ヶ月では前年同期比4.71%上昇(前年4.56%)となった。
(8)1月のペソの対ドル為替レートは、月初2,238.79ペソ、月末2,255.17ペソ、最安値2,261.22ペソ(22日)、最高値2,218.05ペソ(4日)、とペソ高傾向で推移した。
2.主な出来事
<対外関係:FTA関連>
(1)米国民主党議員より、「コ」及びペルーとのFTAにつき、労働分野の他、環境及び投資関連分野の修正(テキストの附則ではなく本文自体の修正)が求められた。米国議会の批准プロセスの遅延を受け、同党からはアンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)の数年間の延期という意見が出ている。
(2)他方、ボゴタを訪問していたシャノン米国務次官補は、現時点において、米国政府は「コ」及びペルーと再交渉することは考えておらず、問題点等は議会で審議されるとした。シュワブUSTR代表も民主党議員との合意につき楽観的な見通しを示した。他方、「コ」国内では、テキスト修正の可能性がある中で、臨時国会での批准審議に懸念がもたれている。
(3)在「コ」カナダ大使は、本年3月までには「コ」とのFTA交渉の開始が期待されると述べ、また、本交渉は貿易分野のみならず「コ」のインフラ整備に対する投資促進的な要素も加わるとした。
<国内情勢>
(1)臨時国会召集決定
政府は臨時国会召集を決定した。その期間は2月6日〜3月15日、21法案が提出される予定となっている。新たな国家開発計画、対米国及びチリFTA、新法「農村振興法」及び「コ」農村振興機構(INCODER)改革法案が重要審議法案となる。
(2)2007年経済見通し
高等教育開発財団(FEDESARROLLO)は、活発な各セクター、投資の増加及び堅調な内需の拡大に支えられ、2007年の経済成長を5.5%と予測している。対ドル為替につき、年間で2.1%のペソ安(年末時点で1ドル約2,285ペソ)と予測、当初数ヶ月は民間セクター(エクシト、ガス輸送公社及びパス・デル・リオ等)の大規模取引によりペソ高傾向で推移する模様。消費者物価上昇率につき、税制改革(IVA)及びエル・ニーニョ現象の影響が懸念される一方で、中央銀行による数回の金利引上げが予測される。他方、中央銀行は同年の経済成長率を4.3%〜5.7%、また、世界銀行ラ米部は5%と予測している。
(3)2006年税収、財政及びISS改革等
(イ)税関国税庁(DIAN)によれば、2006年全体の税収は政府目標を約4兆ペソ上回る52兆7,393億ペソとなった。前年の実績と比べた場合、21%増(約9兆ペソ)であった。また、主な税収の内訳として、所得税は昨年比20.9%の22兆4,150億ペソ、IVAは同比15.9%増の14兆1,310億ペソ、及び金融取引税は同比11.1%増の2兆6,680億ペソ。
(ロ)財政審議会(CONFIS)によれば、2006年第3四半期末における国家財政収支は2.82兆ペソ超、対GDP比0.9%の黒字となった。これはIMFと合意していた目標を4.81兆ペソ上回る結果であった。2006年全体では同比0.4%の赤字が予測される(中央政府のみでは3.8%)。
(ハ)15日、政府は社会保障機構(ISS)改革の方針を決定した。健康保険(EPS)の運用を新組織を立ち上げて移管、労働災害保険の運用を国営保険会社Previsoraに移管する。また、年金の運用はこのままISSが担い続ける。
(ニ)昨年成立した税制改革法は外国企業家の以下のような負担の軽減を実現し、投資促進が期待される。送金税7%の廃止、株式等による配当収入に対する追加課税7%の廃止、所得税の段階的減税(07年34%、及び08年以降33%)、農業関連組織への投資に対する特別減税及び設備投資減価償却率の上昇(30%→40%)。
(4)企業動向
(イ)本年以降、外国企業の「コ」市場参入の知らせが相次いでいる。チリのアルミ関連企業Madeco、伯の木製家具用塗装関連業Renner Herrmann、エクアドル及び伯の航空会社Vip及びVRG、ペルーの世論調査会社CCR、仏の建設業Creusement et Sotenemente。
(ロ)送電公社(ISA)の新総裁アラルコン氏は、ペルーのTransMantaro社の株式60%の買収を終えたと公表すると共に、ISAが中南米のエネルギー市場でそのプレゼンスを拡大していると強調した。ISAは、ボリビア、ブラジル、コスタリカ、エクアドル及びペルーにおいて事業を展開し、総送電線距離は約3万kmに達する。
(5)インフラ関連
(イ)19日、航空局はエルドラド空港近代化コンセッション事業を落札したOpain社にその運営を移管した。同社は、今後20年に渡り、空港管理を担いつつ、マスタープランに基づき空港の近代化及び拡張に取り組む。新ターミナル建設、既存ターミナルのリニューアル等の工事着手は本年下半期以降となる。
(ロ)ダニエル・ガルシア道路公社(INVIAS)新総裁は、今後4年間の総額7.7兆ペソ(本年は2.3兆ペソ)に登る投資事業につき、その優先事業として、汎米ハイウェイ事業(パナマとの連結部分)、首都圏西部縦貫道路、リネア・トンネル建設計画及びブエナベントゥーラ港湾浚渫事業を挙げた。
(6)2006年自動車販売台数等
(イ)06年「コ」における自動車販売台数は、前年比37.6%増(約5万5千増)の20万1,637台となり、「コ」の史上年間最高販売台数となった。この要因として、ペソ高、低金利及び経済の安定成長が挙げられる。その内、輸入車は同比32.9%増の62,254台、国内組立車は同比34.6%増の129,504台であった(その他9,879台)。
(ロ)輸入車の大幅な伸びは、G3の枠組みによるメキシコからの輸入増加が大きく寄与した。本年以降、更に関税率の引下げ及び右割当台数の増加により(8%・4,000台→6%・5,000台)、ますます墨からの輸入車が増加すると予測される。
(ハ)中国製輸入3車種(Chery,Chana,Hafei)が昨年その販売を大きく増加させた。Cheryは236%増の751台、Chanaは146%増の947台、Hafeiは369%増の1,315台となった。
(ニ)鉱山エネルギー省は、2月以降の1ガロン当りのガソリン価格を3.31ペソ値下げし6,195.92ペソにすると決定した。右値下げは為替動向及び石油価格の下落によるものである。
(7)その他
(イ)16日、新たな商工観光相にギジェルモ・プラタ前貿易振興公社総裁が任命された。同相は任命に際し、最優先課題として、対米FTAの批准、カナダ及びEUとの通商交渉、ベネズエラとの経済関係を掲げた。
(ロ)22日、新たな石油公団(Ecopetrol)総裁にISAの総裁であったハビエル・グティエレス氏が正式に就任した。また、ISAの新たな総裁には年金基金協会(ASOFOND)の総裁であったルイス・フェルナンド・アラルコン氏が就任した。
(ハ)通信省によれば、2006年末の携帯電話加入者数は約2,772万となった。また、加入者が最も多い企業はTELMEX(約1,780万)、次いでTELEFONICA、COLOMBIA MOVILとなった。
(ニ)農業省は、本年、農業分野に対し1兆ペソを投資すると公表した。4年前の3千億ペソと比べて著しい増加となる。同投資額は、農業保障法関連費、インフラ整備及び各種補助等の競争力強化事業に優先的に配分される。同省は本年の同分野の成長率を4.5%と予測している。また、同省は、当国において最大の雇用創出産業である花卉及びバナナ生産業者の為替による収入減少を補填するために100億ペソを計上した。
(ホ)OA機器大手リコーは、コーヒー地帯及び南西部向け事業展開のためにカリ市に営業所を開設した。
3.主要経済指標の動向
(1)経済成長
IMFはその報告において「コ」政府とスタンド・バイ協定を締結していた7年間における政府の経済運営を評価し、06年の経済成長率を6.5%と予測。他方、失業及び貧困問題が「コ」にとって未だ大きな脆弱性となっており、その削減が将来的な課題とした。公的債務は比較的高い水準となっているが、政府の財政運営を評価。また、公的財政の根本的な問題の解決のために、地方交付金改革の実現を勧めた。
(2)鉱工業
06年11ヶ月における鉱工業生産は対前年同期比10.91%増となった。分野別では非鉄金属が最も生産を伸ばし(37.75%)、次いで製糖(30.47%)、自動車(24.12%)及び化学(8.99%)であった。また、同業全体の売上及び雇用は同比11.58%及び2.41%増となった。
(3)コーヒー
コーヒー連盟(FNC)によれば、06年の生産量は、国際価格高を反映して前年より約百万袋多い1,207万8千袋となった。また、06年の輸出量は前年よりも若干増加し1,089万5千袋となった。
(4)炭化水素・石炭等
(イ)炭化水素庁(ANH)は、2006年、「コ」は前年比で生産量及び埋蔵量を共に増加させ、各日産52万9千バレル及び埋蔵量約15億バレル(暫定値)と公表した(05年日産52万6千バレル及び埋蔵量14億5千万バレル)。これは99年以降前年比での初めての伸びであり、ANHによれば、石油自給能力の年限は2015年まで延長された。なお、06年に新たに生産を開始した油田はいずれも小規模で、技術革新による既油田の生産拡大及び重油生産の増加が減産傾向に歯止めをかけている。今後の国境付近での新規開発に期待がかかっている。
(ロ)06年、「コ」石油セクターに対する投資額は、治安情勢の回復及び国際的な関心の高まりにより、史上2番目の約15億ドル以上となった。Ecopetrolは、2007年〜09年にかけて、ジャノ平原西部において、重油生産の拡大及びリファイナリー施設建設の計画を立てている(投資額約7億ドル)。また、炭化水素庁は、本年8月若しくは9月、カリブ海域において数区域の新規開放の入札ラウンドの実施を予定している。
(ハ)Ecopetrolによれば、06年の輸出額は、国際価格上昇及び生産量の増加に伴い、前年比17%増の33億ドルとなった。
(ニ)石油・ガス関連の中堅企業の当国における活動が様々報告されている。Gran Tierra Energy(加)はマグダレナ川中流域及び西部ジャノ平原において掘削を開始する。Saxon Energy(加)も同様に当国における探査活動を開始する。この他、米国Avalon oil & Gas BrowlingやPetrotransandinaの名前が挙げられている。
(ホ)BHPビリント及びコールコーポ(加)は、「コ」における事業拡大のための協定に署名した。英国ジュニア企業のケンブリッジ・ミネラルは、当国の金探鉱権獲得のために「コ」関連企業の買収を視野に入れて同企業との協定に署名したことを公表した。
(5)金利
26日、中央銀行理事会は公定歩合の0.25%引き上げを決定し、7.75%とした。
(6)貿易
(イ)国家統計庁(DANE)によれば、昨年11月の輸出額(FOB)は対前年同月比16.4%増の21億2,900万ドルとなった。主に非伝統産品の伸び(25%)が寄与した。また、同11ヵ月では対前年同期比15.7%増の222億7,900万となった。その内、伝統産品は14.5%増、及び非伝統産品は16.9%増であった。
(ロ)また、同11月の輸入額(CIF)は対前年同月比31.5%増の25億3,900万ドル、同11ヵ月では対前年同期比24.1%増の238億1,500万ドルであった。同期においては自動車輸入が著しく増加した(53.4%)。この結果、同11ヵ月の貿易収支は、5,200万ドルの赤字となった。最大の輸出超過国は米国及びベネズエラ、他方、主な輸入超過国はメキシコ、中国及びブラジルであった。
(ハ)商工観光省によれば、2006年10月までにおいてATPDEAを利用した対米国輸出額は対前年同期比15.6%増の44億9千万ドルとなった。この額は対米輸出総額の5割以上を占め、また、その70%以上は石油及び同関連製品となっている。
(ニ)CAN事務局の事前公表数値によれば、CAN域内の昨年の貿易値に関し、CAN各国中「コ」のみその輸出額を減少させた。2005年の2,065百万ドルに対し06年は2,007百万ドルとなり、特に対エクアドル及びボリビアへの輸出実績が下がった。本年は「ベ」のCAN脱退及び同国チャベス大統領の保護主義政策の影響が予想される。
(7)雇用
(イ)DANEによれば、2006年12月末における全国失業率は12%となり昨年同時期(11.7%)よりも悪化した。右は約4万3千人の失業者が増加したことを意味する。他方、主要13都市では、昨年(13.9%)よりも低下し13%となった。都市別で見た場合、最も失業率が高い都市は、イバゲの19.9%次いでマニサレスの15.6%であった。なお、ボゴタは平均よりも低い11.5%となった。
(ロ)今回の失業率悪化の要因については幾つか挙げられるが、いずれにしてもより実体に近い数値になったと評価されている。まず、DANEによるアンケート調査の対象範囲が拡大された。より小さな集落にまで調査対象が広がり、また、従来家族単位でアンケートが配布されていたが、個人に対する調査に変更となった。鉱工業関連企業が賃金上昇を受けて雇用を控えていることも挙げられる。また、近年の対ドル為替のペソ高により輸入による設備機器投資が増え、作業の自動化の促進が雇用を抑制しているとも言われる。更に最も雇用を創出する産業であるはずの農業が低成長に留まっているも重要な要因となっている。
(8)為替
1月のペソの対ドル為替レートは、著しい変動を示しペソ高傾向で推移した(月初2,238.79ペソ、月末2,255.17ペソ、最安値2,261.22ペソ(22日)、最高値2,218.05ペソ(4日))。26日の中銀理事会は、急激なペソ高を回避するための為替市場介入の継続実施、並びにバンカフェ及びガス輸送公社等の公的機関の民営化プロセス凍結の継続を決定した。
(9)消費者物価指数
1月の消費者物価指数は前年同月比0.77%のプラスとなり著しく上昇した(前年0.54%)。過去12ヶ月では前年同期比4.71%の上昇となった(前年4.56%)。また、1月分で物価を押し上げた分野は、食料1.15%、娯楽・文化1.29%及び運輸・通信1.09%であった。
(10)対外債務
大蔵省によれば、2006年末における国債発行残高は昨年同時期より8.8%増の84.82兆ペソとなった。他方、06年の大幅な税収の増加及び公的機関の売却益によって、本年の債務残高の伸びは抑制されるとした。