コロンビア経済定期報告(2月)

 

 

1.概要

(1)21日、「コ」政府は対米国FTAテキストを臨時国会に提出したが、米国側のテキスト修正動向により実質的な審議は始まっていない。第7回対中米3カ国FTA交渉(於:メデジン)が終了した。次回交渉により市場アクセス交渉(特に工業製品及び農産品)の終結が期待される。

(2)2007年財政計画において、好調な税収及び債権発行の削減等により国家財政収支目標を対GDP1.3%から0.9%の赤字、及び中央政府財政収支目標を同比3.9%から3.5%の赤字に修正した。貿易振興公社(PROEXPORT)の新たな総裁にMaria Elvira Pombo氏が就任した。

(3)運輸省によれば、新しい港湾開発計画において約217千万ドルの予算が計上され、太平洋岸ブエナベントューラ港(リネア・トンネル側)に対しては7年間で45千万ドル、同港アグアドゥルセ地区には25千万ドルが充てられる予定。

(4)入国管理局の統計によれば、2006年の当国への外国人訪問数は、前年比12.27%増の1053,360人となった。2006年全体の鉱工業生産は対前年比11.07%増となった。23日、中銀理事会は公定歩合を0.25%引き上げて8%とした。

(5)1月の全国平均失業率は12.1%(前年同月11.8%)となり上昇傾向を示し、主要13都市平均失業率は12.9%(前年同月13.9%)。2月の消費者物価指数は前年同月比1.17%、本年2ヵ月間1.95%、過去12ヶ月では前年同期比5.25%の上昇となり上昇傾向にある。

(6)2月の対ドル為替レートは、大きく変動し月初1ドル2,255.17ペソ(最安値)、月末2,231.94ペソ、最高値2,211.46ペソ(26日)のペソ高傾向で推移した。

 

2.主な出来事

<対外関係>

(1)FTA関連

(イ)臨時国会の上院及び下院の各第2委員会において、21日、米国とのFTAの審議プロセスが開始された。野党は、米国側による最終的なテキストの確認がない限り、FTAには反対するとしており、議論の複雑化が予想される。

(ロ)第7回対中米3カ国FTA交渉(於:メデジン、19日~23日)の結果につき、ムニョス商工観光次官は、金融サービス分野交渉が終了し同分野におけるビジネスの自由化が図られるとし、また、2年間の猶予期間の下、統合深化に向けて幾つかの条項の修正を可能とする規定が設けられたと評価した。更に本交渉と同時に、「コ」、グアテマラ及びホンジュラスは、二国間レベルの航空交渉を行っており、今後、「コ」及び同2カ国間の相互の直接乗り入れが期待される。次回交渉は312日~16日となる(於:サン・サルバドル)。

(2)アンデス共同体(CAN)及び対ベネズエラ関係

(イ)プラタ商工観光相は、CAN閣僚会合(於:リマ)において、CANは緩やかな統合体になることを目指すと述べた。フレディーCAN事務局長は、CANはチリ及びベネズエラの再加盟、及びメキシコの加盟を期待すると公表した。また、現在CANにとっての最優先課題の一つには、EUとの包括的経済協定の交渉が挙げられる。

(ロ)12日(於:カラカス)、プラタ商工観光相及び「べ」貿易担当相は、昨年の「べ」CAN脱退後の二国間の新たな貿易規則を決定するための作業部会の設置を決定した。第1回目の会合は3月末に予定されている。また、同閣僚会合において、「べ」側による「コ」産の食料品購入、二重課税防止協定の交渉につき協議された。

(3)その他

(イ)商工観光省によれば、「コ」政府は英国と二国間投資保護促進協定及び二重課税防止協定交渉を実施しており、本年下半期における両国政府による署名が目指されている。

(ロ)チリ・サンティアゴ商工会議所によれば、2006年のチリによる対外直接投資において、「コ」が最大の投資対象国となり、全体の投資額の23%52,900万ドルが「コ」に投資された。主な投資対象は、小売業であり、次で建設業やサービス業となった。右は国際的な投資家にとって、「コ」が魅力的な投資対象国となっている証左と言える。

 

<国内情勢>

(1)国連ラ米・カリブ委員会(ECLAC)による「コ」経済評価

ホセ・ルイスECLAC事務局長は、「コ」経済は4年前と比べて、深刻な財政赤字、高い公的債務及び低水準な投資等の重要な課題を克服したと評価する一方、「コ」は引き続き財政調整を継続し、産業構造の多角化等の改革を実施しなければならないと強調した。

(2)スルアガ次期蔵相の政策方針

次期蔵相に就任予定のオスカル・イヴァン・スルアガ氏は、現カラスキージャ蔵相による経済政策を継続しつつ、新たな体制においては信用の強化が中心課題となると発言した。これにより、アナリストは、為替動向に関し、大幅な変動は少なくなるものの、依然とドル安ペソ高の傾向が長期的に継続すると予測している。また、同氏は、中期財政政策に掲げる目標の達成、補正予算の非計上等の財政規律及び投資適格の格付け獲得等をその政策として掲げた。更に、インフレ率目標達成のために中央銀行との連携の継続及び公的機関の民営化及び政府保有株式の売却の継続等を強調した。

(3)国家開発計画(2006-2010)「共同体国家-全国民のための発展」の国会提出

ウリベ第2期政権の新しい国家開発計画が国会に提出された。当初の原案と比べ、総投資額が2.88%増の228.6兆ペソとなった。全体の57%(約130兆ペソ)が社会インフラ投資に向けられ、また、持続的な経済成長のための政策に30.4%、治安対策に6%が配分されている。また、同計画における4年間の平均経済成長率目標は5%と設定されている。

(4)財政

(イ)大蔵省は、2007年の財政計画において、好調な税収及び債権発行の削減等を受けた同年における財政収支目標につき、国家財政収支を対GDP1.3%から0.9%の赤字に縮小、及び中央政府財政収支を同比3.9%から3.5%の赤字に修正した。

(ロ)1月期の税収は対前年同期比32.3%増の58,250億ペソとなり、目標を1兆ペソ超えた。大蔵省によれば、今回の結果は昨年成立した税制改革の影響ではなく、好調な経済活動及び税関国税庁の機能の効率化によるものとされる。

(5)企業動向

(イ)テレフォニカ-テレコムは、固定電話、インターネット及びテレビ事業の低成長に鑑み、衛星テレビ分野に対し今後3年間において約178千万ドルを投資すると公表した。

(ロ)26日、「コ」第3位の発電公社ISAGENの一部株式売却プロセスが開始された。今回の売却株式率は19.22%5,920億ペソ相当とされる。ルイス・フェルナンドISAGEN総裁は、今後の事業展開につき、国名を明示しなかったものの、中米への進出を挙げた。

(ハ)米国GEMoneyは、「コ」の金融機関COLPATRIAの株式39.3%22,700万ドルで買収した。同社は本年中に更に25%を買い増しする予定とされる。この世界的な金融機関の進出により、「コ」国内金融機関の構造改革が推進され、同機関が国際水準に達していくものと評価される。

(ニ)最近、国内ケーブルTV関連企業を買収した墨テルメックスを傘下に置くMexichemグループは、「コ」石油化学関連業のPETCO100%買収に同社と合意に至った旨公表した。

(ホ)企業・金融監督庁によれば、2006年全体における金融機関の収益は、前年比5.57%増の35,690億ペソとなった。前年よりも収益伸び率は低かったものの、経済全体の好調振りを背景に金融システムが強化されているものと評価される。

(ヘ)好調な「コ」経済及び活発な建設産業を背景に世界的な製鉄企業が「コ」参入に関心を表明している。特に伯Gerdau、同CSN及びアルセロール・ミタルは、当国パス・デル・リオの株式売却プロセスに関与している。

(6)自動車販売台数等

(イ)1月期の自動車販売台数は前年同月比52%増の18,698台となり、昨年に続き、自動車市場の好調さが維持されている。

(ロ)2006年全体の二輪車の販売台数は前年比28%増の約45万台となった。これは、ペソ高による輸入増(特に中国製)及び価格の低下が主な要因であった。

(ハ)鉱山エネルギー省は、31日以降のガソリン価格を32.41ペソ値上げし、1バレル6,288.3ペソと決定した。

(7)その他

(イ)運輸省は、新しい港湾開発計画において約217千万ドルの予算を計上すると公表した。太平洋岸のブエナベントューラ港に対しては7年間で45千万ドル、同港アグアドゥルセ地区には25千万ドル、大西洋岸のバランキージャ及びサンタマルタに対しては合わせて17,500万ドルとされる。他方、グレンコール社及び石炭大手ドルムンド社は、石炭の増産計画に合わせ石炭専用港の拡張に関する増資計画をそれぞれ公表している。

(ロ)環境省によれば、「コ」は世銀と初めて植林事業(コルドバ県)に対する排出権取引(約100万ドル)の契約を交わした。現在、「コ」はCDM事業ポートフォリオにおいて13の森林事業を持っている。

(ハ)入国管理局の統計によれば、2006年の当国への外国人訪問数は、前年比12.27%増の1053,360人となった。また、同局の管轄外である国境附近における訪問数を加算すると前年比48.1%増の約197万人であった。

(ニ)貿易振興公社(PROEXPORT)の新たな総裁にMaria Elvira Pombo氏が就任した。同総裁は、その政策目標として、観光客数の倍増及び投資の増加を掲げ、また、輸出産品の多様化及び通商協定の活用によって2010年までの輸出額目標を400億ドルとした。

 

3.主要経済指標の動向

(1)経済成長

カラスキージャ蔵相は、2006年第4四半期の成長率を約8%、同年全体を6.8%とした。また、ウリベ中銀総裁は、本年の当初2ヵ月の経済情勢につき減速傾向は見られなかったとし、本年全体の成長率は4.4%6.6%との見通しを公表した。

(2)鉱工業及び建設業

(イ)国家統計庁(DANE)によれば、2006年全体の鉱工業生産は対前年比11.07%増となった。分野別では特に非鉄金属(37.98%)、自動車及び関連部品(24.42%)及び製糖(29.9%)が大幅に伸びた。また同年の同業売上及び雇用は11.7%及び2.49%の伸びとなった。

(ロ)DANEによれば、2006年全体の建設申請面積は対前年比24.5%増の1,616万㎡となった。この内住宅向け建設が大半を占め前年比21.96%増の1,206万㎡となった。また、都市県別で見た場合、全体の58%がボゴタ、次いでバジェ・デル・カウカ県及びアンティオキア県の順で建設面積が多かった。

(3)コーヒー

1月の生産高は前年同月比12.6%減の963千袋となったが、コーヒー連盟は、この減少は収穫サイクルが原因であり、懸念すべき現象ではないと説明した。

(4)炭化水素・石炭等

(イ)20日、石油公団(Ecopetrol)及びペトロペルーは、生産、開発、輸送、精製及び生物燃料等の分野での協力に関する覚書(5年間有効)を交わした。

(ロ)露ルコイル社は、ボヤカ県メディーナ地区において埋蔵量1億バレル以上の油田(Ecopetrolの所有権益30%)を発見したと公表した。他方、鉱山エネルギー省は、同規模の埋蔵量を特定し得るまでの情報は出ていないとしている。

(ハ)石油販売テルペル(Terpel)は、昨年6月のエクアドルに続き、パナマの国家石油公社が所有するサービス・ステーションの53カ所を買収した。

(ニ)シェブロン「コ」社のDavid Bantz社長は、現在の「コ」の天然ガスは、国内需要に対して相当の供給超過状態であるものの、今後数年で需要の高まりによりこの需給差は縮まり、石油と同じような埋蔵量減少の状況に陥る可能性があるとして、グアヒラ地区以外での積極的な開発が必要と述べた。

(ホ)マルティネス鉱山エネルギー相は、2007年の石炭生産量を約72百万トン(06年実績約60百万トン)と見通し、また、当国の豊富な埋蔵量に鑑み、2010年には12百万トンに達する見込みであると述べた。

(5)金利

23日、中銀理事会は公定歩合を0.25%引き上げて8%に決定した。同6%であった064月以降、今回で8回目の引き上げとなる。

(6)貿易

(イ)DANE発表の2006年全体の貿易統計によれば、輸出額(FOB)は前年比15.1%増の2439,100万ドルとなった。ウリベ第1期政権が始まった2002年(約119億)から4年間で2倍増になった。石油、石炭及びフェロニッケルが大きく伸びた一方、コーヒーは減少した。他方、輸入額(CIF)は前年比23.4増の2616,200万ドルであった。自動車の輸入が著しく伸び前年比50%であった。この結果、2006年の収支は14,300万ドルの9年振りの赤字となった。

(ロ)2006年の貿易量の増加は主に資源エネルギーの価格高騰に因るものであったが、最大の貿易パートナーである米国への輸出中、非伝統産品の輸出は低下した。これは「コ」の輸出品の競争力が低下しているものと考えられている(特に中国製の繊維・縫製製品)。

(7)雇用

DANEによれば、1月の全国平均失業率は前年同月(11.8%)よりも0.3%上昇し12.1%となった。他方、同月の主要13都市平均失業率は12.9%(前年同月13.9%)であった。社会保険省はこの上昇傾向の要因を統計方法変更による過渡期なものと説明している

(8)為替

(イ)2月の対ドル為替レートは、高い変動を示し、月初1ドル2,255.17ペソ(最安値)、月末2,231.94ペソ、最高値2,211.46ペソ(26日)となった。ウリベ中銀総裁は、ペソ高抑制策として、最近の公的機関のペソ建て売却益を利用したドル買市場介入、及びTES国債の売却によるペソの市場流通量の操作を挙げた。

(ロ)カラスキージャ蔵相は、最近のペソ高傾向につき、経済発展の過程にある国にとって自然な現象であり、ペソ安を期待する理由はないと説明しつつも、中銀の市場介入及び悪影響を受けたセクターへの補償策の模索を継続すると発言した。他方、当地有力金融機関コルフィコロンビアは、本年末の為替を1ドル2,480ペソと予測している。

(9)消費者物価指数

(イ)2月の消費者物価指数は前年同月比1.17%のプラスとなり著しく上昇した(前年0.66%)。本年2ヵ月間では1.95%(前年同期間1.20%)、過去12ヶ月では前年同期比5.25%の上昇となった(前年4.19%)。2月において物価を押し上げた分野は、教育3.94%、食料2.11%、医療1.42%であった。中銀は、本年上半期は異常気象及び燃料価格の高騰により物価は上昇傾向となるものの(年率5%超)、本年全体では目標値4%で落ち着くものと予測している。

(ロ)DANEは、2008年初頭より生活必需品に該当する品目数を変更し、実質的に増加させると公表した。現在の405品目から08年より約425品目になる。デジタル・カメラ及びDVD等が追加される。

(10)対外債務

大蔵省公債局によれば、2006年末における債務の総残高は対GDP30.7%147兆ペソとなり、当初見込みより2兆ペソ減少した結果となった。同省は、本年も内外債務の借り換えの促進及び債権発行の抑制等の債務ポートフォリオの改善に取り組むとし、本年末の債務残高は対GDP28.7%まで減少させる方向で計画している。例えば、同省は、本年1月分の税収約5.8兆ペソを予算支出には回さず、貯蓄及び債務の事前償還に向けると公表した。