コロンビア経済定期報告(4月)
【ポイント】
●25日、「コ」上院及び下院第2委員会において、対米FTAが承認された。現在、同条約は上院及び下院それぞれの本会議において審議中。
●23日、EU外相会議は、CAN等とのFTA交渉開始権限をEU委員会に与えた。
●16日及び17日、ウリベ大統領等は「ベ」で開催された第1回南米エネルギーサミットに参加し、「コ」・「ベ」両国は石油パイプライン及び炭化水素資源、農牧業分野における更なる連携強化等に関して合意した。
●3月期の自動車販売台数は、前年同月比60.0%の大幅増の22,629台となった。
●19日、石油公社(Ecopetrol)とマグダレナ・メディオ県の主要ヤシ油製造業者は、バイオ燃料を製造・販売する新会社を設立した。(日量2千バレル)
●4月の対ドル為替レートは、引き続きペソ高を維持し、月初2190.30ペソ(最安値)、月末2104.16(最高値)ペソで推移した。本年1月〜4月では、5.2%のペソ高。
【本文】
1.主な出来事
<対外関係>
(1)対米FTA関係
(イ)25日、「コ」上院及び下院第2委員会において、昨年11月に署名された対米FTAが承認された。現在、同条約は上院及び下院それぞれの本会議において審議されており、その後最高裁判所の審査を受け、大統領による認可へと進む予定。
(ロ)プラタ商工観光相は、上下院第2委員会での承認を歓迎するとともに、FTAに関して議会の支持が得られたことは、5月第1週のウリベ大統領の米国訪問を控え、非常にタイミングが良いことと述べた。また、このFTAは商業、投資、雇用等の面で「コ」にとって根本的な部分であると強調した。また、米国民主党議員が対「コ」FTA承認に向けた協力の意向を表明したことに対し歓迎の意を表した。
(2)対欧州連合関係
(イ)23日、ルクセンブルクでの欧州外相会議において、アンデス共同体を含めた中米、ASEAN、韓国、インドとのFTA交渉開始の権限をEU委員会に与えた。EUとCANの間にはすでに政治対話や協力に関する合意文書が存在しており、現在FTA締結までの交渉条件につき協議している。
(ロ)ムニョス商工観光省次官は、来月ボリビアのラパスで開催予定のアンデス共同体・EUの次官級会合に「コ」代表として出席する予定。同会合では、両グループ間のFTA署名に向けたラウンドの日程等につき協議される。
(3)対中米関係
(イ)10日、メキシコのカンペチェで開催されていたプエブラ・パナマ計画「Plan Puebla
Panama:PPP」サミットと並行して行われたウリベ「コ」大統領とカルデロン墨大統領の会談の中で、両国間の経済関係をより深化させるため、1995年に締結されたG3貿易協定を改正する交渉を開始することで合意した。
(ロ)当初は、「コ」、墨、ベネズエラのG3の枠組みで行われる予定であったが、「ベ」政府が昨年5月に脱退したのを受けて、同2カ国の首脳間のみでの合意となった。
(4)対ベネズエラ関係
(イ)16日及び17日、ウリベ大統領、アラウッホ外相及びマルティネス鉱山・エネルギー相は、ベネズエラ・マルガリータ島で開催された第1回南米エネルギーサミットに参加した。同サミットは南米の労働市場の発展と長期的展望に立った持続可能なエネルギー資源の活用の促進を目的に開催された。同時に、代替エネルギーやエネルギーインフラにおける統合強化等に関する議論もなされた。第3回の南米エネルギーサミットは、コロンビアのカルタヘナで今年10月に開催される予定。
(ロ)同会合において、ウリベ大統領は、「コ」・「ベ」間の現在40億ドル規模に及ぶ両国経済関係の更なる活発化のため、統合強化の必要性を主張した。同時に「ウ」大統領はチャベス大統領に対し、「ベ」がアンデス共同体に復帰するよう要請した。また、現在両国は、将来へ向けての関係構築のため二国間での貿易協定交渉を進めている他、エネルギー関連では、8月第一週にガスパイプライン(ラ・グアヒラ(「コ」)−マラカイボ(「ベ」)間)の除幕式が行われる。更に、両国は「ベ」から「コ」太平洋岸までの石油パイプラインの建設及び炭化水素資源や農牧業分野における両国間協力プロジェクトの共同実施についても合意した。具体的には、ベネズエラ石油公社(PDVSA)が「コ」石油公社(Ecopetrol)に対して、重質油の探査・生産に関し協力する他、「コ」がアフリカ椰子や家畜農家育成プロジェクト面で「ベ」に対し協力するというもの。
(ハ)プラタ商工観光相は、2006年の「ベ」の対「コ」直接投資額が、前年比268%の大幅増の6千万ドルになったと発表した。これにより、対「コ」投資国としては、「ベ」は、米国、ヴァージン諸島等についで7番目となった。1994年から2006年までの累計で見ると、2億4450万ドルと17位、ラ米諸国では、パナマ、メキシコ、チリに次いで4位となった。
<国内情勢>
(1)世界銀行が「コ」経済を好評価
国際通貨基金(IMF)及び世界銀行関係者はスルアガ蔵相との会合において、「コ」経済状況を治安の回復及び社会的指標の改善により良くなっていると評価した。同時に、これら国際金融機関は、「コ」と米国のFTAの批准を支持すること、及び「コ」の国家開発計画の中のインフラ・プロジェクト参加への関心を表明した。
(2)農業収入安定化法の大統領承認
13日、ウリベ大統領は、農業収入安定化法(AIS)(2007年4月法律第1133号)を承認した。同法律は、米とのFTAの成立が予定されている中、トウモロコシ、小麦等センシティブな作物を栽培している農家の競争力強化や生産構造の改革促進のため、最大6年間、直接的な財政援助を行う一方、経済の国際化による市場拡大をにらんだ生産性の向上、新品種の開発等を目指すもので、本年5千億ペソの予算が確保されている(うち4千億ペソが本年執行される予定)。
(3)財政
財政審議会(CONFIS)は、2006年の財政赤字は05年12月比4.8%で、GDP比4.1%になったと報じた。内訳は、歳入56兆3470億ペソ、歳出69兆3740億ペソとなり差し引き、13兆270億ペソの赤字となる。歳入の内訳は、91%(約51兆ペソ)が租税収入となっている。一方歳出(前年比0.9%の増加となっている。)は71%が一般行政経費(地方交付税及び社会保障費等も含む)、9%が投資的経費、19%が国債利子支払いに当てられている。一部のアナリストは、財政支出の増加がペソ高要因の一つになっていると指摘している。
(4)企業動向
(イ)ペソ高及び「パラポリティカ」(注:右派非合法武装自警組織(パラミリタリー)と政治家の癒着問題)等による政治スキャンダルにもかかわらず、本年初3ヶ月間の企業業績は好調であり、特に自動車(組み立て)、建設、商業分野等において顕著であった。
(ロ)雑誌「フォーブス」は、アンティオキア県の企業グループである「バンコロンビア」と「スーラメリカーナ」が世界のもっとも大きい2000社中、「バンコロンビア」は1,157位、「スーラメリカーナ」は198位にそれぞれランクインしたと報じた。(1位はシティーグループ。)
(ハ)「コ」パン販売チェーン「パンパ’ジャ」が日本市場に向け3年前から冷凍パン食品を中心に輸出を開始している。
(ニ)マツダ車の組立・販売を行っている「コ」企業「アウトモトリス」は、本年初3ヶ月間に前年同月比67.8%増の3,466台を売り上げ、同時に輸出額も前年同月比39.6%の大幅増になったと発表した。
(5)自動車販売台数
3月期の自動車販売台数は、引き続き好調な伸びを記録した結果、前年同月比60.0%増の22,629台となり本年3ヶ月間で前年同期比48.2%増の総計60,606台となった。
(6)その他
(イ)道路公社(INVIAS)は、2月28日までにラ・リネア・トンネルのパイロット・トンネルのうち、57.3%に相当する4,913メートルが完成したと発表した。キンディオ県側から1,680メートルが、反対側のトリマ県側から3,233メートルが完成している。このラ・リネア・トンネルは、ボゴタ−ブエナベントゥーラ(太平洋岸)間道路整備プロジェクトの一環として行われており、輸送コスト、時間の大幅削減等大きな経済効果が期待されている。
(ロ)本年第1四半期の当国における外国直接投資は18.6億ドルになり、前年同期比9.4億ドル増となった。一方これら直接投資が、今般のペソ高の主要原因となっている。
(ハ)「コ」外務省は、旅行、ビジネス等で「コ」へ入国する中国人に対し、在中国「コ」領事館でのビザ取得が必要と発表した。この決定は、最近「コ」において中国人の不法入国者が200人以上が発見されたことを受けたもの。
(ニ)商工観光省は、本年初3ヶ月間に「コ」を訪れた外国人は、前年10月-12月比20.6%増の266,731人に達したと報じた。地域別に見ると1位は米国、次いでベネズエラ、エクアドル、スペイン、ペルーの順になっている。主な訪問先としては、1位はボゴタ、次いでメデジン、カリとなっている。
(ホ)3月30日商工観光省は、政令第1037号により2008年及び2009年の2年間、スズキ、ヤマハ・インコルモストス、ファナルカ、アウテコ等計8社を対象に、オートバイ輸入のための関税率を15%引き上げ、35%とすることを決定した(上記8社だけで国内オートバイ市場の95%を占めている)。これは国内オートバイ業者を保護するためのもの。「コ」政府は、この関税率引き上げはWTOやCANの取極に抵触しないとしている。
2.主な経済指標
(1)経済成長
国際通貨基金(IMF)は、2007年の「コ」経済成長率予測を5.5%、2008年の同予測を4.5%と発表した。(2006年の経済成長率は6.8%)
(2)鉱工業及び建設業
国家統計庁(DANE)は、2007年初2ヶ月間の鉱工業生産は前年同時期比14.15%増になったと発表した。この伸びは主に鉄鋼、自動車産業等によるもの。
(3)炭化水素等
19日、石油公社(Ecopetrol)とマグダレナ・メディオ県の主要なヤシ油製造業者は、ブカラマンガにおいて、バイオ燃料を製造・販売する新会社を設立した。新会社「エコ・ディーゼル・コロンビア株式会社」の試みは、先ず、バイオ燃料を年間10万トン(日量2千バレル)生産する工場の建設及び運営である。この工場への投資はおよそ2,300万ドルであり、50%はEcopetrolが所有し、残り50%が現地ヤシ油会社7社が所有する。工場建設には約1年かかる見込みで、2008年中頃に完成する予定。
(4)金利
30日、中央銀行理事会は、公定歩合を0.25%引き上げ8.50%とすることを決定した(2006年4月以来10回目の引き上げ)。ウリベ中央銀行総裁は、本年初3ヶ月間において食料品を中心にインフレ傾向がみられるとしつつも今年度のインフレ上昇率の目標を3.5%から4.5%を維持すると述べた。
(5)貿易
DANEによれば、2007年初2ヶ月の輸出額(FOB)は前年同期比5.7%増の37.31億ドルになったと報じた。この伸びは、自動車、自動車部品、動物等の伸びによるもの。特に対「べ」輸出額が63.8%の大幅増を記録している。一方同期の輸入額(FOB)は前年同期比32%の大幅増の46.18億ドルとなった。これは、航空機の大幅増(337%)のほか、車輌、鉄鋼、機械等の伸びによるもの。この結果、2007年初2ヶ月間の収支は、5.97億ドルの赤字(前年同期2.58億ドルの黒字)となった。
(6)雇用
DANEは、3月の全国平均失業率は前年同月比0.5%増の12%、失業者数は約240万人に達したと報じた。一方主要13都市における平均失業率は、12.6%(前年同月12.2%)となった。都市別順位は、イバゲ市(17.8%)、ククタ市(17.1%)、マニサレス市(15.9%)となっている。(ボゴタ市は11.5%)
(7)為替
(イ)4月の対ドル為替レートは、引き続きペソ高傾向が続き、一貫して上がり続けた結果、月初2190.30ペソ(最安値)、月末2104.16(最高値)ペソとなった。中央銀行は、対外債務の繰り上げ償還の他、3月には18億ドル、1〜3月で合計約39億ドルのドル買い介入措置を行っているが、具体的な効果は出ていない。この大幅ペソ高は4月までの12ヶ月間に9.2%に達しており、特に本年に入ってからの4ヶ月間に5.2%進行している。
(ロ)スルアガ蔵相は、一連のペソ高が「コ」経済の成長や外国人投資家の対「コ」投資への関心の増大という点で良い指標である旨発言している他、「コ」政府は「コ」への資本の流入をコントロールする措置はとらないともしている。
(ハ)経済アナリストは、ペソ高問題を解決するための唯一の方法は、政府支出をコントロールすることであるとしている。しかしイネス大蔵省次官は、同省が行った試算であるとしつつ、一兆ペソ規模の政府支出の削減だけでは2年間で為替市場において6ペソの下落しか達成しえないとして、政府支出の増加をペソ高の直接的な原因ではないとした。
(ニ)ビジェガス全国工業連盟(ANDI)会長は、マフィアによる麻薬等違法な経済活動によって生じる送金等がこうしたペソ高を引き起こしているのは明らかだと述べた。
(8)消費者物価指数
(イ)4月の消費者物価指数は、前年同月比0.45%増の0.90%となった。これにより本年4ヶ月間では4.11%(前年同期2.37%)、過去12ヶ月では6.26%(前年同期4.12%)となった。主な要因は、食料品価格の増大によるもの。
(ロ)ウリベ大統領は、「コ」は外国からの直接投資を必要としており、そのためには国際競争力があり安定した為替相場を必要としているとしつつ、スルアガ蔵相に対し、インフレ是正と輸出業者、輸出関係労働者に影響を与えうるドル安を食い止めるため、中央銀行による対策を採ることを指示した。
(9)対外債務
中央銀行は、2006年末の対外債務は400.39億ドル(前年384.56億ドル)になったと報じた。内訳は、公的債務が262億ドル、民間部門が138億ドル。長期、短期別で見ると長期債務が346億ドル、短期債務が55億ドルであり、国内総生産の29.4%となっている。