コロンビア経済定期報告(5月)
【ポイント】
●「コ」政府は、対米FTAの米議会承認が遅れていることを受け、本年6月末で失効するアンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)の本年末までの期限延長を米国政府に対し要請した。また、ウリベ大統領は同FTAの米議会承認を促すため、6月に再度訪米する旨発表した。
●8日、大蔵省は2008年の予算案は前年比10.5%増の130兆ペソと報じた。
●世界で2番目の富豪とされる墨人投資家カルロス・スリム氏は、「コ」通信会社コムセル社及びテルメックス社への増資を検討している。仮に右増資が実現する場合はコムセル社は、第3世代携帯電話サービスの開始を検討すると述べた。
●30日、レンテリーア国家企画庁(DNP)長官は、第1四半期の「コ」経済成長率が6.5%に達する見込みと発表した。また、2007年の経済成長率は5.9%を予想と発表した。
●5月の為替相場は引き続き大幅ペソ高となり、1日2,104.16ペソ(最安値)、31日1,900.09ペソ(最高値)で推移した結果、本年で11%、過去12ヶ月間で16%ペソ高が進んだ。
【本文】
1.主な出来事
<対外関係>
(1)対米FTA関係
(イ)「コ」政府は、対米FTAの米議会承認が遅れていることを受け、本年6月末で失効するアンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)の本年末までの期限延長を米国政府に対し要請した。また、ウリベ大統領は22日のサントス副大統領の米国訪問に関し具体的成果はなかったとしつつ、同FTAの米議会承認を促すため、6月に再度訪米する旨発表した。
(ロ)スーザン・シュウェブ米下院議員は、同FTA承認への道筋は開けているものの、環境及び労働分野では再交渉する必要があると述べた。これを受けプラタ商工観光相は、再交渉の開始について否定的な見解を示すとともに、「近日中に米国議会がFTAを承認することを期待する。」と述べた。
(2)対欧州関係
(イ)FTA交渉を担当している欧州連合代表は、アンデス共同体(CAN)が共通意見を持っておらず、交渉は不確定な状況になっているとした。これは、「コ」やペルーが交渉への関心を示している一方でボリビアが交渉に参加しないことを表明したため。在「コ」欧州企業は、EUとFTAを交渉している国の企業等に遅れをとらないよう同協定の交渉をできるだけ短期間に締結するよう求めている。
(ロ)プラタ商工観光相は、6月4日から8日までの日程で対スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインのEFTA(European Free
Trade Association)諸国とのFTA締結に向けた第一ラウンド交渉をボゴタにて行うと発表した。同交渉は「コ」の外、ペルーとも交渉を行う見込みであり、本年8月下旬にリマで第二ラウンド及び本年10月下旬にジュネーブで第三ラウンドを予定している。EFTA諸国は世界各国で商業活動を行っており、特にサービス産業において好調であるため、同諸国とのFTA締結により同分野への国内投資が期待できる。「コ」、スイス間の輸出入額は、2005年は3億4800万ドルであったが、06年には8億700万ドルと前年比132%の大幅増となっている。
(3)対中米関係
4日、ムニョス商工観光省次官は、7月に中米3カ国(グアテマラ、エルサルバドル及びホンジュラス)とのFTAが署名される見込みであり、それを受け本年後半に「コ」議会での審議が開始されると述べた。これは現在交渉中の農牧業分野の7品目及び工業分野の数品目が決着する見通しとなったため。
(4)対ベネズエラ石油取引
11日、コロンビア石油公社(Ecopetrol)、ベネズエラ石油公社(PDVSA)及び米Chevron社は次の20年間の天然ガス取引に関する契約に署名した。同契約によると「コ」が「ベ」に対し最初の4年間天然ガスを販売した後、ガスパイプラインを通じての取引により「コ」に対して販売する。また、今次契約あたって追加投資として1億4000万ドルが投入される。
<国内情勢>
(1)大統領による国家開発計画の承認
4日、「コ」国家開発計画(2007‐2010)が上下院それぞれの本会議で承認され、大統領も右を承認した。同計画は2010年までの4年間に総額228.6兆ペソの予算を投入するもの。(うち、130.1兆ペソが貧困対策、69.4兆ペソが経済成長関連対策、13.6兆ペソが治安対策に配分される。)また、同計画では2010年までの貧困率を35%、極貧率を8%、また年平均経済成長率を5%、公的債務をGDP比で−2.1%等と多くの具体的数値目標を盛り込んでいる。
(2)法律第80号改正案が成立
15日、「コ」下院は公的契約を規定している法律第80号改正案を可決したが、上院との若干の相違があるため今後両院にて微調整が行われる。同法改正の論点のひとつは道路関係工事の民間委託契約(コンセッション)の延長であり、当初契約の60%までコンセッション期間を延長できるというもの。また、主工事者の工事にあたり複車線化することも可能になっている。同法は、大統領承認の後6ヵ月後となる2008年から発効予定。また、今般改正の特異なポイントとして工事入札の際、既に過去の入札等で政府機関に提出している場合は、各企業の説明書類を提出する必要がなくなることがあげられる。
(3)財政
(イ)8日、大蔵省は2008年の予算案は前年比10.5%増の130兆ペソと報じた(前年度予算額は117.6兆ペソ)。主な内訳は利払い等の経費40.6兆ペソ、投資的経費22.2兆ペソ、地方交付税交付金45.8兆ペソ及び行政経費が19.5兆ペソとなっている。本予算案は、7月より始まる国会に提出される見込み。
(ロ)24日、税関国税庁(DIAN)は本年初4ヶ月の税収が17兆9,660ペソ(前年同時期比4.3%増)となり、当初予定額16.2兆ペソを上回ったと報じた。主な内訳は金利収入等7.8兆ペソ、租税(IVA)収入5.4兆ペソ等となっている。DIANは税収増の要因として、経済成長により業績、消費等が好調なためと分析している。
(4)企業動向
(イ)世界で2番目の富豪とされる墨人投資家カルロス・スリム氏は、「コ」通信会社コムセル社及びテルメックス社への増資を検討している。仮に増資がある場合はコムセル社は第3世代携帯電話サービスの開始を検討すると述べた。
(ロ)ボゴタ商工会議所によれば、本年初4ヶ月間に52の外国企業が「コ」へ支店等を開設した(1月:12社、2月:11社、3月:13社、4月16社)。4月に支店を開設した外国企業の中には清涼飲料等を生産する墨のフメックスグループ、チリの主要穀物販売業者のグラネレス社及び仏石油販売業者カッリル社等も含まれている。
(5)自動車販売台数
4月期の自動車販売台数は引き続き好調が続いており、前年同期54%増の20,084台となり、本年4ヶ月間の新車販売台数は前年同期比49.9%増の80,690台となった。今般の大幅ペソ高や銀行の融資利率の低下などがその要因となっている。
(6)その他
(イ)3日、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(CEPAL)によれば、2006年は墨、伯、チリについで「コ」がラ米諸国で4番目の外国投資享受国であるものの、国内生産と同投資の割合から見ると8位(4.6%)であると報じた。同順位は1位がパナマ(16.4%)、2位がトリニダード・トバゴ(8.4%)、3位がウルグアイ(8.3%)となっている。同年のラ米投資額は前年比1.5%増となっている。
(ロ)日野自動車は、三井物産及び当国「ディダコル」社との間で共同企業体を形成し、日本より自動車部品の一部を輸入し、組み立てるための工場を建設すると発表した(初年度に5,000台を生産予定)。同社は同工場を「コ」国内への供給の他、ベネズエラ、ペルー、エクアドル、チリ等南米市場への供給拠点と位置づけている。また、現在は輸入関税等の影響で、小型、中型トラックの価格は10%から15%割高になるため、同社の業績は伸び悩んでいるが、同工場建設によりダイムラー・クライスラー社及びボルボ社等と同等の競争力を有することが見込まれる。
2.主な経済指標
(1)経済成長
30日、レンテリーア国家企画庁(DNP)長官は、第1四半期の「コ」経済成長率が6.5%に達する見込みと発表した。前年と比べ従来の建設業者及び商工業の伸びに加え、製造業の成長が主な要因。その他、消費者、投資家間の信頼の増大及び世界経済の成長等の結果も寄与していると述べた。また、本年の経済成長率は5.9%を予想と発表した。
(2)鉱工業及び建設業
国家統計庁(DANE)は、第1四半期の鉱工業生産は15.26%増になると発表した。同分野41部門において成長が期待できるため。中でも鉄鋼が54.49%、自動車が48.36%と高成長を記録している。第1四半期の売上は14.83%増となっている(前年同月比8.39%)。また、DANEは、前年3月から本年3月までの12ヶ月間に建設業が26.5%の大幅成長になったと発表した。ペソ高やインフレにもかかわらず年間1700万平方メートルの建設規模に及ぶ。
(3)コーヒー
(イ)国立コーヒー生産者連盟(FNC)シルバ総裁は、米国シカゴにおいて、FNCとコカ・コーラ社が米国及びカナダの約11,000に及ぶレストランでフアン・バルデス・ブランドのコーヒーを提供する契約を結んだと発表した。本契約はFNCが5年前から北米進出計画として政治レベルにおいて進めてきたもの。
(ロ)11日、FNCは、4月のコーヒー生産は前年同月比1.2%減の76.9万袋であり、最近12ヶ月の生産量は1210.5万袋と発表した。また、同連盟は、輸出が同12ヶ月比23%増の76.7万袋となったものの、今後はペソ高による輸出への影響が懸念されるとも述べた。
(ハ)「コ」政府は、政府コーヒー援助(AGC)を復活させることに同意した。これはコーヒー価格について125kgあたり38.6万ペソを最低価格として補償するというもの。
(4)炭化水素等
(イ)石油公社(Ecopetrol)は、第1四半期の石油生産量が一日あたり518,500バレル(前年同期比2.1%減)になったと報じた。これは、石油生産地(クシアナ油田やクピアガ油田等)における生産量の通常減少と新規油田発掘のための機材不足、またバイオ燃料の消費量が一日あたり164,861バレル(前年同期161,728バレル)と若干増加したことによるもの。
(ロ)サモラ炭化水素庁(ANH)長官は、石油の自給及び輸出量を維持する新規油田探査費用等として2020年までに年間10億ドルの投資が必要と述べた。また、開発及び輸送等のインフラ整備をするためにさらに年間15億ドルから20億ドルが必要になると述べた。
(ハ)サンタンデール県、ノルテ・デ・サンタンデール県、セサール県南部及びボヤカ県北部において本年6月1日より、混合ガソリン(10%がバイオガソリン、90%が通常ガソリン)の販売が始まる。これにより排出ガスの減少や価格の低下が見込まれる。
(ニ)ヴァレンシア大統領府主席顧問は、プエブラ・パナマ計画(PPP)委員会の決定を受け、「コ」政府は観光とバイオ燃料分野のへの取り組みが必要と述べた。また、6月7日及び8日農相の他、バイオ燃料における「コ」の取り組みを視察するため、各国の鉱山・エネルギー相、民間大学、同委員会に関係する国際機関等の関係者が当国を訪問する予定。訪問先として、コダッシ市のヤシ油を原料としたバイオ・ディーゼル工場等を予定している。
(5)金利
18日、中央銀行は公定歩合を0.25%引き上げ8.75%にすると発表した。これは、4月の大幅なインフレと今後の予測を受け、貨幣需要及び貸付が引き続き高いレベルで推移すると判断したため。また、同銀行は持続的な経済成長を維持するためとして、本年のインフレ目標を一貫して3.5〜4.5%の範囲としており、さらに長期的には2〜4%の範囲と設定している。
(6)貿易
DANEは、第1四半期の輸入額が今般のペソ高を受け73.90億ドル(前年同期比30.7%増)になったと報じた。この大幅増は自動車の前年同期比58%の大幅増(9.20億ドル)の他、金属加工、機械部門が40.8%増、航空機が114.4%増となったこと等によるもの。第1四半期の輸出額は61.16億ドル(前年同期比12.1%増)となった。前月同様に自動車、自動車部品、動物等の伸びによるもの。この結果2007年第1四半期の収支は、12.74億ドルの赤字(前年同期は1.63億ドルの黒字)となった。
(7)雇用
DANEは、4月の平均失業率が11%になったと報じた(前年同月12.1%)。主要13都市の平均失業率は、12.7%(前年同月13.4%)となり、失業者は約225万人と推定される。ウリベ大統領は、「コ」政府は早期に10%を下回ることを目標として引き続きこの問題に取り組んで行くとした。同時に、外国投資家にとって「コ」が信頼し得る市場になるよう努力するとともに、雇用創出のためには外国投資が非常に重要と繰り返した。
(8)為替
(イ)5月の為替相場は引き続き大幅ペソ高となり、1日2,104.16ペソ(最安値)、31日1,900.09ペソ(最高値)となり、本年で11%、過去12ヶ月間で16%ペソ高が進んだ。また、31日には一時1,900ペソを割り込んだ。経済アナリストは今後もペソ高が続き1,800ペソ台で推移すると分析している。
(ロ)6日、中央銀行は、ペソ高及びインフレ抑制のため、従来のドル買い介入に加え、(a)市中銀行の決済用等の当座預金に関しては総預金残高の27%、有利子の貯蓄預金等に関しては総預金残高の12.5%、18ヶ月未満の定期預金については5%を中央銀行に預け置かなければならない資金据え置き政策、(b)企業が外国で社債等を発行して資金調達し「コ」に持ち込んだ場合、その資金の40%を市場代表機関(TRM)へ預金しなくてはならない義務的預金(6ヶ月後返還される)及び(c)為替市場における取引限度額を個人資産の500%までに制限する施策を発表した。
(ハ)23日、中央銀行は、収益面で非常に魅力的な国に対する資金流入、所謂、「ツバメ資金」と呼ばれる資金の流入を抑制するため、同銀行に資金総額の40%を6ヶ月間(同期間後返還)留め置くことを義務づけ、この措置を履行しない投資家は資金総額の9.4%を罰金として支払うとする新たなペソ高抑制策を発表した。
(9)消費者物価指数
(イ)DANEは、5月の消費者物価指数が0.3%となり、過去21年間でもっとも低い数字になったと報じた。本年初5ヶ月間では4.42%(前年同期2.71%)、過去12ヶ月間では6.23%(前年同期4.04%)となっている。
(ロ)ウリベ中央銀行総裁は、第1四半期はインフレが続いたものの、第2四半期にはインフレが抑制され、本年は4%で推移すると述べるとともに、本年の「コ」経済成長率は5〜6.5%になると引き続き好調が続くとした。
(10)対外債務
中央銀行は、本年2月末の対外債務が420.61億ドルに達したと報じた(前年同月比8.83%増)。うち公的債務は271.69億ドル(全体の64.59%)、民間債務は148.91億ドル(全体の35.41%)であり、長期債務は349.23億ドル、短期債務は71.37億ドルとなった。これにより、対GDP比は25.9%となり、前年同月の28.4%を下回ったものの、前月(25.6%)よりは増加した。