コロンビア経済定期報告(6月)

 

【ポイント】

●アンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)の延長に関し、米国民主党と同共和党は20082月末まで8ヶ月間延長することで合意、27日米下院で、翌28日同上院で承認され、29日にブッシュ大統領が署名を行ったことにより、30日の同協定失効前に延長が成立した。

8日、中米諸国から40人以上の政府高官が「コ」を訪問し、プエブラ・パナマ計画(PPP)に基づき、「コ」政府との間でバイオ燃料開発計画を含めた総合的なエネルギープロジェクトにつき協力していくことで合意した。

●国家統計庁(DANE)は、本年第1四半期の経済成長率は8.09%になり、同時期としては過去29年間で1978年の8.47%に次ぐ数字と発表した(前年同期5.48%)。分野別では鉱工業が最も成長し34.39%、ついで建設業28.27%、製造業14.59%となっている。

29日、中央銀行は本年第1四半期の外国直接投資が前年同期の2倍の234200万ドルになったと報じた。分野別に見ると、製造業に87100万ドル、ついで石油58300万ドル等となっている。一方同時期における「コ」からの対外投資額が前年同期19300万ドル減り、36900万ドルになったと報じた。

6月の対ドル為替レートは、月初1ドル1,900.09ペソ、月末1ドル1,960.61ペソ、最高値1,877.08ペソ(5日)、最安値1.982.29ペソ(27日)となり、引き続き大幅ペソ高が続いた。

 

【本文】

1.主な出来事

<対外関係>

(1)対米FTA関係

(イ)6日、「コ」下院本会議において対米FTAが承認された。また、14日、上院本会議においても同協定が承認された。今後同協定は、憲法裁判所審査、大統領による認可へと進む。これを受けプラタ商工観光相は、「結果に満足している。この承認によって外国投資の呼び込み効果等、「コ」経済の国際化へ向け重要なメッセージを発することになった。」と述べた。

(ロ)プラタ商工観光相とスーザン・シュウェブ米通商代表は28日、ワシントンにおいて対米FTAの修正案に署名した。同修正案は、本年9月乃至は10月頃より米国議会において審議される見込み。一方「コ」においては本年720日以降に議会に提出される見込み。

(ハ)ウリベ大統領は6日から9日にかけてワシントンを訪問し、民主党議員に対し対米FTA批准の緊急性、重要性、及び批准が両国に与える利益等を説明し、同協定の早期承認とATPDEAの延長を促した。しかし、これに対する反応はよくなかった他、シュウェブ米通商代表等は、「「コ」国内の人権問題や政治的諸問題による対「コ」FTA批准には時間を要する。一方でペルーの対米FTA8月にも米議会において承認される見通しとなっている。」と述べた。

(ニ)アンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)の延長に関し、米国民主党及び共和党は20082月末まで8ヶ月間延長することで合意に達した。同協定は6,000品目以上の「コ」製品を特恵関税で取り扱うというもの。同協定は27日米下院で、翌28日同上院で承認され、29日にブッシュ大統領が署名を行ったことにより、30日の同協定失効前に延長が成立した。同協定延長は、対「コ」FTAの米議会承認が行われていない中で、「コ」輸出業者にとって非常に良いニュースとなった。一方「コ」政府は米議会が対米FTAの審議を本年9月乃至は10月に開始し、ATPDEAが失効する2月末ごろの批准に期待感を寄せている。

(2)対欧州連合関係

14日、ボリビア・タリハで開催された第17回アンデスサミットにおいて、アンデス共同体(CAN)と欧州連合(EU)との間でFTA交渉を正式にスタートさせることで合意した。同交渉は単に商業的性格のものでなく、両共同体の構成国の生活水準の向上等を目的としたより広範なものとなっている。CANEU間に相当の相違がある他、CAN内部においてもボリビアとエクアドルが優遇措置を求める等、足並みの乱れが指摘されている。

(3)対アンデス共同体(CAN)関係

17回アンデスサミットにおいて、「コ」は今後1年間アンデス共同体(CAN)の議長を務めることに合意した。同議長を務めることにより、同自由貿易圏の向上につとめ、外国から同地域に対する更なる投資誘致を目的としている。

(4)対中米諸国関係

ヴァレンシア大統領府主席顧問は、「「コ」がプエブラ・パナマ計画(PPP)に参加することで、中米諸国と南米諸国の統合の橋渡し役になった。」と述べるとともに、2005年から2007年にかけてPPPにおいて提案された8つのイニチアチブ及び観光やバイオ燃料開発における関係各国との調整等、新たな役割に関する「コ」の取り組みを強調した。

 

<国内情勢>

(1)「コ」主要港のコンセッション契約が成立

21日、ウリベ大統領は、ブエナベントゥーラ港(太平洋岸の主要貿易港)のターミナル等の運営(コンセッション)に関し、落札業者との間で総額45000万ドルに及ぶ先20年間のコンセッション契約が成立したと発表した。同時にサンタマルタ港(大西洋岸)で12600万ドルの、また、バランキージャ港(大西洋岸)で1億7800億ドルの新たなコンセッション契約が成立した。更に、運輸省及び民間委託公社(INCO)により、ブエナベントゥーラ港に隣接するアグアドゥルセ港のコンセッション契約についても落札業者が先30年間のコンセッション契約に関する認可を受けたことが発表された。

(2)世界銀行が「コ」道路プロジェクトに投資決定

ガルシア運輸省次官は、今後1年の間に「ルータ・デル・ソル」プロジェクト(ボゴタと大西洋岸の主要港サンタマルタ港をつなぐ道路プロジェクト)に対し、およそ20億ドルの世界銀行や民間年金資金等の融資が行われる見込みと発表した。

(3)企業動向

(イ)本年第1四半期に「コ」国内で前年同期比15%増の10,154社の企業が新規に誕生した。特にボゴタ首都区では、4,322社の企業が新たに誕生した。一方で不安定な為替相場、利子率の上昇等から2,786社が倒産した。

(ロ)エネルギー市場の代表的企業であるISA社の子会社、XM社は本年5月の電力需要が前年同月比4.4%増になったと報じた。また、最近12ヶ月間のエネルギー需要は前年同期比4.8%増となり、本年5ヶ月間では前年同期比5%になったとした。分野別にみると特に建設業において電力需要の伸びが顕著(23.7%)であり、ついでレストランやホテル等のサービス業分野(8.2%)となっている。

(4)自動車販売台数

5月期の自動車販売台数は21,643台となり、本年初5ヶ月間の新車販売台数は前年同期比46.4%増の102,333台となった。この好状況は、経済成長による個人消費者等の自動車に対する購買意欲の増大によるもの。

(5)その他

(イ)29日、中央銀行は本年第1四半期の外国直接投資が前年同期の2倍の234200万ドルになったと報じた。分野別に見ると、製造業に87100万ドル、ついで石油58300万ドル等となっている。一方同時期における「コ」からの対外投資額が前年同期19300万ドル減って、36900万ドルになったと報じた。また、外国から「コ」への送金額は前年同期比13.2%増の98900万ドルになったとした。

(ロ)国税関税庁(DIAN)は税金等が免除になる経済特区(Zona Franca)を設置する13の要望に対し調査・研究した結果、当該特区の設置により20億ドルの投資3千人の雇用が創出される見込みと発表した。同プロジェクトは欧州、米国、南米諸国等の企業から要望があったもので、アトランティコ県のガラパ市に約120ha規模の特区の設置を予定している。

 

2.主な経済指標

(1)経済成長

(イ)国家統計庁(DANE)は、本年第1四半期の経済成長率は8.09%になり、同時期としては過去29年間で1978年の8.47%に次ぐ数字と発表した(前年同期5.48%)。分野別では鉱工業が最も成長し34.39%、ついで建設業28.27%、製造業14.59%となっている。また、鉱工業の各分野別では、織物20.71%、ガラス製品18.59%、化学製品9.53%となっている。レンテリーア国家企画庁(DNP)長官は、本年は6%の成長が期待できるとしている一方、経済アナリストは中央銀行の公定歩合等の引き上げが経済に影響を及ぼしかねないとしている。

(ロ)スルアガ蔵相は、経済セミナーの閉会挨拶の中で、「「コ」の経済成長は短期的投機的投資ではなく、長期的生産的な投資によって支えられており、それが各生産部門に反映されている。本年に入り投資は国内総生産の25%に達する規模に成長しており、さらなる投資の増加が期待できる。」と述べた。

(2)鉱工業及び建設業

DANEは、本年初4ヶ月間の製造業が前年同期比14.65%増の成長になったと報じた。これは鉄鋼分野、自動車及び自動車部品分野、飲料分野等計40の分野において好調な結果だったため。一方本年初4ヶ月の同分野の売上げは前年同期比14.19%増となった。また、4月の建設着工申請面積は前年同期比27.5%増になったと報じた。

(3)コーヒー

(イ)国立コーヒー生産者連盟(FNC)は、15日、5月のコーヒー生産が前年同月比8.5%減の99.4万袋になったと報じた。また、輸出量は今般のペソ高の影響を受けて前年同月比14%減の75.2万袋になった。

(ロ)26日、アリアス農相はFNC80周年特別総会の中で以下の助成策を発表した。(a)コーヒー125kgあたり価格につき、400,000ペソを最低価格として保証する。生産部門に対し890億ペソを投入する(うち、790億ペソを政府が、100億ペソをコーヒー基金が出資する)。(b)コーヒー農家の生産性改善のため、この5年間で30haを対象としたコーヒー農家改善計画を行う。総額1.7兆ペソ(うち、政府出資5400億ペソ、コーヒー基金出資4320億ペソ、生産者への貸付融資8100億ペソ)。

(4)炭化水素等

(イ)石油公社(Ecopetrol)は、5月の石油生産量が一日あたり521,000バレルとなり、本年第1四半期平均の一日518,000バレルよりも若干増加したと報じた。また、Ecopetrolは本年後半も引き続き増加傾向が続く見込みとしている。

(ロ)伯の石油会社「ペトロブラス」社のディルセウ・アブラハオ総裁は、「コ」におけるバイオ燃料産業に参入することを発表した。同総裁は、本年末までに同燃料生産に必要な交渉を終了させたいとしている。

(ハ)8日、中米諸国から40人以上の政府高官が「コ」を訪問し、プエブラ・パナマ計画(PPP)に基づき「コ」政府との間でバイオ燃料開発計画を含めた総合的なエネルギープロジェクトにつき協力していくことで合意した。同プロジェクトは、グアテマラ及びホンジュラスを他の中米諸国のモデル地域として指定し、「コ」のノウハウを用いて同国に小規模プラントを建設するというもの。アリアス農相は、「同プロジェクトの実施により、「コ」が中米地域でさらなる可能性を発揮することになる。」と述べた。一方、「コ」を訪問した中米諸国の政府高官は「コ」のバイオ燃料分野におけるリーダーシップの重要性を強調しつつ、将来「コ」では世界でトップレベルの生産が可能と述べた。

(5)金利

15日、中央銀行は公定歩合を0.25%引き上げ9%にすると発表した。20064月以来12回目の引き上げ措置となる。これは今般のインフレが、持続的成長のための設定目標(年3.5%4.5%)を上回る見通しとなったため。また、市中での民間資金借入動向が当初予測よりも減少傾向を示したこと等も要因となっている。

(6)貿易

(イ)DANEは、本年1月から4月までの輸入額が前年同時比29.9%増の98.56億ドルになったと報じた。前月同様に自動車及び自動車部品等の好調(前年同時期比61.7%増)のほか、建設資材等の伸び(前年同時期比34.3%増)が主な要因となっている。主な輸入先としては、米(26.6%)、伯(8.9%)、中(8.7%)となっている。一方本年初4ヶ月の輸出額は前年同期比17.3%増の73.14億ドルとなった。この結果2007年初4ヶ月の収支は25.42億ドルの赤字(前年同期2.04億ドルの黒字)となった。

(ロ)「コ」・「べ」商工会議所の試算によれば、本年の「コ」の対「べ」輸出は35億ドルの過去最高の数値に達する見込みとなっている。「コ」経済は本年は8%の成長が期待されるほか、自動車、食料品分野等の輸出が非常に好調であることが要因。

(7)雇用

(イ)DANEは、5月の平均失業率は前月より0.4%増加した結果11.4%(前年同月11.8%)になったと報じた。一方主要13都市の平均失業率は、11.4%(前年同月13.1%)となった。これにより失業者数は約232万人と推定される。

(ロ)「コ」政府は、正規雇用を維持するための施策を発表した。低利融資及び直接補助金を組み合わせ、本年2000億ペソを投入する。スルアガ蔵相によれば、1000億ペソを商工業及び観光業、1000億ペソを農牧業に配分する予定。

(8)為替

(イ)6月の対ドル為替レートは、月初1ドル1,900.09ペソ、月末1ドル1,960.61ペソ、最高値1,877.08ペソ(5日)、最安値1.982.29ペソ(27日)となり、引き続き大幅ペソ高が続いた一方、投資家等が伯レアルや墨ペソ等のより安定的な通貨に投資する傾向が生じ、月末に若干のペソ安傾向を示している。

(ロ)中央銀行は13日、5月の1ヶ月間に36000万ドルのドル買い介入を行ったと発表した。これにより本年5ヶ月間のドル買い介入総額は488700万ドルとなった(前年1年間のドル買い総額は178000万ドル)。一方で、同銀行はこのドル買い措置等により外貨準備額は前年末の1436315万ドルから201600万ドルへ増加したと報じた。

(ハ)全国金融協会(ANIF)セルヒオ・クラビホ総裁は、政府及び中央銀行がとった今般のペソ高是正策は近いうちに効果を発揮すると述べる一方、ペソ高が引き起こす深刻な問題は輸出業者の国際市場における競争力低下ではなく、より低価格で外国製品が国内に輸入されるため、国内産業の競争力の低下が深刻になること、を指摘した。

(9)消費者物価指数

DANEは、6月の消費者物価指数が0.12%(前年同月0.30%)となったと報じた。また、本年6ヶ月間では4.55%(前年同期3.02%)、過去12ヶ月間では6.03%(前年同期3.94%)となった。

(10)対外債務

(イ)中央銀行は、第1四半期の対外債務が前年同期(3755800万ドル)から479000万ドル増加し、4234800万ドルになったと報じた。うち、公的債務が2722000万ドル、民間部門が1512700万ドルとなった。これにより国内総生産に占める割合は25.3%(前年同時期27.6%)となり若干低下した。

(ロ)12日、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)社は、「コ」を含む25カ国の格付けにつき検討を行い、「コ」を含む4カ国の変更を行ったと発表し、「コ」外国債の格付けを「BB+」から1999年以来8年ぶりに「BBB-」へ引き上げた。しかし国としての「コ」の格付けは依然として「BB+」のままである。一方S&P社の格付け変更を受け、同社以外の格付け機関であるMoody'sは「コ」外国債の格付けを「Ba2」から「Ba1」に、同じくFitchは「BB」から「BB+」にそれぞれ引き上げた。