コロンビア経済定期報告(7月)
【ポイント】
●4日、ウリベ大統領は2007年法律第1143号「「コ」・米貿易促進協定」に署名した。これは昨年11月22日に合意した対米FTAの一部に関し、米議会より要望のあった環境、労働環境、及び知的所有権等の条文を修正するもの。他方、対米FTAは憲法裁判所での審査に入っており、今後は、「コ」政府は同FTA実施に向けた国内法の整備に着手する。
●16日から20日にかけて、リマで「コ」及びペルーの対加FTA交渉の第1ラウンドが行われた。同交渉の「コ」代表を務めたムニョス商工観光省次官は第1ラウンドにおける同交渉の進展を強調した他、加が市場アクセス分野における不均衡の原則(関税率等を無差別に適用しない原則)を合意したことは、「コ」にとってきわめて重要と述べた。
●ウリベ中央銀行総裁は、本年第1四半期の経済成長率が8%を記録しており、「コ」経済は成長の最盛期にあると述べた。
●本年初6ヶ月間の自動車販売台数は、前年同期比42%増の123,410台となった。本年後半もペソ高及び「コ」経済の成長により引き続き販売台数の伸びが期待される。
●7月の為替相場は、1,900ペソ台の小幅な値動き(変動値は71ペソの範囲内)となり、月初1,960.61ペソ、月末1,958,50ペソとなった。最高値は1,912.20ペソ(23日)、最安値は1,984.10ペソ(27日)となっている。
【本文】
1.主な出来事
<対外関係>
(1)対米FTA関係
(イ)4日、ウリベ大統領は2007年法律第1143号「「コ」・米貿易促進協定」に署名した。これは昨年11月22日に合意した対米FTAの一部に関し、米議会より要望のあった環境、労働環境、及び知的所有権等の条文を修正するもの。他方、対米FTAは憲法裁判所での審査に入るが、その後は、同FTA実施に向けた国内法の整備に着手する見込み。同FTAは米議会で依然として承認されておらず、米民主党議員が「コ」における基本的人権及び暴力の抑制等に関して具体的な成果を求めるなど、事態は混迷している。
(ロ)対米FTA交渉で「コ」代表を務めたゴメス氏は、現在の米議会での審議状況は民主党が強く反対するなど好ましい状況にはないとしつつも、アンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)が失効する2008年2月末までに米議会が同FTAを承認するとの確信を示した。また、米民主党議員が8月には米下院で何れのFTAも審議しない旨述べたことに対し、同院での対「コ」FTA審議は9月から開始される見込みと述べた。
(ハ)22日、ウリベ大統領は停滞している対米FTAの米議会承認を促すため、数人の閣僚とともに米国を訪問した。「ウ」大統領は米ニュージャージー州において、対米FTAの発効により「コ」では多くの雇用が創出されることになる他、麻薬生産や犯罪の減少にもつながるとして米議会での早期承認を訴えたものの、具体的成果は得られなかった。
(2)対カナダFTA関係
(イ)16日から20日にかけて、リマで「コ」及びペルーの対加FTA交渉の第1ラウンドが行われた。同交渉の「コ」代表を務めたムニョス商工観光省次官は第1ラウンドにおける同交渉の進展を強調した他、加が市場アクセス分野における不均衡の原則(関税率等を無差別に適用しない原則)に合意したことは、「コ」にとって極めて重要と述べた。
(ロ)「コ」、ペルー、加の3カ国は今次第1ラウンドで今後の交渉テキストに関する確認を行うとともに、合計6ラウンドをほぼ毎月開催していくことでも合意した。次回第2ラウンドは本年8月4日から7日まで加のオタワで行われ、第3ラウンドは10月1日から5日までボゴタで、第4ラウンドは11月12日から16日までペルーで、第5ラウンドは12月にオタワで第6ラウンドは来年1月に「コ」においてそれぞれ開催される予定。
(3)対欧州連合(EU)関係
17日、プラタ商工観光相はブリュッセルで開催されたEUとボリビア、「コ」、エクアドル、ペルーのアンデス共同体諸国のハイレベル会合において、EUとの経済連携協定(Acuerdo de Asociacion)交渉の第1ラウンドが9月17日から21日まで「コ」で開催されることになったと発表した。同交渉では合計14分野、即ち、関税、農業、原産地関係法制、関税協定等の分野及び論点を対象に議論が行われる予定。EUは米国に次ぐ、「コ」にとって重要な貿易相手国のひとつであり、2001年から2006年にかけての輸出額は、23.99億ドルから43.62億ドルへほぼ倍増している。
(4)対ベネズエラ関係
24日、グティエレス石油公社(Ecopetrol)総裁は、「コ」・「ベ」間のガスパイプライン敷設工事に関し、「ベ」側で99%、「コ」側で87%、全体計画の93%が完成したと述べた。同パイプラインは本年8月中には竣工する見込み。また、同パイプラインを使っての対「ベ」輸出は、2008年からグアヒラ県バジェナ市から一日あたり5000万立方フィートを輸送する予定。「ベ」石油公社(PDSVA)の推計によると、同パイプラインは全長224.4kmで、総投資額は3.35億ドルとなっている。
(5)対パナマ関係
フランコ関税国税庁(DIAN)長官は、パナマからの商品流入制限措置を継続することを発表した。同措置は、パナマからの同国製の繊維、紙製品等につき、バランキージャ港(大西洋岸の主要貿易港)、エル・ドラード空港(ボゴタ首都区の国際空港)向けの輸出につき、麻薬取締等の観点から規制するというもの。
<国内情勢>
(1)本年後半にかけての「コ」経済の見通し
ウリベ中央銀行総裁は、本年第1四半期の経済成長率が8%を記録しており、「コ」経済は成長の最盛期にあると述べた。
(2)通常国会開始される
20日、通常国会が開始された。前国会において対米FTA及び国家開発計画等重要法案が可決されたため、今国会における経済関係の重要案件は2008年度予算案審議を除き見受けられない。
(3)財政状況
DIANは、本年初6ヶ月間の税収が前年同期比17.7%増の31.4兆ペソになったと報じた。経済成長を受けた消費の増加によるIVAの伸び等が主な要因。
(4)企業動向
(イ)トリマ県のプラド中央水力発電所の競売に関し、西企業「UNION FENOSA」社の子会社であるEPSA社が1050億ペソで落札した。同社は、今後の「コ」の経済成長による電力需要の増大に備えた発電所の拡張計画を発表した。
(ロ)シルバ全国コーヒー生産者連盟(FNC)総裁は、国立コーヒー研究所(CENICAFE)において、コーヒー果肉がバイオ燃料の原料として必要な糖分等を有しているか否か研究を進めているとした上で、2008年に初めての実験プラントを建設することを明らかにした。同総裁は「バイオ燃料製造にあたり、価格面においてコーヒーがトウモロコシと同程度の競争力を有しており、コーヒー果肉の残りかすは有効な肥料になる。」と述べ、コーヒーの持つ利点を強調した。同プロジェクトは、今後日本企業の技術協力により進められる予定。
(5)自動車販売台数
本年初6ヶ月間の自動車販売台数は、前年同期比42%増の123,410台となった。本年後半もペソ高及び「コ」経済の成長により引き続き販売台数の伸びが期待される。
(6)その他
(イ)商工観光省は本年上半期に「コ」を訪問した外国人数が前年同月比17.6%増の561,624人になったと報じた。国別では米国(129,635人:前年同期比36.7%増)、「ベ」(70,010人)、ついでエクアドル(54,659人)となっている。一方ヨーロッパでは西(31,495人)が最も多く、次いで独、伊、仏、英となっている。訪問地先別では、ボゴタ首都区が292,900人と最も多く、ついでカルタヘナ(62,450人)、メデジン(48,261人)、カリ(47,695人)等となっている。
(ロ)「コ」主要14の港湾、空港等の取り締まりを民営化するに当たり、どの程度までの貨物を検査するかにつき、商工観光省と大統領府との間で議論が続いている。DIANは国際的な信用を獲得するため、麻薬、薬物及び武器等の違法商品等の取締りを問題なく行えるようにすることが非常に重要だとしている。
(ハ)20日、商工観光省はアンデス共同体諸国からの輸入に関し、パルプ、陶器製品等の産品の関税率を、10%から5%にすることを承認した。これは「コ」国内の需要の増大により現在の輸入量では不足が予測されるため。同措置は、本年12月31日までの期限が設定されている。
2.主な経済指標
(1)経済成長
国連・ラ米経済委員会(CEPAL)は、本年のラ米の経済成長は世界経済の好調を受け、予測よりも上回り、4.7%から5%の成長になる見込みと発表した。また、同委員会は本年の「コ」の経済成長は6.8%と予測している。
(2)鉱工業及び建設業
(イ)国家統計庁(DANE)は本年初5ヶ月の鉱工業生産の成長率が14.13%(前年同期6.67%)と大幅な伸びになったと報じた。これは、製鉄部門(54.19%)、鉱業(32.10%)、自動車及び自動車部品(47.19%)等の伸びによるもの。DANEは同部門における雇用が本年初5ヶ月に4.06%増加したと同時に、同期間内の売り上げも13.37%増加するなど「コ」経済の牽引役を果たしているとしている。
(ロ)DANEは、本年初5ヶ月の建設着工申請面積が前年同期19.15%増の約730万平方メートルと報じた。
(3)コーヒー
国立コーヒー生産者連盟(FNC)は、9日、6月のコーヒー生産が前年同月比3.8%増の121.9万袋になったと報じた。また、輸出量は前年同月比2.8%増の90.6万袋になった。
(4)炭化水素等
(イ)31日、鉱山・エネルギー省は8月1日よりレギュラーガソリン価格を1ガロン当たり27ペソ引き上げ、6,420.13ペソとすることを発表した。本年に入ってから8回目の値上げとなる。これは、世界的な原油価格の高騰、及び7月の若干のペソ安傾向を受けたもの。
(ロ)16日、Ecopetrolとオイルメジャーのシェル社は「コ」東部の石油探索を共同で開始すると発表した。両社がそれぞれ50%の株式を有し、探査に関しては主にEcopetrolが中心となって行う。シェル社は「コ」国内では1936年以来、化学製品及び潤滑油等の分野で活動を行ってきたが、今後は石油生産分野においても活動を行う(精製のためのプラント等の建設予定)。
(ハ)ベンデック全国バイオ燃料連盟総裁は、2020年には「コ」国内に55のプラントが建設され、1日当たり約1千万リットルのバイオ燃料が生産されると発表した。また、米国等の石油の大量消費国が今後バイオ燃料にシフトすることが予想されるため、「コ」がラ米地域における同燃料の主要な輸出国になる可能性が大いにあると述べた。
(5)金利
27日、中央銀行は公定歩合を0.25%引き上げ9.25%とすることを発表した。2006年4月以来13回目の引き上げ措置。同措置によりインフレの抑制効果が特に期待されている。
(6)貿易
DANEは本年1月から5月までの輸入額が前年同期比28.8%増の126.24億ドルになったと報じた。特に自動車及び自動車部品(前年同期比61.3%増)、機械及び鉄鋼(同45%)等で伸びが顕著。主な輸入先は、米国(26.4%)、墨(9.2%)、中国(9%)、伯(8.3%)、「ベ」(4.8%)、日本(4.1%)となっている。経済アナリストは、過去12ヶ月間で18.7%もペソ高が進行したことが大きな要因と指摘している。一方本年初5ヶ月間の輸出額は前年同期比17.6%増の111.83億ドルになったと報じた。自動車、自動車部品及び生物等の対「ベ」輸出が引き続き好調となり、前年同期比69.3%の大幅な成長を記録している。この結果2007年初5ヶ月の収支は14.41億ドルの赤字(前年同期3.10億ドルの黒字)となった。
(7)雇用
DANEは、6月の主要13都市の平均失業率が前月より0.3%上昇し、11.7%(前年同月12.5%)になったと報じた。一方で同月の全国平均失業率は、11.1%(前年同月10.5%)になったと報じた。これにより雇用者は約1813万人、失業者は約225万人と推定される。経済アナリストは、本年第1四半期の経済成長率が8.0%になったことを受け今後は更なる改善が予想されるとしている。
(8)為替
7月の為替相場は、1,900ペソ台の小幅な値動き(変動値は71ペソの範囲内)となり、月初1,960.61ペソ、月末1,958,50ペソとなった。最高値は1,912.20ペソ(23日)、最安値は1,984.10ペソ(27日)となっている。26日以降、米国での住宅市場問題をきっかけとして、ペソ安ドル高傾向を示した。経済アナリストは同ペソ安について、伯や「コ」等貨幣価値の上昇した国の貨幣を売却することにより、当面の利益を確保しようとする投資家等の動きによるものだとしている。
(9)消費者物価指数
7月の消費者物価上昇率は0.17%となった(前年同月0.41%)。これにより本年1月から7月までの6ヶ月間では4.72%(前年同期3.44%)、2006年8月からの12ヶ月間では5.77%(前年同期4.32%)となった。今月に入り、インフレ傾向は下げ止まりの傾向を示し始めたものの、政府の本年インフレ目標である年3.5%〜4.5%の達成は難しい状況にある。この状況に関しウリベ中央銀行総裁は、同目標達成は難しいとして、年5%程度ならば許容範囲との認識を示した。
(10)対外債務
中央銀行によれば、本年5月末時点における対外債務残高は432億4100万ドル、対GDP比25.9%となり、前年同月(375億4700万ドル)と比較し、引き続き金額ベースでの増加及び対GDP比での減少が続いている。うち、公的部門が275億2500万ドル、民間部門が157億1600万ドルとなっている。