コロンビア経済定期報告(8月)
【ポイント】
●プラタ商工観光相は、今後FTA交渉を行っていく候補国として54カ国を発表した。これらのFTAにより、現在の総輸出額243億9000万ドルを2010年には400億ドルにすることを目標にするとした他、新たなフリーゾーンの設定等、投資誘致政策を同時に行うと述べた。
●29日、上下院第2委員会は、米・「コ」FTA修正案を可決した。同修正案は、知的所有権分野において特許制度の項目を削除する、労働分野において国際労働機関(ILO)の諸原則を組み入れる等の他、その他環境、紛争解決手段等の分野においても修正が加えられている。同修正案は、9月第2週に上下院の各本会議で審議される見込み。
●本年7月の自動車販売台数は引き続き好調を維持し、21,979台となった結果、本年初来7ヶ月では前年同期42.1%増の145,389台となった。
●スルアガ蔵相は、本年前半の対「コ」直接投資額が35億ドルを超えたことから、本年1年間の同投資額が65億ドルから70億ドルに達する見込みと発表した。これは「コ」の国際的信用の回復と本年第1四半期には8%を記録するなど着実な経済成長によるもの。
●DANEによれば、8月の消費者物価上昇率は−0.13%となり、過去19年で最も低い数値になったと発表した(前年同月0.39%)。これにより本年1月から8月までの8ヶ月間では4.58%(前年同期3.85%)、過去12ヶ月では5.22%(前年同期4.72%)となった。
【本文】
1.主な出来事
<対外関係>
(1)今後の「コ」投資誘致戦略
プラタ商工観光相は、今後FTA交渉を行っていく候補国として54カ国を発表した。これらのFTAにより、現在の総輸出額243億9000万ドルを2010年には400億ドルにすることを目標にするとした。また、積極的な同FTA締結交渉の他、新たなフリーゾーンの設定等、投資誘致政策を同時に行うと述べた。一方、新たなFTA主席交渉官としてドゥアルテ氏が就任した。同氏は本年末までの目標として、EFTA諸国(アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン)及びカナダとのFTA交渉の終了及び欧州連合(EU)とアンデス共同体(CAN)の連携協定(Acuerdo de Asociacion)交渉の開始を掲げた。(なお、ドゥアルテ氏は本邦での勤務経験を有している他、日・「コ」商工会議所の有力会員である。)
(2)対米FTA関係
(イ)29日、上下院第2委員会は、米・「コ」FTA修正案を可決した。同修正案は、知的所有権分野において特許制度に関する項目を削除する、労働分野において国際労働機関(ILO)の諸原則を組み入れる等の他、環境、紛争解決手段等の分野においても修正が加えられている。同修正案は、9月第2週に上、下院それぞれの本会議で審議される見込み。
(ロ)13日、ウリベ大統領は、バルコ在米「コ」大使と対米FTAの米議会での今後の批准の見通し等につき会談した。同大使は、同FTAの審議開始がペルーの対米FTAが承認される9月末以降になる見通しである、審議入りしたとしても承認までの道のりは非常に厳しいと予想されると述べた。
(3)対加FTA関係
プラタ商工観光相は、ペルー及び「コ」の対加FTA交渉第2ラウンドが、9月4日から7日まで加オタワで開催される見込みであり、各分野の交渉において良い結果が期待できる見込みと発表した。
(4)対EFTA諸国関係
ドゥアルテ「コ」主席交渉官は、対EFTA諸国のFTA交渉第2ラウンドが今月27日からリマで開催される見込みと発表した。同第3ラウンドは、本年10月にジュネーブで開催される見込みとなっており、その後本年中に交渉がまとまる予定となっている。
(5)対中米3カ国関係
9日、メデジン市において、ウリベ大統領はサカ・エルサルバドル大統領、ベルシェ・グアテマラ大統領及びセラヤ・ホンジュラス大統領と共にFTAに署名した。ウリベ大統領は、同協定締結をきっかけに4カ国間、及びアンデス共同体(CAD)と同3カ国の関係強化を図ることを強調した他、同協定は同4カ国間の投資を活発化させ、雇用創出を通じた貧困の解消につながると述べた。同協定は72%の産品について特恵関税を認めるもので、今後段階的に関税率を引き下げることになる。今後「コ」国内の手続きとして憲法裁判所の審査を受け、2008年後半には発効する見込み。
(6)プエブラ・パナマ計画関係
アラウッホ外相は、「コ」議会において、墨と中米諸国との統合を促進する共同体であるプエブラ・パナマ計画に対する「コ」の加盟に当たっての立法作業に関し、「コ」にとって同計画に参加することは特にエネルギー分野における協力等の機会の拡大につながると述べた。
<国内情勢>
(1)世界銀行試算
世界銀行は、「コ」が中長期的に現在と同程度の経済成長を維持するためには、道路、港湾、空港等のインフラを整備する費用として、1年あたり約20億ドルが必要と発表した。同時に、ファイナンス、工事の施工等の面においても相当程度の民間投資が必要になると述べた。
(2)「コ」経済概況
ウリベ大統領は、米国でのサブプライム問題について、同問題が内国債等の利子率等に影響をあたえているものの、「コ」政府の経済的手腕に対する信頼は回復していると述べた。
(3)財政状況
(イ)税関国税庁(DIAN)によれば、本年前半の税収は前年同期比18.2%増の36.5兆ペソとなり、当初目標を1.2兆ペソ上回ったと報じた。同収入の内、所得税が15.3兆ペソで最も多くなっている。本年末までの税収見込みは62兆ペソとなっている。
(ロ)ウリベ中央銀行総裁は、政府が国会に提出・発表した2008年度予算総額125.7兆ペソに関し、公債発行額を減少させる一方で、公共事業費を維持することが必要と繰り返した。同予算は現在議会において審議中。
(4)企業動向
(イ)「コ」企業103社からなるグループは、本年第1四半期における業績が前年同期比49%増の2.4兆ペソに達したと発表した。うち、携帯電話会社コムセル社の収益が8140億ペソとなっており、同社以外の102社の業績は前年同期比12.5%増となっている。
(ロ)印企業ミッションが「コ」を訪問し、当国におけるビジネスの開始について期待感を表明した。現在、製薬、インフラ工事等の技術者、石油、ソフトウェア等幅広い分野において印企業が当国に進出しており、2006年の印の「コ」に対する輸出額は、約3.46億ドルを記録しており、一方で「コ」から印への輸出額も6200万ドルとなっている。
(5)自動車販売台数
本年7月の自動車販売台数は引き続き好調を維持し、21,979台となった結果、本年初来7ヶ月では前年同期42.1%増の145,389台となった。
(6)その他
(イ)金融監督庁は、本年6月までの金融仲介業者の利潤額が前年同期比16.15%増の2.46兆ペソに達したと発表し、同分野の業績が好調であるとした。
(ロ)スルアガ蔵相は、本年前半の対「コ」直接投資額が35億ドルを超えたことから、本年1年間の同投資額が65億ドルから70億ドルに達する見込みと発表した。これは、「コ」の国際的信用の回復と本年第1四半期には8%を記録するなど着実な経済成長によるもの。また2008年の同投資額の見通しは、炭化水素分野において多額の投資が予想されているものの、国営企業の民営化等が予定されていないため、本年より減少し、52億ドル程度となる見込みとも述べた。
2.主な経済指標
(1)経済成長
(イ)大蔵省及び国家企画庁(DNP)によれば、「コ」経済は順調な成長が予想され、本年は歴史的な成長が期待できると述べるとともに、本年第2四半期の実質成長率は7%に達する見込みと述べた(前年同期5.96%)。主に建設業がその中心となり同期間内17%、次いで工業12.4%、金融業9%となっている一方、農業は1.9%と低調な伸びになる見込み。
(ロ)カルデナス高等教育開発財団(Fedesarrollo)理事長は、本年前半の実質GDP成長率は、7.5%に達する見込みと述べた。また、本年後半も引き続き好調な経済成長が続き、特に建設業等の分野において伸びが期待できるとして、本年後半の成長率は5.4%と予想され、本年1年間の成長率は6.4%になる見込みと発表した。
(2)鉱工業及び建設業
(イ)国家統計庁(DANE)は、本年前半に手工業部門で新たに3.96%の雇用が増加したと発表した。また、本年第1四半期の売上額は、前年同期比12.66%増になったと発表した。
(ロ)DANEは、本年前半の新規着工申請面積が前年同期比22.29%増の880万平方メートルになったと報じた。内660万平方メートルが住居、220万平方メートルがその他用途となっている。また、全体の60%がボゴタ首都区、アンティオキア県、バジェ・デル・カウカ県となっている。
(3)炭化水素・バイオ燃料等
(イ)27日、「コ」石油公社(Ecopetrol)の民営化措置の第1段階が開始された。即ち、来月27日までコロンビア人を対象として、同企業資本の10.1%に相当する40億8700万株が売却される予定。同株式の価格は1,400ペソとなっており最低1,000株の購入が必要となっている。9月下旬以降、第2段階として外国人に対し、同社の株式が販売される。スルアガ蔵相によれば、ペソ高是正のため行われている強制預金措置(外国から資金を調達してコロンビアに持ち込む場合同金額の40%を銀行に一定期間預金しなくてはならない措置)は、今回適用されないと述べ、同社株式購入にあたり、まったく問題はないとしている。
(ロ)マルティネス鉱山・エネルギー相は、本年「コ」全域46箇所において、新たな油田を探査、掘削活動を行っており、そのうち17箇所から原油が発見されたと発表した。また、本年末までに総計60箇所で探査活動等を行う予定となっており、特にタイローナ・ブロック(「コ」大西洋岸の都市サンタ・マルタ近海地域)では大規模な油田の発見が期待できるとしている。
(ハ)ビエイラ米州開発銀行・バイオ燃料顧問は、「コ」がバイオ燃料生産等に関する投資を行うにあたり、法制度や基幹となる設備が整っているとして、ラ米諸国においては伯についで最もポテンシャルを有している国であると述べた。また、今後13年間で同分野に50億ドルの投資が期待できるとしている他、米国を中心として、米大陸における同燃料の主要な輸出元になりうるとし、その際、対米FTAがさらにその傾向を促すことになると述べた。
(4)コーヒー
(イ)世界コーヒー機関は、伯をはじめ世界全体でおよそ8%のコーヒー生産量の減少を受けて、同価格が先12ヶ月間、上昇傾向を示す見込みと発表した。
(ロ)12日、シルバ全国コーヒー生産者連盟(FNC)総裁は、政府がコーヒー生産者に対して行っているコーヒー125kgあたり400,000ペソの最低価格を補償する補助政策に加え、「コ」全国コーヒー協会が追加的緊急援助として、更に20,000ペソの援助を承認したことを発表した。これにより同125kgあたり420,000ペソが最低価格として保証されることになる。
(5)金利
24日、中央銀行は定例の政策決定会合の後、「コ」におけるインフレ状況等を分析した結果として、公定歩合を現状の9.25%に据え置く旨を発表した。カルデナスFedesarrollo理事長は、中央銀行は引き続きインフレについては注視しており、今回の据置が同公定歩合の上げどまりを示すものではないとした。中央銀行は、公定歩合の引き上げ等の金融政策やペソ高是正のための資金据置政策が民間の金融部門等によい効果を及ぼし始めたとする一方、同政策は持続的な「コ」の経済成長や長期的なインフレ目標達成にとっては、整合性のとれているものだとも述べた。
(6)貿易
DANEは、本年6ヶ月間の輸入額が27.1%増加し、152.93億ドルになったと報じた。同成長は自動車、自動車部品(同分野は前年同期55%増)及び機械(同42.2%増)の好調によるもの。主な輸入元としては、米国(26.3%)、墨(9.4%)、中国(9.1%)、伯(7.9%)となっている。一方本年6ヶ月間の輸出額は前年同期比14.6%増の132.17億ドルとなった。これにより本年初来6ヶ月の貿易収支は20.76億ドルの赤字(前年同期3.12億ドルの黒字)となった。
(7)雇用
DANEは、7月の全国平均失業率は11.2%(前年同月12.5%)、また、「コ」主要13都市の平均失業率が11.3%(前年同月12.8%)となったと報じた。ボゴタ首都区が11.2%、ビジャビセンシオ市が11.3%となっている一方、イバゲ市17.3%、カルタヘナ市15.4%と高くなっている。これにより、雇用者は約1824万人、失業者は約228万人と推定される。
(8)為替
(イ)8月の為替相場は、米国でのサブプライム問題を受けペソ安の展開となり、月初1,958.50ペソ(最高値)、月末2,160.99ペソ、最安値は2,173.17ペソ(30日)となった。
(ロ)本年前半の中央銀行の収支状況は、前年同期比41.8%下落し3719億ペソとなったと報じた。これはペソ高により、ドルの価値が目減りしたため(同期間の同収入額は、前年同期30%減の8351億ペソ)。しかし本年後半に入りペソ安が進行したため、収支状況も若干改善したとしている。
(9)消費者物価指数
(イ)DANEによれば、8月の消費者物価上昇率は−0.13%となり、過去19年で最も低い数値になったと発表した(前年同月0.39%)。これにより本年1月から8月までの8ヶ月間では4.58%(前年同期3.85%)、過去12ヶ月では5.22%(前年同期4.72%)となった。
(ロ)スルアガ蔵相は、8月には若干インフレが抑制されたとする一方、ウリベ中央銀行総裁と同意見であるとして、本年のインフレ目標である年3.5%〜4.5%の達成は依然として厳しい状況であると述べた。