コロンビア経済定期報告(10月)

 

【ポイント】

30日、上院本会議において対米FTA修正案が承認された。今後、憲法裁判所での審査の後、大統領裁可へと進む予定。

●商工観光省は、アンデス共同体(CAN)と欧州連合(EU)との連携協定(AA)第2ラウンド交渉が12月第2週からベルギーのブリュッセルで開催されると発表した。また、プラタ商工観光相は、次回交渉からCAN各国の思惑の違い等により生じる進展の遅い分野と早い分野とを分けて交渉していくことを発表した。これに対し、EU側は一括交渉を主張しており、CAN各国に対し調整を求めている。

●マウリシオ・レイナ高等教育開発財団(Fedesarrollo)副理事長は、「コ」経済が過去数十年のなかで最も好ましい局面を迎えているものの、米国経済の減速、対米FTA議会承認の不透明感等により本年後半の経済成長率が本年前半の7.48%に比べ5.4%と大きく落ち込むことからしても、「コ」経済の減速がすでに始まっていると述べた。

16日、「コ」議会において2008年度予算案「社会発展のための治安と信頼」が承認され、大統領裁可へと進んだ。予算総額は125.7兆ペソとなっている。

10月の対ドル為替相場は若干のペソ高傾向となり、月初2,023.19ペソ、月末1,987.69ペソとなった。うち、最安値2,025.70ペソ(25日)、最高値1,963.07ペソ(11日)となっている。

 

1.主な出来事

<対外関係>

(1)対米FTA関係

(イ)30日、上院本会議において対米FTA修正案が承認された。今後、憲法裁判所での審査の後、大統領裁可へと進む予定となっている。

(ロ)12日、グティエレス米商務長官は、数人の米議員とともに本年9月以来2度目の「コ」訪問を行った。ウリベ大統領との会談の中で、何ら良い材料を得ることなしに時間だけが経過することはよくないことであり、出来るだけはやく米議会において同協定案を投票にかけるよう求めたが、米議員に残された時間は多くないとも述べた。また、対米FTAでなくアンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)を採決する動きに対し皮肉を述べた。ウリベ大統領は、米議員が自らの目で「コ」の進展を把握し、同僚の議員等に報告することは非常に重要としつつ、同協定の採決の際に影響を及ぼすことになると述べた。

(2)対加FTA関係

5日、「コ」及びペルーと加のFTA交渉第3ラウンドが終了した。ドゥアルテ・「コ」首席交渉官は、ほぼ全ての小委員会において合意が得られたとしつつ、繊維、被服、皮革製品等の分野に関しては、一括した関税の引き下げ措置に向けた交渉を行う事になると述べた。また、11月には原産地証明、衛生表示、サービス等の規制等につき話し合うミニ・ラウンドをリマにて行うと述べた。

(3)対EU関係

(イ)商工観光省は、アンデス共同体(CAN)と欧州連合(EU)との連携協定(AA)第2ラウンド交渉が12月第2週からベルギーのブリュッセルで開催されると発表した。また、プラタ商工観光相は、次回交渉からCAN各国の思惑の違い等により生じる進展の遅い分野と早い分野とを分けて交渉していくことを発表した。これに対し、EU側は一括交渉を主張しており、CAN各国に対し調整を求めている。

(ロ)プラタ商工観光相は本月第3週に西、ベルギー、英等を訪問し、対「コ」投資の拡大を呼びかけた。同大臣は、バイオ燃料、サービス業、観光業等といった「コ」経済の様々な分野に投資する機会について説明を行うと同時に、インフラや租税といった「コ」の各種制度の改善点や治安の改善等、「コ」がビジネスを行うにあたって良い国であることを強調した。

(4)対EFTA諸国関係

プラタ商工観光相は、対EFTA諸国(スイス、アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン)FTA3ラウンド交渉において、14の小委員会のうち農業、協力、税関手続・市場アクセス等の5つが合意に達したと述べた。ドゥアルテ・「コ」首席交渉官は、同FTA交渉を2008年第1四半期内に終了させたいと述べた。本第3ラウンド交渉は、113日まで開催される予定となっており、また、次回交渉が最終ラウンドとなる見込みとなっている。

(5)対ベネズエラ関係

(イ)23日、ノルテ・デ・サンタンデール県ククタ市等の「コ」・「ベ」国境地帯において取引されているコロンビア・ペソの対ボリバル為替レートが最高水準の1ボリバル=0.42ペソになった。これにより、本年当初の1ボリバル=0.70ペソと比較して40%ペソ高ボリバル安が進行したことになる。

(ロ)12日、ウリベ大統領はグアヒラ県カンポ・バジェーナ市において、チャベス・「ベ」大統領及びコレア・「エ」大統領と共に大洋間横断ガス・パイプライン「アントニオ・リカウテ」開通式典に参加した。同パイプラインは全長224.4kmでうち、85.5kmが「コ」領となっている。また、一日あたり5億立方フィートの輸送能力を有しているほか、「ベ」石油公社(PDVSA)が同パイプラインに3.35億ドルの投資を行っている。今後2011年までの4年間に「コ」から「ベ」に対し輸出を行った後、2012年から16年間「ベ」から「コ」への輸出が行われる。

 

<国内情勢>

(1)インフラ整備計画

(イ)30日、ガルシア道路公社(INVIAS)総裁は、「コ」道路整備計画「プラン2500」の対象区間3,125kmのうち1,584kmまでが竣工したと述べた。全区間の工事が終了するのは2008年末の予定となっていたが、請負業者による工事の難航等により2009年末までずれ込む見込みとなった。

(ロ)国家経済社会政策審議会(CONPES)は、20082011年までの「コ」太平洋岸投資計画として9.1兆ペソを投資することを発表した。エル・ドラード空港拡張(ボゴタ首都区の国際空港)、住居への補助金、ブガ市-ブエナベントゥーラ市間の道路2車線化等が計画されている。

(2)「コ」経済概況

(イ)「コ」金融機関「バンコロンビア」銀行経済調査部は、2008年の「コ」経済成長について、経済の減速が予想されるとして、本年の成長率見込みの6.7%から5.6%程度になると予測している他、経済成長のためには各種投資が重要としている。

(ロ)マウリシオ・レイナ高等教育開発財団(Fedesarrollo)副理事長は、「コ」経済が過去数十年のなかで最も好ましい局面を迎えているものの、米国経済の減速、対米FTA議会承認の不透明感等により本年後半の経済成長率が本年前半の7.48%に比べ5.4%と大きく落ち込むことからしても、「コ」経済の減速がすでに始まっていると述べた。

(3)2008年予算の「コ」議会承認

16日、上院と下院の合同会議において、2008年度予算案「社会発展のための治安と信頼」が承認された。予算総額は125.7兆ペソとなっており、歳入面は、66.2兆ペソが税収等から、46.3兆ペソが起債によるもので、5兆ペソが賃貸料収入及び特別積立金収入、8.2兆ペソが公営企業収入となっている。一方歳出面では、一般行政経費64.5兆ペソ(うち、人件費12.6兆ペソ、一般経費3.8兆ペソ、地方交付税交付金及び補助金等47.4兆ペソ)、公債償還費39.3兆ペソ、投資的経費21.8兆ペソとなっている

(4)企業動向

本年9月末時点の企業収益は、ペソ高等の影響もあるものの全体として好調な業績を記録しており、特に家計の消費増を受け大手スーパーマーケット「エクシト」、「カルージャ」、「オリンピカ」等が好調となっている。一方携帯電話会社「コムセル」社が6980万ペソの利益を計上している一方、「テレフォニカ」社は2440万ペソの損失となっている。

(5)自動車販売台数

本年9月の自動車販売台数は、前年同月比12%増の22,222台となり、年初来9ヶ月間では190,549台となった。

(6)その他

貿易振興公社(Proexport)は、本年1月から9月までの訪「コ」観光客数が前年同期比14.2%増の780,891人になったと報じた。訪問先別に見るとボゴタ首都区が452,546人、次いでカルタヘナ市が97,644人、メデジン市が78,478人となっている。一方、観光客の出身国別に見ると、南米地域が40.9%、北米地域が30.2%、欧州連合(EU)地域が16.6%となっている。プラタ商工観光相は、「コ」治安改善が世界各地で認知された結果であるとして、本結果を評価した。「コ」政府は2010年の観光客の来訪者数として、4百万人を目標としている。

 

2.主な経済指標

(1)鉱工業及び建設業

(イ)国家統計庁(DANE)は、年初来8ヶ月間の鉱工業部門の生産は、調査対象48分野中43分野がプラスとなり、前年同期比12.82%増になったと報じた。特に非金属、自動車、鉄鋼、石油等が好調であった。また、同期間内に同分野において前年同期比3.72%の雇用増があった。

(ロ)DANEは、年初来8ヶ月間の建設着工申請面積が前年同期比12.3%増の1230万平方メートルになったと報じた。うち、74%910万平方メートルが住居向けとなっている。本年第2四半期の建設業分野の成長率は、第1四半期の25.7%から6.2%へ大幅に落ち込んだものの、建設着工申請面積が引き続き好調であることから、第3四半期は好成長が期待できると見込んでいる。

(2)コーヒー

(イ)全国コーヒー生産者連盟(FNC)は、本年9月のコーヒー生産が前年同月比9.3%増の89.7万袋になったと報じた。一方同月の輸出量は前年同月比7.57%減の89.1万袋となった。シルバFNC総裁は「コ」政府に対し、ペソ高による輸出減等が与えたコーヒー農家への影響を注視すべきと主張している。

(ロ)4日、コーヒーの国際市場での価格が20053月以来の高値である1ポンドあたり1.40ドルを上回った。これは伯コーヒー地帯での大雨による生産減等によるもの。今般のコーヒーの国際価格の上昇は、ペソ高により、収入が減少しているコーヒー農家にとり、損失をとりもどす好状況となっている。

(3)炭化水素・バイオ燃料等

(イ)「コ」石油公社(Ecopetrol)は、本年前半の石油生産量が前年同期比2.5%減の1日あたり534,809バレルになったと報じた。また、本年1年間の1日あたりの生産量は更に減少が予想され522,000バレル程度になる見込み。これは、クシアナ油田等の大油田における生産減、及び新規油田の発見が進んでいないことによるもの。

(ロ)4日、ウリベ大統領はサンタマルタ市(大西洋岸の主要貿易港及び同地域の主要観光地)において開催された「コ」ホテル協会の年次総会に出席し、バルー地区(サンタマルタ市近郊でマグダレナ川河口の地域)の石炭輸出のための新規港湾建設計画に関し、周辺環境や観光客等に配慮し同建設計画を許可しないと述べた。一方で、今後「コ」政府として同輸出のため新規の港湾建設も必要であるとの認識から、代替地等につき検討していく旨明らかにした。

(ハ)米科学雑誌「Environmental Science and Technology」誌は、バイオ燃料分野において「コ」は、ガーナ、マレーシア、タイ、ウルグアイと並び、低コストでの生産可能性があること等により、外国投資を呼び込みうる最も魅力的な5カ国の中の1つとして選んでいる。

(4)金利

26日、中央銀行は政策決定会合を開き、公定歩合を現行の9.25%を維持することを決定した。本年7月の引き上げ措置以来3ヶ月連続の据え置き措置となる。

(5)貿易

DANEは、年初来8ヶ月間の輸入額は、前年同期比26.8%増の210.18億ドルになったと報じた。一方年初来8ヶ月間の輸出額は、前年同期比20.2%増の182.35億ドルになった。「コ」・「ベ」商工会議所によると、「コ」の対「ベ」輸出は引き続き増加しており、年初来7ヶ月間の輸出額は、前年同期比73%増の2301万ドルとなっている。これにより本年末までの推計値は前年比63%増の4400万ドルに達すると見込んでいる。特に自動車、軽工業製品等が好調。また、2008年の同輸出額の推計値は5439万ドルとなっており、さらに増加が予想されている。

(6)雇用

(イ)DANEは、本年9月の全国平均失業率は10.7%(前年同月12.8%)、また、「コ」主要13都市の平均失業率は10.6%(前年同期12.9%)となったと報じた。これにより推定雇用者数は約1835万人、推定失業者数は約210万人となった。

(ロ)パラシオ社会保障大臣は、本年で約119万人の雇用創出が達成できたとし、特に20068月からの1年間で治安関係の雇用者が約42.9万人増加し、全体で約513万人に達したと述べた。また、鉱工業分野や運輸、商業分野においても同様に雇用の創出が見られているとも述べている。

(ハ)8月期の全国平均失業率が前年の12.6%から10.6%へ改善したものの、「コ」は南米において失業率が2桁ある数少ない国の一つである。「コ」政府は国家開発計画に盛り込まれている2010年までに失業率を8.8%とする目標に取り組んでいるが、経済アナリストは「コ」経済成長見通し等を考慮して、達成は可能であると分析している。

(7)為替

10月の対ドル為替相場は若干のペソ高傾向となり、月初2,023.19ペソ、月末1,987.69ペソとなった。うち、最安値2,025.70ペソ(25日)、最高値1,963.07ペソ(11日)となっている。これにより本年1月からの変動率は15%のペソ高となった。

(8)消費者物価指数

(イ)DANEは、10月の消費者物価指数が対前月0.01%増(前年同月-0.14%)になったと報じた。これにより年初来10ヶ月間では4.68%(前年同期4.00%)、過去12ヶ月間では5.16%となった。分野別では住居(0.36%)、運輸・通信(0.36%)、文化・娯楽(-3.66%)、食料品(-0.17%)等となっている。

(ロ)カノ中央銀行役員は、「国内利子率の上昇により、本年全体のインフレ率は5%以内に抑えられる見込みであり、特に食料品価格の下落がインフレの抑制に寄与している。」と述べた。

(9)対外債務

24日、トーレス大蔵省公債局長は、2008年に世界銀行、米州開発銀行等より約13億ドルの融資を受ける予定であり、また同年予算の資金調達としてさらに10億ドルを国際市場より調達する意向を明らかにした。