コロンビア経済定期報告(11月)
【ポイント】
●15日、プラタ商工観光相は米国政府高官と会談を行い、両国政府がFTAの承認及び関係国内法の整備の時間確保のためとして、2008年2月末に期限を迎えるアンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)を1年から半年程度延長することで合意したと述べた。
●11月の最終週から12月1日にかけて、対加FTA最終第4ランド交渉がリマにて行われた。プラタ商工観光相は、今次ラウンドにおいてほぼ主要な議案は合意に達することが出来たとし、「コ」・加間及びペルー・加間で合意文書の交換が行われたと述べた。
●10月のボゴタ市長選挙で当選したモレーノ氏が公約に掲げている同市のメトロ建設計画に関し、3日、ウリベ大統領はそれまでの方針を変更し、同計画を「コ」政府として援助することを発表した。
●30日、マルティネス鉱山・エネルギー大臣は、12月よりガソリン1ガロンあたりの価格を73.88ペソ値上げし6,653.27ペソとする旨発表した。同値上げ措置により、本年11ヶ月で433ペソ、約7%の値上がりとなる。
●23日から29日にかけて当国カルタヘナで第17回国連世界観光機関(UNWTO)総会が開催され、フランジャリ事務局長は同参加者に対し、「コ」が非常に魅力的な国であるとともに、安全で穏やかな国であるとして、各国が発出している同国への渡航に関する危険情報「Travel Warning」を見直すよう要請した。
【本文】
1.主な出来事
<対外関係>
(1)対米FTA関係
(イ)21日、ウリベ大統領は対米FTA修正法案(2007年11月21日法第1166号)に署名した。これにより「コ」側での一連のFTA修正手続きは完了し、米国側での承認手続きを待つのみとなった。
(ロ)15日、プラタ商工観光相は対米FTA議会承認を促すための米国訪問を終えるに当たって、(a)FTAの米国議会承認のためには15票が不足しているのみ、(b)2008年2月から3月にかけて同投票が実施される見込み、(c)今後3ヶ月間、FTA承認に向けた調整等が活発に進められると述べた。一方、プラタ大臣は2008年2月末に期限を迎えるアンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)延長についても米国政府と議論を行ったと述べ、両国政府はFTAの承認及び関係国内法の整備の時間確保のためとして、同協定を1年から半年程度延長することで合意したとも述べた。
(2)対加FTA関係
11月の最終週から12月1日にかけて、対加FTA最終第4ランド交渉がリマにて行われた。プラタ商工観光相は、今次ラウンドにおいてほぼ主要な議案は合意に達し、「コ」・加間及びペルー・加間で合意文書の交換が行われたと述べた。ウリベ大統領は別の会合の中で、「コ」・加FTA交渉が12月に幸福な結末を迎えることが出来たとし、今後も「コ」経済の好状況を維持するためにも、国内インフラの整備及び各国との経済協定の締結を推進していく必要があると述べた。
(3)対ベネズエラ関係
(イ)21日、ウリベ大統領が人道的人質交換に向けて行われていたチャベス大統領の仲介を停止する旨を発言したことにより「コ」・「ベ」間の外交関係が深刻化しつつある点に関し、ルイサ「コ」・「ベ」商工会議所会頭は「両国は貿易等の面で潜在的に相互に両国を必要としており、これら政治的諸問題が、同経済関係に影響を与えることはないと考えている。」と述べた。
(ロ)米系金融機関シティーグループのエコノミストは、「コ」政府が行った今回の仲介停止措置に関し、米議会内で同民主党議員から「コ」に好意的な発言があがっており、対米FTAの議会承認等に関しては有利に作用したとしている。
(4)対メキシコ関係
8日及び9日、墨において両国の経済状況を勘案したFTA再交渉のための会合が開催された。プラタ商工観光相によれば、同国との通商は良い状況にあり、両国関係は強固となっているものの、FTA締結時期の90年代中盤と現在では両国の経済状況が変化しており、同協定についても調整する必要が出てきていると述べた。ムニョス同省次官は、今次交渉の主な論点は、原産地証明規定等に関する改正、鉄鋼等の非伝統的産品分野、また防疫及び技術的規制等になると述べた。すでに事務レベルにおいては防疫問題等に関し議論が行われている他、墨側からは「コ」が締結しているFTA等のうち、現地証明に関する規定等を照会したいとの要請があり、ムニョス次官は同要請を好意的に受け止めている。両国の交渉官等による交渉開始のため、交渉予定項目リストの交換が近く行われる予定となっている。
(5)対チリ関係
ウリベ大統領はチリで開催された第17回イベロアメリカサミットに出席し、チリとのFTA署名に関し両国間の投資増及び雇用創出等につながるとして評価するとともに、歴史的に見ると「コ」の対チリ投資が多かったが、近年は逆の傾向となっており、「コ」におけるチリのプレゼンスが年々高まっているとした。年初来8ヶ月の対チリ輸出は前年同期比48%の増加、一方輸入は前年同期比37%増となっている。
<国内情勢>
(1)インフラ情勢
(イ)10月のボゴタ市長選挙で当選したモレーノ氏が公約に掲げている同市のメトロ建設計画に関し、3日、ウリベ大統領はそれまでの方針を変更し、同計画を「コ」政府として援助することを発表した。また当初「コ」政府は、同市の大量輸送システム「トランスミレニオ」に係る債務返済が完了する2017年以降に財政援助を行う予定としていたが、2010年以前に関係工事を開始することに反対しない方針を明らかにした。一方、モレーノ新市長は任期中である2009年中にも、政府の支援の有無にかかわらず同メトロ建設に係る入札を開始したいとしている。一方、世界銀行及びアンデス開発公社(CAF)はモレーノ新市長に対し、設計及び工事に必要な資金につき融資する意向を示している。
(ロ)レンテリーア国家企画庁(DNP)長官は、今後4年間に当国のインフラ部門に投資される資金総額が69.09兆ペソになる見込みであり、そのうち31.6兆ペソが民間部門によるものと述べた。主に鉱山・エネルギー、運輸、情報通信部門が投資先となっている。
(2)「コ」経済概況
(イ)税関国税庁(DIAN)は、年初来10ヶ月の税収入が前年同期比15%増の51兆ペソに達したと発表した。同期間の当初歳入見込みは49兆ペソであり、若干上回っている。主な内訳としては、所得税21.8兆ペソ(前年同期比9.6%増)、関税及び付加価値税(IVA)10.8兆ペソ(前年同期比13.8%増)、銀行取引税2.4兆ペソ(前年同期比13.2%増)等となっている。
(ロ)国際通貨基金(IMF)は「コ」政府に対し、税収維持等の対策として、現在の銀行取引にかかる税金の廃止等の税制改革を提案した。これに対し「コ」政府は年間約3兆ペソの同税収入の代替措置が不明確であるとして、同提案に対し消極的な立場をとっている。
(3)炭化水素・バイオ燃料等
(イ)30日、マルティネス鉱山・エネルギー大臣は、12月よりガソリン1ガロンあたりの価格を73.88ペソ値上げし6,653.27ペソとする旨発表した。同値上げ措置により、本年11ヶ月で433ペソ、約7%の値上がりとなる。
(ロ)27日、コロンビア石油公社(Ecopetrol)は自社株を1株1,400ペソで売り出した。「ベ」・「コ」間の外交的諸問題等は影響を与えることなく同社株式は上昇し、29日には1株2,400ペソに達した。
(ハ)5日、ウリベ大統領はシルビア・スウェーデン王妃と共にボジャカ県トゥタ市にある甜菜を原料としたバイオ燃料工場の着工式典に参加した。同工場は、水資源、立地条件や気候等に恵まれており、6,000人の雇用創出が見込まれている。また、建設費用は4000万ドルとなっており、1日あたり30万リットルの生産量となる予定。
(4)その他
(イ)プラタ商工観光相は、インドと投資保護協定及び二重課税防止協定の交渉を開始すると発表した。具体的日程は未定となっているものの、2006年6月に印政府が「コ」政府に対し、新規投資に関する要望を行ったことが今次交渉開始のきっかけとなっている。主に石油、鉱物、鉱工業等が交渉対象となる予定。
(ロ)バレンシア大統領府顧問は、「Doing
Business」として知られる世界銀行が行っている国別競争力ランキングで「コ」順位が83位から66位へ上昇したと述べた。同ランキングでは、伯、亜、「ベ」等のラ米諸国が順位を落としている。
(ハ)23日から29日にかけて、当国カルタヘナにおいて第17回国連世界観光機関(UNWTO)総会が開催された。同会合には、26日にウリベ大統領が参加した他、55閣僚を含む121人の代表が各国から参加した。また、UNWTO事務局12名の他数百人が初めて「コ」を訪問し現状を認識するとともに、観光という異なった見地から「コ」への投資等を検討する機会となった。同会合中にはカルタヘナ市内を視察する機会が設けられ約700名の参加者が同市内を観光した。フランジャリ事務局長は同参加者に対し、「コ」は来訪者を心からもてなす等、非常に魅力的な国であるとともに、カルタヘナ市内を観光したように「コ」は安全で穏やかな国であるとして、各国が発出している同国への渡航に関する危険情報「Travel Warning」を見直すよう要請した。一方、プラタ商工観光相は、「コ」への「Travel Warning」に関し、ペルー、エクアドル、パナマ、印等の参加者と個別に会談を行った(注:日本からは当館牧内参事官、山口専門機関課課長補佐、多田条約課事務官及び荒木国土交通省観光経済課長が出席)。
(ニ)プラタ商工観光相は、「コ」関税制度の改革に関し、「この15年間、政府は改正作業に取り組んできたものの、調整等が難航しており現在まで改正作業は進展することなく数年間凍結されていた。しかし、本年10月末より当国生産組織の競争力強化のため、輸入産品に応じ、2%,8%,15%の関税表を設定する。」と述べた。これに対し「コ」製造業界団体は、業界規制につながるとして否定的な立場を示している。
(ホ)16日、ウリベ大統領は当国カルタヘナ市において、企業に対する恒久的なフリーゾーンを設定する新法が成立し、「コ」政府に対し44プロジェクトが提出されたと述べた。また、外国企業の当国への投資インセンティブとして、「コ」政府と特定企業との間に特別な法体系を設定し、その安定を保証する内容の法規安定法が「コ」議会において成立したと述べた。
2.主な経済指標
(1)経済概況
ウリベ中央銀行総裁は、過去4年間の経済成長が過去数十年間のなかで最も成長した期間であると述べた。また本年の経済成長率の見通しを5.8%〜7.7%の範囲としていたものを、6%から7.8%の範囲になると上方修正した。
(2)その他個別経済指標(かっこ内は昨年同時期の数値)
(イ)鉱工業及び建設業(出所:国家統計庁(DANE))
(@)本年9月の建設着工申請面積数 174.3万u(130.6万u)
(A)年初来9ヶ月間の建設着工申請面積 1,404万u(1,148万u)
(ロ)コーヒー(出所:全国コーヒー生産者連盟(FNC))
(@)10月のコーヒー生産量 112万袋(102万袋)
(A)10月のコーヒー輸出量 96.4万袋(89.3万袋)
(ハ)金利(出所:中央銀行) 11月末の公定歩合 9.50%
(ニ)貿易(出所:DANE)
(@)年初来9ヶ月間の輸入額 240.05億ドル(188.78億ドル 27.2%増)
(A)年初来9ヶ月間の輸出額 211.22億ドル(178.87億ドル 18.1%増)
(ホ)雇用(出所:DANE)
(@)全国平均 10.0%(11.4%)
(A)主要13都市平均 10.3%(12.7%)
(ヘ)為替(対ドル為替レート)
(@)月初 1,987.68ペソ
(A)月末 2,043.11ペソ
(B)最高値 1,987.68ペソ(1日)
(C)最安値 2,094.74ペソ(27日)
(ト)株式指数(出所:コロンビア証券取引所(BVC))
(@)月初 10,630.338ポイント
(A)月末 11,115.781ポイント
(B)最高値 11,438.877ポイント(23日)
(C)最低値 10,630.338ポイント(1日)
(チ)消費者物価指数(出所:DANE)
(@)本年11月 0.47%(0.24%)
(A)本年11ヶ月間 5.17%(4.24%)
(B)過去12ヶ月間 5.41%(4.31%)
(リ)対外債務(出所:中央銀行)
(@)8月末現在対外債務 433.43億ドル(382.87億ドル)
(A)うち公的債務 277.73億ドル(244.39億ドル)
(B)うち民間債務 155.70億ドル(138.48億ドル)
(ヌ)自動車販売台数(出所:Econometoria社)
(@)10月の自動車販売台数 22,489台(21,407台)
(A)年初来10ヶ月間の自動車販売台数累計 213,038台(161,667台)