コロンビア経済定期報告(2007年12月)
【ポイント】
●「コ」・「ベ」間の人道的人質交換をめぐる外交問題を受け、チャベス・「ベ」大統領は、「コ」との通商関係も重大な影響を受けたとし、同国産品を購入する代わりに、伯及び中央アメリカ各国の産品を購入していくと発表した。
●11日、ウリベ大統領はガルシア・ペルー大統領の間で(於:リマ)2002年より発効している投資保護協定の改正案に署名を行った。ペルーにおける「コ」企業のプレゼンス及び「コ」におけるペルー企業進出促進及び保護を目的として、法的安定性の確保、内国民待遇等が主な改善箇所となっている。
●国家統計庁(DANE)は、本年第3四半期の経済成長率を6.74%、年初来9ヶ月間の成長率を7.35%と発表した。これにより同第4四半期が5.95%以上になる場合、同年全体の成長率が7%台となる。国連ラ米経済委員会(CEPAL)は同成長率に関し、引き続き高い成長率を維持し、年全体では経済アナリストの予想を上回り7%と予想している。
●10日、ボゴタ市議会において同市の2008年度予算が可決された。予算総額は、13.1兆ペソとなっており、うちモレーノ新市長が公約に掲げている同市のメトロ建設のための調査費用として100億ペソが計上されている。
●スルアガ蔵相は、2007年前半の対内直接投資額が41.09億ドル(前年同期28.76億ドル)に達したと発表した。同大臣は2007年全体では80億ドルを超え、2008年についても70億ドルを超える見通しと述べた。
【本文】
1.主な出来事
<対外関係>
(1)対米FTA関係
(イ)11日、ウリベ大統領は対米FTA承認祝賀式典出席のためペルーを訪問した際、「コ」・米FTAに関しそう遠くない時期に米議会が良識ある判断を下すよう求めた他、同FTAとアンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)との根本的な違いとしては後者が一時的な取り決めであり、根本的な投資促進には繋がらない点を指摘し、同FTAが投資促進にとって重要と強調した。他方、ガルシア大統領は今般のペルー・米FTAは「コ」の対米FTA発効があって完全になるとして、「コ」政府に対する支援を求めるとともに、近年の「コ」国内における民主主義の進展状況を国際社会へ説明していくことを約した。また、08年ペルーで行われるAPEC会合等において、「コ」が加入できるよう働きかけていくと述べた。
(ロ)11日、コカコーラ社、ウォルマート社、マイクロソフト社、GM社の各CEOは書簡をもって米議会に対し、「コ」とのFTAは同国の輸出業者にとり利益になるとして、「コ」・米間の結びつきを強くするFTAの早期承認を求めた。
(ハ)14日、米国ワシントンにおいてブッシュ大統領とガルシア・ペルー大統領は、ペルー・米FTAに署名を行った。同FTAは、08年6月に発効する見込み。ブッシュ大統領は、米議会に対しできるだけ早く対「コ」FTAを承認するよう求めると述べた他、同様にガルシア大統領も同FTAの早期承認を要請した。
(2)対EU関係
(イ)14日、プラタ商工観光相はブリュッセルにおいて、アンデス共同体(CAN)と欧州連合(EU)の連携協定(AA)第二ラウンド交渉に関して、CAN内部の統合を促進し、良好な自由貿易体制の構築に向けたタイムテーブルを08年2月にEU側に提出することで合意に達したと述べた。同タイムテーブルの提示は、EU側より「コ」、「エ」、ペルー、「ボ」の4カ国の足並みが揃っていないとの指摘があったのに対し、特に通商面におけるCAN内の統合を強化する具体的な展望を示す目的で行われる。プラタ大臣は今次交渉がEU27カ国とCAN4カ国の合計31カ国が参加する非常に重要な交渉であるとしつつ、CANがEU側に対し、交渉対象の7,103品目のうち95%の6,739品目につき共通の関税引き下げを提案していると述べた。一方、ドゥアルテ首席交渉官は、通商14分野において特に進展があったとし、両ブロックの利益を反映した文書に署名するための基礎を固めることができたと述べた。また、第三ラウンド交渉が08年4月21日よりキトで開催されるのに先立ち、両ブロックの交渉官によるビデオ会議が同3月14日より開催される見込みと述べた。また、レジェス「コ」外務省筆頭次官(CAN諸国総代表)は、2008年中にも全交渉が終了する見込みと述べた。
(ロ)22日、ウリベ大統領とマンデルソンEU通商代表の会談が行われ、マンデルソンEU通商代表は、「コ」に滞在し同国の発展状況を確認でき大変満足しているとし、法的安定性が「コ」における欧州企業の投資の伸びを担保していると述べた。また、2007年に行われた2回のCAN・EU間の連携協定交渉が成功裡に終了し、2008年には3回目の交渉が行われる予定と述べた。一方、プラタ商工観光相は同会合の中で、マンデルソン通商代表に対し、対EUバナナ輸出促進のため、今後3年間で段階的に関税を1トン当たり現行の100ユーロ以下にするよう求めた(現在同関税は176ユーロ)。また、同問題に関し、「コ」がEU側から受けている提案は不十分であり、現在ラミーWTO事務局長に調停を依頼しているところであるとも述べた。
(3)対ベネズエラ関係
「コ」・「ベ」間の人道的人質交換をめぐる外交問題を受け、チャベス・「ベ」大統領は、「コ」との通商関係も重大な影響を受けたとし、同国産品を購入する代わりに伯及び中央アメリカ各国の産品を購入して行くと発表した。同大統領の発表は「コ」生肉業者及び生乳業者等「ベ」を主要輸出国としている業界団体の間で懸念を生じた。一方、経済アナリストや「コ」・「ベ」商工会議所は今次発表を政治的パフォーマンスであるとして両国の通商関係に影響はでないと述べているものの、ペソ高ボリバル安等、多くの懸案事項が存在している。
(4)対ペルー関係
11日、ウリベ大統領はガルシア・ペルー大統領との間で(於:リマ)2002年より発効している投資保護協定の改正案に署名を行った。ペルーにおける「コ」企業のプレゼンス及び「コ」におけるペルー企業進出促進及び保護を目的として、法的安定性の確保、内国民待遇等が主な改善箇所となっている。2006年のペルーの対「コ」直接投資額は、200万ドルを超えており対「コ」投資国中27番目となっている。
(5)その他地域統合関係
レンテリーア国家企画庁(DNP)長官は、2008年の1年間、南米地域総合インフラ・イニシアチブ(IIRSA)審議会の議長に就任する。同機関は、南米地域のインフラ整備のための投資プロジェクトを有機的に連結することにより、各国のインフラプロジェクトついて、効果面の最大化を図ることを目的として、政府機関、アンデス開発公社(CAF)や米州開発銀行(IDB)及び民間部門を調整するための機関で、2000年に設立された。現在南米12カ国がメンバーとなっており、運輸、エネルギー、情報通信等の分野で取り組みが進められている。
<国内情勢>
(1)ボゴタ首都区のメトロ建設計画
10日、ボゴタ市議会において同市の2008年度予算が可決された。予算総額は13.1兆ペソとなっており、うちモレーノ新市長が公約に掲げている同市のメトロ建設のための調査費用として100億ペソが計上されている。
(2)2007年及び2008年の「コ」経済見通し
国家統計庁(DANE)は、07年第3四半期の経済成長率を6.74%、年初来9ヶ月間の成長率を7.35%と発表した。これにより同第4四半期が5.95%以上になる場合、07年全体の成長率が7%台となる。国連ラ米経済委員会(CEPAL)は同成長率に関し、引き続き高い成長率を維持しており、2007年全体では経済アナリストの予想を上回り7%と予想している。一方2008年の経済成長率については、米国経済の減速傾向、「ベ」との経済関係の悪化、「コ」予算歳出の増加及び経常収支の赤字により5.5%の成長率になると発表した。これに対しスルアガ蔵相は、懸案事項はあるものの、対内直接投資の伸び及びインフレのコントロール等により現状を維持することは可能であり、「コ」経済は順調に成長路線を歩んでいるとして08年の成長率は5.5%を上回ると述べた。他方、西系金融機関「Bbva」銀行経済調査部は、同年の成長率に関し、鉱工業生産の落ち込み及び消費の減少等により5.4%になる見込みと述べた。
(3)財政政策
(イ)5日、ウリベ大統領は2008年度予算「副題:社会開発のための安全と信頼」に署名した。総額は125兆7150億ペソ。これにより同予算は2008年1月1日より執行される。
(ロ)21日、スルアガ蔵相は2007年度の財政について以下のとおり発表した。中央政府の財政赤字はGDP比3.3%、公的部門の赤字が同0.7%となる。また2008年については、中央政府の財政赤字が同3.3%、及び公的部門が1.4%と見込まれる。公債発行額をさせないことを目的とした財政政策により、2007年公債残高は現在の為替相場レート換算で約146.5兆ペソとなる。2008年に向けての対外資金調達については、26億ドルの起債を予定し、引き続き政府活動の最適化、発電施設の売却による歳入の確保等を通じて、公債残高の対GDP比減少に取り組む。
(ハ)2007年1月から8月までの財政赤字は、4.66兆ペソとなる見込みとなった(歳入46.09ペソ、歳出50.75兆ペソ)。
(ニ)マルティネス鉱山・エネルギー相は、クンディナマルカ県、サンタンデール県、ノルテ・デ・サンタンデール県、ボジャカ県及びメタ県の電力会社の政府保有株式売却プロセスの第2段階を始めると発表した。今次株式売却により得られる収入は、主に各県の競争力強化につながるインフラ整備等に当てられることとなる。
(4)その他
(イ)2007年前半の対内直接投資額は、41.09億ドル(前年同期28.76億ドル)、2007年全体では80億ドルを超える見込みであり、2008年についても70億ドルを超える見通し(スルアガ蔵相)。経済アナリストは外国直接投資がババリア社(「コ」ビール製造会社)等の場合のように、外国企業による国内企業の株式の買収という形で行われており、必ずしも国内雇用の増加に結びついていないと指摘している。
(ロ)プラタ商工観光相は、2007年中に9カ所のフリートレードゾーンを設置し、総投資額は6,050億ペソ、新規雇用増は直接雇用9,621人、間接雇用13,639人が新たに生まれたと述べた。同9カ所のフリートレードゾーンのうち、恒久的なゾーンでさまざまな企業が立地できるものが4カ所、残りは既存のフリーゾーンを拡大したもの、及び特定の企業に対し提供するものである。
(ハ)21日、「コ」政府は、当国トリマ県カハマルカ市の主要幹線道路から800メートルほど離れた農村地帯での発掘調査で、金鉱脈が発見されたと発表した。マルティネス当国鉱山・エネルギー相は2008年2月頃に詳細を公表したいとする一方、「同鉱脈の推定埋蔵量は、世界で10本の指に入る規模に達する見込み。」と述べた。「コ」政府は南アフリカ企業とともに4年前から同市ベレダ・ラ・ルイサ地区で金鉱脈の探査を行っていた。
2.主な経済指標
(1)経済概況(出所:国家統計庁(DANE)、( )は昨年同時期の数値)
(イ)07年第3四半期の実質経済成長率 6.74%(7.74%)
(ロ)分野別(主要項目)
運輸・通信 10.9%(7.52%)
サービス業 9.87%(11.53%)
鉱工業 8.93%(13.30%)
建設 2.60%(18.96%)
(ハ)需要別
消費 6.40%(5.28%)
投資 14.2%(24.9%)
輸出 6.53%(10.51%)
(ニ)07年9ヶ月間の成長率 7.35%(6.42%)
(2)鉱工業及び建設業(出所:国家統計庁(DANE))
(イ)07年10月の建設着工申請面積 208.0万u(150.7万u)
(ロ)年初来10ヶ月間の建設着工申請面積 1,612.4万u(1,298.3万u )
(3)金利(出所:中央銀行) 12月末の公定歩合 9.50%(7.50%)
(4)貿易(出所:DANE)
(イ)年初来10ヶ月間の輸入額 269.27億ドル(212.75億ドル 26.6%増)
(ロ)年初来10ヶ月間の輸出額については未発表
(5)雇用(2007年12月末)(出所:DANE)
(イ)失業率全国平均 9.4%(11.0%)
(ロ)失業率主要13都市平均 9.0%(11.3%)
(6)為替(12月)(対ドル為替レート)
(イ)月初 2,043.11ペソ
(ロ)月末 2,014.76ペソ
(ハ)最高値 1,987.81ペソ(27日)
(ニ)最安値 2,057.40ペソ(4日)
(7)株式指数(12月)(出所:コロンビア証券取引所(BVC))
(イ)月初 11,115.781ポイント
(ロ)月末 10,694.18ポイント
(ハ)最高値 11,131.432ポイント(3日)
(ニ)最低値 10,411.713ポイント(18日)
(8)消費者物価指数(出所:DANE)
(イ)07年12月 0.82%(0.23%)
(ロ)07年12ヶ月間 5.69%(4.48%)
(9)対外債務(出所:中央銀行)
(イ)9月末現在対外債務 435.51億ドル(390.74億ドル)
(ロ)対名目GDP比 25.7%(28.7%)
(ハ)うち公的債務280.85億ドル(251.41億ドル)
(ニ)うち民間債務154.66億ドル(139.33億ドル)
(10)自動車販売台数(出所:Econometoria社)
(イ)11月の自動車販売台数 22,976台(20,670台)
(ロ)年初来11ヶ月間の自動車販売台数累計 236,021台(182,336台)