コロンビア月例報告(10月分)
経済情勢
2008年11月27日
在コロンビア日本大使館
Ⅰ.概要
●ブッシュ米大統領はアンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)の延長に署名。これにより同協定の期限はコロンビア及びペルーは2009年末まで、エクアドル、ペルーは2009年6月末までとなった。
●アンデス共同体(CAN)会合がグアヤキルで開催され、欧州連合(EU)との連携協定(AA)交渉のうち自由貿易協定(FTA)分野について、CAN諸国のうちエクアドルとボリビアは同交渉から外れることが決定し、コロンビアとペルーのみでEUと交渉していく旨合意された。
●ウリベ大統領は、「CANとEUのAA交渉に関し、遅くとも本年11月11日にベルギーで開催予定の外相会談までには再開について合意したい。当国は地上デジタルテレビ方式に関し欧州方式を採用しており、EU側にとっても同協定を交渉する意義はあると考える。」と述べた。
●ボゴタ首都区は、メトロ建設のための設計入札に関し、「西企業「Sener y la empresa Transporte Metropolitano de Barcelona」社が落札。同入札は日本企業2社を含む26カ国の56社が参加して行われた。」と発表した。
●ウリベ大統領は、「当国は世界的な金融危機の影響を最小限に抑えることができる状態にあるが、同危機が引き起こしうる不測の事態に備え、対内直接投資の維持、国内市場における需要低下防止等の対応策を実施。また、当国はファイナンス先として、従来の国や地域に加え、アジア市場、特に日本市場での資金調達の可能性を検討している。」と述べた。
Ⅱ.主な出来事
<対外関係>
(1)対米FTAに関する関係者の発言等
(イ)ブッシュ米大統領はアンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)の延長に署名。これにより同協定の期限はコロンビア及びペルーは2009年末まで、エクアドル、ペルーは2009年6月末までとなった。(17日)
(ロ)ラミレス「コ」上院議員:米・「コ」FTAの米議会承認が難しい状況であることに鑑み、「コ」産品の輸出安定及び外国投資誘致のため、ATPDEAをさらに10年延長することを提案したい。(29日)
(ハ)ムニョス商工観光次官:当国は既に米国とFTA交渉を終了しており、米議会で同協定が承認される可能性は高いと考えている。ATPDEAの10年延長という提案は、同FTAの承認という我々の第一の目標に影響を与えかねない。(29日、1.(ロ)に対する回答として)
(2)対欧州連合(EU)との連携協定(AA)に関する発言等
(イ)グアヤキルでのアンデス共同体(CAN)会議結果に関する報道:欧州連合(EU)との連携協定(AA)交渉のうち自由貿易協定(FTA)分野について、CAN諸国のうちエクアドルとボリビアは同交渉から外れることが決定し、コロンビアとペルーのみでEUと交渉していく旨合意された。(15日)
(ロ)プラタ商工観光相:「コ」政府は、対欧州輸出に関する特定産品の特恵関税「SGP」制度の2009年から2011年まで2年間の延長をEU側に正式に要請。本要請に対するEU側からの回答は、本年12月15日に当方に寄せられる見込み。本制度により、当国は花卉、繊維、コーヒー抽出物等の当国輸出産品の約20%がゼロ関税となっている一方、EU側との間に基本的人権、環境保護、麻薬との戦い等に関する協議を設けることとなっている。(11月1日)
(ハ)ウリベ大統領:CANとEUのAA交渉に関し、遅くとも本年11月11日にベルギーで開催予定の外相会談までに再開について合意したい。当国は地上デジタルテレビ方式に関し欧州方式を採用しており、EU側にとっても同協定を交渉する意義はあると考える。(30日)
(ニ)ベルギーとの投資協定に関するプラタ商工観光相発言:ベルギーとの投資協定(BIT)交渉が大筋合意。本交渉は、2007年12月より開始したもので、本年末に同協定への署名が予定されている。欧州諸国との投資協定はスペイン、スイスについで3番目となる。現在当国は、中国、インド、ドイツ、英国、フランス、韓国と投資協定交渉を行っている他、自由貿易協定(FTA)に投資条項として盛り込む形で、米国、カナダ、EFTA諸国(リヒテンシュタイン、アイスランド、ノルウェー、スイス)、チリ、中米三カ国(エルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラ)と交渉を行った。今後、日本、イタリア、オランダとも投資協定交渉を予定している。(3日)
(ホ)英国との投資協定に関するプラタ商工観光相発言:英国との投資協定(BIT)及び租税条約(DTA)交渉の進展を目的として英国を訪問。加えて、当国のフリーゾーン制度及び法的安定協定制度の説明を実施した。(8日)
(3)対ベネズエラに関するベルムデス外相発言:マドゥーロ「ベ」外相と会談を実施。2国間の通商及びエネルギー取引の活発化について合意した。(18日)
(4)対日本関係
(イ)カルデナス在京大使発言:米国発の金融危機が「コ」にも波及しているが、日本の金融機関は当国へ優良なファイナンスを提供している。近年では、メデジン地方公社が実施している水力発電所「PorceⅢ」建設計画に関し、同国金融機関が2億ドルの保証を行った。また、今般ボゴタ首都区で開催された第二回日・コロンビア賢人会会合では、二国間貿易・投資関係強化のための戦略や二国間経済関係発展の阻害要因等が話し合われた。(14日)
(ロ)日・コロンビア商工会議所は、「コ」中小企業が日本市場での製品販売のための競争力を高めることを目的としたプロジェクトを実施しており、主なものとして、商業戦略の構築、技術移転、情報交換等を行っている。(11日)
(5)対アジア諸国関係に関する「コ」政府発表:「コ」政府は2010年にAPEC加入の意向を持っており、当国政府にとっては非常に重要な取り組みとなる。同時に「コ」政府はアジア太平洋諸国との経済協定の締結も推進していく。(30日、エルサルバドルでのイベロアメリカサミットにおいて)
(6)対中国関係
(イ)中国との投資協定に関する「コ」政府発表:中国との投資協定(BIT)が大筋合意。同協定は、外国への送金等について金融危機や国際収支の問題が生じた場合に、「コ」側が資本の出入について規制を可能とする条項を盛り込んだ他、環境保護や健康問題について両国は一定の対策、規制を行う旨を盛り込む内容。今後は同協定文書の見直し、両国の法制度等の適合審査を経て、西語及び中国語への翻訳作業が行われる。同協定への署名は、本年11月22日にリマでのAPEC会合の際に行われる予定で、2009年末から2010年初めの発効を予定。(29日)
(ロ)コーヒー取引に関するJia Han Wu駐中国全国コーヒー生産者連盟(FNC)代表発表:ハルビンで開催予定の第二回中国-ラ米企業サミット等を通じ、中国への「コ」産コーヒーの輸出増加、及び同国との関係強化を目指す。(21日)
<国内情勢>
(1)国内インフラ関係
(イ)「ラ・リネア・トンネル」建設計画に関する道路公社(INVIAS)発表:本件建設工事に関する落札者の発表は、入札参加企業が提出したプロポーザル書類が膨大で審査に時間を要しているため、11月15日頃になる見込み。(16日)
(ロ)メトロ建設計画に関するボゴタ首都区発表:メトロ建設のための設計の入札は、西企業「Sener y la empresa Transporte Metropolitano de Barcelona」社が落札。同入札は日本企業2社を含む26カ国の56社が参加して行われた。(6日)
(ハ)ボゴタ首都区財政審議会は、同市のメトロ建設費用として4兆ペソの起債を必要としているが、今般の金融危機の影響で同起債に係る金利が0.5%から4%へ上昇したことを受け、現実的ではないとして承認が難しい状況となっている。(14日)
(ニ)「コ」政府発表:ウリベ大統領とモレノ・ボゴタ市長との会談を受け、「コ」政府として、ボゴタ首都区大量交通輸送システム(トランスミレニオ)の次期フェーズ及びメトロ建設計画を含むインフラ整備へのファイナンスを優先的に実施。(16日)(当館注:「コ」政府のメトロ建設に係る支援時期及び方法については現在のところ未定)
(2)今般の金融危機に関する動き
(イ)国内経済に関するスルアガ蔵相発言:当国経済の低成長及び製造業等の業績不振、「コ」株式指数の下落、対米国及び対「ベ」輸出の減少等、世界的な金融危機の影響が当国に波及しているが、当国は十分な外貨準備がある等同危機に対する備えがあり、他のラ米諸国と比べ影響は少ない。(29日)
(ロ)ウリベ大統領:当国は世界的な金融危機の影響を最小限に抑えることができる状態にあるが、同危機が引き起こしうる不測の事態に備え、対内直接投資の維持、国内市場における需要低下に対する対策を実施。また、当国はファイナンス先として、従来の国や地域に加え、アジア市場、特に日本市場での資金調達の可能性を検討している。同様に、当国における対内直接投資に影響を与えないためにも、他のアジア諸国等、現在投資を行っている国以外の投資国の新規開拓が必要。(3日)
(ロ)クレメンツ国際通貨基金(IMF)「コ」訪問ミッション団長発言:「コ」は、十分な外貨準備がある他、国際金融機関からファイナンスの確約を取り付けており、今般の国際金融危機の影響を最小限に抑える体制が整っていると言える。(28日)
(3)財政
(イ)2009年予算の動向:20日、「コ」下院本会議において2009年予算案(総額140.5兆ペソ、うち一般行政経費73.3兆ペソ、投資的経費30.1兆ペソ、国債費37兆ペソ)が承認された。同予算額には、今般の裁判所職員に対する給与増額分1170億ペソ、当国カウカ県で発生している先住民による抗議行動の対策費として80億ペソ、地方道路整備費として300億ペソが新たに盛り込まれている他、その他「コ」各地で発生している暴動、道路封鎖対策費等も盛り込まれた。同予算は今後、大統領裁可を経て成立する見込み。(21日)
(ロ)2008年予算の執行状況に関するスルアガ蔵相発言:2008年予算の投資的経費の本年前半の支出は前年比で71.4%増の4.16兆ペソとなった。同結果は、小規模道路の改良及び維持費用、教育機会拡大プログラム費用、国内避難民対策等への支出が増加したことによるもの。また、本年前半の中央政府(GNC)予算の赤字は、5110億ペソ、対名目GDP比0.1%となった。(当館注:本年のGNC予算の赤字目標は名目GDP比3.3%)(31日)
(4)当国貿易振興公社(Proexport)発表:Proexportが輸出関連国内中小企業275社に対して行ったロジスティクスに関する調査結果によると、約半数の中小企業が、サプライ・チェーンを構築するための長期的な取引関係の提携先がないことから、最終ユーザー段階までのロジスティクスに不便を感じている。(20日)
(5)石油関連
(イ)サモラ石油庁(ANH)長官発言:石油探査への外国直接投資の増加、本年前半の国際的な石油価格の上昇等を受け、2009年には更なる石油増産が可能となる他、同年には13億バレルの石油埋蔵量が確認される見通し。(4日)
(ロ)米企業「Drummond」社発表:当国北部セサール県での石炭探査作業中に、2.3兆立法メートルのメタンガスの埋蔵を確認。今後当国はエネルギー等の主要輸出国の一つとなる可能性も出てきた。(4日)
Ⅲ.主な経済指標 ( )は前年同期の数値
(1)経済成長率予測
(イ)国連ラ米経済委員会(CEPAL)のラ米の経済成長予測:3%(2009)、4.5%(2008)
(ロ)国際通貨基金(IMF)のラ米の経済成長予測:3.2%(2009)
(2)新規建設着工面積数(7月)(出所:国家統計庁(DANE))
(イ)8月の新規建設着工面積 126.1万㎡(23.7%減)
(ロ)年初来8ヶ月間の新規建設着工面積 1,134.6万㎡(7.8%減)
(3)コーヒー(9月)(出所:全国コーヒー生産者連盟(FNC))
(イ)9月のコーヒー輸出量 93.9万袋(94.2万袋)
(ロ)9月のコーヒー生産量 77.7万袋(88.7万袋)
(4)金利(出所:中央銀行):10月末の政策金利 10.00%(9.25%)
(5)貿易(出所:DANE)
(イ)年初来8ヶ月間の輸入額 257.85億ドル(210.17億ドル 22.7%増)
(ロ)年初来8ヶ月間の輸出額 261.42億ドル(185.94億ドル 40.6%増)
(6)雇用(8月)(出所:DANE)
(イ)失業率全国平均 11.0%(10.8%)
(ロ)全国推定失業者数 216.2万人(209.6万人)
(ハ)失業率主要13都市平均 11.3%(10.5%)
(7)為替(10月)(対ドル為替レート)
(イ)月初 2,184.76ペソ
(ロ)月末 2,392.58ペソ
(ハ)最高値 2,160.08ペソ(3日)
(ニ)最安値 2,392.58ペソ(31日)
(8)株式指数(10月)(出所:コロンビア証券取引所(BVC))
(イ)月初 9,248.462ポイント
(ロ)月末 7,226.031ポイント
(ハ)最高値 9,296.895ポイント(1日)
(ニ)最安値 6,657.462ポイント(28日)
(9)消費者物価指数(出所:DANE)
(イ)10月(対前月比) 0.35%(0.01%)
(ロ)年初来10ヶ月間 6.90%(4.68%)
(ハ)07年11月からの12ヶ月間 7.94%(5.16%)
(10)投資(出所:中央銀行)
本年6月末現在の外国直接投資 54.29億ドル(42.82億ドル)
うち(イ)石油 20.93億ドル
(ロ)石炭・金 9.55億ドル
(ハ)商業 6.39億ドル
(11)対外債務(8月末現在)(出所:中央銀行)
(イ)対外債務 458,47億ドル(433,09億ドル)
(ロ)対名目GDP比 19.0%(21.0%)
(ハ)うち公的債務 289.33億ドル(278.22億ドル)
(ニ)うち民間債務 169.14億ドル(154.86億ドル)
(12)ガソリン価格(11月より)(出所:鉱山・エネルギー省)
レギュラーガソリン1ガロン 7,651.45ペソ(前月と同じ)
(13)自動車販売台数(出所:Econometoria社)
(イ)9月の自動車販売台数 20,321台(22,222台)
(ロ)年初来9ヶ月間合計 169,297台(186,651台)