コロンビア月例報告(2008年12月分)
経済情勢
2009年1月27日
在コロンビア日本大使館
Ⅰ.概要
●2008年、米議会は米・「コ」FTAを承認せず、翌年以降のオバマ政権の懸案事項となった。同結果により、数ヶ月間に渡ったコロンビア政府首脳の米議会への外交ルート等を通じた働きかけは成果をもたらさなかった。
●プラタ商工観光相は、「9日、EUは特恵関税スキームである「SGP+」の当国への適用を2011年末まで3年間延長することを決定。同措置により、花卉、コーヒー、バナナ等を含む6,600産品がゼロ関税となる。」と述べた。
●「コ」政府は、「コロンビア、プエルト・リコ、ドミニカ共和国の各国代表は、「コ」からプエルト・リコ、ドミニカ共和国へのエネルギー供給プロジェクト実施のための経済面、技術面、法律面からのフィージビリティー調査の開始に関する協定に署名した。」と発表した。
●「コ」政府は、「「ラ・リネア・トンネル」建設の落札業者として墨、西の外国企業2社の他、国内企業9社、合計11社からなる共同企業体(JV)「Union Temporal Segundo Centenario」社となった。今後同JVは、2009年後半から建設工事を開始することとなっており、2013年の供用開始を目指す。」と発表した。
●マルティネス鉱山・エネルギー相は、「国際石油価格は現在1バレル=40ドル程度で推移しているが、今後数ヶ月の内に60ドルを超える可能性が高いため、石油価格が再び上昇した際に現行の石油価格を維持するため「石油価格安定化基金」を設立し、同基金への原資を得るため2009年1月から3ヶ月間石油販売価格を現行の1ガロンあたり、7,476.79ペソで維持する。」と発表した。
Ⅱ.主な出来事
<対外関係>
(1)対米FTAに関する関係者の発言等
(イ)米議会での状況:2008年、米議会は米・「コ」FTAを承認せず、翌年以降のオバマ政権の懸案事項となった。同結果により、数ヶ月間に渡ったコロンビア政府首脳の米議会への外交ルート等を通じた働きかけは成果をもたらさなかった。(12日)
(ロ)ゼーリック世界銀行総裁:オバマ次期大統領に対し、WTOドーハ・ラウンドの合意達成のため、他の国の動向を認識する必要が有る他、米議会承認待ちとなっているコロンビア、パナマ及び韓国と米との各FTAを承認するよう求めた。(16日)
(2)カナダ及びEFTAに対するプラタ商工観光相発表:2009年初めに、対カナダ及びEFTA諸国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス)を「コ」議会に提出予定。また、チリ、中米3カ国(グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル)とのFTAは2008年中に「コ」議会で承認され、憲法裁判所での審査中である他、中国との投資協定審議が「コ」議会で予定されている。
その他2009年は、コロンビアの環太平洋経済連携協定(P-4)への加入を推進していくことに加え、欧州連合(EU)との連携協定交渉の進展を期待。(26日)
(3)欧州連合(EU)特恵関税(SGP+)に関するプラタ商工観光相発表:9日、EUは特恵関税スキームである「SGP+」の当国への適用を2011年末まで3年間延長することを決定。同措置により、花卉、コーヒー、バナナ等を含む6,600産品がゼロ関税となる。本制度の適用により、引き続き持続可能な開発、基本的人権の尊重、環境保護、麻薬との戦いに関する協議をEU側と実施することになる。(10日)
(4)対ラ米・カリブ諸国に関する関係者の発言
(イ)サントス副大統領:伯サルバドールで開催されたメルコスール、ラ米共同体(UNASUR)会合に参加。同会合において、既存の多国籍機関を通じた加盟国に利益となる具体的プロジェクトの実施による地域統合の重要性を強調。「コ」はその地政学的な面もあり、送電線網プロジェクト等、既に他のラ米やカリブ諸国と共同事業を行っている。(18日)
(ロ)プラタ商工観光相:コロンビア・チリ二重課税防止条約(DTA)は、下院本会議で可決され大統領裁可へと進んだ。現在当国は、ペルー、ボリビア、エクアドルとのDTAが2004年に発効している他、西、スイス、チリ、加とDTAを署名済みである。(5日)
(ハ)「コ」政府発表:コロンビア、プエルト・リコ、ドミニカ共和国の各国代表は、「コ」からプエルト・リコ、ドミニカ共和国へのエネルギー供給プロジェクト実施のための経済面、技術面、法律面からのフィージビリティー調査の開始に関する協定に署名。今般の石油価格上昇もあり、上記カリブ諸国は石油に変わるより経済的なエネルギーの調達について検討していた。(12日)
(5)対アジア太平洋諸国戦略に関する報道:「コ」は2008年、アジア・太平洋市場、特に中国・日本への参入拡大、また、APEC加入のため重要なプロセスを開始。2008年4月には、アジア太平洋諸国との貿易協定交渉の推進等を柱とする同地域に対する戦略を発表した他、同年11月には「コ」・中国投資協定が署名され、また、同12月には日・コロンビア賢人会近い将来に実施すべき施策について「コ」政府に提言を行った。(23日)
<国内情勢>
(1)ラ・リネア・トンネル建設計画
(イ)報道概要
(ⅰ)「ラ・リネア・トンネル」建設工事入札に係る落札者決定の最終審議が5日午前10時から開始され、翌6日未明まで続けられた。この結果、最終落札業者は、「Condux」社(墨)、「Constructora Herrena Fronpeca」社(西)の外国企業2社の他、「Constructora Carlos Collins」社、「Alvares y Collins」社、「Promotora Montarcarlos Vias」社、「Tuneles de Colombia」社、「Construirte」社、「Gayco」社、「Tecniciviles」社、「H y H Arquitectura」社、「Miguel Camilo Castillo」社の国内企業9社、合計11社からなる共同企業体(JV)「Union Temporal Segundo Centenario」社となった。今後同JVは、2009年後半から建設工事を開始することとなっており、2013年の供用開始を目指す。
(ⅱ)最終落札者の選定は、それぞれのプロポーザルに点数を付す方式で行われ、落札した「Union Temporal Segundo Centenario」社は1000点、次点の「Promesa Futura Plan Vial del Pacifico」社は886.06点、三点の「Promesa de Sociedad Futura Tuneelexa」社は857,21点であった。また、最終落札金額は6,290.05億ペソであり、本プロジェクトの「コ」政府予算7,030億ペソの89.5%と同予算を大幅に下回った。
(ロ)政府関係者コメント
(ⅰ)ウリベ大統領:コロンビアにとって非常に良いニュースである。ガジェゴ運輸相、ガルシアINVIAS総裁を始め、本件入札に関わった全ての運輸省関係者に祝意を評したい。
(ⅱ)ガジェゴ運輸相、ガルシアINVIAS総裁:本入札では、約740億ペソの入札差金が生じ、予算の節約ができたとともに、落札者決定までの全てのプロセスで透明性を確保することができ満足している。
(2)その他国内インフラ関係
(イ)「コ」政府発表:世界的な金融危機を克服するためとして、今後10年の内に500億ドルを超えるインフラ、エネルギープロジェクトを民間企業とともに実施していく計画。具体的には、(a)カルタヘナ市の石油精製施設建設費用71億ドル、(b)2009年から2015年の6カ年で、合計100カ所について石油の埋蔵を探査する費用240億ドル、(c)ボゴタ首都区-サンタマルタ市間道路プロジェクトや大西洋岸道路プロジェクト等インフラ建設費用113億ドル、(d)石炭生産能力の増強及び石炭輸送強化のための港建設費用24億ドル、(e)7つの水力発電所(アンティオキア県「Porce Ⅳ」(当館注:今般JBICが2億ドルの債務保証を行った水力発電所プロジェクト「Porce Ⅲ」下流に建設予定の水力発電所)を含む)及び2つの地熱発電所建設費用約60億ドルである。(28日)
(ロ)ウリベ大統領:コロンビアとパナマ間の送電線接続プロジェクトは、アラスカからパタゴニアまでの統合的電力構想の基礎となるものであり、同プロジェクトは2009年12月または2010年第1四半期の着工を目指す。(3日)
(3)コロンビア経済に関する関係者の発言
(イ)スルアガ蔵相発言:今般の世界金融危機の影響はあるが、対ドル為替相場、対外債務、投資動向等の「コ」主要経済指標は、他のラ米諸国と比べ比較的良好に推移しており、当国経済に対する信頼がより広く認識されてきているといえる。(18日)
(ロ)世銀予測:2009年の「コ」経済成長率は、本年予想の3.7%から落ち込み、2.6~2.9%になると予想される。主な要因として、世界金融危機の影響による対「コ」投資、輸出入の減少が考えられる。(10日)
(4)2009年の最低賃金交渉に関する報道(28日及び1月2日)
(イ)ウリベ大統領、スルアガ蔵相及びレンテリーア国家企画庁(DNP)長官等が大統領府で会合を行い、2009年の最低賃金及び最低通勤手当のベースアップを2008年の物価上昇率とする旨決定した。
(ロ)2009年1月2日、当国国家統計庁(DANE)は、2008年の物価上昇率を7.67%と発表し、2009年の最低賃金等のベースアップも7.67%となった。
(ハ)2009年の最低賃金交渉は、官・労・使からなる賃金調整委員会で本年11月から4回にわたって行われた。当初使用者側は最低賃金額を前年比6.5%増、労働者側は14.0%増を主張していた。その後使用者側は増額幅を7.0%、労働者側は12.5%へと変更したが、最終的合意には至らなかったため、政府決定案による決着となった(政府による決着は3年連続)。
(5)石油価格に関するマルティネス鉱山・エネルギー相発表:国際石油価格は現在1バレル=40ドル程度で推移しているが、今後数ヶ月の内に60ドルを超える可能性が高いと考えており、石油価格が再び上昇した際に現行の石油価格を維持するため、「石油価格安定化基金」を設立し、同基金への原資を得るため2009年1月から3ヶ月間石油販売価格を現行の1ガロンあたり、7,476.79ペソで維持する。(28日)
(6)その他
(イ)ウリベ大統領発表:12月8日からロイヤル・カリビアン社の客船が当国カルタヘナ港に寄港したことに謝意を表する。当国はカルタヘナ市を中心とした観光客の誘致に積極的に取り組んでおり、同船の寄港によりさらなる観光客の増加が期待できる他、雇用創出、経済振興も期待。(4日)
(ロ)「コ」政府発表:エドゥアルド・ムニョス商工観光省国際通商担当次官は、世界貿易機関(WTO)コロンビア代表部大使に就任した。ムニョス新大使は、対チリFTAや対中米三カ国FTAの交渉責任者として活躍した。(17日)
Ⅲ.主な経済指標 ( )は前年同期の数値
(1)実質経済成長率
(イ)本年第3四半期 3.1%(6.2%)
(ロ)2008年1-9月期 3.8%
(ハ)本年第3四半期のセクター別成長率
(ⅰ)農林水産業 1.2%
(ⅱ)鉱山等探査 10.1%
(ⅲ)製造業 ▲ 2.4%
(ⅳ)電気、ガス、水道 1.4%
(ⅴ)建設業 16.8%
(ⅵ)商業(レストラン、ホテル等)0.0%
(ⅶ)運輸・通信 3.4%
(ⅷ)金融・保険・不動産 6.5%
(ⅸ)サービス業 2.6%
(ⅹ)製品及び輸入品の税金等収入-補助金 2.8%
(2)新規建設着工面積数(出所:国家統計庁(DANE))
(イ)10月の新規建設着工面積 136.8万㎡(34.2%減)
(ロ)年初来10ヶ月間の新規建設着工面積 1,450.6万㎡(10.0減)
(3)コーヒー(出所:全国コーヒー生産者連盟(FNC))
(イ)11月のコーヒー輸出量 91.5万袋(83.6万袋)
(ロ)11月のコーヒー生産量 93.0万袋(150万袋)
(4)金利(出所:中央銀行):12月末の政策金利 9.50%(9.50%)
(5)貿易(出所:DANE)
(イ)年初来9ヶ月間の輸入額 295.80億ドル(237.39億ドル 24.6%増)
(ロ)年初来9ヶ月間の輸出額 292.72億ドル(211.05億ドル 38.7%増)
(6)雇用(11月)(出所:DANE)
(イ)失業率全国平均 10.8%(9.4%)
(ロ)失業率主要13都市平均 10.9%(9.9%)
(7)為替(12月)(対ドル為替レート)
(イ)月初 2,318.00ペソ
(ロ)月末 2,243.59ペソ
(ハ)最高値 2,163.14ペソ(18日)
(ニ)最安値 2,333.54ペソ(5日)
(8)株式指数(12月)(出所:コロンビア証券取引所(BVC))
(イ)月初 7,314.813ポイント
(ロ)月末 7,560.680ポイント
(ハ)最高値 7,813.442ポイント(15日)
(ニ)最安値 7,174.393ポイント(1日)
(9)消費者物価指数(出所:DANE)
(イ)12月(対前月比) 0.44%(0.49%)
(ロ)年初来12ヶ月間 7.67%(5.69%)
(10)対外債務(出所:中央銀行)
(イ)9月末現在対外債務 455.25億ドル(433.89億ドル)
(ロ)対名目GDP比 19.1%(21.0%)
(ハ)うち公的債務 286.63億ドル(281.38億ドル)
(ニ)うち民間債務 168.62億ドル(152.51億ドル)
(11)ガソリン価格(2009年1月より)(出所:鉱山・エネルギー省)
レギュラーガソリン1ガロン 7,476.79ペソ(前月と同じ)
(12)自動車販売台数(出所:Econometoria社)
(イ)11月の自動車販売台数 17,756台(22,844台)
(ロ)年初来11ヶ月間合計 204,948台(231,569台)