コロンビア月例報告(7月分)
経済情勢
2009年8月19日
在コロンビア日本大使館
Ⅰ.概要
●大統領府は欧州連合(EU)とのFTA交渉について、「リマでの第5ラウンド交渉の結果、市場アクセス、関税及び非関税障壁分野については決着、その他の全テーマで進捗が見られた。第6ラウンドは、9月21日の週にブリュッセルで開催予定。」と発表。
●「コ」非合法武装勢力「Farc」への武器供与及び「コ」政府の米軍基地設置受入問題でベネズエラ政府が「コ」との外交関係凍結等を発表したことについてプラタ商工観光相は、「現在のところ両国通商関係は比較的通常であり、「コ」の「ベ」に対する供給国としての地位は、他に代替する国はなく不変であり、また同通商関係は相互に利益をもたらしている。」と述べた。
●エクアドル政府によるセーフガードに関しプラタ商工観光相は、「「エ」政府の今次決定はCANのカルタヘナ協定の明確な違反である。CAN事務局に対しアンデス共同体としての利益保全のため必要な手続きを可能な限り早期に実施することを期待。」と述べた。
●トロツェンブルグ世銀コロンビア担当は、「「コ」政府は今般の金融危機の中でも、バランスのとれた公的債務管理及び貿易量の維持など良好な経済運営を行っている。世銀は「コ」を長期的なパートナーとして今後も支援する。」と述べた。
●29日、「コ」政府は前年比7%増の総額148.3兆ペソの2010年予算:「経済危機における投資の持続」を国会に提出した。
Ⅱ.主な出来事
<対外関係>
(1)対米FTAに関する関係者の発言
(イ)ウリベ大統領(11日):米・コロンビアFTAの米議会承認はコロンビアへの信頼に対するシグナルとなる。また同協定の承認により、高く持続的な直接投資が維持される。
「コ」における有望な投資分野として、アニメーション、健康増進のための観光、ソフトウェア、アウトソーシング等が挙げられる。
(ロ)当国繊維業界の声(28日付報道):米・「コ」FTAの米議会承認の見通しが立たない中、本年末に期限切れとなるアンデス特恵関税麻薬取締協定(ATPDEA)の延長に向けた米政府への働きかけを「コ」政府に要請。
(ハ)インスルサ米州機構(OAS)事務総長(20日):米議会に対し、「コ」及びパナマの対米FTAは中南米地域の自由貿易の将来を担うことから、同FTAの早期承認を要請。
(2)対欧州連合(EU)とのFTAに関する関係者の発言
(イ)第5ラウンドに関する大統領府発表(25日):20日から24日にかけて、ペルー・リマにおいて「コ」、ペルーとEUとのFTA第5ラウンド交渉を実施。同ラウンドの結果、市場アクセス、関税及び非関税障壁分野については決着、その他の全テーマで進捗が見られた。第6ラウンドは、9月21日の週にブリュッセルで開催予定。
(ロ)報道概要(4日):EU事務局のからの情報によると、EUと「コ」・ペルー等のラ米諸国は、6月に「コ」で行われた第4ラウンド交渉において、中南米産バナナの輸入関税(1トン当たり176ユーロ)問題に関しては、同関税を段階的に引き下げる方向で調整が進められている。
(3)対スイス関係(14日、ロイタード経済相の当国訪問):対「コ」FTAの批准を受け、ロイタード経済相は、スイス企業7社とともに当国を訪問。同国との新たなビジネスチャンスの発掘や投資の拡大についてのセミナーを開催。
(4)対ベネズエラ関係
(イ)マルケス駐「コ」・ベネズエラ大使(11日):「ベ」政府は、「コ」輸出業者に対する2.72億ドルを超える負債の支払いを決定。
(ロ)チャベス・ベネズエラ大統領(29日):「コ」との外交関係を凍結し、マルケス駐「コ」大使を本国に召喚する。また、「ベ」における「コ」企業の収用に言及するとともに、「コ」からの輸入に代替する調達先を検討するよう要請。本措置は、「ベ」政府が「コ」非合法武装勢力「Farc」への武器供与及び「コ」政府の米軍基地設置受入に抗議するもの。
(ハ)プラタ商工観光相(29日):上記(ロ)の発表があったものの、現在のところ両国通商関係は比較的通常であり、「コ」の「ベ」に対する供給国としての地位は、他に代替する国はなく不変であり、また同通商関係は相互に利益をもたらしている。
(ニ)「ベ」政府発表:「コ」政府が新たな米軍基地受入を表明したことを受け、「べ」政府は、「コ」に対し割り当てていた自動車輸入枠1万台をエクアドルに振り替える旨決定。同時に「ベ」のCAN脱退に伴う2011年までの特恵関税失効後をにらんだ「コ」との経済協定の事前交渉開始を延期。
(ホ)ビジェガス全国工業連盟(ANDI)総裁(31日):「ベ」との通商関係は重要である。各企業は、全ての利益に優越する国益があり、民間セクターはそれに従い、国を守るため支援すべきであることを自覚している。
他方、「コ」民間セクターとして「ベ」との通商関係について把握している情報として、両国国境の情勢は比較的良好と説明。
(5)エクアドル政府のセーフガード発動に関するプラタ商工観光相発言(13日):10日にエクアドル政府によって発動された、ペソの切り下げを理由とする1,346品目を対象とするセーフガードに関し、当国の対エクアドル輸出品目の約34%に影響が出ると予測。
「エ」政府は今般の決定によりCANのカルタヘナ協定の明確な違反を犯している。また、「エ」政府はペソの切り下げを理由としてセーフガードを発動したが、実際当国ではペソ高ドル安になっている。当国はCAN事務局に対し、アンデス共同体としての利益保全のため必要な手続きを可能な限り早期に実施することを期待。
(6)ドゥアルテ商工観光次官の中国訪問(21日):ドゥアルテ商工観光次官(企業振興担当)は、コロンビア貿易銀行(Bancoldex)、貿易振興公社(Proexport)とともに経済、技術協力、中国からの対「コ」投資促進及び第3回中国・ラ米企業サミットのプロモーションのため中国を訪問。同サミットは本年11月にボゴタ首都区で開催予定。
<国内情勢>
(1)インフラ関係
(イ)民間活力推進庁(INCO)発表(17日):クンディナマルカ県ボケロン市付近の4.2kmに及ぶスマパス・トンネルの避難道が完成。同トンネルは、ボゴタ首都区-ヒラルド市間連結道路の一部であり、同道路の完成によりボゴタ首都区-メルガル間が40分短縮される予定であり、供用開始は2010年後半を予定。
(ロ)ボゴタ首都区国際空港「エル・ドラド」関係報道(1日):エル・ドラド国際空港の新貨物ターミナル及び管理ビルの引き渡しについて、「コ」航空当局(Aerocivil)と同空港運営会社「Opain」社との間で、6月末日に引き渡される旨合意されていたが、工事遅延のため引き渡しは8月末になる見通し。
(ハ)スルアガ蔵相発言(14日):現在議会で審議中のブエナベントゥーラ港(当国太平洋岸の主要貿易港で当国最大の貿易港)を保税地域(関税免除及び所得税の減額)として認定する法案について、同地域においては多くの企業が保税地域の適用を望んでいる他、租税収入が減少する恐れもあることから、同意することは不可能。
(2)経済見通し等
(イ)トロツェンブルグ世銀コロンビア担当(8日):「コ」政府は、今般の金融危機の中でも、バランスのとれた公的債務管理及び貿易量の維持など良好な経済運営を行っている。世銀は「コ」を長期的なパートナーとして今後も支援する。
(ロ)ピエドライータ国家企画庁(DNP)長官発言(1日):本年5ヶ月間の経済危機対策事業(インフラ整備、社会保障セーフティーネットの整備、フリーゾーン(保税地域)の増設及び製造業等へのファイナンス)の執行済額は予算55.4兆ペソのうち18.7兆ペソであり、全体の34%まで進捗。
(ハ)高等教育開発財団(Fedesarrllo)発表(14日):Fedesarrolloが毎月行っている消費者の「コ」経済への信頼に関するアンケートにおいて、6月調査の指数は2ヶ月連続で前月を上回った。同指数は2007年10月から連続して減少傾向を示していたところであった。本結果から国内では景気回復が進んでいると考えられ、今後は需要の回復といった実体経済への反映が期待される。
(3)ウリベ大統領の国会開会演説(21日)
(イ)投資家の信頼確保:大量かつ持続的な対内直接投資は当国にとって必要。2008年実績は105.64億ドルであったが、本年は経済危機の影響があるが、6月末までで41.49億ドルである。また、当国を訪問する外国人の数も同経済危機の影響下にも拘わらず増加している。
(ロ)財政及び税制改正:2011年以降の特別財産税の継続及び法人税の見直しを行う。
(ハ)雇用:労働者の利益を損なわずに、また新規雇用創出にあたっての障害を取り除くため、当国の職業訓練機関に対する予算は引き続き確保する。また雇用回復のためには、経済回復、持続的な投資の維持、生産性及び国内インフラの改善が必要。
(ニ)インフラ整備:新規雇用の創出等を通じた経済危機対策、更なる外国投資誘致のため、ボゴタ首都区-サンタマルタ間道路や大量交通輸送システム等の整備の重要性を強調。
(4)税制改正
(イ)スルアガ蔵相発言(21日):20日、下院に特別財産税に関する法案を提出。同法案は、現行の特別財産税が失効する2011年以降も有効とするもので、30億ペソ以上の資産を保有する法人又は自然人に対し、資産額の0.6%を徴収する内容。課税対象者は9,200人・社で、年当たり1.3兆ペソの税収を期待。本税制改正は、次の政権に対し責任をもった政策を行っている旨のシグナルを発することであり、市場に対する信頼確保の他、「コ」経済のリスク評価の改善にも寄与する。
また、企業収益の設備投資への再投資額の40%を法人税から控除してきたが、同率の30%への引き下げを検討。
(ロ)業界団体発言(13日):特別財産税の2011年以降の存続に関し、今般の金融危機の状況下で新たな税を設置するべきでないと考える民間セクターもある。また、新税の導入により国内需要の減少等を招き、結果として雇用の悪化につながることも懸念。
(5)2010年予算に関するスルアガ蔵相発言(30日):29日、議会に2010年予算:「経済危機における投資の持続」を提出。総額は前年比7%増の148.3兆ペソ。歳入では税収が70.8兆ペソ、公債収入・株式売却収入が55.8兆ペソ、基金運営収入が8.7兆ペソ、教職員基金運営収入1.2兆ペソ、公企業経営収入が11.8兆ペソとなっており、歳出では一般行政経費83.1兆ペソ、国債費40.7兆ペソ、投資的経費24.4兆ペソであり、うち国防費は前年比28.6%減の2.17兆ペソである。
(6)その他
(イ)企業動向(11日):世界的なたばこ会社「Philip Morris」社は、「コ」たばこ製造会社「Productora Tabacalera de Colombia - Protabaco」社を4.52億ドルで買収を発表。「Philip Morris」社は、2005年に「コ」たばこ会社「Coltabaco」社を3.14億ドルで買収しており、Morris社の国内販売シェアは80%になる見通し。
(ロ)観光客数に関する商工観光省発表(11日):2009年前半に「コ」を訪問した外国人は、前年比10%増の63.8万人となった。また、「コ」に寄港する船舶数も前年同期86から98に増加。
(ハ)人事に関する大統領府発表(16日):エスコバル国家企画庁(DNP)次長の後任として、フアン・マウリシオ・ラミレス新次長が就任。ラミレス新次長はエコノミストであり、前職は民間競争力強化のための審議会副委員長であった。また以前は、中央銀行物価上昇・プログラム局長、大蔵省マクロ経済政策局長等を歴任している。
(ニ)バイオ燃料に関するマルティネス鉱山・エネルギー相発言(23日):現在当国で消費される約80%のガソリンが10%のエタノール混合であるが、2010年末には「コ」国内全域で10%エタノール混合ガソリンが流通予定。バイオディーゼルに関しては、2009年末までに「コ」全国で7%混合燃料の流通を目標としている。
Ⅲ.主な経済指標 ( )は前年同期の数値
(1)当国経済成長率予測
(イ)国連ラ米・カリブ経済委員会(CEPAL) 0.6%(2009年)、3.5%(2010年)
(ロ)国際通貨基金(IMF) ▲0.3%(2009年)、2.3%(2010年)
(2)鉱工業(出所:DANE)
(イ)5月の鉱工業生産指数(対前年同月比) ▲6.5%(▲4.1%)
(ロ)5月の新規着工申請面積 95.4万㎡(132.7万㎡)
(ハ)年初来5ヶ月の鉱工業生産指数(前年同期比) ▲8.8%(1.7%)
(ニ)年初来5ヶ月間の新規着工申請面積 503.4万㎡(652.9万㎡)
(3)コーヒー(出所:全国コーヒー生産者連盟(FNC)
(イ)6月のコーヒー生産量 68.5万袋(104.6万袋)
(ロ)6月のコーヒー輸出量 55.2万袋(94.6万袋)
(ハ)年初来6ヶ月間のコーヒー生産量 424.1万袋(611.8万袋)
(ニ)年初来6ヶ月間のコーヒー輸出量 428.2万袋(585.1万袋)
(4)金利(7月末現在)(出所:中央銀行) 4.50%(10.00%)
(5)貿易(出所:DANE)
(イ)年初来5ヵ月間の輸入額 130.88億ドル(156.37億ドル 16.3%減)
(ロ)年初来5ヵ月間の輸出額 126.83億ドル(154.01億ドル 17.6%減)
(6)雇用(6月)
(イ)失業率全国平均 11.4%(11.2%)
(ロ)失業率主要13都市平均 13.0%(11.7%)
(7)為替(7月)(対ドル為替レート)
(イ)月初 2,145.21ペソ
(ロ)月末 2,040.95ペソ
(ハ)最高値 1,975.05ペソ(22日)
(ニ)最安値 2,116.99ペソ(10日)
(8)株式指数(7月)(出所:コロンビア証券取引所(BVC))
(イ)月初 9,879.730ポイント
(ロ)月末 10,329.950ポイント
(ハ)最高値 10,329.950ポイント(31日)
(ニ)最安値 9,627.660ポイント(14日)
(9)消費者物価指数(出所:DANE)
(イ)7月(対前月比) ▲0.04%(0.48%)
(ロ)年初来7ヶ月 2.18%(6.53%)
(ハ)対前年同月比 3.28%(7.52%)
(10)投資(出所:中央銀行)
本年6月末までの対内直接投資 40.73億ドル(45.50億ドル)
(11)ガソリン価格(8月より)(出所:鉱山・エネルギー省)
レギュラーガソリン1ガロン 7,094ペソ(前月と同じ)
(12)自動車販売台数(出所:Econometoria社)
(イ)6月の自動車販売台数 13,586台(16,881台)
(ロ)年初来6ヶ月間合計 85,977台(110,750台)
(ハ)本年全体の販売予想台数 174,000台(219,498台)