コロンビア月例報告(8月分)
経済情勢
2009年9月10日
在コロンビア日本大使館
Ⅰ.概要
●ブラウンフィールド当地米大使は米・コロンビアFTAに関し、「米議会での承認手続きは凍結されたわけではなく、前進している。基本的人権等の懸案事項が解決されれば、オバマ大統領のアジェンダに盛り込まれ、本年中には承認されるであろう。」と述べた。
●ウリベ大統領は、「「コ」政府はベネズエラ及びエクアドルとの関係を再構築するため、より大きな及び建設的な対話を持つことを提案。同対話を通じ、「エ」政府が行っているセーフガード措置の撤回等、全ての懸案事項の解決に自信。」と述べた。
●カルデロン墨大統領は当国を訪問し、「「コ」との二重課税防止条約に署名。現在「コ」との通商量は40億ドルであり、近年の同国との通商量の増加を強調するとともに、今後も同分野に大きな成長可能性がある。」と述べた。
●スルアガ蔵相は、「本年の経済成長率目標は0.5%、及び2010年については2.5%で維持。同数値は国際通貨基金(IMF)が発表した数値と同じであり楽観的ではなく、現実的な数値と認識。」と述べた。
●国家企画庁(DNP)は、「当国の貧困率は2002年の53.7%から2008年には46.0%に減少。他方、極貧率は2002年19.7%から2008年17.8%に減少した。また、ジニ係数は2002年0.59、2008年も同様に0.59であった。」と発表した。
Ⅱ.主な出来事
<対外関係>
(1)対米FTAに関する関係者の発言
(イ)ビジェガス全国工業連盟(ANDI)総裁(21日):対米FTA承認という主目的はあるが、本年9月から「コ」民間セクターとして、本年末に期限を迎えるアンデス特恵関税取締協定(ATPDEA)の2年間延長のための働きかけをワシントン等で開始する。
(ロ)ロック米商務長官(11日):対「コ」FTA米議会承認のため現在「コ」と交渉を行っているが、米議会が承認にあたり問題視している労働組合幹部に対する暴力の問題もあり「コ」国内の基本的人権の保護を担保する追加的合意が必要。
(ハ)ブラウンフィールド当地米大使(18日):米・「コ」FTA承認手続きは凍結されたわけではなく、前進している。基本的人権や労働組合幹部への身体の保障等の懸案事項が解決されれば、オバマ大統領のアジェンダに盛り込まれる。本年末には承認されると見ている。
(ニ)プラタ商工観光相(6日):9月15日まで米通商代表部は、米・「コ」FTAの労働章部分に関しパブリックコメントを受け付けている他、同協定が米国経済、雇用、通商、農業従事者及び消費者にどのような利益をもたらすかについて意見を募集している。本取組は、同FTAの効果を明らかにする良い機会と認識。
(2)対カナダFTAに関する報道概要(13日):「コ」下院総会において、対加FTAは承認され、大統領裁可へと進んだ。他方、本年後半にも「カ」議会でも同協定が承認される見通し。プラタ商工観光相は、本協定により対加輸出産品のうち90%、工業製品の97%がゼロ関税となるなど、同協定の重要性を強調。
(3)対欧州連合(EU)とのFTAに関する関係者の発言
(イ)報道概要(31日):コロンビア、ペルーと欧州連合(EU)との自由貿易協定交渉第4ラウンドが9月21日~25日の日程でブリュッセルで開催予定。各国の本協定交渉担当者は、同ラウンドが最終交渉になると見ており、医薬品、農業製品、バナナ、政府調達等の未決着となっている問題の解決される見通し。
(ロ)ウリベ大統領(10日):6日、デ・ラ・ベガ西副首相と会談。同副首相は西政府がアンデス共同体(CAN)諸国とEUとの自由貿易協定交渉決着のため協力する旨表明。
(4)対エクアドル関係
(イ)アンデス共同体(CAN)事務局の発表(8日):コロンビア・ペソの切り下がりによって、「エ」企業の競争力に悪影響を与えているが、CANとしては「エ」に対し貿易数量を正常に戻すため、15日以内にセーフガード停止を求める。
(ロ)プラタ商工観光相(8日):CANは「エ」政府に対し、15日以内にセーフガード措置を停止することを求める決定をした一方で、適用できる場合を限定すれば、セーフガードを発動できる決定を行った。我々は「エ」政府と友好的な対話を通じた和解を目指す。
(ハ)セリ・「エ」経済相:(12日)
対「コ」セーフガードを段階的に停止することを決定。第一段階として貿易数量の少ない肉、野菜、油、牛乳等の680品目のセーフガードを停止。
我々は2ヶ月毎に調査を行っており、セーフガード適用前と同様の貿易数量の物品については同措置を停止することを予定している他、当初は同措置の期間を1年間としたが、期間の短縮も検討中。
(ニ)プラタ商工観光相:「エ」政府による新たなセーフガード措置が実施された本年7月の対「エ」輸出額は、前年同月比15.5%減であり、セーフガード対象品目に関しては34%減となった。上記状況を踏まえ、商工観光省、コロンビア貿易銀行(Bancoldex)及び貿易振興公社(Proexport)は、近く「エ」に変わる輸出先を模索するための政策や輸出業者向けの新たな貸付プラン等を発表予定。
(5)対ベネズエラ関係
(イ)報道概要(8日):チャベス大統領は、数週間前に発表した「コ」の米国との新たな軍事協定締結を理由としたマルケス在「コ」ベネズエラ大使の召還を撤回し、同大使を「コ」に戻すことを命じた。
(ロ)チャベス大統領(6日):「コ」の米国との新たな軍事協定締結への対抗措置として「コ」からの自動車輸入枠1万台を取り消し、アルゼンチン及び伯の輸入枠として振り替える。
(ハ)国境地帯のガソリン取引に関する報道(11日):チャベス大統領が「コ」国境地帯におけるガソリンの供給協定を停止する旨の発表を受け、毎月「ベ」から450万ガロンのガソリンが輸入され、3,200ペソから3,600ペソ(約1.5ドル)の国内販売価格の半額で販売されているノルテ・デ・サンタンデール県、ラ・グアヒラ県等の国境地帯の住民に不安が広がった。
(ニ)ウリベ大統領(20日):「ベ」政府が「コ」国境地帯でのガソリン供給に関する協定を更新しないことを踏まえ、また、当国国営石油会社「Ecopetrol」は十分な供給能力があるため、「コ」政府がククタ市等同地域におけるガソリン供給を保証。
(ホ)サマン・「ベ」通商相(12日):2010年中盤より、工業製品の主要原材料を「コ」から購入せず、その他の国から購入する旨決定。その他の産品については、「コ」以外から購入することは難しいため、引き続き同国から購入する。代替国としてアルゼンチンを予定しており、同国に自動車の輸入枠を付与する他、総額11億ドルの通商協定にも署名。
(ヘ)サマン・「ベ」通商相(21日):「コ」輸入産品からの転換政策を向こう12ヶ月間発動。本政策は、「コ」政府が米国との新たな軍事協定を取り消しておらず、本行為は「コ」・「ベ」通商関係の新たな脅威になっていると理解したため。
(ト)ウリベ大統領(18日):「コ」政府は「ベ」及び「エ」との関係を再構築するため、より大きな及び建設的な対話を持つことを提案。同対話を通じ、「エ」政府が行っているセーフガード措置の撤回等、全ての懸案事項の解決に自信。
(6)カルデロン墨大統領発言(15日):「コ」との二重課税防止条約に署名。同条約は墨及び「コ」の投資家が両国での二重の税金の支払いを回避するものであり、同問題が両国の投資家にとって大きな懸念材料であったこともあり、今後両国の投資活性化に期待。また現在「コ」との通商量は40億ドルで、近年の同国との通商量の増加を指摘するとともに、今後も同分野に大きな成長可能性を強調。
(7)対アジア諸国関係
(イ)ベルムデス外相(18日):「コ」は、APEC加盟諸国との外交関係及び通商関係の強化を図る。客年ペルーで開催されたAPECでは、ウリベ大統領が非メンバー国の代表として唯一招待され、11ヵ国の主要の会談。中国とは投資協定を署名した他、日本及び韓国とは同協定を交渉中である。
(ロ)対チリ及びアジアに関する報道概要(11日):ボゴタ商工会議所において、チリ・コロンビア通商フォーラムが開催。同フォーラムで、「コ」企業がチリを経由してアジア諸国へ輸出する製品のサプライチェーンに関する調査結果が発表された。対アジア諸国への「コ」輸出産品として、繊維、カカオ、医薬品があげられている。
(ハ)中国に関する報道概要:中国コンサル企業「Sinolatin Capital」社は、中国・ラ米投資基金を設立。同基金は、「コ」におけるインフラプロジェクト及び主要原材料生産プロジェクト等への拠出を予定。
<国内情勢>
(1)インフラ関係
(イ)スルアガ蔵相(4日):コロンビア貿易銀行(Bancoldex)を通じ、当国国営電力会社「ISA」社及び同石油会社「Ecopetrol」社の利益を資金として特に地方道路の整備事業等に対するファイナンスを実施する。具体的にはパナマ国境からベネズエラ国境にかけて建設が予定されている「Transversal de Las Americas」やボゴタ首都区から南東部平原「ジャノス」への道路等を想定。
(ロ)モレノ・ボゴタ市長(27日):メトロ第1号線、新規トランスミレニオ路線、ボゴタ首都区近郊鉄道及びケーブルーカー建設計画を含むボゴタ首都区統合輸送システムに関する調査結果を発表。「コ」中央政府は、本プロジェクトに関し2016年以降、2500億ペソを限度とするファイナンスを約束。
メトロ1号線建設計画に関しては、14.9kmを地下部分、9kmを地上部分とする総延長24kmを想定。建設は2011年からを予定。路線については、ボゴタ首都区南部のアメリカ地区から、同市中央部のボリバル広場を経由して、カレラ11及び同13を通り、カジェ100までの内容。
(ハ)ガジェゴ運輸相(10日):新たな港湾拡張計画を発表。(当館注:港湾拡張計画は2年ごとに国が策定する基本指針)2002年から2008年の間に港湾拡張に約30億ドルが投資された結果、貨物取扱量が71%増加。また、太平洋岸のブエナベントゥーラ港で-12.5m、カリブ海沿岸のカルタヘナ港で-14.5m、同バランキージャ港で-12mの水深を確保する工事を実施。
今後はカルタヘナ、トゥマコ(太平洋岸)及びブエナベントゥーラ港の海上航路確保を図り、ブエナベントゥーラ航路で-15m、カルタヘナ航路で-17mの水深の確保を目標。また、ブエナベントゥーラ港アグアドゥルセ地区の開発を推進する他、カリブ海岸では、主に石油・石炭等輸出のための新港を3箇所建設予定。
(ニ)リネア・トンネル建設計画に関する「コ」政府発表(22日):トンネル建設にかかる外債24.5億ドル(約5860億ペソ)の借款契約を締結。実際の建設工事は本年4月から開始しており、工期は70カ月を予定。
(2)経済見通しに関するスルアガ蔵相発言(14日):本年の経済成長率目標は0.5%、及び2010年については2.5%で維持。同数値は国際通貨基金(IMF)が発表した数値と同じであり楽観的ではなく、現実的な数値と認識。また我々は累次の政策金利の引き下げ等により物価上昇率の抑制に成功しているが、同理由は国内消費が減速しているためと指摘する経済アナリストには同意しない。
(3)その他
(イ)国家企画庁(DNP)発表(25日):国家統計庁(DANE)、DNP、世銀及びラ米・カリブ経済委員会(CEPAL)により作成した統計によると、当国における貧困率は2002年の53.7%から2008年には46.0%に減少。他方、当国における極貧率は、2002年19.7%から2008年17.8%に減少した。また、ジニ係数は2002年0.59、2008年も同様に0.59であった。
(ロ)「コ」航空当局(Aerocivil)発表(7日):シンガポール政府と旅客及び貨物輸送に関する航空協定に署名。同協定によれば、2010年2月までに1週間あたり7便の旅客便及び貨物便を両国間に就航させる内容。
Ⅲ.主な経済指標 ( )は前年同期の数値
(1)鉱工業(出所:国家統計庁(DANE))
(イ)6月の鉱工業生産指数(対前年同月比) ▲6.6%(▲6.2%)
(ロ)6月の新規着工申請面積 92.6万㎡(119.7万㎡)
(ハ)年初来6ヶ月の鉱工業生産指数(前年同期比) ▲8.4%(0.4%)
(ニ)年初来6ヶ月間の新規着工申請面積 595.9万㎡(815.1万㎡)
(2)コーヒー(出所:全国コーヒー生産者連盟(FNC)
(イ)7月のコーヒー生産量 58.2万袋(89.1万袋)
(ロ)7月のコーヒー輸出量 60.9万袋(89.2万袋)
(ハ)年初来7ヶ月間のコーヒー生産量 482.3万袋(700.9万袋)
(ニ)年初来7ヶ月間のコーヒー輸出量 498.0万袋(674.3万袋)
(3)金利(8月末現在)(出所:中央銀行) 4.50%(10.00%)
(4)貿易(出所:DANE)
(イ)年初来6ヵ月間の輸入額 155.74億ドル(189.32億ドル 17.7%減)
(ロ)年初来6ヵ月間の輸出額 154.81億ドル(190.62億ドル 18.8%減)
(5)外国直接投資(出所:商工観光省、7月末現在)46.55億ドル(12.3%減)
(6)雇用(7月)
(イ)失業率全国平均 12.6%(12.1%)
(ロ)失業率主要13都市平均 13.0%(12.1%)
(7)為替(8月)(対ドル為替レート)
(イ)月初 2,040.95ペソ
(ロ)月末 2,057.81ペソ
(ハ)最高値 1,992.98ペソ(4日)
(ニ)最安値 2,057.81ペソ(31日)
(8)株式指数(8月)(出所:コロンビア証券取引所(BVC))
(イ)月初 10,329.950ポイント
(ロ)月末 10,604.480ポイント
(ハ)最高値 10,766.280ポイント(24日)
(ニ)最安値 10,375.360ポイント(5日)
(9)消費者物価指数(出所:DANE)
(イ)8月(対前月比) 0.04%(0.19%)
(ロ)年初来8ヶ月 2.23%(6.74%)
(ハ)対前年同月比 3.13%(7.87%)
(10)対外債務(5月末現在)(出所:中央銀行)
(イ)対外債務 470.37億ドル(456,68億ドル)
(ロ)対名目GDP比 22.4%(18.8%)
(ハ)うち公的債務 311.22億ドル(295.37億ドル)
(ニ)うち民間債務 159.15億ドル(160.71億ドル)
(11)ガソリン価格(9月より)(出所:鉱山・エネルギー省)
レギュラーガソリン1ガロン 7,073.50ペソ
(12)自動車販売台数(出所:Econometoria社)
(イ)7月の自動車販売台数 16,273台(20,686台)
(ロ)年初来7ヶ月間合計 102,250台(131,436台)