コロンビア月例報告(4月分)
経済情勢
2010年 5月12日
在コロンビア日本大使館
Ⅰ.概要
●プラタ商工観光大臣は19,20日にカナダを訪問し,加・コロンビアFTAの加議会での承認促進のため活動を行った。同FTA法案は20日,賛成多数で加議会で承認され,同国承認手続きの最終段階である同国国際通商委員会審議に進んだ。なお,「コ」議会は同FTAを既に承認しており,現在憲法裁判所による審議が行われている。
●世界経済フォーラム・ラテンアメリカ会合(6~8日)がカルタヘナにて開催された。ウリベ大統領は,同会合のマージンで,中米各国首脳等と個別に会談した。また,44カ国より550人近い投資家の参加があった。
●中央銀行及び大蔵省は14日,国際通貨基金(IMF)に対し1年間の弾力的信用枠(FCL)更新を申請した。金額は当初予定した約104億ドル(現契約金額)を下回る約35億ドルとした。なお,対外環境が悪化しない限り,「コ」は今後もFCLによる資金引出しを行う予定はない。
●「コ」政府は7日,総額1兆5,300億ペソ(約8億ドル相当)のペソ建て国債を発行した。国際資本市場における自国通貨建て国債の発行は,2007年以来3年ぶりとなる。スルアガ蔵相は,今次国債発行の目的を「政府の資金調達及び国際機関からの借入額縮小」とし,「2010年分の資金調達計画における外債調達分はすべて消化した」と述べた。
Ⅱ.主な出来事
<対外関係>
(1)FTA関連
(ア)対米国FTAに関するプラタ商工観光大臣発言(23日):(ワシントンでの2日間にわたるカーク通商代表及び議員等との協議を通し)米・「コ」FTA承認に向け最善を尽くしたが,(現政権の任期である)8月7日までの承認は極めて難しく,オバマ大統領の政治判断のみによって実現するだろう。オバマ大統領及びゲイツ国防長官は先週,同FTA承認を強く督励する声明を発表していたものの,議会議員,例えば言論仲裁委員会委員長は硬直した態度を維持した。
(イ)対欧州連合(EU)FTAに関するプラタ商工観光大臣発言(23日):EU・「コ」FTAの調印は,EU-中南米・カリブ諸国(EU-LAC)首脳会議の開催に合わせて,5月18日にマドリッドにて行われる。また,「コ」を訪問したEUの議員等は,同FTAのEU議会における承認は,本年中に得られるだろうとした。
(ウ)対カナダFTAに関するプラタ商工観光大臣の訪加:同大臣は19,20日にカナダを訪問し,加・「コ」FTAの加議会での承認促進のため活動を行った。同FTA法案は20日,賛成多数で加議会で承認され,同国承認手続きの最終段階である同国国際通商委員会審議に進んだ。なお,「コ」議会は同FTAを既に承認しており,現在憲法裁判所による審議が行われている。
(エ)対パナマFTA交渉:パナマ・「コ」両国大統領は,カルタヘナで開催された世界経済フォーラム・ラテンアメリカ会合のマージンで,両国FTA交渉を本年8月までに終了することで合意。また,両国の電力相互接続プロジェクトの2013年までの完結を優先課題として取り組むことでも合意。なお,パナマ・「コ」FTA交渉第2ラウンドは5月10~14日に開催予定。
(2)世界経済フォーラム・ラテンアメリカ会合(6~8日,於:カルタヘナ)関連
(ア)今次会合のテーマは「持続可能な回復に向けた新しいパートナーシップ」。ウリベ大統領は,同会合のマージンで,マルティネリ・パナマ大統領,コロン・グアテマラ大統領,ルゴ・パラグアイ大統領及びフェルナンデス・ドミニカ共和国大統領と個別に会談。
(イ)ウリベ大統領発言(6,8日):(開会挨拶)44カ国より550人近い投資家の本フォーラムへの参加があったことは,(「コ」政府による)「民主主義確立のための治安」政策が,コロンビアの投資先としての信頼回復に繋がったことによるものである。(閉会挨拶)アンデス共同体(CAN)が衰弱する中,将来的なCANと南米南部共同市場(メルコスール)の統合は,南米連合発足に向けた第一歩となろう。また,コロンビアが中米と南米の架け橋として果たす役割は大きい。
(ウ)シュワブ世界経済フォーラム会長(7日):コロンビアは,政治移行及び経済移行の成功国として,歴史上もっとも知られていない国であろう,と賞賛した。
(3)対アジア関係
(ア)中国・「コ」商工会議所創設に向けた協議(22日):全国企業家連盟(ANDI),コロンビア商業組合(Fenalco),ボゴタ商業会議所及び農業協会(SAC)は,中国との貿易及び投資促進を目的とする同会議所の創設について協議すべく,会合を開催。
(イ)サントス副大統領のインド訪問(29日): サントス副大統領は,4日間の日程でインドを訪問し,石油,砂糖及び技術部門の企業関係者等と会談した。2国間の貿易額増加に期待。
<国内情勢>
(1)国内インフラ関連
(ア)ボゴタ市メトロ建設計画
(ⅰ)ウリベ大統領発言(6日):ボゴタ市公共交通網(トランスミレニオ,メトロ,ボゴタ市近郊鉄道(トレン・デ・セルカニア))計画は,現政権中に国家経済社会計画審議会(CONPES)の承認が得られるだろう。
(ⅱ)セア・メトロ代表発言(1日):2016年にはメトロ第一号線が開通予定。もっとも,これの実現には,本年5月中のCONPESによる承認,7月中の基本デザインの策定,2011年2月中の入札実施,及び同第2四半期中の工事開始が不可欠。
(イ)カルタヘナ港に関する国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(CEPAL)調査(12日):CEPALによれば,2009年のカルタヘナ港におけるコンテナ取扱数は114万TEU(前年比+7.65%)となり,中南米では第9番目であった。カルタヘナ港は,114カ国540を超える港と連携している。
(2)各機関よる2010年実質GDP成長率見通し
(ア)ウリベ中銀総裁(15日):2~3%。当国工業部門及び商業部門の回復,並びに先進国金融部門の回復が要因。
(イ)IMF World Economic Outlook(21日):2.25%。理由は,当国失業率はラテンアメリカ域内で高く国内消費を抑制する点,及び(米・コロンビア新軍事取極締結を契機としたベネズエラ政府の輸入制限措置に伴う)対「べ」輸出低迷が長期化する点。なお,IMFによる中南米全体の成長率見通しは4.0%。
(ウ)Anif(「コ」シンクタンク)(9日):2.3~2.5%。インフレ率低下と景気回復の兆しが要因。
(3)産業部門
(ア)石油
(ⅰ)サモア石油庁(ANH)長官発言(14,23日):コロンビアの石油生産量は2015年に,現在の76.3万バレル/日から140万バレル/日まで倍増する見込み。また,本年の石油埋蔵量は,Llanos Orientales地域の新油田における生産が好調なことから,25億バレルに達するだろう。石油部門における外資投資額については,世界的な金融危機が一段落したことや国際石油価格が上昇していることから,本年は35~40億ドル(2009年比+33%相当)に上るとみられる。
(ⅱ) コロンビア石油公社(Ecopetrol)発表(27日):第1四半期の純利益は2.1兆ペソ,前年同期比+30%となった。石油生産量の増加(同+27%)及び国際石油価格の上昇が要因。
(イ)コーヒー:コーヒー生産者連合会(FNC)発表(11日)によれば,FNC加盟コーヒー生産者による第1四半期のコーヒー生産量は1,800万袋(1袋=60Kg)と,前年同期の2,500万袋から大幅に減少した。
(4)財政
(ア)税収:国税・関税庁(DIAN)発表(7日)によれば,第1四半期の税収は前年同期比+9.6%の16.8兆ペソとなった。とりわけ所得税収(2.3兆ペソ,同+67.2%)及び付加価値税収(4.8兆ペソ,同+17.3%)が好調であった。
(イ)財政収支(2009年):大蔵省の発表(28日)によれば,2009年の財政収支は13.6兆ペソの赤字(GDP比-2.8%)となった。また,中央政府財政収支については,金融危機対策に伴う公共支出が増大したことから,20.7兆ペソの赤字(同-4.2%)を計上した。
(ウ)社会的非常事態政令(Emergencia Social):「コ」政府は2009年11月19日に発出した社会的非常事態政令の中で,健康保険の国庫負担分の財源を確保するため,2011年12月末を期限として1.15兆ペソの増税実施を発表していた。しかし本年4月16日,憲法裁判所はこれに対し,同政令は緊急事態の要件を満たしていないとして違憲判決を下した。ただし,税方式医療サービスに係る経費を支払う税方式管理機関(ARS)に財政的な問題があることを認め,酒・タバコ等の増税については,国会開会期間である同12月16日まで有効とした。
(エ)弾力的信用枠(FCL)の更新申請:中央銀行及び大蔵省は14日,国際通貨基金(IMF)に対し1年間のFCL更新を申請。金額は当初予定した約104億ドル(現契約金額)を下回る約35億ドルとした。なお,対外環境が悪化しない限り,「コ」は今後もFCLによる資金引出しを行う予定はない。
(オ)国債発行:「コ」政府は7日、総額1兆5,300億ペソ(約8億ドル相当)のペソ建て国債を発行。国際資本市場における自国通貨建て国債の発行は,2007年以来3年ぶり。満期償還日は2021年4月14日,クーポン利率は7.75%であり,同国債の国内債とのスプレッドはマイナス83ベーシスポイント。スルアガ蔵相は,今次国債発行の目的を「政府の資金調達及び国際機関からの借入額縮小」とし,「2010年分の資金調達計画における外債調達分はすべて消化した」と述べた。
(カ)フランス・「コ」ニ重課税防止条約に関する報道(9日):交渉開始発表から2年を経て,ようやく5月より交渉を開始する見通し。
(5)企業情報
(ア)SONY発表(19 日):地上デジタル放送欧州方式(DVB)に対応したテレビ16種類の販売開始。
(イ)韓国自動車メーカー大宇(DAEWOO)発表(9日):バス製造のための工場を建設する。建設予定地は当国カリ市のフリーゾーン,Palmasecaであり,300人を新規に雇用予定。
(6)その他
(ア)金融部門利益:金融監督庁(13日発表)によれば,第1四半期の金融部門利益は2.5兆ペソ,前年同期比-1.47%。
(イ)金融政策:中央銀行は30日,政策金利を0.5%ポイント引下げ,3.0%とする旨決定した。消費者物価上昇率は低下傾向にあり,長期インフレ目標である2~4%の下限付近で推移している一方,景気の回復見通しに拘わらず,潜在成長力と現実の経済成長との間にはギャップが存在することから,インフレ目標の達成とマクロ経済の安定を損なわずに,拡張的な金融政策が実施可能と判断した。
(ウ)格付け:スルアガ蔵相は6日,世界経済フォーラムの場で,当国の格付けを投資適格とするよう見直しを求めたいと発言。これに対し米大手格付け会社Moody'sは7日,「コ」の財政状況を鑑みるに投資適格にすることはできない,と返答した。
Ⅲ.主な経済指標 ( )は前年同期の数値
(1)経済活動指数(出所:国家統計庁(DANE))
(ア)鉱工業生産(2月) 前年同月比実質+3.0%(同-12.5%)
(イ)新規建設着工承認面積(2月) 106.0万㎡(91.3㎡)
(2)雇用(3月失業率)(出所:DANE)
(ア)全国平均 11.8%(12.0%)
(イ)主要13都市平均 12.3%(13.5%)
(3)消費者物価指数(3月)(出所:DANE)
(ア)前月比+0.25%(同+0.50%)
(イ)前年同月比+1.84%(同+6.14%)
(ウ)前年末比+1.78%(同+1.94%)
(4)金利(4月末現在の政策金利)(出所:中央銀行)
3.0%(30日,0.5%ポイント引下げ)
(5)為替(4月)(対ドル為替レート)(出所:中央銀行)
(ア)月初 1,969.75ペソ
(イ)月末 1,921.88ペソ
(ウ)最高値 1,973.05ペソ(29日)
(エ)最安値 1,911.07ペソ(7日)
(6)株式指数IGBC(4月)(出所:コロンビア証券取引所(BVC))
(ア)月初 12,190.87ポイント
(イ)月末 12,512.61ポイント
(ウ)最高値 12,615.10ポイント(23日)
(エ)最安値 12,190.87ポイント(5日)
(7)貿易(出所:DANE)
(ア)輸入額(2月) 27.9億ドル(25.3億ドル,前年同期比+10.5%)
(イ)同(1~2月累計) 54.9億ドル(53.1億ドル,同+3.4%)
(ウ)輸出額(2月) 28.8億ドル(23.4 億ドル,同+2.9%)
(エ)同(1~2月累計) 57.9億ドル(48.7億ドル,同+19.0%)
(8)対内直接投資(第1四半期)(出所:中央銀行)
21.7億ドル(17.7億ドル,前年同期比+22.8%)
(9)労働者送金額(出所:中央銀行)
(ア)2月 2.7億ドル(3.8億ドル,前年同月比-27.9%)
(イ)1~2月累計 5.4億ドル(7.0億ドル,前年同期比-23.4%)
(10)ガソリン価格(2010年4月)(出所:鉱山・エネルギー省)
レギュラーガソリン1ガロン 7,565.79ペソ(前月比+200ペソ)
(11)自動車販売台数(3月)(出所:Econometria社)
18,015台(15,324台)
(了)