経済情勢
2010年 7月21日
在コロンビア日本大使館
Ⅰ.概要
●ボゴタ市公共交通網計画について,ウリベ大統領,モレーノ・ボゴタ市長及びゴンザレス・クンディナマルカ県知事の三者の間で,2016年から2032年にかけて年間3,400億ペソを拠出することを決定。
●カナダ議会は21日,カナダ・「コ」FTAを署名から19ヶ月経ってようやく承認。今後は「コ」国内における憲法裁判所の承認手続き等を経て,本年下半期にも発効予定。
●酒・タバコと賭博の増税法案を議会が承認。社会保障の税方式医療サービスに係る経費を負担する税方式管理機関(ARS)の基金の原資担保が目的。
Ⅱ.主な出来事
<国内情勢>
(1)各機関による2010年経済成長率見通し
(ア)大蔵省発表の中期財政枠組み(MFMP)(15日):2.5%から3%に上方修正。その他マクロ経済指標の見通しは,(ⅰ)対ドル為替レート1,956ペソ(年平均),(ⅱ)インフレ率3.0%,(ⅲ)石油価格WTI 80ドル/バレル,(ⅳ)公的部門財政赤字GDP比-3.6%。
(イ)プラタ商工観光大臣発言(18日):3.0%超。エネルギー需要,対内直接投資及び鉱工業生産の増加を背景に,経済回復ペースが当初見通しを上回っている。
(ウ)民間アナリスト平均(28日,報道):4.5~5.0%。建設,鉱業,石油,商業,製造業が好調。
(2)インフラ関連
(ア)ボゴタ市公共交通網計画:28日,ウリベ大統領,モレーノ・ボゴタ市長及びゴンザレス・クンディナマルカ県知事がボゴタ市公共交通網計画について協議した結果,2016年から2032年にかけて年間3,400億ペソを拠出することを決定した。このうち3,000億ペソはボゴタ市内のメトロ及びトランスミレニオ向け(総工費の70%相当),400億ペソは近郊電車(Tren de Cercania)向けとなる。
ただし,ピエドライータ国家企画庁(DNP)長官がナショナル大学及びロス・アンデス大学の調査結果から本計画は「実現性がない」とコメントしていたことも踏まえ,ウリベ大統領は「本計画への国家資金の利用にあたり,各プロジェクトは技術,法律及びファイナンス面での必要条件を満たさなければならない」と強調した。このため,ボゴタ市が上記資金供与を受けるためには,スペインのコンソーシアムであるSener-Transporte Metropolitano de Barcelona社が纏めたメトロの基本設計を見直す必要があるほか,その他土木工学上の基礎調査を進展させる必要がある。
(イ)リネア・トンネル建設計画に関する報道(27日):掘削距離が809メートルまで進み,予定の2013年より早い建設工事完了が視野に。
(3)企業情報
通信会社UNE社発表(29日):UNE社は競争入札を制し,現存のComcel, Movistar, Tigo各社に加え,当国4社目となる携帯電話事業への参入が認められた。
(4)その他
(ア)酒・タバコと賭博の増税法案を議会が承認(17日):社会保障の税方式医療サービスに係る経費を負担する税方式管理機関(ARS)の基金の原資を担保するため,酒・タバコと賭博の増税法案が国会に提出され,上下両院にて可決,成立した。これにより,ビール税は2010年末までは14%,2011年以降は16%となる。その他酒類ついてはアルコール分によって,タバコについては本数によって従価税が課されることとなる。また,賭博税は現行より5%引上げられ21%となる。
(イ)2011年度予算の国会提出(1日):大蔵省は1日,2011年度予算を国会に提出,予算規模は173.8兆ペソとなった。国防予算については,2010度予算の7.6兆ペソの約2倍である15.2兆ペソとした。
(ウ)フリートレードゾーンの増設に関する報道(24日):政府はナリーニョ,ボヤカ,カウカ,ボリバル及びクンディナマルカの各県にフリートレードゾーンを設けることを決定。これに伴い341人の雇用創出が見込まれるほか,現政権の公約であった80ゾーンの増設に残すところあと5つとなった。
(エ)エコカー(電気,水力,天然ガス自動車等)輸入に対する免税措置についてコスタ環境・住居・国土開発相発言(10日):エコカーの輸入には今後免税措置(現行35%)が適用となる。政令発令後,2010年については試験的に100台を対象とする。これにより,最新技術を持つ自動車の輸入促進が期待される。
<対外関係>
(1)対米国FTA関連
(ア)オバマ大統領発言(28日):オバマ大統領は,カナダでの主要8カ国(G8)首脳会議のマージンでウリベ大統領に対し,米・「コ」FTAの議会内での批准に向け引き続き働きかける旨述べた。
(イ)米議会(5日):米議員39名(うち20名は民主党議員)はオバマ大統領に対し,米・「コ」FTAの議会批准を強く推進するよう書簡を提出した。
(2)対カナダFTA関連(プラタ商工観光大臣発言(23日))
(ア)カナダ議会は21日にカナダ・「コ」FTA署名から19ヶ月経ってようやく同FTAを承認,今後「コ」国内における憲法裁判所の承認等の手続きを経て,同FTAは本年下半期にも発効するだろう。発効に伴い,対カナダ輸出に係る関税98%が即時撤廃となり,このうち工業品については99.8%が無関税となる。
とりわけ繊維・縫製品,花卉(ともに即時撤廃)が恩恵を受けるだろう。砂糖は17年後に関税がゼロとなる。また,エタノール,バイオディーゼルについても関税がゼロとなった。
(イ)なお,対EU・FTAと異なり,センシティブ品目である酪農品及び養鶏品は含まれなかった。発効後は,カナダでの政府調達について「コ」企業の応札が可能となるほか,同協定には経済協力条項も含んでおり,労働及び環境についても両国で協力していく。
(3)対アジア関係
(ア)対韓国FTA:14~18日にかけて,韓国・「コ」FTA交渉第3ラウンドがソウルにて開催。紛争解決及び通信分野で進展がみられた一方,サービス,投資分野,並びに家電,自動車等のセンシティブ品目については協議継続となった。なお,第4ラウンドは10月第1週目にボゴタにて開催予定。
(イ)対韓国投資協定:30日,ウリベ大統領はイ・ミョンバク大統領とパナマ・シティにて会談し,韓国・「コ」投資協定を現政権中に署名させることで合意。また,協議中の韓国・「コ」FTAについても,現政権中に出来る限り進展させることで合意した。
(ウ)対中国貿易関係:中国国際貿易促進審議会(CCPIT)と「コ」・中国商業・統合委員会は29日,コロンビアと中国東部浙江省との貿易・投資関係の強化のための協力協定に署名した。
<経済指標>
(1)経済活動全般
(ア)実質GDP成長率(国家統計庁DANE発表):2010年第1四半期の実質GDP成長率(前年同期比,以下同)は+4.4%と,前期(+3.4%)を上回った。前年同期の減速(▲0.4%)の反動による面もあるが,政府支出の増加が寄与するなど内需回復がみられたため,市場予想(+3.5%程度)を大幅に上回る結果となった。もっとも,ブラジル(+8.9%),アルゼンチン(+6.8%),ペルー(+6.0%)等の近隣諸国比ではそれを下回っている。
外需については,輸出が対ベネズエラ輸出の不振から▲6.3%と低迷した。また,産業別にみると,石油・石炭部門が好調な鉱業及び2008年以降の反景気循環政策が奏功した建設業が,それぞれ高い伸びを示した。他方,農林水産業は,コーヒー生産の減少(前年同期比▲25.1%)及びエル・ニーニョの影響から,マイナスとなった。
(イ)実質工業生産指数(DANE発表):4月の実質工業生産指数(コーヒー豆加工を除く)は,前年同月のマイナスからの反動もあり,前年同月比+7.6%と高い伸びを示した。とりわけ,自動車(同+60.8%),基礎化学品(同+18.2%),プラスチック製品(+17.3%)が好調であった。
(2)産業動向
(ア)石油
(ⅰ)国家炭化水素庁(ANH)発表(17日):5月の石油生産量は77.6万バレル/日,前年同月比+18.6%であった。
(ⅱ) 石油鉱区入札に関する報道(21日):22,23日にカルタヘナで開催された「コロンビア・ラウンド 2010(油田探索・開発入札)」では,国内に広範に存在する229鉱区が入札に出され,関心企業96社(うち35社は外資)の応札があった。サモラ国家炭化水素庁(ANH)長官は,これにより,石油生産量の政府目標である日量100万バレルの達成にとどまらず,それを上回ることが可能となり,5~15年の中長期的な国の探鉱開発ビジョンを変えることになると述べた。また,石油開発のための投資見込額について,当初探鉱段階で50鉱区,250百万ドル程度を期待していると述べた。
(ⅲ)カナダ・Gran Tierra Energy社発表(29日):プトゥマヨ県にあるチャサ鉱区にて石油を発見。詳細は後日発表予定。
(イ)コーヒー(コーヒー生産者連合会(FNC)発表(30日)):FNC加盟コーヒー生産者による5月のコーヒー生産量は82.2万袋(1袋=60Kg),前年同月比+17.1%となった。
(ウ)観光(商工観光省発表(24日)):1~4月に「コ」を訪問した観光客数は447,112人,前年同期比+5.2%となった。なお国別では,米国,ベネズエラ,エクアドルの順であった。
(3)物価・雇用(DANE発表)
(ア)物価:5月の消費者物価上昇率は+2.07%(前年同月比,以下同)と,3月(+1.84%)以降小幅上昇が続いている。費目別にみると,教育(+4.14%),保健(+4.10%),住宅(+3.55%)が高い伸びを示した一方,娯楽,通信,衣類は前月に続きマイナスとなった。なお,5月の生産者物価上昇率は+1.38%であった。
(イ)雇用:5月の全国失業率は12.1%と,前年同月の11.7%を0.4%ポイント上回り,06年以降最悪となった。就業者数は前年同月の1,854万人から1,901万人へと上昇しているものの,労働力人口の伸びがそれを上回った。なお,主要13都市の平均失業率も,12.4%から12.8%へと悪化した。
(4)金融
(ア)金融部門利益:金融監督庁が29日に発表した1~5月の金融部門利益は3.8兆ペソ,前年同期比+3.6%であった。
(イ)金融監督庁発表(30日):貸出金利の上限利率を2010年第3四半期は22.41%とする(第2四半期は22.97%)。
(ウ)金融政策:中央銀行理事会は18日に定例政策決定会合を開き,政策金利の据置き(3.0%)及び6月末までの為替介入の延長(介入額は1日当たり2,000万ドルで据置き)を発表した。中央銀行は,同日発表したプレスリリースの中で,「5月の消費者物価上昇率は2.07%と前月(1.98%)を僅かに上回ったものの,中央銀行及び市場予想を下回った」とした。また,「「コ」経済は予想を上回るペースで回復している」とした上で,「現行の金融緩和政策は経済成長に寄与している」と述べた。
(5)財政
(ア)税収(国税・関税庁DIAN発表(8日)):1~5月の税収は目標の28.3兆ペソを上回る28.6兆ペソ,前年同期比+1.9%となった。付加価値税収が7.2兆ペソ,同+20.1%と大幅に増加したことが要因。一方,所得税収は4.6兆ペソ,同-15.8%となった。
(イ)中央政府財政収支(大蔵省発表(22日)):2010年第1四半期の中央政府財政収支は,6,790億ペソ(GDP比+0.1%)の黒字を計上した。税収の増加が主因。
(6)貿易・対内直接投資
(ア)貿易(DANE発表):4月の貿易収支は,輸出が34.9億ドル(前年同月比+43.8%),輸入が30.1億ドル(同+18.6%)となり,前年同月の1.1億ドルの赤字から4.8億ドルの黒字に転じた。輸出については,石油・同製品が同+139.5%と大幅に拡大したことから伝統産品(石油・同製品,コーヒー,フェロニッケル,石炭)が同+86.6%となった。一方,非伝統産品は対ベネズエラ輸出の落ち込みから同+2.2%にとどまった。輸入については,燃料など原料・中間財が大幅に拡大した。
(イ)対内直接投資FDI(中央銀行発表):1~5月のFDI流入額は36.8億ドル,前年同期比+14.3%となった。このうち石油・鉱物資源への投資は全体の88.3%を占める32.5億ドル,同+23.5%であった。
Ⅲ.主な経済指標 ( )は前年同期の数値
(1)経済活動指数(出所:国家統計庁(DANE))
(ア)実質GDP成長率(第1四半期) 前年同期比+4.4%(同-0.4%)
(ⅰ)需要項目別
輸入 +2.2%
最終消費 +4.0%
民間消費 +3.5%
政府支出 +6.1%
固定資本形成 +8.0%
輸出 ▲6.3%
(ⅱ)産業部門別
農林水産業 ▲1.3%
鉱業 +13.2%
製造業 +3.9%
電気・ガス・水道 +6.5%
建設業 +15.9%
商業・レストラン・ホテル +3.6%
運輸・倉庫・通信 +2.6%
金融・保険・不動産・法人サービス +1.5%
社会・地域・個人サービス +4.1%
※統計手法を変更。また,基準年を2000年から2005年に変更。
(イ)実質工業生産指数(4月) 前年同月比+7.6%(同-15.0%)
(ウ)実質工業売上高指数(4月) 前年同月比+5.6%(同-12.9%)
(エ)新規建設着工承認面積(4月) 131.1万㎡(122.9万㎡)
(2)雇用(5月失業率)(出所:DANE)
(ア)全国平均 12.1%(10.8%)
(イ)主要13都市平均 12.8%(11.7%)
(3)消費者物価指数(5月)(出所:DANE)
(ア)前月比+0.10%(同+0.01%)
(イ)前年同月比+2.07%(同+4.77%)
(ウ)前年末比+2.35%(同+2.28%)
(4)金利(6月末現在の政策金利)(出所:中央銀行)
3.0%(4月30日,0.5%ポイント引下げ。以降据置き)
(5)為替(6月)(対ドル為替レート)(出所:中央銀行)
(ア)月初 1,971.55ペソ
(イ)月末 1,916.46ペソ
(ウ)最高値 1,886.05ペソ(23日)
(エ)最安値 1,971.55ペソ(1日)
(6)株式指数IGBC(6月)(出所:コロンビア証券取引所(BVC))
(ア)月初 12,282.16ポイント
(イ)月末 12,449.90ポイント
(ウ)最高値 12,522.03ポイント(22日)
(エ)最安値 12,267.24ポイント(9日)
(7)貿易(出所:DANE)
(ア)輸入額(FOB)(4月) 30.1億ドル(25.3億ドル,前年同期比+18.6%)
(イ)同(1~4月累計) 113.4億ドル(100.6億ドル,同+12.8%)
(ウ)輸出額(FOB)(4月) 34.9億ドル(24.3億ドル,同+43.8%)
(エ)同(1~4月累計) 126.3億ドル(100.0億ドル,同+26.2%)
(8)国内個人送金(出所:中央銀行)
(ア)3月 3.6億ドル(3.9億ドル,前年同期比-7.5%)
(イ)1~3月累計 9.0億ドル(11.0億ドル,同-17.7%)
(9)ガソリン価格(2010年6月)(出所:鉱山・エネルギー省)
レギュラーガソリン1ガロン 7,565.79ペソ(3ヶ月連続据置き)
(10)自動車販売台数(5月)(出所:Econometria社)
18,906台(14,146台,前年同月比+33.6%)
(了)