月例報告(7月分)

経済情勢

2010年 8月25日

在コロンビア日本大使館

 

Ⅰ.概要

●ベネズエラ政府による輸入制限措置開始から1年が経過,政府は経済面でとりわけ被害の大きい国境沿い地域に対し,社会的非常事態政令を発出した。

●「コ」政府は韓国との投資貿易協定(7日)及び二重課税防止条約(27日)に署名した。また,ドル借款契約(27日)にも署名し,韓国より社会貢献が期待される教育分野に対する譲許的融資案件2件が承認された。

●大蔵省は20日,財政規律法案を国会に提出した。同法案の目的は,中央政府債務の対GDP比率を2020年には28.4%まで引下げること(2010年現在は39.4%)である。

2010年第1四半期の公的部門財政収支(SPC)は2.8億ペソ(GDP比+0.1%)と,国内景気の回復に伴い,前年同期の12.8億ペソ(GDP比-0.3%)の赤字から黒字に転じた。

 

Ⅱ.主な出来事

<国内情勢>

(1)各機関による2010年経済成長率見通し

(ア)中央銀行(23日):24%から3.55.5%に上方修正。製造業部門,消費及び信用の伸びを考慮。

(イ)国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(CEPAL)(21日):前回(200912月)の2.5%から3.7%へ上方修正。2010年第1四半期の実質GDP成長率が前年同期比+4.4%と予想を大幅に上回ったこと,5月までの製造業,商業,輸出及び消費者信頼感指数がいずれも好調であったことが要因。なお,2011年の見通しは3.0%としている。

 

(2)インフラ関連

(ア)ボゴタ市メトロ建設プロジェクト関連

(ⅰ)(メトロ建設プロジェクトの審査を担当した)ナショナル大学及びロス・アンデス大学の見解(8日):ボゴタ市の交通環境改善のためには,ボゴタ市公共交通網計画(SITP)のうちトランスミレニオの増設を優先させるべきである。メトロ建設はその次であり,工事は2018年以降に開始すべき。

(ⅱ)ピエドライータ国家企画庁(DNP)長官発言(16日):メトロ建設プロジェクトは未だ実現性を伴っておらず,国家資金の利用は約束されたものではない。

(ⅲ)セア・ボゴタ市メトロ建設プロジェクト部長発言(30日):メトロ第1号線の基礎工学につき,コンソーシアム5社より設計案が提出された。9月には落札業者が決定し,2011年末までに工事着工させる予定。

(イ)ブエナベントゥーラ港関連:ブエナベントゥーラ港新貨物ターミナル「Tcbuen」に,9月,初めて船が到着の予定。この船はクレーン2機を積んでおり,11月の同ターミナル稼働に向けた最終整備を行う。

(ウ)ボゴタ市国際空港「エル・ドラド」関連:コンセッション企業「Opain」社によれば,貨物用ターミナルが6日にオープン,ウリベ大統領がオープニング・セレモニーに出席した。投資額は3,000億ペソ。

 

(3)企業情報

(ア)国営発電会社ISAGENに対する国際仲裁裁判所(ICC)の判決:15日,ICCISAGEN社に対し,ブラジルの建設会社Noberto Odebrechtに約62,921百万ペソ(41,602百万ペソ+11,389百万ドル,利息含む)の支払いをするよう命じた。2006年のOdebrecht社による訴訟内容は,水力発電MIEL Iの建設にかかる工事期間や民事責任に関するもの。ISAGEN社は同判決を不服とし,控訴する意向を明らかにしている。

(イ)Exito-Cafam統合:商工業監督庁は29日,総合スーパーExito社と家族補償公庫Cafamの戦略的統合を承認した。今後,スーパーマーケット部門はExito社に,ドラッグストア部門はCafamに事業集約される。

 

(4)その他

(ア)財政規律法案:20日,スルアガ蔵相は国会に財政規律法案(Regla Fiscal)を提出した。同法案は大蔵省,国家企画庁(DNP)及び中央銀行の三者により作成されたものであり,概要は以下のとおり。 

(ⅰ)対象機関:中央政府

(ⅱ)財政指標:プライマリー・バランス

(ⅲ)定義:中央政府債務を段階的に縮小させるべく,プライマリー・バランスの中期目標(GDP比)を設定。同目標値の設定には,投資適格かつ持続可能な債務水準に相当するプライマリー・バランス(GDP比),生産ギャップ(GDP比),景気変動に左右される石油収入を考慮。

(ⅳ)施行・運営・モニタリング:①各種基準値の設定,②運営,モニタリング及び評価,③調整メカニズムと回避条項,④責任及び制裁。なお,景気変動により各年のプライマリー・バランス目標を達成できない場合には,財政諮問会議の意見を聞いて,2年間で調整する方式(弾力措置)を設ける。

(ⅴ)特徴:好景気時に税収に見合った拡張的歳出としない財政政策であり,中期目標の達成をしやすくするほか,金融政策との強調が可能となる。すなわち,好景気時には金融引締めの効果が発現し易く,不景気時には財政支出の拡大及び政策金利の引下げによる景気刺激策を可能とする。

 また,鉱業・エネルギー部門の高成長が見込まれる中,それに伴う収入増加分は債務返済に充当することで,規律あるマクロ経済運営が可能となる。この結果,行き過ぎた通貨高も抑制可能となる。

(イ)2011年度予算案:30日,政府は国会に2011年度予算案を提出した。歳出額は2010年度比2.5%増の147.3兆ペソ(GDP比+25.9%)であり,このうち債務は37.7兆ペソ,投資的支出は25.6兆ペソとした。なお,今次予算案は,中期財政枠組み(MFMP)で示したマクロ経済見通し及び現在国会で審議中の財政規律法案の方針に沿ったものである。

(ウ)米格付会社Standard & Poor’sによる格付け見通しの引上げ:政府による財政規律法案の発表を受け,Standard & Poor’s社は7日,「コ」の長期外貨建てソブリン格付け(BB-)の見通しを「安定的」から「ポジティブ」に引上げた。なお,同社は「コ」が投資適格級を得るには,治安の更なる改善,持続的な経済成長,財政規律法案の可決,インフラ部門への投資拡大等が必須条件であるとした。

 

<対外関係>

(1)対ベネズエラ関係

(ア)米・「コ」軍事協定取極締結を契機とした,「ベ」政府による輸入制限措置の開始から719日で1年が経過した。この結果,2010年上半期の「コ」の輸出総額は前年同期比+24.3%と増加したにも拘わらず,対「ベ」輸出については同-71.7%と大幅に落ち込んだ。また,政府の試算によれば,店舗の閉鎖等に伴い20万人が職を失い,輸出先を失ったことによる被害総額は40億ドルに上るとされる。

(イ)政治面では,「コ」は対話による関係修繕を求めていたものの適わず,716日にはFARC及びELNの「ベ」国内における基地の存在資料を米州機構へ提出したことから,チャベス大統領は「コ」に対し外交関係断絶を宣言した。

(ウ)これにより,当面対「ベ」輸出の再開が見込めないことが決定的となった。政府はこの状況に鑑み,27日,とりわけ被害の大きい国境沿い地域を対象とする社会的非常事態(Emergencia Social)政令を発出した。同政令の主な内容は以下のとおり。

(ⅰ)ベネズエラと国境を接するラ・グアヒラ県,ノルテ・デ・サンタンデール県及びアラウカ県を対象に,衣服,食糧品,革製品,繊維製品,家電製品にかかる付加価値税(IVA)120日間免除

(ⅱ)2011年末までの,同地域単一法人フリーゾーンにおける最低必要投資額を36百万ドルから1.4百万ドルへ減額

(ⅲ)コロンビア貿易銀行(Bancoldex)による同地域の中小企業向融資増額(500百億ペソ)

(ⅳ)同地域の商取引を拡大すべく,コロンビア貿易振興機構(Proexport)主催の国内企業家及び海外投資家を対象とした展示・商談会の開催

 

(2)対日関係

プラタ商工観光大臣の訪日:プラタ商工観光大臣は630日から72日にかけて訪日し,日本政府と対日二国間投資協定及び二重課税防止条約の早期承認について,またEPA交渉の開始等について協議した。加えて,APEC加盟を希望する旨伝えた。

さらに,日系企業及び投資家に対しては,「コ」商工観光省,国際協力銀行(JBIC)及び米州開発銀行(IDB)主催の「コロンビア投資機会セミナー(2日)」において,直近8年間の「コ」における治安改善状況等について講演を行った。

 

(3)対韓国関係

(ア)投資協定:両国政府は7日,韓国・「コ」投資協定に署名した。今後,両国議会における批准承認を経て発効となる。なお,同協定署名のため韓国を訪問していたプラタ商工観光大臣は,韓国・「コ」FTAについても,年内には交渉が終了するだろうと述べた。

(イ)二重課税防止条約:27日,スルアガ蔵相及び洪韓国大使はボゴタに於いて,韓国・コロンビア二重課税防止条約に署名した。同条約の最終テキストは200911月に合意していたものであり,今般両国内における手続きを終え,署名に至った。

(ウ)韓国による対「コ」ドル借款供与:27日,1年に亘る検討を経て,ベレス教育相と洪韓国大使はドル借款契約に署名した。これは社会貢献が期待される教育分野に対して供与される譲許的融資であり,貸付けの条件は,金利0.2%(年率),期間40年(うち据置期間は10年)である。

 なお,同日融資オペレーションが承認された2つのプロジェクトは,①教育分野における情報通信技術(ICT)育成プロジェクト(融資額30百万ドル,教育省担当),及び②ハイレベルのICT調査・育成センター設立プロジェクト(融資額10百万ドル,情報通信技術省担当)となっている。

 

(4)対フランス,インド二重課税防止条約に関する報道(9日)

(ア)対フランス二重課税防止条約:630日から72日にかけて,フランス・「コ」二重課税防止条約交渉がパリにおいて行われ,8日,同条約は合意に至った。コロンビア貿易振興機構(Proexport)によれば,2009年のフランスの対「コ」海外直接投資額は前年の7,030万ドルから11,300万ドルへと増加しており,今次合意に伴い更なる投資促進が期待される。

(イ)対インド二重課税防止条約:ピント駐インド・コロンビア大使によれば,8日,インド・「コ」二重課税防止条約は合意に至った。

 

<経済指標>

(1)経済活動全般

(ア)実質工業生産指数(DANE発表):5月の実質工業生産指数(コーヒー豆加工を除く)は,前年同月のマイナスからの反動もあり,前年同月比+7.5%と高い伸びを示した。とりわけ自動車(同+44.4%),鉄鋼(同+19.8%),基礎化学品(同+14.2%),その他化学品(同+12.8%)及び製粉・スターチ(+10.2%)が好調であった。

(イ)消費者信頼感指数(Fedesarrollo発表):6月の消費者信頼感指数(ICC)は27.2ポイントと,前月(22.5ポイント)から4.7ポイント上昇した。6ヶ月連続の上昇となり,世界的な経済危機以前の水準まで回復した。

(ウ)一人当たり国民総所得(GNI)(DNP発表):ピエドライータDNP長官は,2010年の一人当たりGNI6,000ドルに上るとの見通しを発表した(2009年は4,983ドル)。

 

(2)産業動向

(ア)全国工業連盟(ANDI)鉱業関連委員会発表(28日):2020年までの鉱業部門への投資総額は240億ドル(うち125億ドルは石炭への投資)に上る見込み。

(イ)石油

(ⅰ)国家炭化水素庁(ANH)発表:6月の石油生産量は平均78.3万バレル/日,前年同月比+18.4%であった。

(ⅱ)国営石油会社エコペトロル発表(14日):2020年における石油生産量を130万バレル/日まで引上げるべく,今後10年間で800億ドルの投資を行う。このうち79%は探査及び生産活動,残りの21%を精製,運輸,販売及びバイオ燃料生産等に充てる。

なお,米格付け会社Standard & Poor’s16日,エコペトロル社の長期格付け見通しをBB+「安定的」から「ポジティブ」に引上げた。

(ウ)石炭(全国石炭生産者連合会発表26)):石炭の年間生産量は,投資拡大等に伴い2009年の7,300万トンから2025年には1.7億トンまで増加するだろう。

(エ)コーヒー(コーヒー生産者連合会(FNC)発表):FNC加盟コーヒー生産者による6月のコーヒー生産量は78.0万袋(1袋=60Kg),前年同月比+13.9%となった。なお,ムニョスFNC会長によれば,50万ヘクタール相当の計画的樹齢更新(老木の植替え)に伴い,2015年の生産量は14百万袋に達する見込みである。

 

(3)物価・雇用(DANE発表)

(ア)物価:6月の消費者物価上昇率は+2.25%(前年同月比,以下同)と,3月(+1.84%)以降小幅上昇が続いている。費目別にみると,保健(+4.20%),教育(+4.12%),住宅(+3.71%)が高い伸びを示した一方,娯楽,通信,衣類は前月に続きマイナスとなった。なお,5月の生産者物価上昇率は+2.13%であった。

(イ)雇用:6月の全国失業率は11.6%と,前年同月の11.4%を0.2%ポイント上回り,同月の失業率としては06年以降最悪となった。また,非正規雇用者のうち職を探していない/探すことをあきらめた人口は前年同月比+20.4%と大幅に増加した。なお,主要13都市の平均失業率は13.0%から12.4%へと改善している。

 

(4)金融政策:中央銀行理事会は23日に定例政策決定会合を開き,政策金利の据置き(3.0%)を決定した。

 

(5)財政

(ア)税収(国税・関税庁(DIAN)発表):16月の税収は,景気回復とDIANの徴税能力向上に伴い目標の33.7兆ペソを上回る33.9兆ペソとなった。特に付加価値税収が7.4 兆ペソ,前年同期比+20.6%と大幅に増加した。

(イ)公的部門財政収支(大蔵省発表):2010年第1四半期の公的部門財政収支(SPC)は2.8億ペソ(GDP比+0.1%)と,前年同期の12.8億ペソ(GDP比-0.3%)の赤字から黒字に転じた。国内景気の回復による中央政府財政収支(GNC)の改善(前年同期の32.5億ペソの赤字から6.8億ペソの黒字に転化)が主因であった。

 

(6)貿易・投資

(ア)貿易(DANE発表):5月の貿易収支は,輸出が35.1億ドル(前年同月比+28.0%),輸入が30.0億ドル(同+29.1%)と,黒字幅は前年同月の4.2億ドルから5.1億ドルへと僅かに拡大した。輸出は石油・同製品が同+56.7%と高い伸びを維持した一方,輸入についても燃料など原料・中間財が前年同月比+135.7%と大幅に拡大した。

(イ)対内直接投資FDI(中央銀行発表):16月のFDI流入額は45.3億ドル,前年同期比+11.2%となった。このうち石油・鉱物資源への投資は全体の87.2%を占める39.5億ドル,同+16.5%であった。

 

Ⅲ.主な経済指標 ( )は前年同期の数値

(1)経済活動指数(出所:国家統計庁(DANE))

 (ア)実質工業生産指数(5月)   前年同月比+7.5%(同-7.0%)

 (イ)実質工業売上高指数(5月) 前年同月比+3.7%(同-5.5%)

 (ウ)新規建設着工承認面積(5月)133.9万㎡(131.1万㎡)

(2)雇用(6月失業率)(出所:DANE

 (ア)全国平均        11.6%(11.4%)

 (イ)主要13都市平均 12.8%(13.0%)

(3)消費者物価指数(6月)(出所:DANE

 (ア)前月比     0.11%(同-0.06%)

 (イ)前年同月比 +2.25%(同+3.81%)

 (ウ)前年末比   2.47%(同+2.22%)

(4)金利(7月末現在の政策金利)(出所:中央銀行)

  3.0%(430日,0.5%ポイント引下げ。以降据置き)

(5)為替(7月)(対ドル為替レート)(出所:中央銀行)

 (ア)月初   1,913.15ペソ

 (イ)月末   1,841.35ペソ

 (ウ)最高値 1,841.35ペソ(30日)

 (エ)最安値 1,913.15ペソ(1日)

(6)株式指数IGBC7月)(出所:コロンビア証券取引所(BVC))

 (ア)月初   12,388.51ポイント

 (イ)月末   13,340.48ポイント

 (ウ)最高値 13,518.26ポイント(27日)

 (エ)最安値 12,345.01ポイント(2日)

(7)貿易(出所:DANE

 (ア)輸入額(FOB)5月) 30.0億ドル(23.3億ドル,前年同期比+29.1%)

 (イ)同(15月累計)   143.3億ドル(123.8億ドル,同+15.8%)  

 (ウ)輸出額(FOB)(5月) 35.1億ドル(27.4億ドル,同+28.0%)

 (エ)同(15月累計)   161.4億ドル(127.5億ドル,同+26.6%)

(8)国内個人送金(出所:中央銀行)

 (ア)6月         3.2億ドル(3.1億ドル,前年同期比+2.2%)

 (イ)16月累計 18.7億ドル(20.9億ドル,同-10.5%)

(9)ガソリン価格(20107月)(出所:鉱山・エネルギー省)

  レギュラーガソリン1ガロン 7,715.78ペソ(前月比+149.99ペソ)

(10)自動車販売台数(6月)(出所:Econometria社)

  20,382台(13,586台,前年同月比+50.0%)

(了)