経済情勢
2010年10月12日
在コロンビア日本大使館
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Ⅰ.概要
●中銀理事会は15日,為替介入の再開(同日以降4ヶ月以上にわたり,1日当たり最低2,000万ドルの入札によるドル買いの実施)を発表した。
●サントス大統領は27日,観光振興のための政策目標として,250,000人の新規雇用創出及び外国人観光客5百万人の誘致を掲げた。また具体化に向け,オープンスカイの実現,空港ターミナルの近代化及び観光インフラの強化等,投資総額4,000億ペソを検討する。
●米格付会社Moody'sはコロンビアの長期外貨建てソブリン格付け(Ba1)の見通しを「安定的」から「ポジティブ」に引上げた。理由として,財政改革法案が債務削減を目標とし財政責任をより明確にするものであること,石油生産の中期見通しが明るいこと,世界的な金融危機にうまく対処したこと,対ベネズエラ輸出の落ち込みによる影響が緩和されつつあること等が挙げられた。
●三井住友銀行は,コロンビア国内資産総額第2位の銀行,バンコ・デ・ボゴタ(Banco de Bogota)との業務協同に関する覚書を締結した。インフラ等のプロジェクト・ファイナンス案件や中南米地域に進出する日系企業への現地通貨での資金調達機会を提供予定。
Ⅱ.主な出来事
<国内情勢>
(1)経済動向と見通し
(ア)工業連盟(ANDI)(15日):2010年実質GDP成長率(以下,成長率)見通しを3.5%から5.2%へ上方修正。ビジェガスANDI会長によれば,鉱業・エネルギー分野等にみられる好調な経済指標は,国内外の投資家に信頼感と楽観的な見方をもたらしている。
(イ)世界経済フォーラム(WEF)発表(9日):「国際競争力ランキング2010年版」によると,コロンビアは68位(前年69位)であった。
(2)インフラ関連:公共交通機関トランスミレニオ
ボゴタ都市開発機構(IDU)は3日, Carrera 7(Calle 34~170間)に建設予定のトランスミレニオ第1工区(Calle 32~72間)の建設工事につき,El Condor社に840億ペソで委託すると発表した。本年11月にも着工の予定であり,2011年下半期中の完成を目指す。
(3)企業情報
(ア)Grupo Odin(個人投資家による日系バイオエネルギー関連企業)(8日,当地経済紙報道):Grupo Odin社は2010年中にもコロンビア証券取引所に上場する見通しであり,係る手続きを進めている。これが実現すれば,同取引所において,カナダのCanacol社及びPacific Rubiales社に次ぐ3番目の外資系企業の上場となる。なお,同社は株式市場にて得た資金で混合バイオディーゼルプラントの拡大やその他異なるタイプのプラントに6千万ドルの投資を行いたいとしている。
(イ)Distoyota社(16日,当地経済紙報道):当地で長年トヨタ車の販売を行っているDistoyota社は,ノルテ・デ・サンタンデール県ククタ市に販売店Cucuta Motor’sを新規開設した。
(ウ)三井住友銀行(21日,同行プレスリリース):三井住友銀行は,コロンビア国内資産総額第2位の銀行,バンコ・デ・ボゴタ(Banco de Bogota)との業務協同に関する覚書を締結した。インフラ等のプロジェクト・ファイナンス案件や中南米地域に進出する日系企業への現地通貨での資金調達機会の提供を行う予定。
(エ)発電会社Emgesa社(24日,当地経済紙報道):スペインEndesa社の子会社であるEmgesa社は,ウィラ県にあるエル・キンポ中央水力発電所建設のため,8.4億ドルの投資を承認した。これにより400MWhの発電が可能となる見込み。
(4)その他
(ア)米格付会社Moody'sによる格付け見通しの引上げ:Moody's社は9日,コロンビアの長期外貨建てソブリン格付け(Ba1)の見通しを「安定的」から「ポジティブ」に引上げた。理由として,財政改革法案が債務削減を目標とし,財政責任をより明確にするものであること,石油生産の中期見通しが明るいこと,世界的な金融危機にうまく対処したこと,対ベネズエラ輸出の落ち込みによる影響が緩和されつつあること等が挙げられた。
(イ)鉱業採掘権収入見通し:エチェベリ蔵相は29日,2010年の鉱業採掘権収入は鉱業・エネルギー部門の生産が好調であるため8兆ペソに上るだろうと述べた。また,2012~2010年では95兆ペソに上ると予想した。
(ウ)コロンビア通信衛生整備計画(SATCOL):モラノ情報技術・通信相は1日,SATCOLに基づき通信衛星の製造及び衛生軌道上への配置を行う企業の入札につき,中国企業1社の応札があったものの,条件を満たさなかったため決定は先送りとなった旨述べた。
(エ)観光振興政策:サントス大統領は27日,観光振興のための政策目標として,250,000人の新規雇用創出及び外国人観光客5百万人の誘致を掲げた。また具体化に向け,オープンスカイの実現,空港ターミナルの近代化及び観光インフラの強化等,投資総額4,000億ペソを検討する。
<対外関係>
(1)FTA関連
(ア)対米:本年中の対米FTA締結の目処が立たないことから,コロンビアの花卉輸出業者等は米国政府に対し,2010年末を期限とするアンデス通商促進麻薬撲滅法(ATPDEA)の延長を要請した。
(イ)対パナマ:13~17日にかけて第4回会合がボゴタにて開催され,市場アクセス,検疫,知的財産権及び原産地証明等が協議された。なお,第5回会合は10月25~29日に開催の予定であり,最終ラウンドとなる見込み。
(ウ)対韓国
(ⅰ)7~10日にかけて,ミニラウンドが米ワシントンDCにて開催され,原産地証明,投資及び人物交流等が協議された。なお,第4回会合は10月4~8日にカリにて実施予定。
(ⅱ)在コロンビア洪韓国大使は,30日付当地経済紙「ラ・レプブリカ」とのインタビューの中で両国経済関係の前進について述べ,「コ」・韓国FTAは2011年上半期中にも締結するだろうとした。
(ⅲ)チャモロ自動車協会会長は23日,対韓国FTAは韓国からの自動車輸入を増加させる一方,コロンビアの自動車及び同部品企業による対韓国輸出には寄与しないとして,同FTAに反対である旨述べた。
(2)対ベネズエラ関係:債務返済の実施
当地報道によれば,ベネズエラの外貨管理委員会(Cadivi)は,コロンビア輸出企業に対する債務総額7億8,600万ドルのうち1億830万ドルの返済手続きを行った旨述べた。なお,10月7日に行われたコロンビア・ベネズエラ外相会談において,マドゥーロ・ベネズエラ外相は,8月20日の外相会談でベネズエラがコロンビアに支払うとした貿易債務2億ドルのうち,9,800万ドルの支払い手続きを同6日に完了した旨述べた。Cadiviが外貨発給許可を出さないため,2006年末以降,コロンビア輸出企業への支払いが滞っているもの。
(3)対日関係:対日花卉輸出
日本花輸出入協会によれば,コロンビアの対日花卉輸出は増加しており,日本市場において中国を抜きマレーシアに次ぐ第2位のシェア(17.7%)となった。コロンビアは主にバラとカーネーションを輸出している。
<経済指標>
(1)経済活動全般
(ア)実質GDP成長率(国家統計庁DANE発表):2010年第2四半期の実質GDP成長率(前年同期比,以下同)は前期(+4.4%)並の+4.5%となり,市場予想の+5%超を下回った。また,景気回復ペースは近隣諸国には及ばなかった(アルゼンチン11.8%,ペルー10.1%,ブラジル8.7%,メキシコ7.6%,チリ6.5%)。
需要項目別にみると,最終消費及び固定資本形成は3%台の伸びを記録したものの,(米・コロンビア新軍事取極締結を契機としたベネズエラ政府の輸入制限措置に伴う)対ベネズエラ輸出の不振が続いていることから,輸出は+1.5%に留まった。また,輸入は内需回復を受け,+18.8%を記録した。
産業部門別にみると,石油・石炭部門が好調な鉱業(+14.9%)が前期(+13.6%)に続き高い伸びを示したほか,製造業(+8.4%)及び商業・レストラン・ホテル(+5.4%)も伸びを加速させた。一方,建設業(▲5.6%)は,8月の政権交代期に伴う公共事業の停滞や大型ショッピングセンターの建設ラッシュが一巡したことなどから,2009年第2四半期以降4半期続けて2桁のプラスとなった後,マイナスに転じた。
(イ)実質工業生産指数(DANE発表):7月の実質工業生産指数(コーヒー豆加工を除く)は前年同月比+0.2%と伸びが鈍化した。
(ウ)消費者信頼感指数(Fedesarrollo発表):8月の消費者信頼感指数(ICC)は本年最高の30.8ポイントと,前月,前年同月をそれぞれ9.2ポイント,30.1ポイント上回った。家計の自動車や住宅の購入余地が拡大した。
(2)産業動向
(ア)石油生産量(国家炭化水素庁(ANH)発表):8月の石油生産量は平均78.8万バレル/日,前年同月比+17.9%であった。サモラANH長官によれば,パシフィック・ルビアレス社(加)の東部平原地帯(ジャノス・オリエンタレス)における採掘拡大に伴い,年後半の生産量は平均100万バレル/日に達する見通し。
(イ)コーヒー
(ⅰ)生産量(コーヒー生産者連合会(FNC)発表):FNC加盟コーヒー生産者による7月のコーヒー生産量は78.7万袋(1袋=60Kg),前年同月比+35.2%となった。
(ⅱ)価格(国際コーヒー機関発表):コロンビア産マイルド・アラビック・コーヒーの価格は8日,過去13年間で最高値となる1ポンド=2.57ドルを付けた。
(ウ)自動車(DANE発表):第2四半期の自動車販売台数は,前年同期比+50%の55,976台となった。このうち50.9%は国産車,残りの49.1%は輸入車であった。自動車販売が好調な背景には,ペソ高,消費者マインドの回復,資金調達環境の改善及び低金利がある。
(3)物価・雇用(DANE発表)
(ア)物価:8月の消費者物価上昇率は+2.31%(前年同月比,以下同)となった。費目別にみると,保健(+4.32%),教育(+4.10%),住宅(+3.63%)が高水準であった一方,娯楽,通信,衣類は前月に続きマイナスとなった。なお,中銀のインフレ目標は3±1%。また,8月の生産者物価上昇率は+2.81%であった。
(イ)雇用:8月の全国失業率は11.2%と,前年同月の11.7%から0.5%ポイント改善した。また,就業者数は前年同月の1,827万人から1,932万人まで増加した。なお,主要13都市の平均失業率についても前年同月の13.1%から12.2%へと改善している。
(4)金融
(ア)金融政策
(ⅰ)為替介入の再開:中銀理事会は15日,(前日の対ドル為替相場が1ドル=1,800ペソを上回って取引を終えたことを受け)外貨準備の積み増しを再開する旨決定した。同日のプレスリリースでは,「本日以降少なくとも4ヶ月間にわたり,1日当たり最低2,000万ドルのドル買いを行う。」とした。
なお,介入開始後もペソ高の進行が続いていることから,産業界は政府及び中銀に対し追加措置をとるよう求めているが,政府は公共投資拡大や税・財政改革の実施により中長期で生産部門の競争力向上を目指すとの方針を表明している。
(ⅱ)政策金利据置き:中銀理事会は24日に定例政策決定会合を開き,政策金利を3.0%に据置く旨決定した。
(イ)金融部門利益(金融監督庁発表):1~7月の金融部門利益は前年同期比2.21兆ペソ増の5.31兆ペソとなった。
(5)財政/税収(国税・関税庁(DIAN)発表):1~8月の税収は44.77兆ペソ,前年同期比-0.9%であった。政府目標の44.68兆ペソを僅かに上回った。
(6)国際収支・貿易・投資
(ア)国際収支(中銀発表):2010年第2四半期の経常収支は16.0億ドルの赤字と,赤字幅は前年同期から7.2億ドル拡大した。貿易収支及び経常移転収支の黒字額は拡大したものの,サービス収支及び所得収支の赤字額の拡大幅がそれを上回った。
資本収支の流入超額は,前年同期比16.5億ドル増の26.5億ドルとなった。証券投資の流入超額は前年同期の16.6億ドルから3.8億ドルへと減少した。一方,直接投資の流入超額は,鉱業部門への投資が好調を維持し,13.2億ドルから16.2億ドルへと拡大した。
(イ)貿易(DANE発表):7月の貿易収支は,輸入が32.4億ドル(前年同月比+6.9%),輸出が31.6億ドル(同+8.8%)となった結果,赤字幅は前年同月の-1.3億ドルから-0.8億ドルへと縮小した。輸出の増加は原油・石油製品(同+57.5%)が主因であった。他方,輸入の増加(CIF価格)は,燃料(同+68.5%)及び耐久消費財(同+48.6%)であった。
(ウ)対内直接投資FDI(中銀発表):8月のFDI流入額は11.3億ドル,前年同月比+55.4%となった。このうち石油・鉱物資源への投資は全体の64.3%を占める7.2 億ドル,同+9.5%であった。なお,1~8月累計では64.5億ドル,前年同期比+19.7%となった。
Ⅲ.主な経済指標 ( )は前年同期の数値
(1)経済活動指数(出所:国家統計庁(DANE))
(ア)実質GDP成長率(第2四半期) 前年同期比+4.5%(同-0.2%)
(ⅰ)需要項目別
輸入 +18.8%
最終消費 +3.8%
民間消費 +3.9%
政府支出 +5.9%
固定資本形成 +3.4%
輸出 +1.5%
(ⅱ)産業部門別
農林水産業 +1.1%
鉱業 +14.9%
製造業 +8.4%
電気・ガス・水道 +3.3%
建設業 -5.6%
商業・レストラン・ホテル +5.4%
運輸・倉庫・通信 +4.2%
金融・保険・不動産・法人サービス +3.2%
社会・地域・個人サービス +3.7%
(イ)実質工業生産指数(7月) 前年同月比+0.2%(同-6.7%)
(ウ)実質工業売上高指数(7月) 前年同月比-2.0%(同-7.2%)
(エ)新規建設着工承認面積(7月)145.0万㎡(129.8万㎡)
(2)雇用(8月失業率)(出所:DANE)
(ア)全国平均 11.2%(11.7%)
(イ)主要13都市平均 12.2%(13.1%)
(3)消費者物価上昇率(8 月)(出所:DANE)
(ア)前月比 +0.11%(同+0.04%)
(イ)前年同月比 +2.31%(同+3.13%)
(ウ)前年末比 +2.54%(同+2.23%)
(4)金利(9月末現在の政策金利)(出所:中央銀行)
3.0%(2010年4月30日,0.5%ポイント引下げ。以降据置き)
(5)為替(9月)(対ドル為替レート)(出所:中央銀行)
(ア)月初 1,826.31ペソ
(イ)月末 1,799.89ペソ
(ウ)最高値 1,788.05ペソ(15日)
(エ)最安値 1,826.31ペソ(1日)
(6)株式指数IGBC(9月)(出所:コロンビア証券取引所(BVC))
(ア)月初 14,474.52ポイント
(イ)月末 14,710.97ポイント
(ウ)最高値 14,710.97ポイント(30日)
(エ)最安値 13,985.66ポイント(2日)
(7)国際収支(第2四半期)(出所:中央銀行)
(ア)経常収支 -1,602百万ドル(-886百万ドル)
(イ)資本収支 2,648百万ドル( 999百万ドル)
(ウ)誤差脱漏 -97百万ドル(-310百万ドル)
(エ)外貨準備増(-)減 1,143百万ドル(-197百万ドル)
(8)貿易(出所:DANE)
(ア)輸入額(FOB)(7月) 32.4億ドル(30.3億ドル,前年同期比+6.9%)
(イ)同(1~7月累計) 205.1億ドル(177.7億ドル,同+15.4%)
(ウ)輸出額(FOB)(7月) 31.6億ドル(29.0億ドル,同+8.8%)
(エ)同(1~7月累計) 224.0億ドル(183.8億ドル,同+21.9%)
(9)労働者送金(出所:中央銀行)
(ア)7月 3.4億ドル(3.1億ドル,前年同期比+8.9%)
(イ)1~7月累計 18.7億ドル(20.9億ドル,同-10.5%)
(ウ)8月 3.4億ドル(3.0億ドル,同+11.1%)
(エ)1~8月累計 25.5億ドル(27.1億ドル,同-5.8%)
(10)ガソリン価格(2010年9月)(出所:鉱山・エネルギー省)
レギュラーガソリン1ガロン 7,763.79ペソ(前月比+48.01ペソ)
(11)自動車販売台数(8月)(出所:Econometria社)
22,192台(15,062台,前年同月比+47.3%)
(了)