経済情勢

2010年11月16日

 

Ⅰ.概要

●議会は20日,2011年予算「マクロ経済の安定化に向けて」をほぼ全会一致で可決承認した。予算総額の147.3兆ペソ(約820億ドル,前年比+2.5%)は,前政権による当初案と同額であったものの,一般行政経費を抑え,投資的経費を増加させた。分野別では,治安対策費が予算の16%を占め,前年に続き最も割当の多い分野となった。

●高等通商審議会は29日,関税制度改革(輸入関税の引下げ)を承認した。短期的には競争力の向上,輸入の増加及びペソ高への対策を目的とする一方,長期的には競争力向上に伴う海外直接投資の誘致,新規雇用の創出及び貧困の削減を目指す。

●米格付会社Fitchはコロンビアの長期外貨建てソブリン格付け(BBB-)の見通しを「安定的」から「ポジティブ」に引上げた。

●サントス大統領は19日,加・「コ」FTAにかかる人権に関する法案(FTAが両国の人権に与える影響をモニタリングし,両国議会及び国民に対し,年次報告書を提出することを義務づけるもの)を裁可した。なお,同法案は今後「コ」憲法裁判所が合憲性の判断を行う。

 

Ⅱ.主な出来事

<国内情勢>

(1)各機関による実質GDP成長率(以下,成長率)見通し

(ア)Anif(当地シンクタンク)(4日):2010年第3四半期は45%,通年では4.3%。ただし,米景気動向及び「コ」建設部門の回復程度による。

(イ)高等教育開発財団Fedesarrollo(当地シンクタンク)(5日):2010年は4.0%。

(ウ)IMF Regional Economic Outlook(19日):2010年は4.7%,2011年は4.6%。2010年は,高い失業率,対「ベ」輸出の落ち込み等から中南米平均の5.7%を下回ろうが,一次産品価格高及び資金調達環境の改善等に伴い,成長モメンタムは維持。

 

(2)インフラ関連

(ア)ボゴタ市メトロ建設プロジェクト:カルドナ運輸相とゴメス国家企画庁(DNP)長官は25日,メトロ第1号線の建設計画を再度見直すようボゴタ市に要請した。これを受け,任期である2011年中の着工承認を目指すモレノ・ボゴタ市長は,見直しを早急に行うとした。

(イ)ボゴタ-サンタ・マルタ間道路「ルータ・デル・ソル」(12日報道):第1及び第2工区における料金所の入札つき,5社の応札があった。

(ウ)マグダレーナ川救出計画:サントス大統領とカルドナ運輸相は25日,マグダレーナ川における900Km相当の航行可能性の"救出(掘り起こし)"及びその実現に向けた理想的なスキームの構築を行うことで合意した。炭化水素資源や石炭の運送・輸出目的でマグダレーナ川を利用し得るエコペトロル等の企業に呼びかけ,コスト負担が少なく環境にやさしい形での再開発を目指す。

 

(3)企業情報

(ア)資生堂の再進出(28日,当地主要紙報道):資生堂は今般5年ぶりに,高級化粧品販売において実績のある代理店ラ・リビエラ社(親会社はパナマ所在のウィサ・グループ)を通し,基礎化粧品の販売及びメイクアップの指導を開始する。

(イ)Dinissan社(8日,当地経済紙報道):日産車の輸入販売を行うDinissan社は,当地進出50年周年を迎えた。

(ウ)国営石油会社エコペトロル関連(527日,当地各紙報道)

(ⅰ)2010年第13四半期の純利益は前年同期比+57.2%の5.6兆ペソとなった。原油及び天然ガスの生産量が同+16%と大幅に増加したことが要因。

(ⅱ)グティエレス・エコペトロル社長は4日,原油生産量目標について,2010年は日量62万バレル,2011年は同75万バレル,2015年は同100万バレルとした。採掘活動の拡張により達成を目指す。

(エ)チリの航空会社LANによる「コ」航空会社Airesの買収(27日,当地各紙報道):南米市場におけるシェア拡大を目指すチリの航空会社LAN27日,「コ」第2位の航空会社Airesを買収,同社株99%を取得すると発表した。なお,買収額は3,250億ドルとなる見込み。

 

(4)その他

(ア)米格付会社Fitchによる格付け見通しの引上げ:Fitch社は14 日,コロンビアの長期外貨建てソブリン格付け(BBB-)の見通しを「安定的」から「ポジティブ」に引上げた。これによりStandar & Poor'sMoody's含む大手3社間の格付けが揃った。なお,現在議会審議中の財政規律法案及び鉱業採掘権収入改革案が可決次第,2011年中頃にも「投資適格」を取得するとみられている。

(イ)2011年予算案:議会は20日,2011年予算「マクロ経済の安定化に向けて」をほぼ全会一致で可決承認した(上院:賛成66/反対5,下院:賛成119/反対3)。予算総額の147.3兆ペソ(約820億ドル,前年比+2.5%)は,前政権による当初案と同額であったものの,一般行政経費を抑え,投資的経費を24.7兆ペソから28.7兆ペソに増加させた。分野別では,治安対策費(22.2兆ペソ)が予算の16%を占め,前年に続き最も割当の多い分野となった。

(ウ)関税制度改革:ディアス・グラナドス商工観光相は29日,「コ」の対外通商政策を決定する高等通商審議会(Consejo Superior de Comercio Exterior)が関税制度改革を承認したと発表。輸入に係る費用を削減することで,短期的には競争力の向上,輸入の増加及びペソ高への対策を目的とする一方,長期的には競争力向上に伴う海外直接投資の誘致,新規雇用の創出及び貧困の削減を目指す。

 税率は平均して12.2%から8.25%まで引下げられる。すなわち,一次産品に係る関税は10%から5%へ,機械等の工業製品に係る関税については20%から15%へとそれぞれ引下げられる。なお,エチェベリ蔵相が発表した試算によれば,同改革に係る財政コストは3兆ペソ。

 

<対外関係>

(1)FTA関連

(ア)対米:エチェベリ蔵相は米ワシントンにて8日,米・「コ」FTA締結は重要だが,これまで両国はアンデス通商促進麻薬撲滅法(ATPDEA)を延長してきており,同FTAは「コ」にとって"死活問題"ではないとコメント。また,米議会における同FTA審議の長期化は,加・「コ」FTAがまもなく発効することから,今後は米国側の損失になろうと述べた。

なお,サントス大統領及びオルギン外相は25日,「コ」訪問中のスタインバーグ米国務副長官と会談し,経済分野ではエネルギー統合,科学技術,貿易,環境等につき協議した。

(イ)対カナダ:サントス大統領は19日,加・「コ」FTAにかかる人権に関する法案(FTAが両国の人権に与える影響をモニタリングし,両国議会及び国民に対し,年次報告書を提出することを義務づけるもの)を裁可した(Ley 1411)。なお,同法案は今後「コ」憲法裁判所が合憲性の判断を行う。

(ウ)対パナマ:当初102529日の予定で開催された第5回ラウンドは,交渉3日目に農業品及び工業品の市場アクセスについて双方に見解の違いが生じたため,協議を打ち切り,延期することとなった。

(エ)対韓国:48日にかけて第4回会合がカリにて開催された。通関、政府調達、一時入国につき合意に至ったほか,物品,原産地規則,貿易救済,投資,SPS,知的財産権等の分野で進展がみられた。また,本年9月に交換した物品譲許修正案にも触れ,コロンビア側は韓国の農産品の市場アクセスの改善を,また韓国側は,自動車,電気・電子等工業製品の市場アクセスの改善をそれぞれ要求した。

 なお,現代自動車コロンビアのアルテアガ社長は18日,対韓国FTA発効により,韓国車の販売価格は20%削減されることとなり,消費者が最も恩恵を受けるだろうと述べた。

 

(2)対日関係

(ア)国際フラワーEXPO101315日に幕張メッセにて開催された第7回国際フラワーEXPOIFEX)に,コロンビアからはコロンビア貿易振興機構(Proexport)及びコロンビア花卉輸出協会(Asocolflores)がブースを設け,計14社が共同出展した。

(イ)巨大客船,カルタヘナに寄港開始(19日,当地紙報道):サントス大統領は,日系巨大客船が寄港地にカルタヘナを加えたことに触れ,「これは同港が世界有数の観光地になるための重要なステップである。」と述べた。

 

(3)対アジア関係

(ア)対中国:サントス大統領は25日,コロンビアにおける鉄道インフラの整備(大西洋と太平洋を結ぶ鉄道250キロ等)に関心を示している中国鉄道会社及び中国開発銀行の関係者等と会談した。

(イ)対韓国:タルガ運輸次官は26日,第17ITSIntelligent Transport System)世界大会のマージンでプサンにて,韓国国土海洋部と,交通及びロジスティックシステム分野における技術的解決策導入推進のための共同開発イニシアティブに関する覚書きに署名した。

 

<経済指標>

(1)経済活動全般

(ア)実質工業生産指数(DANE発表):8月の実質工業生産指数(コーヒー豆加工を除く)は前年同月比+4.4%となった。部門別では,自動車(同+42.0%),機械部品(同+34.6%),衣料(同+21.9%),基礎鉄鋼製品(同+17.4%)等が高い伸びを示した。一方,タバコ(同-24.2%),砂糖類(同-22.7%)等はマイナスとなった。

(イ)消費者信頼感指数(Fedesarrollo発表):9月の消費者信頼感指数(ICC)は35.4ポイントと,前月(38.8ポイント)をやや下回ったものの,高水準を維持した。なお,前年同月からは27.4ポイント上昇している。

 

(2)産業動向

(ア)石油生産量(国家炭化水素庁(ANH)発表):9月の石油生産量は平均79.8万バレル/日,前年同月比+17.5%であった。

(イ)石炭生産及び輸出見通し:ロダド鉱山・エネルギー相は14日,コロンビアの石炭埋蔵量は100年分に相当し,2010年の産出量は8,200万トン(うち9割は輸出向け)に達するだろうと述べた。

(ウ)コーヒー

(ⅰ)生産量(コーヒー生産者連合会(FNC)発表):FNC加盟コーヒー生産者による8月のコーヒー生産量は68.3万袋(1袋=60Kg),前年同月比+72.0%となった。

(ⅱ)価格(国際コーヒー機関発表):コロンビア産マイルド・アラビック・コーヒーの価格は前月に続き高値を維持し,月間平均価格は1ポンド=2.30ドルに達した。主要生産国のブラジル及びコロンビアにおいて天候不順に伴い供給が減少する一方,新興国を中心に需要が高まっている。

 

(3)物価・雇用(DANE発表)

(ア)物価:9月の消費者物価上昇率は+2.28%(前年同月比,以下同)となった。費目別にみると,保健(+4.20%),教育(+4.00%),住宅(+3.53%)が高水準であった一方,娯楽,通信,衣類は前月に続きマイナスとなった。なお,中銀のインフレ目標は3±1%。また,9月の生産者物価上昇率は+2.67%(前月は+2.81%)であった。

(イ)雇用:9月の全国失業率は10.6%と,前年同月の12.2%から大幅に改善した。就業者数が前年同月の1,828万人から1,972万人まで増加した一方,失業者数は253万人から234万人へと減少した。建設部門における雇用回復が主因であった。なお,主要13都市の平均失業率についても前年同月の12.9%から11.5%へと改善している。

 

(4)金融

(ア)金融政策

(ⅰ)政策金利据置き:中銀理事会は29日に定例政策決定会合を開き,政策金利を3.0%に据置く旨決定した。また,915日以来実施している為替介入(1日当たり最低2,000万ドルのドル買い)はペソ高抑制に奏功しているとして,実施期間を当初予定の2011115日から2011315日まで延長する旨決定した。

(ⅱ)ペソ高抑制対策:政府は29日,以下のペソ高対策を発表した。

 ・2010年中の実施が見込まれていた15億ドルのペソ転の延期

 ・輸入関税の引下げ(<国内情勢>(4)(ウ)参照))

 ・外貨借入の利払いに対する源泉税免除制度の廃止

 ・農業関連輸出業者に対する農業基金(Finagro)を通したクレジットラインの供与,上限500億ペソ。

 ・先物市場での外貨購入を通じた対外債務返済のための資金調達(37億ドル)の実施

(イ)為替:コロンビア・ペソの対ドル相場は,10月前半にかけて上昇を続けたものの,915日以来の為替介入効果及び中銀による追加的なペソ高対策導入観測等により,月後半は下落基調を辿った。

(ウ)株価:IGBC指数は10月入り後も上昇を続け,22日には史上最高値の15,915.86ポイントをつけた。主にエコペトロルやパシフィック・ルビアレス社(加)等の石油関連株価が牽引役となっている。

 

(5)財政/税収(国税・関税庁(DIAN)発表):19月の税収は54.62兆ペソ,前年同期比-0.2%であった。

 

(6)国際収支・貿易・投資

(ア)貿易(DANE発表):8月の貿易収支は,輸出が前年同月比+22.3%の32.7億ドルであった一方,輸入の伸びはそれを上回る同+40.1%の33.8億ドルとなった結果,前年同月の2.6億ドルの黒字から-1.1億ドルの赤字に転じた。輸出の増加は原油・石油製品(同+31.7%)が主因であった。他方,輸入の増加(CIF価格)は,自動車・部品(同+108.9%)及び耐久消費財(同+48.6%)であった。

(イ)対内直接投資FDI(中銀発表):9月のFDI流入額は7.4億ドル,前年同月比+17.1%となった。このうち石油・鉱物資源への投資は全体の82.8%を占める6.2 億ドル,同+19.4%であった。なお, 18月累計では64.5億ドル,前年同期比+7.1%となった。

 

Ⅲ.主な経済指標 ( )は前年同期の数値

(1)経済活動指数(出所:国家統計庁(DANE))

 (ア)実質工業生産指数(8月)   前年同月比+4.4%(同-3.9%)

 (イ)実質工業売上高指数(8月) 前年同月比+3.9%(同-4.3%)

 (ウ)新規建設着工承認面積(8月)137.9万㎡(123.8万㎡)

(2)雇用(9月失業率)(出所:DANE

 (ア)全国平均        10.6%(12.2%)

 (イ)主要13都市平均 11.5%(12.9%)

(3)消費者物価上昇率(9 月)(出所:DANE

 (ア)前月比     0.14%(同-0.11%)

 (イ)前年同月比 2.28%(同+3.21%)

 (ウ)前年末比   2.40%(同+2.12%)

(4)金利(11月末現在の政策金利)(出所:中央銀行)

  3.0%(2010430日,0.5%ポイント引下げ。以降据置き)              

(5)為替(10月)(対ドル為替レート)(出所:中央銀行)

 (ア)月初   1,801.01ペソ

 (イ)月末   1,831.64ペソ

 (ウ)最高値 1,786.20ペソ(8日)

 (エ)最安値 1,846.41ペソ(28日)

(6)株式指数IGBC10月)(出所:コロンビア証券取引所(BVC))

 (ア)月初   14,697.55ポイント

 (イ)月末   15,899.57ポイント

 (ウ)最高値 15,915.86ポイント(22日)

 (エ)最安値 14,688.34ポイント(4日)

(7)貿易(出所:DANE

 (ア)輸入額(FOB)8月) 33.8億ドル(24.1億ドル,前年同期比+40.1%)

 (イ)同(18月累計)   238.9億ドル(201.8億ドル,同+18.4%)  

 (ウ)輸出額(FOB)(8月) 32.7億ドル(26.7億ドル,同+22.3%)

 (エ)同(18月累計)   256.8億ドル(210.6億ドル,同+21.9%)

(8)労働者送金(出所:中央銀行)

 (ア)9月     3.3億ドル(3.1億ドル,同+5.6%)

 (イ)19月累計 28.8億ドル(30.2億ドル,同-4.6%)

(9)ガソリン価格(201010月)(出所:鉱山・エネルギー省)

  レギュラーガソリン1ガロン 7,763.79ペソ(前月同様)

(10)自動車販売台数(9月)(出所:Econometria社)

  23,579台/史上最高(15,805台,前年同月比+49.2%)

 

(了)