コロンビア月例報告(3月分)

経済情勢

2011年4月19日

在コロンビア日本大使館

Ⅰ.概要

2日,三菱東京UFJ銀行は,ラテンアメリカ-アジア間のビジネス拡大を視野に,コロンビア現地最大手銀行バンコロンビアと業務提携した。

16日,S&Pはコロンビアの外貨建て長期債格付けを「BB+」から一段階引き上げ,投資適格級である「BBB-(見通し:安定的)」とした。

27日,オルギン外相とマドゥーロ・ベネズエラ外相は会談を行い,エネルギー,インフラ,観光,農工業及び社会に関する諸合意に向けて進展が図られた旨,発表した。

2010年の実質GDP成長率(前年同期比,以下同)は+4.3%と,第4四半期(+4.6%)に鉱業,商業・修繕・レストラン・ホテル及び製造業がけん引し予想を上回る伸びをみせたため,年後半の洪水被害にも拘わらず,市場予想の+4.0%を上回った。

Ⅱ.主な出来事

<国内情勢>

(1)実質GDP成長率(以下,成長率)見通し

(ア)ウリベ中銀総裁(11日):2011年は4.5%。年後半に景気拡大と海外投資増加が見込まれる。

(イ)ゴメス国家企画庁(12日):国家開発計画の遂行によって,2011年の成長率は,少なくとも5.0%が達成可能。鉱山・エネルギー部門及び住宅建設が牽引役となろう。

(2)経済政策/2011年特別予算:憲法裁判所は30日,政府が,洪水被害に伴い,1月に発出していた経済・社会・環境的非常事態令に基づく2011年予算の拡張(5.7兆ペソ)を棄却した。このため拡張予算の成立には今後,議会審議が必要とされることとなり,政府は緊急法案としてこれを議会に提出した。

(3)インフラ関係

(ア)ボゴタ市メトロ建設計画

(ⅰ)サントス大統領は15日にモレノ・ボゴタ市長と会談し,政府として,ボゴタ市メトロ建設計画を支援する用意があるほか,同計画は国家開発計画(PND)に含まれている旨コメントした。なお,Carrera 7に建設予定のトランスミレニオについては,工事による首都交通に与える影響が大きく,その対応策が明確になるまで工事を延期するとした。

(ⅱ)セア・ボゴタ市メトロ建設部長は17日,ボゴタ市メトロ建設計画について,三菱商事も他の多国籍企業と同様に関心を示していると述べた。また,世銀が近く計画の詳細を発表する予定であり,2012年にも工事着工に取り掛かりたいとした。

(イ)ボゴタに新空港:カルドナ運輸相は29日,ボゴタに新しい航空ターミナルの建設予定があると発表した。民間機及び軍機のためのターミナルとなる予定で,現在投資家を探している旨述べた。

(4)企業動向

(ア)三菱東京UFJ銀行(2日,当地紙報道):三菱東京UFJ銀行は2日,ラテンアメリカ-アジア間のビジネス拡大を視野に,コロンビア現地最大手銀行バンコロンビアと業務提携した。提携効果として,長期プロジェクトの協調融資,貿易金融を通じた輸出信用機関からの借入等のサポート,及び,ラテンアメリカ地域のプロジェクトに関心のあるアジア投資家の発掘が期待されている。

(イ)メルセデス・ベンツ(41日,当地紙報道):メルセデス・ベンツ社は31日,6月にボゴタにて,バスの生産工場を稼働させる旨発表した。当初の生産台数は月50台を予定しており,投資総額は50万ドル。主にボゴタ市公共交通網(SITP)のために供給する。

(ウ)GM41日,当地紙報道):ディアス・グラナドス商工観光相は31日,GM社が,アンティオキア県エンビガド市に2億ドルを投じてプレス加工工場を建設すると発表した。今後,域内市場向けの自動車生産(これまでの組立から製造へ)を開始すると見られる。

(5)その他:米格付会社S&P社による格付けの引上げ

S&P16日,コロンビアの外貨建て長期債格付けを「BB+」から一段階引き上げ,投資適格級である「BBB-(見通し:安定的)」とした。1999年に治安の悪化等を背景に同格付けが引下げとなって以降,12年振りの投資適格級取得となる。S&Pは今次引上げの理由として,①中期的経済成長率見通しの改善,②国内証券市場の深化と資金調達環境の向上,③対外ショックに対する耐久力の向上を挙げ,「コロンビアの市場志向的経済政策が,経済成長及び最近の投資家の信頼向上に寄与している」とコメントした。また,格付け見通しを「安定的」としており,今後更なる引上げの可能性については,経済成長率や財政改革の承認,実施状況を見極めるものとするとしている。

<対外関係>

(1)対米関係

(ア)アンデス通商促進麻薬撲滅法(ATPDEA)関連:政府は,ATPDEAの失効に伴い影響を受けている輸出企業に対し,コロンビア貿易銀行(Bancoldex)を通じて,3,000万ドルを上限とする特別融資枠を設ける旨発表した。

(イ)米・「コ」FTA関連

(ⅰ)サントス大統領発言(9日):米議会議員の中には支持してくれる人もいるが,両国で署名済みである同FTAの批准を必ず実行してほしい。

(ⅱ)ディアス・グラナドス商工観光相発言(8日):(米国労働組合による同FTAの再交渉の要求を受け,)我々は再交渉をする考えはない。

(ⅲ)米共和党議員67名は1日,オバマ大統領に対し,韓国,コロンビア及びパナマとのFTA批准を求める書簡を提出した。

(ⅳ)ミッチ・マッコーネル米上院議員(共和党議員43名の代表)発言(15日):韓国及びコロンビアとのFTAが批准されない限り,議会におけるあらゆる法案を承認しない。

(ⅴ)米下院の両党議員によるミッションは18日,ボゴタを訪問しサントス大統領等と会談,同FTA批准に対する支援表明を行ったほか,ATPDEAの延長を早期に実現させたい旨伝えた。

(ⅵ)米民主党議員6名は,オバマ大統領に対し,特に労働組合員の殺害件数の減少とその維持に関する同FTA批准の条件を引上げるよう要請した。

(2)カナダ・「コ」FTA関連:ディアス・グラナドス商工観光相はカナダ・「コ」FTAについて,23日に憲法裁判所の保証が得られたことから,本年101日の発効を目指し,通知書やその他プロトコル的な措置を残すのみとなった旨発表した。

(3)EU・「コ」FTA関連:フェルナンド・カルデサ在コロンビアEU大使は21日,EU・「コ」FTAについて,コロンビア側が自動車用バイオ燃料等に関する規則を変更しようとしていることへの懸念を表明した。また,輸入された酒類の販売制度が地域毎に異なっている点についても,画一的な制度が求められるとした。

(4)対ベネズエラ関係

(ア)経済関連協力協定(2日):マドゥーロ・ベネズエラ外相は2日及び3日,コロンビア民間企業40社の関係者との会談を行い,13の経済関連協力協定を締結した。

(イ)両国外相会談(27日):オルギン外相とマドゥーロ外相は27日,ボゴタにて4時間にわたる協議を行い,以下の発表を行った。

(ⅰ)41日にカルタヘナにて両国大統領が会談する。

(ⅱ)カラカス-ボゴタ間,マラカイボ-ボゴタ間及びバレンシア-ボゴタ間の航空便につき,貨物及び観光目的で5月以降に再就航させる。なお,アエロレプブリカ航空,サンタ・バルバラ航空及びコンビアサ航空が運行予定。

(ⅲ)エネルギー分野において,エコペトロル社が,アラウカ県,ノルテ・デ・サンタンデール県及びプエルト・カレーニョ市(ビチャダ県)向けのエネルギーをPDVSAより購入すべく,最終的な条件の見直しを行うこと。

(ⅳ)インフラ面では,昨年11月に両国大統領がアラウカ県ホセ・アントニオ・パエス市の橋を国際橋と決定したことを受け,両国間の国際橋に関するレビューを行った。

(ⅴ)国境沿い社会問題について,328日にノルテ・デ・サンタンデール県ビジャ・デル・ロサリオ市(ベネズエラ側はサン・アントニオ・デ・タチラ)の2国間音楽センターに,楽器を寄贈した。

(ⅵ)セラニア・デル・ペリハ市に拠点を置き,コーヒー生産者連合会(FNC)の協力の下,両国で進めている農工業プロジェクトの分析を行った。

(5)対韓FTA関連

(ア)コロンビア商業連盟(FENALCO):FENALCO7日,政府に対し,韓国とのFTA交渉及び署名を進展させるよう要請した。チリが対韓FTAの恩恵を受けている点を引き合いに出し,国内需要のみではコロンビア経済の成長にとって不十分であるとした。

(イ)サンティアゴ・パルド「コ」交渉団長発言:パルド団長は11日,韓国が農産品市場の開放に関し後ろ向きの姿勢を示していることが,同FTA交渉に遅れもたらしていると述べた。

<経済指標>

(1)経済活動全般

(ア)実質GDP成長率(国家統計庁(DANE)発表): 2010年の実質GDP成長率(前年同期比,以下同)は+4.3%と,第4四半期(+4.6%)に鉱業,商業・修繕・レストラン・ホテル及び製造業がけん引し予想を上回る伸びをみせたため,年後半の洪水被害にも拘わらず,市場予想の+4.0%を上回った。

 産業別にみると,鉱業が+11.1%と旺盛な海外直接投資により前年の+11.4%に続き,最も高い伸びを示した。僅かに減速した背景には,洪水被害に伴い鉱物資源の運送が滞ったためとみられる。また,前年にマイナス成長を記録した商業・修繕・レストラン・ホテル(+6.0%)及び製造業(+4.9%)についても,年後半にかけて回復基調となり,堅調に推移した。他方,建設業は第4四半期こそ+6.7%の回復をみせたものの,2010年通年では+1.8%と,前年の+8.4%から大幅に減速した。これは政権交代や洪水被害により公共建設に遅れが生じたことが原因である。なお,マイナス成長が予想された農林水産業部門は,第4四半期に前年の反動から+4.2%と大幅に回復し,+0.0%に留まった。

 需要項目別では,民間消費は+4.3%と年間通じて4%台を維持し,第4四半期には+4.9%となった。また,固定資本形成(+7.1%)は,マイナスを記録した前年からの反動もあり,大幅な伸びとなった。外需(純輸出)については,ペソ高やベネズエラ政府による輸入制限措置等に伴い,輸入(+14.7%)が輸出(+2.2%)を大幅に上回る伸びをみせたため,マイナス寄与となった。

(イ)実質工業生産指数(DANE発表):1月の実質工業生産指数(コーヒー豆加工を除く)は前年同月比+6.2%となった(前月は同+3.8%)。特に自動車(同+46.5%)が高い伸びを示した。

(ウ)実質小売売上高指数(DANE発表):1月の実質小売売上高指数は前年同月比+12.3%となり,前月に続き自動車・二輪車(同+40.7%),金物・ガラス・塗装製品(同+38.6%)家庭用情報機器(同+37.9%)及び家電・家具(同+23.1%)が高い伸びを示したほか,革製品(同+25.3%)も好調であった。

(エ)消費者信頼感指数(Fedesarrollo発表):2月の消費者信頼感指数(ICC)は20.9%と,前年同月を4.6%ポイント上回り,6ヶ月ぶりに上昇した(8月:38.8%,9月:35.4%,10月:30.3%,1125.9%,1216.7%,116.3%)。

(2)産業動向

(ア)原油生産量(国家炭化水素庁(ANH)発表):2月の原油生産量は過去最高の86.1万バレル/日(前年同月比+13.4%)となった。なお,ANH2011年の年間生産量について,中国及びメキシコの富豪カルロス・スリム氏による投資に伴い,90万バレル/日に達するとの見通しを示した。また2014年については現行の約2倍である140万バレル/日とした。

(イ)コーヒー

(ⅰ)生産及び輸出(コーヒー生産者連合会(FNC)発表):FNC加盟コーヒー生産者による2月のコーヒー生産量は76.4万袋(1袋=60㎏,前年同月は64.8万袋),同輸出量は65.1万袋であった(同59.0万袋)。また,輸出額は2.3億ドル(同1.5億ドル)となった。なお,FNC24日,2011年の生産量は950万袋(2010年は899万袋)との見通しを発表した。

(ⅱ)価格(国際コーヒー機関発表):3月のコロンビア産マイルド・アラビック・コーヒーの価格は,史上最高の月平均1ポンド=3.00ドルを記録した。なお,FNC発表によれば,コーヒー価格の高騰に伴い,全ての国内産コーヒーは輸出向けとしており,国内消費分についてはペルー及びエクアドルから輸入している。

(3)物価・雇用(DANE発表)

(ア)物価:2月の消費者物価上昇率は+3.17%(前年同月比,以下同)と5ヶ月ぶり低下し,市場予想を下回った(前月は+3.40%)。とりわけ食料(+3.93%)の上昇率が低下した(1月は4.81%,2月は4.39%)。なお,中銀のインフレ目標は3±1%である。また,2月の生産者物価上昇率は+4.58%と,前月(+4.35%)より上昇した。

(イ)雇用:2月の全国平均失業率は12.8%と,前年同月の12.6%から僅かに悪化した。他方,主要13都市の平均失業率については,前年同月の13.4%から13.2%へと改善した。

(4)金融

(ア)金融政策:中銀理事会は18日に定例政策決定会合を開き,政策金利を0.25%ポイント引き上げ3.50%とする旨決定した。同中銀は,2月のCPI上昇率が予想を下回ったこと,内需が堅調に推移していること,及び2010年末から2011年初にかけて経済が好調に推移していることが主因としている。

(イ)金融部門利益(金融監督庁発表):1月の金融部門利益は4,697億ペソ(前年同月はは3,697億ペソ)であった。また,このうち銀行部門利益は4,169億ペソであった。

(5)財政・税制

(ア)財政(財務省):最高財政政策審議会(CONFIS)は,財政省が発表していた2010年の中央政府財政赤字をGDP4.3%から3.9%へ,公的部門財政赤字を同3.6%から3.0%へそれぞれ修正した。

(イ)税収(国税・関税庁(DIAN)):1月の税収は前年同月比(以下,同)+17.4%の8.0兆ペソとなった。所得税(+33.9%)及び付加価値税(国内徴収分,+46.2%)の伸びが寄与した。

(6)国際収支・貿易収支・投資

(ア)国際収支(中銀発表):2010年の経常収支は89.4億ドルの赤字と,赤字幅は前年から38.0億ドル拡大した。貿易黒字が,年後半の輸入の伸びに伴い,前年の25.5億ドルから21.4億ドルに縮小したほか,サービス収支赤字(前年比+23.4%)及び所得収支赤字(同+27.4%)もともに拡大したことに寄る。資本収支の流入超は,前年比56.2億ドル増の118.8億ドルであった。直接投資の流入超は40.5億ドルから2.6億ドルに,証券投資の流入超は18.7億ドルから15.0億ドルにそれぞれ縮小した一方,その他投資の流入超が3.4億ドルから101.3億ドルへと大幅に拡大した。

(イ)貿易収支(DANE発表):1月の貿易黒字(FOB)は,前年同月の3.6億ドルから2.1億ドルへと縮小した。輸入(CIF)が37.7億ドル(前年同月比+39.8%)となり,特に自動車・部品(同+80.0%)が高い伸びを示した。一方,輸出(FOB)は原油・石油製品(同+35.7%)が伸び,伝統産品輸出が前年同月比+42.7%と大幅に増加したため,全体では同+29.8%の38.5億ドルとなった。

(ウ)対内直接投資FDI(中銀発表):2月のFDI流入額は8.3億ドル,前年同月比+6.9%となった。このうち石油・鉱物資源への投資は全体の84.5%を占める7.0 億ドル,同+4.8%であった。なお,12月累計では22.0億ドル,前年同期比+56.4%となった。

Ⅲ.主な経済指標

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(了)