コロンビア内政・外交状況(1月分)

                                                                                                                                                                                                            

1. 概要

内政 国内主要メディアが発表した世論調査(200312月実施)の結果において、ウリベ大統領に対する支持率が引き続き7割以上の高い水準を維持していることが示された。29日夜、ウリベ大統領は全国放送を通じて、2003年には治安政策を中心に成果があったものの、2004年は、経済成長率、財政面等におけるより一層の成果達成を目指し、政府及び国民が引き続き努力を結集すべきとの演説を行った。2日、全国選挙管理委員会は、憲法改正のための国民投票(昨年1025日実施)の最終結果について、計15項目の内1項目のみが成立した旨発表し、右改正は9日に発効した。

外交 ウリベ大統領はメキシコのモンテレイで開催された米州特別サミットに出席した(12日及び13)後、グアテマラで開催された新大統領就任式に出席した(14)23日、当国訪問中のガビリアOAS事務総長とウリベ大統領は、「OASコロンビア和平プロセス支援協定」に署名した。21日及び22日、パッテン欧州対外問題担当委員が南米諸国訪問の一環として当国を訪問した。

 

2. 内政

(1) 2003年末国内世論調査の結果

 主要メディアは、200312月後半に実施された世論調査の結果を発表したが、ウリベ大統領に対する支持率が依然として7割を超える高水準にあることを示した。

()「セマナ」誌(15日号)掲載の世論調査結果

(a)ウリベ大統領のパフォーマンス:評価する(76%)、評価しない(16%)

(b)国内の主要問題:失業(40%)、汚職(29%)、ゲリラ(24%)、麻薬密輸問題(5%)

(c)2004年の国内情勢見通し:改善(55%)、現状維持(28%)、悪化(15%)

()17日付「エル・ティエンポ」紙発表の世論調査結果

(a)ウリベ大統領への支持率:78%(昨年10月実施の前回調査に比べ(72%)6ポイント上昇)

(b)政策分野別支持率(高いもの):汚職対策(82%)、ゲリラ対策(75%)、「パラ」対策(72%)

(c)政策分野別支持率(低いもの):経済政策(56%)、生活費(42%)、雇用対策(49%)

(2) ウリベ大統領の演説

 29日夜、ウリベ大統領は全国放送を通じて、2003年の治安、経済分野の成果と2004年の課題について以下のような演説を行った。

(1)治安政策については、2003年に、殺害、誘拐、虐殺、市町村の占拠・襲撃、人権侵害等の諸側面から大きな成果が見られた。非合法武装勢力構成員については、200312月までに計4,294名が武装放棄したが、右は過去数年間で最高のレベルとなった。

(2)2003年の経済成長率は、当初予測が2%であったにも拘わらず、3.5%から4%の水準にまで達した。国民全体が裨益するためにはより高い経済成長率が必要である。専門家の予測では、2004年の経済成長率は4%未満であるが、全国民が努力を結集させ5%の成長率達成を目指したい。一方、財政面では依然として数々の困難な問題があり、懸念の年金制度も解決すべき大きな問題であるほか、行政機構改革の継続、公的債務の軽減も課題である。

(3) 国民投票最終結果

()2日、全国選挙管理委員会(CNE)は、昨年1025日に実施された憲法改正のための国民投票の最終結果を発表した。最終結果では、国民投票に付された計15項目の内、憲法第1225項の改正(新規定内容:国有資産侵害の判決を受けた場合、政治資格(公職への立候補資格、被選挙権、公務員に任命される資格、国家機関と契約を行う権利等)を喪失する)に関する1項目のみが、成立要件(有効投票総数計6,267,443)を満たし(同項目への投票数は6,293,807)成立した。残る14項目については右要件を満たさなかったため不成立に終わった。

()憲法第122条第5項目改正法案は大統領の批准を受けた後、9日付官報に掲載され、同改正が発効した。

(4) 保守党関連動向

 30日、保守党の国会議員等同党有力者15名は、マイアミにおいて、現在スペイン在住のパストラーナ前大統領(1998-2002年、保守党)を迎え、現ウリベ政権との関係を含め保守党としての今後の方針等について会合した。同会合後発表されたコミュニケでは、「本会合では、保守党の現状について、その強みとチャンスについて話し合った。本会合の結果、保守党指導部に対しては、党員拡大と次回選挙における党としての団結を可能とするため(注:2002年大統領選において保守党公認候補は支持率低迷を理由に出馬を取り止めた経緯がある)、パストラーナ前大統領の指示を仰ぎつつ、党の近代化と強化に取り組むよう提案することとなった」旨表明された。

(5) パラミリタリー関連動向

 29日、パラミリタリー・グループの「カサナーレ農民自警団(ACC)(構成員規模推定3,500名程度)は、カサナーレ県南部において、レストレポ政府和平高等弁務官との間で、停戦及び敵対行為(誘拐、企業・牧畜業者の恐喝、強盗行為等)の停止を継続するとともに、国際社会による停戦監視(以下、3.(2)参照)を受諾するとの内容の合意(「コロンビア和平のためのカサナーレ南部合意」)に署名した。

 

3. 治安

(1) エクアドルにおけるFARC幹部「シモン・トリニダッド」の逮捕

()2日夜、エクアドル及びコロンビア両国治安当局は、エクアドルの首都キトの観光地街頭において、病気治療のため極秘裏に現地を訪問していたと見られるFARC幹部の通称「シモン・トリニダッド」こと、本名フベナル・オビディオ・パルメラ・ピネダ(52)の身柄を拘束した。「トリニダッド」容疑者の身柄は、翌3日、キトからエクアドル国軍ヘリにてコロンビア領内のイピアレス(ウイラ県)に護送された後、コロンビア国軍機でボゴタ市内のカタン軍事基地へ移され、市内の検察庁施設内に収容された。

()6日、検察は、「トリニダッド」容疑者に対する計56に及ぶ犯罪容疑の取り調べを開始したが、同容疑者は、「自分は国家に対する反乱を行っており、検察を含めた国家機関の存在は認めない」と宣言した後は黙秘を通した。

()「シモン・トリニダッド」はFARC幹部の中でも強硬路線派として知られており、要人を含む誘拐・殺害容疑、大量住民虐殺容疑が掛けられている。一方、パストラーナ前政権期の和平プロセスではFARC側代表団に参加していた。FARC大物幹部の逮捕としては初めてであり、コロンビア国内でも大きな反響をもって受け止められた。

(2) 欧州麻薬密輸網の摘発

 28日、イタリア、スペイン、フランス、オーストラリア、オランダ及びコロンビア6ヶ国において、各国治安当局の協力により6ヶ国にまたがる大規模な麻薬密輸網の関係者約120名が一斉に逮捕されると共に、コカイン約2.5トンが押収された。コカインの多くは、コロンビアから船積みされカラブリア州(イタリア)の港に陸揚げされたものと見られている。この麻薬密輸網は、約3年前から欧州に麻薬を運び込んできたと見られ、イタリアのピサヌ内務相は、欧州に運ばれた麻薬はカラブリアの大規模秘密犯罪組織「ンドランゲタ(NDRANGHETA)」を通じ各地に密売されていた旨述べた。

 

4. 対外関係

(1) ウリベ大統領のメキシコ及びグアテマラ訪問

()12日及び13日、ウリベ大統領はメキシコのモンテレイで開催された米州特別サミットに出席した。同サミットでウリベ大統領は、コロンビア政府が実施する社会的公正の達成を目指した諸政策に関する演説を行ったほか、同サミットの機会に米州各国首脳、IMFのケーラー専務理事との会談も行った。

()ウリベ大統領は米州特別サミット終了後、14日、グアテマラで開催されたベルシェ新大統領の大統領就任式に出席した。

(2) OASによる対コロンビア和平プロセス支援の決定

23日、当国訪問中のガビリアOAS事務総長(コロンビア元大統領(1990-94))とウリベ大統領は、コロンビアの和平プロセスにおいて、()OASがコロンビアにおける和平プロセス関連合意事項の履行等に関する検証機能を担う、()同機能を担うOASミッションを常設する等を内容とする協定(OASコロンビア和平プロセス支援協定」)に署名した。右協定は、実質的に、現ウリベ政権下で機能している唯一の和平プロセスであるパラミリタリー・プロセスを支援対象としている。             

(3) EU関係

()パッテン欧州委員会対外関係担当委員の当国訪問

 21日及び22日、パッテン欧州対外問題担当委員が南米諸国訪問(ブラジル、エクアドル及びコロンビア)の一環として当国を訪問し、ウリベ大統領、サントス副大統領他主要閣僚とEUの対コロンビア支援等に関する協議を行ったほか、レモアン国連事務総長コロンビア問題特別顧問等国連関係者とも会合した。さらに、パッテン委員は、EUが援助する「和平のための実験場」の現地視察を行った。             

()EU理事会におけるコロンビア関連協議

 26日、ブラッセルにおいて、EU15ヶ国及びEU加盟予定10ヶ国の外相による閣僚理事会(対外関係理事会)が開催された。同理事会においてコロンビアについては、ウリベ大統領によるテロ・麻薬対策、経済・社会政策への支持が表明された一方、現在策定中の反テロ法で治安当局に付与される予定の司法機能、国連による人権状況関連勧告の履行状況及びパラミリタリーの和平プロセスへの懸念が表明された。