コロンビア内政・外交状況(3月分)

                                                                                                                                                                                                            

1. 概要

内政:パラミリタリーとの和平プロセス(昨年1125日に武装解除開始)について、政府は、停戦及び敵対行為の停止に関する合意を「パラ」側が遵守していないと批判し、同合意の履行状況検証のために武装放棄した元構成員の集結地設定が必要である旨表明した。政府は、非合法武装勢力との和平プロセス促進のための動機付けとなりうる「刑罰代替法」案について、武装放棄する構成員が過去に犯した犯罪の量刑を従来案より重くする等の諸項目を追加した。当国の非合法武装勢力であるFARCELNAUCに関連し、日本政府は、右諸組織に対する資産凍結措置を導入した旨発表した。

外交 ウリベ大統領が米国を公式訪問した(22-25)。バルコ外相が日本を訪問し、川口外相との両国外相会談等を行った(328-44)。エクアドルのグティエレス大統領が当国を訪問した(16-17)

 

2. 内政

(1) パラミリタリー和平プロセス関連

()19日、レストレポ政府和平高等弁務官は和平プロセスに関する報告書を発表し、「パラミリタリー・グループは、政府との和平プロセスを開始した際に、停戦及び敵対行為の停止を約束したものの、2002年末から2003年末までに、殺害計362件、住民虐殺計16件、誘拐計180件を実行しており、これらの犯罪行為を含む敵対行為停止の約束が履行されていない」として批判した。同報告書ではさらに、右事態を受け、「「パラ」グループは、敵対行為を停止し、右検証を可能とするため早期に集結地域を設定し構成員を集結させるべきであり、政府も右目的達成のために全力を注ぐ」とした。

()19日、カラマニャOASコロンビア和平プロセス支援ミッション団長は、「敵対行為停止を効果的に検証するためには、パラミリタリー構成員が集結することが必要である」と発言し、上記報告書における政府の見解への支持を表明した。

 (2) 「刑罰代替法」案関連動向  

30日、政府は、国会で本会期中に審議開始予定の「刑罰代替法」案(Proyecto de Alternatividad Penal)に、()武装放棄する非合法武装勢力構成員が過去に犯した犯罪について実刑(最高5年~7年程度)を科す、()「真相究明委員会(Tribunal de Verdad, Justicia y Reparacion)」を設置する(注:報道によると、同委員会は、最高裁判所が指名する委員3名で構成され、武装解除プロセスに参加する非合法武装勢力構成員に関わる問題を調査し大統領に報告する任務を負う)()同法には武装勢力元構成員の外国への引き渡し関連条項は含めないとの内容を同法案に含めることを受け入れた。非合法武装勢力の武装放棄と社会復帰促進の動機付け強化を目指した「刑罰代替法」の従来案(政府提出案)では、武装放棄を選択する非合法武装勢力構成員が過去に犯したいかなる犯罪についても、実刑は科さず、保護観察程度に止めるとしていたが、虐殺等深刻な犯罪歴を有する武装勢力構成員に対する量刑の妥当性から疑問視されており、政府への強い批判もあった。

(3) 日本政府による当国非合法武装勢力のテロ組織リスト追加措置  

 23日、日本政府は、国連安保理の諸決議に基づき、当国非合法武装勢力であるFARCELN及びAUC(全国自警団連合)に対する資産凍結措置を導入した旨発表した。

 

3. 治安

(1) 国内全土への警官配置整備

 4日付「エル・ティエンポ」紙は、212日にアンティオキア県ムリンドー市に警官が配置されたことで、現政府が目指してきた国内全自治体(1098)への警官配備計画が完了した旨報じた。現政権が発足した20028月時点の警官不在自治体数は161に上っていた。

(2) 人権状況関連

()4日、サントス副大統領は、2003(1-12)の人権状況に関する政府報告書を発表し、前年同期比で、殺人件数は20%減、国内避難民数は52%減、虐殺発生件数は33%減、町村襲撃発生件数は84%減、労組指導者殺害件数は57%減、誘拐発生件件数は26%減を達成した旨発表した。人権状況改善の理由についてサントス副大統領は、政府による治安政策の成果とパラミリタリー・グループとの交渉の結果を指摘した。

() 10日、国連人権高等弁務官コロンビア事務所は、当国人権状況に関する報告書を発表し、人権状況には一定の改善が見られるものの、依然として深刻な(critica)な状況である旨指摘した。

()16日、サントス副大統領はジュネーブで開催された国連人権委員会において、コロンビアは人権状況に関する国際社会の批判を受け止めるとしつつ、国内情勢に関する誤った認識を内容とする報告書は批判すると述べた。

 

4. 外交

(1) ウリベ大統領の米国訪問

()3日、ウリベ大統領はマイアミを訪問し、同地経済誌がラテンアメリカの企業関係者を対象に主催した講演会に出席し、経済再活性化及び投資促進のための信頼醸成と経済安定強化を目指す旨表明した。同訪問に際してウリベ大統領は、ヒル米国南方軍司令官との会談も行った。

()ウリベ大統領は22日から25日まで、3回目となる米国公式訪問を行った。ウリベ大統領は、ブッシュ大統領との両国首脳会談に臨んだほか、ラムズフェルド国防長官、ゼーリック通商代表、エヴェンズ商務長官、パウェル国務長官、米国上下両院関係者等との各会談を行った。今次米国訪問では、両国間の自由貿易交渉が今年5月に当国カルタヘーナで正式に開始されることが発表されたほか、米国が国際コーヒー機関(IOC)への再加盟を検討する意思がある旨表明した。

(2) エクアドル・グティエレス大統領の当国訪問

 16日及び17日、エクアドルのグティエレス大統領が当国を公式訪問し、ウリベ大統領との首脳会談等を行った。17日に発出された両国大統領共同宣言においては、懸案となってきた両国入国管理問題について、国境地域における入国管理に関わる共同活動強化のための準備を今後60日以内に行う旨表明された。なお、両国国境地帯はFARC等の当国左翼ゲリラが自由に移動していることで以前から問題視されてきたが、本年12日に、偽造旅券を所持したFARC幹部の「シモン・トリニダッド」がキト中心街で逮捕されたことにより、エクアドル側からコロンビア人に対する国境地帯における入国管理強化の要求が高まっていた。

(3) バルコ外相の各国訪問

()ブラジル訪問

 10日、バルコ外相はブラジルを訪問し、アモリン同国外相と麻薬及びゲリラ対策等について会談した。

()米国、仏、アジア訪問

 バルコ外相は、ウリベ大統領の米国訪問に同行した後、引き続き、フランス及び日本を含むアジアを訪問した(325-414)。日本においては、川口外相との外相会談を行ったほか、河野衆議院議長、橋本元総理等を訪問した。

(4) スペイン列車爆弾テロ事件及び総選挙関連動向

()列車爆弾テロ事件への当国政府反応

 11日にマドリッドで発生した列車爆弾テロ事件について、ウリベ大統領は同日、

「凄惨な現場シーンには言葉を失う」としつつ、「同様の経験を有するコロンビアは、同国への連帯並びにテロに対する闘いへの固い決意を表明する」とのコメントを発表した。ウリベ大統領は更に、本件に関するアスナール首相宛書簡(11日付)等も発し、テロ撲滅において緊密な同盟関係を維持してきたアスナール政権への連帯を表明した。

()スペイン総選挙関連動向

 14日のスペイン総選挙で勝利を収めた社会労働党(PSOE)のサパテロ書記長が、今後のイラク駐留スペイン部隊撤退の可能性を示唆したことに関連し、当地メディアは、サパテロ次期政権の有力な外相候補と目されるモラティーノス氏が、アスナール政権下で署名済みの同国による対コロンビア戦車・軍事物資売却についても見直しがなされる旨明らかにしたと報じた。右につき、社会労働党(PSOE)は、18日、「両国間協力を含むスペイン政府のこれまでの約束は尊重する」としながらも、戦車売却については新旧政権の引き継ぎ作業において現在検討中と表明するコミュニケを発出した。

 

5.今後の主な予定

ウリベ大統領のメキシコ訪問(528日、グアダラハラで開催予定の第三回欧州・ラテンアメリカ首脳会談に出席、引き続き同30日、メキシコ公式訪問)

 

 

 

 (以上)