コロンビア内政・外交状況(4月)

 

1.概要

内政:依然として大統領に対する支持は高く、大統領再選、特にウリベ大統領の再選への支持が強く、ウリベ大統領自身がラジオに出演し大統領再選を擁護する発言もした。政府とパラミリタリー・グループとの交渉プロセスについては、全パラミリタリー組織の幹部が交渉に臨むようになったとされるが、「引渡」問題が障害になっている趣で、パラミリタリーに手厳しい大統領府コミュニケも発表された。

   伝統的にFARCのプレゼンスがあるジャングル地域及び国内南部に14000名から15000名を派兵する「プラン・パトリオタ」計画が報じられた。

外交:EUがテログループ・リストにELNを加えた。ペルー大統領、中国副首相がコロンビアを訪問したほか、バルコ外相が中国(日本訪問後)、ロシア、スウェーデン、ノルウェーを訪問した。

 

2.内政

(1)世論調査

 (イ)大統領支持率等(3月11日~14日、ボゴタ他3都市において成年男女1000名を対象にコロンビア・ギャロップ社が電話で実施。4月2日付報道)

  (a)ウリベ大統領を支持:77%

  (b)ウリベ政権は人権を尊重:78%

  (c)コロンビアはここ数年で最も安全と思う:73%

  (d)パラミリタリーと政府の交渉に賛成:72%

  (e)大統領再選に賛成:70%

  (f)米国との自由貿易協定に賛成:69%、FTAAに賛成:68%

  (g)収監中のゲリラと同ゲリラに誘拐されている人質の交換に賛成:30%

    h)ウリベ政権の失業対策に反対:56%

 (ロ)大統領再選関連(4月2日~4日、都市部の成年男女2000名を対象に民間の「政治学財団」が実施。4月19日付セマナ誌掲載)

    a)大統領の再選に賛成:72%

    b)ウリベ大統領の再選に賛成:72.2%

    c)大統領再選が可能になった場合、ウリベ大統領に投票:64.4%

    d)ウリベ大統領が施策を実施するにあたり、4年では不十分:74.9%

    e)ウリベ大統領は、再選のために国会議員と取引するべきでない:67.2%

(2)大統領再選関連

 (イ)20日、ウリベ大統領はラジオ番組に突如出演し、大統領再選を擁護する論陣を張り、自ら大統領再選に向けリーダーシップを発揮することを宣言したものと巷間には受け止められている。

 (ロ)29日、上院第一委員会は大統領再選憲法改正法案を賛成12票、反対3票で可決した。なお、反対派の4議員が欠席した。但し、当初の法案は現職大統領の選挙キャンペーン期間を120日としていたが、第一委員会を通過した案では期間を60日に短縮、また、選挙キャンペーン中の資金についても他の大統領候補との公平性を保つため、現職大統領には大統領執務室関連経費とセキュリティ関連のみの公費利用を認め、これ以外の公費の利用を制限した。

(3)パラミリタリーとの交渉等

 (イ)15日、コルドバ県南部においてカラマーニャOAS代表臨席の下、国内の全「パラ」グループの幹部が一堂に会し、政府側代表レストレポ和平高等弁務官、フランコ副大統領府人権担当、及びガルシア・アパルタード地区(アンティオキア県)司教と交渉した。幹部の中では、自ら交渉プロセスから身を退いたカルロス・カスターニョだけが欠席した。

 (ロ)16日、カルロス・カスターニョ元AUC司令官がアンティオキア県サンペドロ・デ・ウラバ近郊において襲撃を受け、生死が明らかになっていない。カスターニョ夫人は無事である旨語っており、またマンクソAUC幹部は米国に投降したのではないか等述べているのに対し、他のパラミリタリー関係者は既に死亡していると述べるなど謎に包まれている。治安当局は、16日の襲撃地点に血痕等がないとしてその時点では生存していたと考えているが、その後近隣の死体埋葬場所等を調査している。

(4)大統領府コミュニケ

 27日、大統領府は非合法武装勢力、特にパラミリタリーに対し厳しい態度を示すコミュニケを発表した。内容は、(イ)大統領に対するパラミリタリー及び麻薬マフィアからの脅威の増大、(ロ)敵対行為停止が和平プロセスの条件、(ハ)パラミリタリーは(武装放棄のための)集結地域を受け入れるべき、(ニ)犯罪人引渡は国際法に係わる規定であり(非合法武装勢力との)交渉の議題ではない、(ホ)FARCによる治安対策弱体化を目論んだ人道的人質交換合意の強要を許さない、等である。(注:政府は、「パラ」が敵対行為停止の公約を果たしていないとして批判してきており、また、武装放棄のために一ヶ所に集結するべきであることを要求してきた。これに対し、「パラ」幹部は、米国への引渡可能性が存在する限り集結には応じられないと応じ、この「パラ」側の対応に配慮したためか、ウリベ大統領は3月末「刑罰代替法」の審議にあたっては引渡を含めない等言明していた。)

(5)その他

 (イ)「プラン・パトリオタ」作戦

 27日付エル・ティエンポ紙は、伝統的にFARCのプレゼンスがあるジャングル地域及び国内南部に14000名から15000名を派兵する「プラン・パトリオタ」計画があると報じた。

 (ロ)重要法案

 14日、反テロ法案が上院下院合同第一委員会で可決され、両院本会議での採決を待つこととなった。

 (ハ)治安関係機関の不祥事

 3月下旬から4月中旬にかけ連続して軍、警察、検察等の不祥事が報道された。具体的にはグアィタリージャ事件(軍が誤って警察関係者と市民を殺害)、カハマルカ事件(軍が農民をゲリラと誤認して射殺)、「グロリア号」事件(海軍練習船「グロリア号」より、約25kgの麻薬が発見)、ジジョ事件(カリ市の麻薬組織「ジジョ」幹部が、ボゴタ市の陸軍将校クラブ内の宿泊施設にて逮捕)、警察の一部と非合法武装勢力及び麻薬マフィアとの関係を示す報告(ラミレス前国防相が設置した委員会の報告)、麻薬マフィア担当検事の免職(この免職された検事は、検察上層部が麻薬マフィア等から圧力を受けていたと告発)などがある。

 

3.治安(4月分:年初より、減少傾向にある。<>はボゴタ市の統計。)

(1)殺人:1581件<107件>

(2)集団殺人:1件4名

(3)脅迫:44件<7件>

(4)窃盗・強盗:4349件<1114件>

(5)自動車盗難:1448件<410件>

(6)幹線道路での車上強盗:77件<24件>

(7)誘拐:95件<4件>

(8)テロ:51件<1件>

                            (警察統計)

4.外交

(1)EU

 2日、EUELNをテロ・グループ・リストに掲載することを決定、5日、EU広報を通じて公にした。コロンビアのテロ組織の内、FARCAUCは既に2年前に認定されていたが、今回はこれにELNを加えるもので、これにより同テロ組織の資産凍結等も可能になる。

(2)トレド・ペルー大統領のコロンビア訪問

 15日から17日かけトレド・ペルー大統領が国賓としてコロンビアを訪問した。ウリベ大統領との間で首脳会談を行ったほか、共同声明を発表した。トレド大統領はコロンビア政府の治安・麻薬対策に支持を表明、両国首脳は国境地域における協力等につき協議した。

(3)回中国副首相の訪問

 回(Hui)中国副首相(農業担当)がコロンビアを訪問し、ウリベ大統領、サントス副大統領等と会談したほか、両国代表の間で農業、教育・学術分野に関するメモランダムに署名した。

(4)バルコ外相外遊

 (イ)訪中

 訪日に引き続き、4日から12日かけ、北京、上海、香港を訪問した。李外交部長、農業部、商務部関係者と会談したほか、温首相を表敬した。

 (ロ)ロシア、スゥエーデン、ノルウェー訪問

  26日から30日にかけ、上記3国を訪問し、各国外相と会談を行った他、スゥエーデン及びノルウェーでは、経済協力関係者、貿易・投資関係者、NGO等とも面談した。

                                   

5.今後の主な予定

(1)ウリベ大統領

 5月下旬:スペイン訪問(皇太子御成婚出席等)

     :メキシコ訪問(第3回欧州ラ米首脳サミット)

(2)バルコ外相

 6月上旬:OAS総会(於:エクアドル)                 (以上)