コロンビア内政・外交状況(5月)

 

1.概要

内政:反テロ法案、大統領再選憲法改正法案ともに上院を通過した。

 非合法武装勢力に関しては、まず、政府はパラミリタリーとの間で「指定地域」を設定することで合意したが、交渉の成否はパラミリタリーが敵対行為の停止等公約を遵守するかにかかっており、今後の成り行きが注目される。

外交:ベネズエラのカラカス近郊でパラミリタリーと思しきメンバーが逮捕されたが、政府側の自作自演説、反政府側による政権転覆を目論んだ侵攻説など様々な憶測を呼んでいる。

 ウリベ大統領は皇太子ご成婚出席のためスペインを訪問した際、ロドリゲス・サパテロ首相と会談した他、メキシコで開催されたラテン・アメリカ・カリブ-EU首脳会談に出席した。メキシコのフォックス大統領からコロンビア政府とELNの和平プロセスに関与するとの表明があった。

 

2.内政

(1)憲法改正法案等について

 13日に反テロ法案、14日未明に大統領再選憲法改正法案が上院を通過した。大統領再選憲法改正法案は、自由党の一部、ポロ・デモクラティコ及び独立派議員が欠席する中、68票(総議席数102)を以て、可決された。

(2)パラミリタリーとの交渉:「指定地域」の設定

 13日、政府はパラミリタリー・グループとの間でコルドバ県ティエラ・アルタ市東部に368平方キロメートルの「指定地域(Zona de Ubicación)」を設定することで合意した。本合意の目的は、パラミリタリーによる敵対行為停止の完全な履行と、集結・武装放棄に向けたタイムスケジュールの構築とされる。レストレポ和平高等弁務官によると、同地域はパストラーナ政権期の緊張緩和地域と異なり、治安維持機関が展開し、現行法令は完全に適用されるが、本地域に所在する限り逮捕されることはない。同地域の期限は6ヶ月(延長可)である。

 ウッド駐コロンビア・米国大使は、「政府とパラミリタリーの合意はコロンビアの平和と正義に向けた重要な一歩となろうが、それはパラミリタリー側が公約を遵守するか否かにかかっている」と述べ、もし約束の履行がなされない場合は早急に断固たる措置をとるようコロンビア政府に要請した。

(3)FARCとの人道的人質交換等に関するウリベ大統領の発言

 ウリベ大統領が3日のラジオ番組で、(イ)誘拐被害者と収監中のゲリラメンバーを交換する人道的人質交換合意は、釈放されるゲリラがFARCに戻らないとの条件を満たすのであれば可能である、(ロ)仏政府から釈放ゲリラを受け入れるとの申し出があったが、これを受諾している、(ハ)非合法武装勢力との交渉において、犯罪人引渡は交渉の対象にならない等語った。

(4)エーゲラント国連事務次長のコロンビア訪問

 5月上旬、エーゲラント国連事務次長(OCHAの責任者。レモアン国連事務総長特別顧問の前任で、パストラーナ政権期にFARCとの和平プロセスに関与)がコロンビアを訪れ、ウリベ大統領他要人と会談したほか、国内避難民の状況を視察した。コロンビアの人道的危機はコンゴ、スーダンに次いで重大な状況にあり、中南米域内では最悪であると述べた他、FARCとの交渉については、軍事面だけでは解決することができないことを指摘し、いずれ交渉すべき時期が訪れることを示唆した。

(5)レモアン国連事務総長特別顧問の訪問

 28日、レモアン国連事務総長コロンビア問題担当特別顧問がコロンビアを訪問し、関係者との会談を行った。

(6)「ドブレ・セロ」の死

 パラミリタリー・メトロブロック(主としてメデジン市)を率いながら昨年AUCの侵攻により壊滅させられた「ドブレ・セロ」がサンタ・マルタにおいて28日に殺害された。彼は従来からパラミリタリーの麻薬ビジネス関与を批判していた。最近ではカルロス・カスターニョの死を悲しんでおり、自分自身も命を狙われていたことを承知していたといわれる。

(7)FARC支配地域の実態報道

 25日付エル・ティエンポ紙は、「愛国プラン」を通じ治安維持機関のプレゼンスが回復されたカケタ県、メタ県の「旧緊張緩和地域」におけるFARCによる支配の様子とコカ本位の経済状況を報じた。カケタ県カルタヘナ・デ・チアラ村地域ではFARCが統治者として村々の住民を組織し、裁判所まで設置していたほか、コカによる貸金業まで行っていたことを明らかにしている。また、サンタフェ・デル・カグアン村では政府からの支払いが滞っていた教師の給料を住民がコカで支払った。

(8)マネー・ロンダリングの実態

 6日付エル・ティエンポ紙は、3日に「ホワイト・ドル」作戦により米国及びコロンビア等で逮捕された資金洗浄関係者に対する捜査を通じて判明したルートを報じた。判明した資金洗浄のルートは次の三つの段階からなっている。

(イ)第一段階:「ペソ交換闇市場(BMPE)」業者がコロンビア国内にて麻薬販売代金に相当するペソを麻薬業者に提供し、その対価分を米国及びカナダにおいてドル現金で受け取る。

(ロ)第二段階:米国のBMPE関係者は、麻薬販売代金として収集した上記ドル現金を少額に小分けして米国銀行システムあるいは国際金融市場に環流する。

(ハ)第三段階:この段階のBMPE関係者が第二段階の関係者からドル資金を入手し、米国の財貨・サービス購入のため、あるいはコロンビアの規制・課税対策のためにドルを必要とするコロンビア人や企業にドルを売却する。コロンビアのBMPE関係者はこの取引により、麻薬業者に支払うペソを入手できる。

(9)村松氏の誘拐事件に関する裁判

 13日付エル・ティエンポ紙によると、ボゴタの最高裁判所は村松氏の誘拐に加担した罪で逮捕されているノルベルト・ベナビデス・サンチェスに対する刑期を懲役21年から26年に引き上げた旨報じた。

 

3.治安(5月分)

<>はボゴタ市の統計。斜線の右件数は4月分

(1)殺人:1817件<131>/1581件<107件>

(2)集団殺人:6件24名<0件0人>/1件4名

(3)脅迫:52件<7件>/44件<7件>

(4)窃盗・強盗:4264件<1015件>/4349件<1114件>

(5)自動車盗難:1662件<414件>/1448件<410件>

(6)幹線道路での車上強盗:76件<22件>/77件<24件>

(7)誘拐:99件<0件>/95件<4件>

(8)テロ:75件<4件>/51件<1件>

(9)集団誘拐:9件52人<0件0人>

(警察統計)

 

4.外交

(1)ベネズエラにおけるパラミリタリーと思しきメンバーの拘束

 9日以降、コロンビアのパラミリタリーと思しきメンバーがカラカス郊外の農場で拘束された。反政府勢力が政権転覆を狙ってパラミリタリーを利用したという説、あるいは、大統領罷免国民投票を妨害しようする工作から関心を逸らせるためのベネズエラ政府の自作自演説など様々な憶測を呼んでいるが、チャベス・ベネズエラ大統領は、ベネズエラが反政府側の一部のセクターに支援を受けた国際的なネットワークにより侵略されていると非難した。

 バルコ・コロンビア外相は13日から14日にかけてベネズエラを訪問し、チャベス大統領及びペレス外相と会談した。チャベス大統領は、ウリベ政権が本件と関係がないことを確信している旨バルコ外相に伝え、バルコ外相も問題解決のため連携を継続することで合意した。

(2)アルゼンチン外相のコロンビア訪問

 11日から12日にかけてビエルサ・アルゼンチン外務貿易文化相がコロンビアを公式訪問し、バルコ外相と会談した。両国外相は友好関係を確認すると共に、バルコ外相は昨年7月ロンドンで開催されたコロンビア支援国準備会合へのアルゼンチンの出席及びウリベ政権に対する支持表明に感謝した。

(3)ウリベ大統領のスペイン訪問とサパテロ西首相との会談

 ウリベ大統領はフェリペ皇太子のご成婚に出席するためスペインを訪問し、21日にロドリゲス・サパテロ首相と会談した。その際の模様次の通り。

(イ)ウリベ大統領がロドリゲス・サパテロ首相に「欧州連合に対してわれわれの仲介者となることを望む」と述べたところ、「仲介者ではなく、イベロアメリカ、とくにコロンビアの大使になろう」と答えた。

(ロ)現在、コロンビアのスペイン企業が抱えている問題解決のため、両国政府ハイレベルによる直接的な接触ルートを設定した。

(ハ)テロリズム、麻薬問題、欧州連合によるアンデス共同体に対する優遇関税措置の更新もテーマとして取り上げられた。

(4)ラテン・アメリカ・カリブ-EU首脳会談(メキシコ)

 ウリベ大統領は27日から29日まで第3回ラテン・アメリカ・カリブ-EU首脳会議出席のため、グアダラハラ(メキシコ)を訪問し、各国首脳と会談した。

(イ)ドイツ・シュレーダー首相との会談

  シュレーダー首相はコロンビアのテロリズムとの戦いに対する支援と、EUがアンデス諸国に与えている一般特恵制度の関税優遇措置の延長に賛成することを表明した。

(ロ)フランス・シラク大統領との会談

 シラク大統領は一般特恵制度の更新に対する支援を表明した他、ゲリラとの人道的人質交換の結果、刑務所を出所するゲリラの受け入れの可能性にも触れた。

(ハ)メキシコ・フォックス大統領との会談

 フォックス大統領はELNとの和平プロセスに関与することを申し出、ウリベ大統領はそれを歓迎した。

 また、メキシコにFARCの事務所が開かれるのではないかという懸念があることに対してフォックス大統領は、その問題は2年前に解決済みで、今後もFARCの事務所がメキシコに開かれることはないことを強調した。

(5)エルサルバドル大統領就任式典への出席

 ウリベ大統領はサカ・エルサルバドル大統領の就任式典出席のため、31日にサン・サルバドルを訪問した。

(6)カルタヘナにおけるFTA交渉の開始

 18日、カルタヘナにおいてウリベ大統領出席のもと、アンデス諸国との自由貿易協定の交渉ラウンドを開始した。

 

4.今後の主な予定

6月20日:国会会期終了

7月12日:第15回アンデス共同体首脳会談(於:エクアドル・キト)