コロンビア内政・外交状況(7月分)

 

1.概要

内政:「パラ」との交渉が1日から始まり、手続き面での合意に達したものの、下院公聴会での「パラ」リーダーによるスピーチでは自らの行為の正当化と刑務所入りの拒否などが表明され批判を受けた。ELNとの交渉では、墨バレンシア大使を介して政府とELN側との書簡のやり取りがあったが、報道ベースでは両者の主張はかみ合わないままであった。

外交:米国務省の資料により、米国による軍事訓練の規模の大きさが浮き彫りとなった。モラティノス西外相がコロンビアを訪問し、治安対策に対する協力及び関税問題に対するEUとCANの間の交渉の支持を表明した。

 

2.内政

(1)「パラ」との和平交渉

(イ)1日、コルドバ県サンタ・フェ・デ・ラリートの「指定地域」で政府と「パラ」との交渉が始まった。

 交渉には、プレテル内務・法務大臣、レジェス外務次官、レストレポ和平高等弁務官、カラマーニャOASコロンビア和平プロセス支援ミッション団長、ビダル司教、ルナ・マグダレナ県知事、アラウホ・セサル県知事、アギラル・サンタンデール県知事、国会議員、NGO関係者、外交団からは、パナマ大使、エル・サルバドル大使、法王庁大使、米国大使館駐在武官、コスタリカ大使館アタッシェが出席した。「パラ」側はマンクーソを始めとした幹部が参加した。

(ロ)マンクーソの提案した5つのテーマは以下の通り。

(a)人権、国際人道規約及び敵対行為停止の再定義と検証。

(b)AUCの影響地域における治安対策(seguridad democratica)の総合的導入と適用。

(c)集結地域の定義、位置、規制。

(d)AUCの影響地域おける非合法作物の根絶と代替化。

(e)法的保証、政治的・市民的権利、市民生活復帰への保障。

この他、「パラ」が合法政治勢力化することへの希望等を表明した。

(ハ)レストレポ和平高等弁務官の発言(2日付エル・ティエンポ紙)。

(a)敵対行為停止は、本件協議の前提条件であり、全ての市民の安全と自由を絶対的に尊重すると共に、麻薬取引や薬物ビジネスに関わるあらゆる活動を放棄しなくてはならない。

(b)今日、コロンビアにおいても世界各地においても、残虐な事件の犯人に対する恩赦は制限されている。恩赦の可能性は、和平プロセスに調和する形で司法の適切な適用要件に従うときには、「パラ」に対しても開かれている。

(ハ)政府と「パラ」との交渉における5つの手続き面での合意(10日付エル・ティエンポ紙)。

(a)「パラ」影響地域での敵対行為停止違反を議論するための会合を具体化する。

(b)「パラ」幹部の議会公聴会(7月28日)への参加を確保するべく、8月終わりまでの作業日程を具体化する。

(c)政府及びAUCは国会に対して、本件交渉に同席する委員会の設置を求める。

(d)政府とAUCはいわゆる「治安機関統合本部」が活動する場所を規定した。そこから軍や警察が「指定地域」に対して(治安の)コントロールを行う。

(e)AUCは彼らのうち誰が交渉人なのかを自ら明らかにする。

(ニ)28日、「パラ」リーダー、マンクーソ、バエス、イササの3名がボゴタ市を訪れ、下院公聴会でスピーチを行った。

(a)マンクーソのスピーチのポイント

・AUCによる敵対行為の停止は、AUCが住民や地域をゲリラの攻撃から守るという責任から逃れることを意味していない。

・政府、議会代表者、司法官、教会そして生産者セクター代表によるハイレベルの委員会の設置を求める。

・サンタ・フェ・デ・ラリートの他にも「指定地域」を増設することを求める。

・一斉に「パラ」が武装解除を行うことは無責任極まりない。

・ゲリラだけでなく、ウリベ大統領の政策についても批判する。

・刑務所入りを拒否し、「パラ」メンバーを利する法的メカニズムの創設を求める。

(b)バエスのスピーチのポイント

・政府による大がかりな家宅捜査や大量逮捕を批判する。

・出獄するゲリラに対する攻撃の警告(出獄するゲリラに罪を償わせるために「パラ」が同ゲリラを攻撃対象とするというもの)を既に取り下げている。

・ELNによって提案された国民会議を支持。

・政府との交渉において麻薬問題は困難を極める。

・9月17日から19日に「指定地域」での「武力紛争と麻薬取引、和平のための総合的解決」と題するフォーラムの開催を提案。

・紛争の犠牲者の家族、友人に対して赦しを乞う。

(c)イササのスピーチ文のポイント(議会和平委員会メンバーによる代読)

・国家がゲリラの活動に無関心であったため、自警団(「パラ」)の創設は正当化される。

・「パラ」メンバーの議会への出席は、「パラ」の和平への意欲を改めて示すためである。

(ホ)「パラ」の下院公聴会出席に対するウッド米国大使、ゴメス・ガジョ上院議長の反応。

(a)ウッド米国大使

 国民の代表がいる場所に、国民を傷つけてきた者がいることは少し奇妙であり、法律が承認される国会にそれを日々犯している者がいることは奇妙である。(AUCとの交渉に対する米国の支持を繰り返しつつ、)マンクーソがAUCの犠牲について話すのを聞くことはスキャンダルである。

(b)ゴメス・ガジョ上院議長

 国会は独立した決定権を持ち、和平のために尽力する権利を有するとしながらも、(本件は)下院の和平委員会の招聘であったが、最終的にマンクーソ、バエス、イササに通行許可を与えたのは政府であった。

(2)ELNとの交渉

(イ)レストレポ和平高等弁務官発(ELNとの交渉促進者)バレンシア大使宛3日付書簡概要。

(a)ELNが「双方による戦闘の一時的停止」を主張しているのに対し、政府は出発点としてELNの敵対行為停止を求め、その上で相互的に軍事攻勢を停止することを求めているなど克服すべき差異は存在するが、ある程度同様の方向性が見られると考えている。

(b)政府は開始段階での(ELNの)解体や武装解除を求めていない。

(ロ)ガランELN代表発バレンシア大使宛書簡概要。

(a)コロンビアの社会危機や人道危機に対するELNの懸念に対して何ら言及がない。

(b)ウリベ政権の和平政策がどのようなものなのかについて言及していない。

(ハ)ELNと政府の交渉に関し、国会が関与する可能性を踏まえたELNの反応、これに対するプレテル内相発言及びゴメス上院議長の発言等(27日付エル・ティエンポ紙)。

(a)ELN:ゴメス上院議長がELNに対し国会での議論への招請を行ったことを建設的に受け取っている。政府と「パラ」の交渉を批判する。ウリベ大統領は「パラ」の汚名を晴らすと共に、その合法化を優先しており、国会がこれに手を貸すことは危険である。

(b)プレテル内相:ELNが国家と市民に対する武装攻撃を停止するのであれば、(国会において市民社会も参加する)和平のための会議開催のために政府はELNに対する軍事行動を停止する用意がある。

(c)ゴメス上院議長:国会は和平を模索するため一種の緊張緩和地域のような役割を果たすことも可能であるが、憲法上の制約及び国家機構維持の観点から、これは国会が政府に代替することを意味するものではない。

(3)FARC関連

 インターネット経由でのレジェスFARC広報担当の発言(25日付エル・ティエンポ紙)。

(イ)FARCの資金については、コカの買い付け人や外国にコカ・ペーストを輸出しようとしている者たちから「税金」を取り立てており、その他の関係は存在しない。

(ロ)人道的人質交換合意は実現可能であろうが、FARCは交渉の相手を有していない。(交換対象者にはシモン・トリニダッド等の幹部も含むのかとの質問に対し、)全ての交換可能対象者、すなわち、軍人、警官、バジェ県議会議員、ベタンクール元大統領候補、アラウホ元開発大臣、米国人等と全ゲリラ収監者との交換を提案する。

(ハ)和平プロセス開始のために、政府に対してカケタ県とプトゥマヨ県の「非軍事化(治安機関の撤退)」を要請する。

(ニ)マルランダFARC最高司令官は死んでおらず病気でもない。

(ホ)パストラーナ政権期の緊張緩和地域はコロンビアの平和を模索するための地域であったが、「パラ」との交渉は犯罪の合法化にすぎない。

(4)20日、上院、下院の議長、副議長が選出された。

(イ)上院では、議長にオルギン保守党代表(注:ウリベ大統領寄り)から推薦を受けたゴメス・ガジョ議員、第一副議長にイグナシオ・メサ議員(自由党系ウリベ派)、第二副議長にヘスス・ベルナル議員(ポロ・デモクラティコ)がそれぞれ選出された。

(ロ)下院では、議長にスレマ・ハティン議員(自由党系ウリベ派)、第一副議長にアルベルト・スルアガ議員(保守党系ウリベ派)がそれぞれ選出された。

 

3.治安(7月分)

<>はボゴタ市の統計。斜線の右件数は6月分。

(1)殺人:1695件<142件>/1713件<137件>

(2)集団殺人:2件11人<0件0人>/3件43人<0件0人>

(3)強盗:34件<3件>/116件<16件>

(4)窃盗・強盗:4247件<1133件>/4213件<1148件>

(5)自動車盗難:1591件<400件>/1683件<445件>

(6)誘拐:38件<3件>/55件<3件>

(7)テロ:68件<6件>/68件<1件>

(警察統計)

※注目を集めた事件・出来事

(イ)8日付エル・ティエンポ紙は3年間FARCに誘拐されていたベレス教育大臣の弟、ベルナルド・ベレス氏がアンティオキア県西部フロンティーノ近郊で殺害されたと報じた。

(ロ)16日午前、ボゴタ市北部のチア市中心部において、民芸品屋で定例の民芸品製作の講習を受けていた在コロンビア外交団員夫人は、同民芸品屋を出たところで武装した2人組に車に乗せられ拉致された。その後、被疑者が逃走を開始して間もなく、同車両はトラックと衝突し、被疑者は警察に逮捕され、夫人は保護された。

 

4.外交

(1)12日、エクアドル・キトにおいて、第15回アンデス共同体首脳会議が開催され、アンデス対外共通安全保障政策が承認された他、政治的、社会的、文化的、経済的な統合及び協力を深化させるための「開発のための統合」を推進することが約束された。

(2)米国務省の「外国人に対する軍事訓練:議会への総合報告書」概要(15日付エル・ティエンポ紙)。

(イ)2003年、コロンビアでは麻薬組織やテロとの戦い、人権保護など様々な領域でコロンビア軍人12947人(2002年は6477人)が米国による訓練を受け、イラクの9210人、アフガニスタンの5054人を上回った。

(ロ)コロンビアに対する軍事訓練につき、米国は2003年には約3300万ドルを支出し(2002年の約2倍)、2004年には4200人の訓練のために1400万ドルの支出が予定されている。

(3)23日、モラティノス西外相が当地を訪問し、バルコ外相と二国間協議を行った。

(イ)治安対策における協力について

 スペインはコロンビアとともに、対テロ、自由や法治国家の強化、更には、不正や貧困に対する戦いにおいて、共通アジェンダを遂行していくことを望んでいると述べた。また、ボノ西国防相は、ウリベ政権が進める政策を支援する上で、如何なる分野への協力が可能かコロンビア国防相と検討するため、9月中旬にコロンビアを訪問する予定であることを明らかにした。

(ロ)EUとCANの間の関税について

 関税問題について、スペインはEUとアンデス共同体の交渉を最も支持している国であると述べた。また、共同市場を確立する努力が全ての関係国に対し明らかに利益と満足を与え、このような商取引上のバランスが維持されるのであれば、コロンビア産品はヨーロッパ市場に受け入れられるだろうと述べた。

(4)26日から28日にブリス・グアテマラ外相は国防相、エネルギー・鉱山相と共にコロンビアを訪問し、安全保障と司法に関するハイ・レベル・グループの創設、プエブラ-パナマ・プラン、移民政策、二国間の商業、投資の進展等のテーマについてウリベ大統領、バルコ外相と意見交換をした。

(5)28日付エル・ティエンポ紙は、米国のケリー民主党大統領候補が副大統領補及び23人の上院議員の連名でウリベ大統領に対して国連による人権に関する勧告に従うよう求めた。

 

5.今後の予定

(1)9月1日 大統領就任式典(パナマ) 

(2)9月3日 エル・サルバドル外相のコロンビア訪問

(3)9月6-12日 バルコ外相の訪欧

(4)9月19日-10月1日 国連総会(ニューヨーク)

転電《添付無》ペルー、ベネズエラ、エクアドル、ボリビア、米国、マイアミ(了)