コロンビア内政・外交状況(8月分)

 

1.概要

内政:ウリベ大統領に対する支持率は引き続き高い。これを受けてか、トゥルバイ元大統領は事実上ウリベ大統領の再選を支持したが、これは自由党内に波紋を引き起こした。大統領再選憲法改正法案も順調に国会審議を経ているが、反テロ法は憲法裁判所の承認を得られなかった。政府がFARCに対し、人質交換を提案していたことが明らかになったが、FARC側は政府提案に不満の模様。

治安:日本からの送金を資金洗浄していたマネーロンダリング組織が摘発された。

外交:近隣諸国との間で、大統領・外相の往来があった。

 

2.内政

(1)世論調査((ニ)を除き、8月4日~5日、都市部において成年男女1000名を対象に全国コンサルタント・センターが実施したもの。)

 (イ)大統領支持率等(<>内は反対)

  (a)ウリベ大統領はこの2年間でコロンビアを良い方向に導いた。85%<11%>

  (b)ウリベ大統領の再選を支持する。 68%<30%>

  (c)ウリベ大統領に対抗できる大統領候補は存在する。 36%<64%>

 (ロ)治安関連

    a)2年前と較べて治安状況は改善した。 76%<9%>

    b)左派ゲリラに対する大統領の措置を支持する。 75%<22%>

    c)パラミリタリーに対する大統領の措置を支持する。 65%<30%>

      麻薬組織、一般犯罪、誘拐に対する措置も70%以上の支持を得ている。

    d)人権に対する大統領の措置を支持する。 73%<23%>

    e)人道的人質交換を支持する。 63%<30%>

 (ハ)経済関連

a)ウリベ大統領の経済施策を支持する。 59%<37%>

b)雇用施策を支持する。 47%<50%>

c)教育施策を支持する。 69%<28%>

   他方、5~6割が公共サービス、医療、生活基礎物資の支払いが困難になったとしている。

 (ニ)その他

 政府と非合法武装勢力の和平プロセスに関し、2002年4月対話による解決を支持していたのは36%だったのに対し、インバメール・ギャロップ社の調査では60%に達している。

 

(2)重要法案

 (イ)19日、大統領再選憲法改正法案が、上院第一委員会において、賛成13票、反対4票、棄権2票で可決された。

 他方、上記法案が国会で否決された場合に備え、市民有志による国民投票に向けた動きもある。

 (ロ)30日、憲法裁判所は、国会内での審議に瑕疵があったとして、反テロ法を執行可能にするための憲法改正案を承認しなかった。このため反テロ法は執行不能となり、政府は憲法裁判所に抗告するとしているが、その後、具体的な動きは見られていない。

 

(3)和平プロセス等

 (イ)パラミリタリー

   a)20日、パラミリタリー幹部マンクソは、政府との交渉人14名の氏名を公表した。

     (b)政府からの圧力を受け、東部平原地帯(アマゾン地域)のパラミリタリー2グループも政府との交渉に参加することとなった。

 (ロ)FARC

 19日、政府がFARCに対して、叛乱罪で収監中のFARC50名の釈放及び市民生活への復帰と引き替えに、FARCが拘束している政府・治安関係者の解放を7月に提案していたことが明らかにされた。

 FARCは20日付コミュニケにて、政府提案を然るべく検討するとしながらも、FARC収監社の人定・人数、釈放条件、叛乱罪と他の犯罪の関連等に関するFARC側の判断を無視しているとして批判した。

 

(4)大統領再選関連

 7日、トゥルバイ元大統領は、コロンビア人はウリベ大統領の施政継続を望んでいる、大統領再選が承認された後はウリベ新党ではないが新たな自由主義政治運動を形成する必要があるとして、事実上ウリベ大統領の再選を支持した。

 これに対し、コルドバ自由党元党首(同党最左派)は元大統領の自由党からの除名等攻撃的な反応をしたが、ビベス現党首は(イ)現行憲法では2つ以上の政党、政治運動に同時に参加することは許されておらず、トゥルバイ元大統領他が新たな政治運動を始めるのであれば、自由党を離党すべきであること、(ロ)大統領再選導入には反対、(ハ)自由党は社会民主主義を奉じており、中道右派・ネオリベラリズムのウリベ大統領が自由党の候補となることはない、等と応酬した。

 

(5)その他

 ニューズウィーク誌インターネット版は、米国防省のレポートに基づくとしてウリベ大統領はメデジンカルテルと関係があったと報じた。米国務省及びコロンビア政府はこれを全面的に否定した。

 

3.治安(8月分。<>はボゴタ市の統計。)

(1)殺人:1605件<122件>

(2)集団殺人:3件19名<0件>

(3)脅迫:63件<8件>

(4)窃盗・強盗:4027件<1076件>

(5)自動車盗難:1566件<374件>

(6)幹線道路での車上強盗:60件<19件>

(7)誘拐:72件<1件>

(8)テロ:52件<1件>              (以上警察統計)

 (個別重要事案)

(1)18日、国家警察は日本からの送金(窃盗、侵入盗、人身取引、覚醒剤取引等違法収益)を資金洗浄していたマネーロンダリング組織メンバー15名を国内各地(ボゴタ、メデジン、カリ、ビジャビセンシオ等)で逮捕した。

(2)12日、グアビアレ県サンホセを訪問中のサントス副大統領登場のヘリコプターが銃撃を受けたが、影響はなかった。

 

4.外交

(1)ドミニカ共和国大統領、外相のコロンビア訪問

 3日にゲレロ外相、4日にメヒア大統領が来訪、コロンビアからの石油供給、査証等経済関係の他、ウリベ政権の治安回復・国民生活向上への努力に支持を表明した。

(2)ウリベ大統領のパナマ、ドミニカ共和国訪問

 ウリベ大統領は、15日に橋梁開通式出席のためパナマを、16日に大統領就任式出席のためドミニカ共和国を訪問した。

(3)ベネズエラ大統領罷免国民投票(15日実施)

 ウリベ大統領は、チャベス大統領に祝意を表しつつ、ベネズエラ民主主義を称揚するとともに、婉曲にベネズエラ国民の和解を求めた。

 FARCもレジェス広報担当名で、チャベス大統領の正統性と継続性を承認したベネズエラ国民に祝意を表し、併せてチャベス大統領の業績を称揚した。

(4)ペレス・ベネズエラ外相のコロンビア訪問

 26日、G3外相会合出席のため、ペレス外相がコロンビアを訪問、バルコ外相との間で外相会談を実施し、これまでの外相会合のフォローアップの他、7月14日に行われた両国首脳会談のフォローアップも実施したほか、海上国境に関する交渉、国境統合、ビジネス会合、ガスパイプライン・電力網の建設、石油流出対策、国境警備、国境道路整備、オリノコーメタ航行、領事、地下資源開発等も取り上げた。

(5)デルベス墨外相のコロンビア訪問

 同じく、G3外相会合出席のため訪問中のデルベス外相が、27日、バルコ外相と会合し、安全保障、両国間協力、経済・商業問題、移民問題、テロ対策、プエブラーパナマ・プラン(注:コロンビアのオブザーバー参加が承認された由)、国連改革につき共同コミュニケを発出した。なお、デルベス外相は記者会見において、ELNとコロンビア政府との和平プロセスにおいてメキシコは交渉人ではなく、交渉促進者であることを確認した。

                                   

5.今後の主な予定

(1)10月

中旬:バルコ外相のカリブ海諸国訪問

下旬:ウリベ大統領、バルコ外相のペルー訪問

:バルコ外相のアルゼンティン訪問

(2)11月(グアテマラ、ボリビア大統領来「コ」の予定あり)

上旬:リオグループ首脳会合(外相同行)(於:リオデジャネイロ)

中下旬:イベロアメリカ・サミット(於:サンホセ)

下旬:バルコ外相の欧州諸国訪問

(3)12月

上旬:アンデス共同体首脳会合(於:クスコ)

:南米サミット(クスコ)