コロンビア内政・外交状況(9月分)

 

1.概要

内政:大統領再選憲法改選法案が上院本会議で可決された。和平プロセスに関しては、ELNとレストレポ和平高等弁務官の間の書簡のやりとりが報道され、政府がELNによる誘拐の停止と人質の解放が履行されることを条件に服役中のELN構成員の釈放を提案していることが明らかになった。また、パラミリタリーとの交渉について犯罪引渡に関し政府が譲歩の意志を示しているとの報道がなされ、大統領府、「パラ」とも全面的にこれを否定した。

外交:バルコ外相の欧州訪問、ウリベ大統領の国連総会出席があった他、ベネズエラのコロンビア国境付近でベネズエラ兵士等殺害事件があった。

 

2.内政

(1)国会

(イ)大統領再選法案

 8日、上院本会議において大統領再選憲法改正法案が賛成67票、反対24票で可決された(当館注:本法案は10月22日に下院第一委員会を通過したため、今後、下院本会議での審議を経て採決されれば、大統領の署名の後、憲法裁判所の判断を受けて本憲法改正案は発効する)。

(ロ)政党関係

13日、ポロ・デモクラティコは新代表としてグスタボ・ペトロ下院議員を選出した。

(ハ)アンケート結果

 カンビオ誌(No.585)は8月下旬に全国主要5都市の15才から25才の若者を対象に行われたアンケートの結果を掲載した。興味深い結果は次の通り。

・55.7%がウリベ大統領を支持。

・59.8%が大統領再選法案に賛成。

・54.6%がウリベ大統領はパラミリタリーの武装解除を達成できると考えている。

・47.3%が政府のFARCに対する人道的人質交換に反対。

 その他、非合法武装勢力との和平がいつ達成できるかとの質問に対しては、「ウリベ政権下」と回答している割合が16.4%(2003年)から7.5%と減少し、「決して達成できない」と回答している割合が32.8%(2003年)から51.7%と増加している。

(2)和平プロセス

(イ)ELN

(a)レストレポ和平高等弁務官がELN指導部に宛てた書簡(8月3日)が12日付エル・ティエンポ紙に掲載され、その中で政府は、ELNが誘拐の停止と人質の解放を履行するならば、反逆罪で服役中のELN構成員の釈放等を進めることを提案した。

(b)また、同紙はELN指導部がレストレポ和平高等弁務官に宛てた返信書簡(9月6日)も掲載し、ELNは、政府とは理解し合えていないが幾らか前進しており、少なくとも対話をしているとした他、より着実且つ現実的な目標を目指すべきであると提案した。

(ロ)FARC

FARCは14日付声明(FARC公式ホームページ)において、人道的人質交換交渉のためサンファン・デ・ラ・カグアン及びカルタヘナ・デ・チアイラ2村の72時間非武装化等を求めたが、サントス副大統領は人質交換をするのに非軍事地域は必要ないと述べるなど政府高官はFARCの要求に否定的見解を示した。

(ハ)パラミリタリー

(a)セマナ誌(No.1169)、27日付エル・ティエンポ紙が、レストレポ和平高等弁務官がパラミリタリーとの交渉において、ウリベ大統領が自らの裁量権の範囲で引渡の問題を収拾する用意があると述べ、また、「パラ」の勢力が伸長し、地方公共団体等への浸透が進んでいるとの報道をした。

(b)上記(a)の報道に対し、大統領府は27日付コミュニケの中で、政府は2005年12月末までの「パラ」の武装解除・解体を求めていること、残虐な犯罪は国内法制上も国際的にも恩赦の対象とはならないこと等、犯罪人引渡は交渉の議題ではないことを明言した。

(c)同様に「パラ」も27日付コミュニケの中で、政府がAUCとの交渉において引渡をしないとの提案をした事実はないこと、引渡に関する大統領の裁量権について交渉の場で約束したことはないこと、「パラ」は国軍からの攻撃により多くの地域で排除、逮捕、無力化されていることなどを主張した。

(d)19日、「パラ」のセンタウロス・ブロックのアロヤベ司令官がメタ県プエルト・ジェラスにおいて射殺された。当局は、FARC、AUC、「マルティン・リャノス」に率いられたカサナーレ農民自警団のいずれかによる犯行の可能性を指摘している。政府によると、アロヤベは即時の武装解除を目的としてメタ県の自らの部隊を集結させるために「指定地域」を離れることが許可されていた。

(e)24日、米国務省は、コロンビア政府及びコロンビア軍が人権に関する基準をクリアし、更に「パラ」との関係を断っていることを認定、これにより、米国政府の対コロンビア軍事援助の継続が可能となった。

(f)27日、政府は「パラ」リーダーに対して2005年12月末までに武装解除を完了するよう警告し、武装解除のためのタイムテーブルの公表を求めた。

 

3.治安(9月分。<>はボゴタ市の統計。)

(1)殺人:1490件<128件>

(2)集団殺人:4件18名<1件4名>

(3)脅迫:43件<14件>

(4)窃盗・強盗:4140件<1082件>

(5)自動車盗難:1483件<408件>

(6)幹線道路での車上強盗:56件<18件>

(7)誘拐:54件<0件>

(8)テロ:53件<2件>    (以上警察統計)

 

(個別重要事案)

 6日、国家警察は日本からのマネーロンダリング組織の中心的役割を果たしていたと見られる男性2名を新たに逮捕した。また、マネーロンダリングに用いられていたと見られるコロンビア国内銀行の300口座が新たに発見された。

 

4.外交

(1)ウリベ大統領とパウエル米国務長官の会談

 1日、ウリベ大統領はパナマの大統領就任式典に参加し、同地にてパウエル米国務長官と麻薬取引対策、非合法武装勢力構成員の社会復帰、安全保障に関して会談した。

(2)バルコ外相の欧州訪問

 バルコ外相は6日から10日まで欧州9ヶ国(スペイン、ルクセンブルク、ベルギー、オランダ、英国、フランス、スイス、イタリア、ポルトガル)を公式訪問し、一般特恵制度(GSP)の関税優遇措置の延長、非合法武装勢力との和平プロセス等に関し、各国関係者と協議した。

(3)ベネズエラのコロンビア国境付近における殺人事件

 17日、ベネズエラのアプーレ州で起きたベネズエラ石油公社(PDVSA)の技師1人とその警護をしていた5人の兵士の殺害事件に関し、コロンビアの国防大臣がFARCの関与があったと主張する一方で、ベネズエラの国防大臣はパラミリタリー、麻薬組織を非難した。その後、本事件の現場近くでその他に合計9遺体が発見された。チャベス大統領は非合法武装勢力、密売人、殺人者がコロンビアからやって来ることから、本事件はコロンビア政府の責任であるとした。

(4)18日付エル・ティエンポ紙によると、ベネズエラは湾岸の7ブロック(海岸及び海底地域)を石油及びガス開発のために国際入札にかけることを確認したが、7ブロックのうち3ブロックはコロンビア・ベネズエラの国境地域問題と関わるため、コロンビアはベネズエラに対して入札地域の情報を求めている。しかし、これまでのところ正式回答を得ていない。

(5)オランダ政府の対コロンビア援助

 24日付エル・ティエンポ紙は、オランダ政府がパラミリタリーとの和平プロセスに関するOASのミッションに対して100万ドルの資金援助をすることを約束したことを報じた。

(6)ウリベ大統領の国連総会出席

 29日、ウリベ大統領は第59回国連総会において演説を行ったが、国内経済・社会施策面への言及が大部分を占め、非合法武装勢力構成員の社会復帰と国内避難民等を除き、治安面への言及は殆どなく、国際面でもテロ対策協力、ハリケーン災害への援助、国際金融機関への要望に留まった。

(7)ニューヨークにおけるフアン・バルデスのコーヒーショップ開店

 28日、フアン・バルデス(全国コーヒー連盟直営)のコーヒーショップがニューヨーク57番通りに新規オープンした。これはコーヒー豆の価格の下落を補填するためにコーヒーの小売り販売を促進するためのコーヒー連盟によるプロジェクトの一部であり、2007年までに米国を中心として世界中に300店舗をもつというものである。

 

5.今後の予定

(1)10月

下旬:ウリベ大統領、バルコ外相のペルー訪問

下旬:バルコ外相のアルゼンチン訪問

(2)11月

上旬:リオグループ首脳会合(外相同行)(於:リオデジャネイロ)

中下旬:イベロアメリカ・サミット(於:サン・ホセ)

下旬:バルコ外相の欧州訪問

(3)12月

上旬:アンデス共同体首脳会合(於:クスコ)

上旬:南米サミット(於:クスコ)

転電《添付無》米国、マイアミ、エクアドル、ベネズエラ、ペルー、ボリビア、パナマ(了)