コロンビア内政・外交状況(11月分)

 

1.概要

内政:大統領再選憲法改正法案が下院本会議で可決された。非合法武装勢力との和平プロセスに関しては、パラミリタリーの武装解除が進む一方で、政府とFARCとの人道的人質交換はFARCによる一部地域の非軍事化の要求により進展がなかった。

外交:ブッシュ米大統領を始め、トリホス・パナマ大統領、チャベス・ベネズエラ大統領、ベルシェ・グアテマラ大統領、メサ・ボリビア大統領ら各国首脳がコロンビアを訪問した他、バルコ外相が欧州を訪問した。

 

2.内政

(1)内政一般

(イ)10日、ボゴタ市で開催された大統領再選推進委員会(市民有志の団体)会合で9人の委員のうち6人が「プランB(大統領再選憲法改正のための国民投票実施に向けた署名集め運動)」の推進に反対したため同委員会として「プランB」の中止を決定した。同委員会が「プランB」を中止したのは、議会と憲法裁判所による再選憲法改正の承認は確実であり、委員の大多数が「プランB」は不要と考えていることによる。

(ロ)30日、下院本会議に於いて大統領再選憲法改正法案が、賛成113票、反対16票、危険35票で可決された(現定数は164議席)(当館注:12月15日に上院と下院で法案の最終的調整が行われたため、今後、大統領の裁可を経て、憲法裁判所の判断を仰ぐこととなる)。

(ハ)憲法裁判所による反テロ法案不承認の判断(8月30日)に対し、プレテル内務・法務大臣は不承認の取り消し申請をしたが、17日、憲法裁判所はこれを拒否し、反テロ法案は廃案となった。

(2)和平プロセス

(イ)パラミリタリーの武装解除

(a)2日、カタトゥンボ・ブロック構成員1600人の武装解除の発表を受け、約300人の住民がゲリラによる攻撃を恐れてティブー地域の農村部から脱出した。

(b)3日、レストレポ和平高等弁務官はサンタ・フェ・デ・ラリートにおける記者会見で、「パラ」の11ブロックが武装解除することを公式に発表すると共に、マンクーソ、ドゥケ、「エルナンデス」の「パラ」リーダー3名が配下の部隊の武装解除を調整するためにコロンビア全土を自由に移動出来るように、政府が彼らに対する逮捕命令を停止した旨明らかにした。

(c)和平高等弁務官事務所は、同事務所が担当する第1段階と内務・法務省が担当する第2段階から成るパラミリタリーの武装解除プロセスの詳細を公表した。第1段階は準備期間の第1フェーズ、個人情報の調査及び武装放棄が行われる第2フェーズ、社会復帰プログラムが実施される第3フェーズから成っている。

(d)10日付エル・ティエンポ紙は、カラマーニャOAS和平プロセスミッション代表が、来るべき大量武装解除のために更なる国際社会の協力を求めた旨報じた。

(e)25日、バナネロ・ブロックの452人が武装解除し、350人の武器が引き渡された。武装解除にはレストレポ和平高等弁務官、カラマーニャOAS和平プロセスミッション代表、アニバル・ガビリア・アンティオキア県知事、パラシオ・トゥルボ市長、「パラ」側はバナネロ・ブロックのリーダー、エルナン・エルナンデスの他、マンクーソ、エルネスト・バエスが出席した。

(f)28日付エル・ティエンポ紙は、大統領府情報筋の話として、ウリベ大統領が「パラ」リーダーのマンクーソとFARCのシモン・トリニダッドの米国への引渡を承認するであろうが、マンクーソの引渡に関しては「パラ」との和平プロセスの進展次第では承認を一時停止するであろうと伝えた。

(ロ)FARC

(a)1日付エル・ティエンポ紙は、レモアン国連事務総長特別顧問がウリベ大統領による人道的人質交換提案を支持する旨の声明を出したことを報じた。

(b)FARCは、7日付FARC書記局の声明(FARC公式ホームページ)において、政府の人道的人質交換提案を拒否した。また、カケタ県のカルタヘナ・デ・チャイラとサン・ビセンテ・デル・カグアン2村の非軍事化を改めて求めた。

(ハ)ELN

 5日、リオ・グループ首脳会議出席のためリオ・デ・ジャネイロを訪問中のウリベ大統領がフォックス墨大統領と二国間会合を持ち、ELNとの和平達成の進展のためコロンビア政府が同組織に宛てた新たな書簡を交渉促進者のバレンシア大使に渡したことを明らかにした。

 

3.治安等

(1)統計(<>内はボゴタ市。斜線右側は先月統計。)

(イ)殺人:1350件<113件>/1363件<138件>

(ロ)集団殺人:0件0人<0件0人>/4件23人<0件0人>

(ハ)脅迫:34件<5件>/32件<9件>

(ニ)窃盗・強盗:3980件<1067件>/4173件<1049件>

(ホ)自動車盗難:1469件<422件>/1505件<402件>

(ヘ)幹線道路での車上強盗:83件<25件>/79件<25件>

(ト)誘拐:39件<0件>/19件<0件>

(チ)テロ:32件<3件>/54件<2件>

(2)その他の事件

(イ)1日、取り調べ中のFARCテオフィロ・フォレロ戦線ナンバー2のエルナンド・ブイトラゴ・マルタ、通称「フリアン」がボゴタ市内の検察庁庁舎から逃亡した。その後、17日に社会復帰プログラムに加わるため内務・法務省庁舎に戻ってきた。

(ロ)15日午前4時6分、チョコ県バホ・バウド地区ピサロの沖合50km程の地点でマグニチュード6.7の地震が発生し、人的被害は多くないものの建物等の物損が発生した。

 

4.外交

(1)1日、トリホス・パナマ大統領がコロンビアを訪問し、ウリベ大統領と貿易促進、送電線及びガス・パイプラインの統合、道路の敷設計画等について協議した。また、国境地域の治安状況の改善が強調された。

(2)第18回リオ・グループ・サミット出席のためリオ・デ・ジャネイロ訪問中のウリベ大統領は、4日、ミレニアム開発目標(MDGs)履行のための中・長期的な目標を確定するために、19ヶ国の代表者と会合した。

(3)9日、チャベス・ベネズエラ大統領がカルタヘナを訪れ、ウリベ大統領とインフラ整備、経済問題等について会談した。

(4)17日及び18日、ベルシェ・グアテマラ大統領及びブリッツ外相等がコロンビアを訪問し、ウリベ大統領と会談した。麻薬対策の強化及び二国間における貿易振興に合意した。

(5)18日、ファン・カルロス西国王夫妻はコロンビア(カルタヘナ)を訪問し(約4時間)、ウリベ大統領夫妻やノーベル賞作家ガルシア・マルケスと会談した。

(6)22日、ブッシュ米国大統領がコロンビア(カルタヘナ)を訪問し、ウリベ大統領と会談した。ブッシュ大統領はスピーチの中でウリベ大統領の治安対策の実績を評価すると共に、プラン・コロンビアに対する支援を継続する旨述べた。他方、違法作物の栽培地域の減少や麻薬テロ関係の逮捕者の増加等の重要な成果を得る必要性にも言及した。

(7)28日及び29日の日程でメサ・ボリビア大統領がコロンビアを訪問し、ウリベ大統領と貿易及び麻薬対策における両国の協力促進で合意した他、両大統領は小型武器の違法取引の防止及び撲滅のための協力をしていくことを約束した。

(8)24日から12月3日の日程で、バルコ外相はEUの拡大に伴って新たに加盟したポーランド、スロバキア、チェコを中心とする欧州訪問を行った。クファシニエフスキ・ポーランド大統領はバルコ外相に対し、ウリベ政権の治安対策(Seguridad Democratica)の成果を賞賛すると共に、同政権に対する全面的な支持を表明した。また、29日にはスヴォボダ・チェコ外相と両国間の経済関係及びチェコのEU加盟等に関し会談した。

 

5.今後の日程

2月3日、4日:コロンビア支援国会合(於:カルタヘナ)