コロンビア内政・外交状況(12月分)
1.概要
内政:ウリベ大統領の支持率及び再選を支持する割合が3ヶ月前の調査と比べて上昇している。非合法武装勢力に関しては、パラミリタリーの武装解除が順調に進展したのとは対照的に、FARCとの人道的人質交換交渉は行き詰まり、拘留中のFARC幹部「シモン・トリニダッド」は米国に引き渡された。
外交:米国は「和平のイニシアティブ」と武装解除プロセスを支援するために325万ドルの支出を承認し、EUもコロンビアの和平プロセスを政治・経済的に支援する用意があることを表明した。
2.内政
(1)内政一般
(イ)12日付エル・ティエンポ紙は、米国のハリバートン社の系列であるハリバートン・ラティノアメリカ社が退役したばかりのコロンビアの軍人、警察官を対象にイラクでの警備業務に就く人員を募集していると報じた。任務はイラクにおける石油パイプライン、ガスパイプライン及び民間企業の従業員の警備で、報酬は月給7000ドルとの情報を紹介しているが、コロンビアのハリバートン・ラティノアメリカ社はこの情報との関係を否定していると同紙は報じた。
(ロ)21日付エル・ティエンポ紙は、当地インバメール・ギャロップ社の世論調査結果を掲載したところ、興味深いところは次の通り。
(a)ウリベ大統領に好意を示す比率は前回調査(2004年9月)の67%から74%へ回復、ウリベ大統領の仕事振りを支持する比率も、前回72%から77%に回復した。
(b)ウリベ大統領の再選は70%が支持した(2004年9月は65%)。
(c)人道的人質交換については、本年6月の賛成31%と反対62%、同9月の賛成37%と反対55%に比べ、今回は賛成47%と反対45%と拮抗している。
(ハ)16日、フェルナンド・クリスト上院議員が自由党党首に就任した。
(2)和平プロセス
(イ)FARC
(a)2日、政府が人道的人質交換の第一歩として反逆罪で収監中の23人のFARC構成員に恩赦を与えた。この23人は事前に書面を以て再武装しないこと及び政府の社会復帰計画を受け入れることを約束した。また、政府は彼らの誰一人も残虐な犯罪、非人道的な犯罪に関わっていないことを明確にした。
(b)3日、FARCは声明を通じて、カケタ県のサンタ・フェ・デ・カグアン及びカルタヘナ・デ・チャイラ2村の非軍事化要求を取り止め、代わりにバジェ県のパラデラ及びフロリダ2村の非軍事化を求めた。
(c)7日、ウリベ大統領は、11月28日付コミュニケにおいてFARCが提案しているパラデラ及びフロリダ2村の非軍事化の要求を拒否した。
(d)17日、ウリベ大統領及びプレテル内務・法務大臣は、FARCの幹部「シモン・トリニダッド」の米国への引渡を承認したが、ウリベ大統領、プレテル内務・法務大臣、レストレポ和平高等弁務官はFARCが人質63人を解放することにより「トリニダッド」の引渡を取り消す用意があることを伝えた。
(e)20日付大統領府声明(大統領府ホームページ)は、FARCが12月30日までに63人の人質を解放すれば「シモン・トリニダッド」の対米引渡を取り消す用意があることを繰り返すと共に、もしFARCが人質の最初の一団を解放するのであれば、政府は63人の人質全ての解放を目的としたFARCとの会合を教会において開催することを提案した。
(f)23日、カトリック教会のルビアーノ枢機卿はウリベ大統領のFARCに対する12月30日までの人質解放提案に関し、63人の人質解放を可能とする人道的合意の模索が進行しているうちは数日、あるいは数週間、「シモン・トリニダッド」の引渡を控えるようにとの声明を発表した。
(g)27日、FARCは人道的人質交換に関し、政府側が500名以上のFARC要員を釈放すれば人質交換に応じる用意があること等、アナン国連事務総長宛公開書簡により明らかにした。
(h)31日、「シモン・トリニダッド」はボゴタ市エルドラド空港に隣接するカタム空軍基地において米FBIに引き渡され、同日、ワシントンに移送された。
(ロ)パラミリタリー
(a)4日、マグダレナの「チェペ・バレラ」率いるマグダレナ川流域南部自警団47人が武装放棄した。
(b)9日、「アギラ」配下のクンディナマルカ・ブロック147人が武装放棄した。
(c)10日、ノルテ・デ・サンタンデール県ティブー地域において、カタトゥンボ・ブロックの武装放棄が行われ、これを以て合計1425人が武装放棄した。また、「パラ」リーダーのマンクーソも武装放棄し、コロンビアと米国に対して「パラ」が与えた被害について赦しを求めた。
(d)16日、ウリベ大統領及びプレテル内務・法務大臣は、パラミリタリー幹部マンクーソが以下に示した一定の条件を守らない場合という条件付きで、同人の米国への引渡を承認した。なお、大統領が本決定の定める事項の履行状況を検証する。
・「パラ」との和平プロセスの枠組みにおいて為された合意事項を履行すること。
・違法行為を行わないこと。
・「パラ」メンバーの和平プロセスへの参加に貢献すること。
(e)18日、バジェ県ブガラグランデ地域において、「エルナン・エルナンデス」率いるカリマ・ブロック構成員553人が武装放棄した。
(f)19日付エル・ティエンポ紙は、和平プロセスに近い情報筋の話として、レストレポ和平高等弁務官が武装放棄予定であった太平洋ブロックの政治的リーダーとされるフランシスコ・ハビエル・スルアガ・リンド(「ゴルド・リンド」)に対して彼と彼の護衛の武装放棄を承認しない旨連絡したと報じた。
(ハ)ELN
ELNとボリバル県南部自治体との対話進展に伴い、2005年1月5日以降、ラ・プラサ、ラ・カオバ、グアシマ間の道路に埋設された対人地雷を撤去することが31日付ELN司令部の声明において表明された(当館注:2005年1月12日付エル・ティエンポ紙は、ラ・カオバの住民の話として、10月には既にELNが対人地雷の撤去を開始していたことを報じている。)。
3.治安
(1)統計(<>内はボゴタ市。斜線右側は先月統計。)
(イ)殺人:1445件<149件>/1350件<113件>
(ロ)集団殺人:2件21人<0件0人>/0件0人<0件0人>
(ハ)窃盗・強盗:3673件<1051件>/3980件<1067件>
(ニ)自動車盗難:657件<251件>/1469件<422件>
(ホ)幹線道路での車上強盗:65件<14件>/83件<25件>
(ヘ)誘拐:55件<6件>/39件<0件>
(ト)テロ:20件<1件>/32件<3件>
(2)主な事件
(イ)3日、ウリベ大統領は麻薬組織カリ・カルテルの首領ヒルベルト・ロドリゲスの米国への引渡を承認し、同日中にマイアミへと移送された。なお、カリ・カルテルは1980年代及び90年代に世界最大のコカイン取引を行っていた。
(ロ)16日、最高裁判所がIRAメンバーと思しき3人のアイルランド人に対し、カグアンにおいて爆発物の取り扱い方をFARCメンバーに教授していた罪で懲役17年の刑を言い渡した。3人は2001年8月11日に逮捕されたが、2004年4月26日、FARCに対する訓練の容疑については証拠不十分として偽造公文書行使のみにより有罪とされており、同年6月に保釈されていた。
(ハ)サッカーの欧州・南米王者を決めるトヨタ・カップ(於:横浜)に南米代表として出場したコロンビアのクラブ・チーム、オンセ・カルダスのモントーヤ元監督が22日、強盗に銃撃され、全身麻痺の重体となった。
(ニ)31日、アラウカ県タメ地域の農村において、FARCとみられる武装集団が子供4人と女性6人を含む17人を虐殺した。
4.外交
(1)対コロンビア支援
(イ)米国
10日、ブッシュ大統領が署名した「2005年における米国の外国での作戦のための法律」において、コロンビアにおける「和平のイニシアティブ」と武装解除プロセスを支援するための325万ドルの支出が承認された。しかし、「パラ」のように米国がテロ組織と認定しているグループに対する支援は法律により禁止されているため、「パラ」との和平プロセスに対する支援は間接的に行われるが、より直接的な支援は司法省の判断による。
(ロ)EU
13日、EU25ヶ国の外相は、パラミリタリーの他、政府と交渉することを決めた非合法武装勢力との和平プロセスを政治・経済的に支援する用意があることを表明した。しかし、支援開始に際し、非合法武装勢力の武器の放棄、武装解除、国際社会が納得し得る社会復帰プロセスのための法的枠組みを早急に採用することをコロンビア側に求めた。
(2)7日、ウリベ大統領は、クスコで開催されたアンデス共同体首脳会合に出席し、8日から9日には同じくクスコで開かれた南米サミットに出席した。
(3)16日から17日、バルコ外相はアンデス共同体-メルコスール会合(於:ブラジル)に出席した。
5.今後の予定
(1)2月3日、4日 対コロンビア国際協力・調整会合(於:カルタヘナ)