コロンビア内政・外交状況(2月分)

 

Ⅰ.概要

内政:非合法武装勢力構成員の武装放棄者に対する法的枠組み策定に関し、政府法案と国会議員法案の統一に向けた調整が失敗した他、政府内部ではプレテル内務・法務大臣とレストレポ和平高等弁務官の確執が表面化した。FARCは南部において攻撃を一時活発化させる一方で、人道的人質交換交渉について、これまでと同様に南部2村の非軍事化と「ソニア」を始めとする収監中のFARC構成員の解放を求めた。

外交:対コロンビア国際協力・調整会合が3日、カルタヘナで開催され、対コロンビア支援の継続が表明されたほか、現在、進行中のパラミリタリーの武装放棄に対して早期に法的枠組みを策定するよう要望が出された。要人の往来では、15日にウリベ大統領がベネズエラを訪問してチャベス大統領と会談した他、20日にはロドリゲス・ベネズエラ外相、21日にはジェブ・ブッシュ米国フロリダ州知事がコロンビアを訪問した。

 

Ⅱ.内政

1.非合法武装勢力(特にパラミリタリー)の武装放棄者に対する法的枠組み策定

(1)政府法案と議員法案

 本件に関して政府による法案と国会議員グループによる法案を統一するための調整が試みられたが最終的に合意に至らず、3日、政府及び議員グループはそれぞれの法案を公表した。政府案と議員案では、特に以下の3点で異なる。

(イ)最短刑期:議員案は非恩赦対象者の刑期は5年以下にならないようにしているのに対し、政府案では減刑によって5年以下もあり得るとしている。

(ロ)自白の取り扱い:議員案は、自白が十分でない場合は、本法律によって受ける恩恵を喪失するとしている。

(ハ)犠牲者への補償:政府は、犠牲者の補償は新たに犠牲者のための機関を設置するのではなく、既存の政府機関が対処するとしている。

(2)政府内の確執

(イ)10日に和平プロセスにおける「和解」の重要性に鑑みて本件に関する特別法廷設置を提案したサントス副大統領とレストレポ和平高等弁務官は、プレテル内務・法務大臣による法案が和平プロセスに資するものではないとして、右意見の相違を乗り越えるための会合を13日、同大臣と持った。

(ロ)14日、サントス副大統領、プレテル内務・法務大臣、レストレポ和平高等弁務官はウリベ大統領の要請に基づき、統一した立場をとることで合意し、プレテル大臣による法案が政府による唯一の法案として国会に提出されることとなった。

(ハ)しかし、レストレポ和平高等弁務官は、非合法勢力に厳しい処罰を求めるプレテル内務・法務大臣の考え方に基づいた法案では、和平プロセスの推進は困難と考え、15日に辞任を表明した。16日、ウリベ大統領は同弁務官の慰留に努め、今後も同法案策定に関与することでレストレポ和平高等弁務官は辞任を撤回した。

(3)法案の行方

(イ)15日に召集された特別国会では、手続き上の理由から法案の審議が15日後に開始されることとなった。

(ロ)18日、ウリベ大統領はプレテル内務・法務大臣、サントス副大統領、レストレポ和平高等弁務官始め、多数の国会議員を大統領府に招き、本件法案に関する見解の相違を解消し、政府の立場を定めるための議論を行った。

(ハ)23日、ウリベ大統領は、「パラ」が本件法案を批判して和平プロセスからの離脱を示唆していることを強く批判した。これを受けて「パラ」はプロセスからは離脱しないが、法案審議に参加する権利がある旨繰り返した。

 

2.非合法武装勢力

(1)ELN

(イ)レストレポ和平高等弁務官は19日付エル・ティエンポ紙にELNとの和平交渉に関するコラムを掲載し、ELN指導部が和平プロセスの一環としてメキシコを訪問することに関しガランELN代表、メキシコ及びコロンビア政府の間で統一した提案を行うことになっていたが、土壇場で紛糾したことを明らかにした。

(ロ)19日付エル・ティエンポ紙は、18日に交渉促進者のバレンシア大使がレストレポ和平高等弁務官と会談して交渉促進者としての職務継続を表明した他、メキシコ外務省もその交渉促進者としての役割を確認し、バレンシア大使の辞任を否定したことを報じた。

(2)パラミリタリー

(イ)2日、モハナ・ブロックの110人がスクレ県のグアランダ村にて武装放棄した。

(ロ)2日、AUCのスポークスマン「エルネスト・バエス」は、AUC指導者で既に武装放棄しているマンクーソが市民社会に復帰したことから、サンタ・フェ・デ・ラリートにおける政府との交渉における「パラ」の代表でなくなることを公表した。後任には「ラモン・イササ」が就任した。

(3)FARC

(イ)攻撃の活発化

(a)1日未明、ナリーニョ県イスクアンデ村の国軍基地に対してFARCが攻撃を行い、15名が死亡、25名が負傷した。これはウリベ政権下において1回の攻撃で国軍が受けた被害としては最大のものであった。

(b)2日にはプトゥマヨ県の地雷埋設地帯で8人の兵士と1人の民間人が死亡、メタ県ではFARCとの戦闘で4人の兵士が死亡した。

(c)8日夜、ウラバ地域で先住民共同体の警備をしていた30人の国軍兵士がFARCと交戦し、17人が死亡、8人が行方不明となった。11人のゲリラも死亡した。

(d)20日、メタ県でホテルが爆破されて5人が死亡、17人が負傷した。また、同日、カリ市のRCNラジオ局前で車爆弾が爆発した他、アンティオキア県東部では地雷埋設地帯で4人の兵士が死亡した。 

(ロ)人道的人質交換

 25日、FARCは人道的人質交換に関するコミュニケを発出し、これまで同様、バジェ・デル・カウカ県のパラデラ及びフロリダ2村の非軍事化及び「シモン・トリニダッド」、「リカルド・ゴンサレス(「グランダ」)、「ソニア」を含む全てのゲリラの解放を条件に、交換可能な人質を引き渡すと主張した。

(ハ)米国への引渡

 25日、ウリベ大統領及びプレテル内務・法務大臣は、収監中のFARC幹部「ソニア」の米国への引渡を承認した(当館注:39日、米国に引き渡された)。「ソニア」はFARC南部ブロックの財政担当として、国際麻薬取引ネットワークに関与したことで起訴されている。

(ニ)23日、エクアドルにおいて戦闘による負傷治療を受けていたFARC構成員8名が、エクアドル人協力者と共にエクアドル当局に逮捕された。

(ホ)19日、ベネズエラの誘拐被害者の救出作戦を通じFARC16戦線の「チグイロ」が逮捕された。現在、米国及びコロンビア政府が身柄の引渡を申請している。

 

3.麻薬マフィア

 13日付エル・ティエンポ紙は、米国から引渡要請が為されているバジェ県及びアンティオキア県の14人の麻薬マフィアが、米国での刑罰を10年以下とすることを条件にFARCリーダーの所在地特定に繋がる情報提供を行うとの提案をしたことを報じた。麻薬マフィアは「パラ」に紛れて和平交渉に入り込むことができなくなったために、情報提供者ネットワーク制度(テロに関する情報提供の見返りに報酬を受け取る)に入り込もうとしていると考える政府高官もいる。

 14日には、情報機関及び麻薬マフィアに近い情報筋が、130億ペソの懸賞金が掛けられている麻薬マフィアの「ドン・ディエゴ」も司法手続きに入る交渉をする用意があるとの書簡を発出したことを確認した。

 

 

Ⅲ.治安等

1.統計(<>内はボゴタ市。斜線右側は先月統計。)

(1)殺人:1284件<129件>/1448件<135件>

(2)集団殺人:313人<00人>/5件23人<0件0人>

(3)脅迫:32件<4件>/39件<3件>

(4)窃盗・強盗:3854件<1036件>/3930件<1246件>

(5)自動車盗難:1460件<488件>/1340件<478件>

(6)幹線道路での車上強盗:77件<29件>/59件<21件>

(7)誘拐:46件<2件>/32件<0件>

(8)テロ:48件<2件>/43件<0件>

 

2.主な事件

(1)アスンシオンにおける20049月のラウル・クーバス元パラグアイ大統領の令嬢セシリア・クーバス誘拐事件に関し、15日付エル・ティエンポ紙等は、200412月にベネズエラで拘束されたFARC幹部グランダが本件に関与していた旨報じた(その後、16日にセシリア・クーバスの遺体が発見された)。

(2)97年に「平和の共同体」を宣言して紛争に関して中立を主張していたサンホセ・デ・アパルタド村で、21日から22日にかけて、8人が拷問を受けた上で殺害された。「パラ」若しくはFARCによる犯行とされるものの詳細は不明であるが、国軍が黙認していたとの見方もあり、論議を呼んでいる。

 

 

Ⅳ.外交

1.対コロンビア国際協力・調整会合(於:カルタヘナ)

 3日、ロンドン支援国準備会合(20037月に開催)のフォローアップとして、国際社会の援助を調整することを目的とした会合が開催された。G24 を始めとするドナー諸国及び国連、IDB、世銀等の国際機関等からなる代表団は、ウリベ政権が治安対策、パラミリタリーの武装解除、社会開発等において成果を挙げていると評価し、16項目からなるカルタヘナ宣言を採択し、国際社会は引き続きコロンビアに対する支援を行うことを確認した。

2.7日、ブッシュ米国大統領は「次期プラン・コロンビア」のために約7億ドルの2005年度予算を議会に求めた。予算は、軍や警察への後方支援、麻薬対策、合法作物導入による経済開発など多様な分野に振り分けられている。

3.要人往来

(1)3日、ウリベ大統領は昨年のFARC幹部「グランダ」拘束によって生じたコロンビア・ベネズエラ間の軋轢解消のため、ベネズエラのチャベス大統領を訪問することとしていたが、体調不良により15日に変更された。同じく、5日から予定されていたスペイン、フランス、ベルギーへの訪問も延期された。

(2)15日、ウリベ大統領はバルコ外相と共にカラカスを訪問して、チャベス・ベネズエラ大統領と会談した。1月以来のコロンビア・ベネズエラ間の軋轢解消が両首脳の間で合意され、テロや麻薬対策における二国間の協力、共同プロジェクトの継続等が確認された。

(3)20日、ロドリゲス・ベネズエラ外相は、15日のウリベ大統領とチャベス「ベ」大統領の会談における合意事項の履行促進を目的として当国を訪問し、二国間の商業活動の促進、国境地域のインフラ整備等について合意した他、今後の二国間の各種技術委員会等の開催日程等も発表した。

(4)21日、ブッシュ米国大統領の弟、ジェブ・ブッシュ・フロリダ州知事が190人の企業家と共に、保険、航空、銀行、交通、ホテル等の分野における投資拡大を目的としてコロンビアを訪問した。同日の会合にはウリベ大統領も参加した。

 

 

Ⅴ.今後の予定

1.4月上旬~中旬:ウリベ大統領、バルコ外相他の訪中・訪日等。

2.5月:南米・アラブ連盟サミット(於:ブラジル)