コロンビア内政・外交状況(3月分)
Ⅰ.概要
内政:武装放棄者の処遇に関する法案の国会審議が、パラミリタリー・リーダーによる干渉を受けながらも進められた。非合法武装勢力に関しては、政府とELNの直接交渉がメキシコで開催される旨レストレポ和平高等弁務官が発表した。また、FARC幹部の「ソニア」が対米引き渡しされた他、FARCはエクアドルにおけるFARC構成員の逮捕に関してエクアドルのグティエレス大統領を非難する声明を発した。オルギン国連大使は、有力政治家の子息の外交官への採用に反対し、辞任を表明したが、大統領は右を受理しなかった。また、世論調査によるとウリベ大統領の支持率は72%であった。
外交:ウリベ大統領がベネズエラで開催されたベネズエラ、スペイン、ブラジル、コロンビアの4カ国首脳会談に出席した他、ドゥアルテ・パラグアイ大統領、サパテロ西首相がコロンビアを訪問した。
Ⅱ.内政
1.内政一般
(1)非合法武装勢力(特にパラミリタリー)の武装放棄者に対する法的枠組み策定
(イ)国会での動き
2月15日に召集された特別国会に提出された法案の審議が、上院・下院合同第一委員会で行われた(当館注:同法案は4月12日に上院・下院合同第一委員会を通過し、今後、上院本会議、下院本会議で審議、採決が行われる)。各条項毎に審議、採決が行われたが、特に「パラ」の麻薬取引が政治犯罪にあたるか否かを巡って、「パラ」に対して厳格な処罰を求める議員と和平プロセスの進展を重視する議員及び政府との間で審議がしばしば紛糾した。
(ロ)「パラ」の動き
「パラ」リーダーは、本法案が現状のままであれば廃案となることを望んでいることを国会議員を通じて明らかにした他、コミュニケを通じて法案審議停止を提案したり、「パラ」が国会での審議に参加することを求めたりしたが、15日、国会は「パラ」の提案を拒否し、各条項の審議及び採決の手続きに入った。そのため、16日には「パラ」リーダーの「エルネスト・バエス」が、法案の行方を決めるのは国民であるべきだとして国民投票の実施を提案した。
「パラ」の本法案に対する要求は、「パラ」リーダーの発言及びコミュニケから次の3点であるとされている。
(a)対米引渡をしないことを明記すること。
(b)「パラ」として活動中の麻薬取引を政治犯罪とみなすこと。
(c)刑期の減刑と学業や労働で補完することの承認。
(ハ)レストレポ和平高等弁務官の発言
武装放棄者に対する法的枠組み策定に関し、「パラ」との間に密約があったのではないかとの疑惑が取り沙汰され、マヤ行政監督庁長官から説明を求められたが、「パラ」との間には公表されている以外の合意は存在していない旨述べた。
(ニ)カトリック教会、経済団体、NGOの反応
18日、カトリック教会、経済団体、NGOは、本法案に盛り込まれるべき12の項目を発表した。その中には、(a)如何なる理由があっても本法案の対象者(武装放棄者)が政治に関与することを認めないこと、(b)武装放棄は組織の解体を目的として推進されること、(c)非合法に取得された財産により犠牲者の総合的救済がされなければならないことなどが含まれている。
(2)世論調査
17日付エル・ティエンポ紙は、ウリベ大統領の支持率、パラミリタリーとの和平プロセス等に関する世論調査結果(インバメール・ギャロップ社)を掲載した。概要は次の通り。
(イ)ウリベ大統領の支持率:72%(2004年12月、74%)
(ロ)ウリベ大統領の「パラ」との交渉手腕の評価:63%(同、73%)
(ハ)「パラ」との交渉の支持:74%
(ニ)経済手腕の支持:50%(同、50%)
(ホ)ウリベ大統領の再選支持:67%(同、70%)
(3)オルギン国連大使の辞任表明
(イ)9日、ウリベ大統領の協力者の一人とされるマリア・アンヘラ・オルギン国連大使は、政府が有力政治家の子息を外交官として重用していることに異議を唱え、辞任を表明した。オルギン大使はウリベ政権下で外務大臣に任命されると目されていたが、駐ベネズエラ大使を経て、2004年8月より現職にある。
(ロ)17日、ウリベ大統領は、今後、国会議員の子息及び親戚を外交官に任命しない旨表明した。また、オルギン大使の辞表は受理されず、同職を継続することが明らかになった。なお、国連代表部に勤務していたグスタボ・ダジェール元上院議長の子息は在ロンドン総領事館に転出、カルロス・オルギン・サルディ保守党党首の子息は駐エクアドル大使に任命された。
2.非合法武装勢力
(1)FARC
(イ)FARC国際委員会は、「エクアドルの兄弟人民へ」と題した6日付コミュニケを通じ、エクアドル当局が医療処置を受けていたFARC構成員7人を2月に逮捕したことを批判した。同コミュニケにおいてFARCは、合意に基づいてエクアドルの主権を尊重し、同国に対して侵略を行わなかった故、エクアドルにも同様の措置を求めると主張している。
(ロ)9日、収監中のFARC第14戦線財政担当「ソニア(ナイベ・ロハス・バルデラマ)」が、コカイン密輸に関する罪状による出廷のため、米国へと引き渡された。同人は2003年12月18日に米国連邦地裁により起訴され、2004年2月9日にカケタ県において逮捕された。「ソニア」は国際麻薬取引ネットワークに関与し、FARC南部ブロックの資金を増大させたことで知られる。
(2)ELN
(イ)28日、レストレポ和平高等弁務官はELNとの和平プロセスに関するコミュニケを発した。その中で、コロンビア政府はこれまでのメキシコによる交渉促進を効果的として評価し、和平プロセスに向けた歩みを継続していくと述べていた他、国際社会の関与を呼びかけた。また、記者会見において同和平高等弁務官は、政府とELNの会合がメキシコで開催されるだろうと述べた。
(ロ)ELNは、29日のコロンビア、ブラジル、ベネズエラ、スペインの4ヶ国首脳会談(於:ベネズエラ)に合わせて、ブラジル、ベネズエラ、スペインの各国首脳に書簡を送ったことがエル・ティエンポ紙により報じられた。その書簡において、ELNはテロリズムと麻薬密輸を拒絶するとした他、和平プロセスに国際社会が関与することを求めた。
他方、同会談においてウリベ大統領はELNとの交渉内容を暴露してしまったため、レストレポ和平高等弁務官が急遽、釈明のための記者会見を開き、また、イタグイ刑務所に収監中のガランELN代表に対しても直接説明した。
3.麻薬組織
(1)11日、カリ・カルテル首領のミゲル・ロドリゲス・オレフエラが麻薬取引、資金洗浄及び裁判妨害の共犯の罪状による出廷のため、米国へと引き渡された。同じくカリ・カルテル首領であった実兄ヒルベルトは2004年12月3日に米国に引き渡されている。
Ⅲ.治安等
1.統計(<>内はボゴタ市。斜線右側は先月統計。)
(1)殺人:1382件<157件>/1284件<129件>
(2)集団殺人:4件23人<0件0人>/3件13人<0件0人>
(3)脅迫:49件<4件>/32件<4件>
(4)窃盗・強盗:3894件<1121件>/3854件<1036件>
(5)自動車盗難:1503件<508件>/1460件<488件>
(6)幹線道路での車上強盗:61件<24件>/77件<29件>
(7)誘拐:35件<0件>/46件<2件>
(8)テロ:55件<2件>/48件<2件>
2.主な事件
(1)2002年8月に27人の死者を出したウリベ大統領の就任式典に対するロケット攻撃に関し、ボゴタの裁判所はFARCのゲリラ6人に対して懲役26~40年を宣告した。
(2)スクレ県で8日から続いていたFARCとの交戦において、11日までに13人のゲリラと6人の国軍兵士が死亡した。
(3)18日、カルダス県の下院議員オスカル・ゴンサレスがマニサレス市で暗殺された。犯行がFARCによるものかパラミリタリーによるものか見方が分かれているが、ここ3年間に同議員の兄弟2人がFARCによって暗殺されている。
(4)25日、大統領府治安局(DAS)、海軍、海兵隊、沿岸警備隊は、コロンビア南部ナリーニョ県で少なくとも10トンのコカインを米国に密輸しようとしていた潜水艦を発見、押収した。
(5)23日、コロンビア南部ナリーニョ県及びプトゥマヨ県においてFARCの攻撃により11人の国軍兵士が死亡した。
Ⅳ.外交
(1)6日から7日の日程で当国を訪問したドゥアルテ・パラグアイ大統領は、ウリベ大統領との首脳会談後、共同声明を発出した。その中で、両国は組織犯罪、特に誘拐を非難し、関係当局の連携強化の必要性を強調した。また、セシリア・クーバス・グシンスキー(元パラグアイ大統領令嬢)の殺害を非難し、ウリベ大統領は「パ」大統領に対してコロンビア当局の協力を申し出た。
(2)13日、ウリベ大統領はパナマを訪問して、トリホス大統領と会談し、自由貿易協定、プエブラ・パナマ計画、エネルギー統合等に関する共同声明を発出した。
(2)29日、ウリベ大統領はベネズエラのグアヤナで開催されたベネズエラ、ブラジル、スペイン、コロンビアの4ヶ国首脳会談に参加した。安全保障や地域統合等について協議がなされ、共同宣言が採択された。
(3)30日~31日にサパテロ西首相がコロンビアを訪問し、二重課税防止協定及び投資保護協定の他、空港建設と水力発電所建設のプロジェクトに関する協定に署名した。また、スペインのベネズエラに対する武器販売に関し、サパテロ西首相は本件取引が麻薬取引、組織犯罪、テロの対策及び警備強化のためであることを強調し、ウリベ大統領は武器がテロリストの手に渡らないようにするために、武器取引が合法市場で行われることが重要であると述べた。
Ⅴ.今後の予定
1.4月上旬:ウリベ大統領のIDB沖縄総会出席並びに日本及び中国訪問
2.4月19日:南米共同体に関する外相級準備会合(於:ブラジリア)
3.4月下旬:ライス米国務長官のコロンビア訪問
4.5月2日 OAS事務総長選挙
5.5月10~11日:南米・アラブ連盟サミット(於:ブラジル)
6.6月5~7日:第15回OAS総会(於:米国)