コロンビア内政・外交等定期報告(1月)
Ⅰ.概要
●内政:3月12日の国会議員選挙に向け、各政党とも候補者名簿の作成を巡って活発に動いた。また、ウリベ派政党にパラミリタリーと関係する議員候補がいるとのスキャンダルが生じた後、ウリベ派議員及びウリベ大統領は自由党のラファエル・パルド上院議員がFARCと関係があると告発したが、その後、証拠を明かせないとの理由で告発を撤回し謝罪した。非合法武装集団に関しては、パラミリタリーの武装放棄プロセスが着実に進展した。
●外交: FARCとの戦闘に際し、コロンビア空軍機がエクアドルの領空を侵犯したとして、エクアドルとの間に軋轢が生じた。要人往来では、ウリベ大統領がグアテマラ及びエルサルバドルを訪問した他、ブラジ仏外相がコロンビアを訪問した。
Ⅱ.内政
1.内政一般
(1)国会議員選挙(3月)及び大統領選挙(5月)に向けた政党の動向
(イ)ウリベ大統領
16日、国民登録局はウリベ大統領がプリメロ・コロンビア党から出馬するために集められた署名が必要数に達したことを承認した。これによりウリベ大統領は大統領候補者としての登録を行えることとなった(注:3月1日、ウリベ大統領は国民登録局にてプリメロ・コロンビア党の大統領候補者としての登録を行った)。
(ロ)自由党
11日、ガビリア自由党党首は、セシリア・ロペス自由党大統領党内予備選候補(元環境相)に対し、自由党の上院議員候補者名簿の筆頭候補となることを提案。翌12日、セシリア・ロペスは本提案を受諾し、大統領候補を辞退した。これにより、自由党の大統領候補選出のための党内投票(3月12日)にはオラシオ・セルパ前大統領候補、ラファエル・パルド上院議員、アンドレス・ゴンサレス上院議員、ロドリーゴ・リベラ上院議員の4人が出馬することとなった。
(ハ)PDA党(ポロ・デモクラティコ・アルテルナティーボ党。国内最大の左派政党)
左派PDA党の上院議員候補者名簿の筆頭候補を巡り、マリア・エンマ・メヒア元外相を推すガルソン・ボゴタ市長と自ら名乗りを挙げたグスタボ・ペトロ下院議員との間の確執が伝えられてきたが、23日、メヒア元外相はPDA党の分裂を回避するために国会議員選挙への立候補を断念した。これにより、ペトロ下院議員が筆頭候補となった。
(ニ)アラス・エキーポ・コロンビア党の誕生
11日、アルバロ・アラウホ上院議員率いるウリベ派政党のアラス党は、ルイス・アルフレッド・ラモス上院議員率いる同じくウリベ派政党のエキーポ・コロンビア党と正式に統一し、アラス・エキーポ・コロンビア党が誕生した。
(ホ)パラミリタリーと関連があるとされる議員を巡るスキャンダル
ガビリア自由党党首はウリベ派政党に対する「パラ」の浸透を批判してきたが、15日、ウリベ派のヘルマン・バルガス上院議員(急進改革党)及びファン・マヌエル・サントス元蔵相(全国統一社会党)によりウリベ派政党からの立候補を請われていたジーナ・パロディ下院議員は、ウリベ派政党が「パラ」と関係するとされる議員候補者を排除しない限りは合流しないと表明。
これを契機としてウリベ派政党内の「パラ」関係議員候補者が問題視され、17日、ヘルマン・バルガス上院議員及びサントス元蔵相は「パラ」と繋がりがあるとされる5議員をウリベ派政党の候補者名簿から排除した。その後、この5議員はコロンビア・ビバ党を創設し、国会議員選挙に立候補した。パロディ下院議員は5議員の排除を受けて26日に全国統一社会党の筆頭候補として上院選に出馬することを表明した。
(ヘ)ラファエル・パルド上院議員に対するFARCとの関係疑惑
17日、ファン・マヌエル・サントス元蔵相は、自由党のパルド議員がFARCとの間で反ウリベ行動を共に起こすことを計画していると告発し、これを受けて18日、大統領府は政府がその証拠を持っており、いずれ検察に引き渡すとのコミュニケを発し、19日にはレストレポ和平高等弁務官も本件を認める内容の発言を行った。
これに対して、パルド議員を始め自由党関係者がその証拠(証人)の公表を迫っていたところ、22日、ボリビア大統領の就任式典に出席していたウリベ大統領は、本件が和平という極めてハイレベルな政治問題と関連しているため証拠を明らかにすることはできないとの理由で上記発言等を取り下げ、パルド議員に謝罪した。
(2)「公正・和平」法
憲法裁判所は、「公正・和平」法の合憲性が認められるまで同法の適用を停止すべきであるとの市民からの訴えに応じ、16日より同法に関する審理を開始すると表明した。
(3)人事
マリア・コンスエロ・アラウホ文化大臣の辞任を受け、24日、ウリベ大統領は後任にエルビラ・クエルボ・デ・ハラミージョ文化次官を任命し、25日、同大臣に就任した。アラウホ前大臣は、実弟のアルバロ・アラウホ上院議員の国会議員選挙(3月12日)立候補に際し、三親等以内の親族が公職に就いている者が国会議員になることを禁じる憲法第179条に抵触しないように文化大臣を辞任した。
(4)麻薬対策
19日、予定より1日早くマカレナ国立公園で違法に栽培されている4,568ヘクタールのコカの除去が開始された。1500人の護衛により900人の作業者が120日間従事する予定。
2.非合法武装勢力
(1)パラミリタリーの武装放棄
(イ)20日、鉱山労働者ブロックの2790人が武装放棄した。
(ロ)28日、ボヤカ県のプエルト・ボヤカ農民自警団の742人が武装放棄した。
(ハ)31日、ボリバル県南部のボリバル中央ブロックの2523人が武装放棄した。
(2)ELN
(イ)ELNとコロンビア政府の対話プロセス
11日、政府とELNの第2回直接対話が、ロジ面の理由により2月に延期される旨のレストレポ和平高等弁務官及びフランシスコ・ガランELN書記局コミッショナーによる共同コミュニケが発出された。第1回会合は12月16日~21日までハバナにおいて開催され、その際、第2回会合が1月末に行われることで合意されていた。
(ロ)ELN司令官の逮捕
4日、カルロス・アリリオ・ブイトラゴ戦線の司令官の一人、ジョバンニ・ヒラルド・カルバハル(「ジェイソン」、「ラモン」)は、自らが製造、埋設した地雷により負傷したことを契機に逮捕された。同人はELNにとってアンティオキア県の最重要人物の一人であり、本逮捕によりELNの弱体化が加速されると報じられた。
(3)FARC
(イ)FARCの地雷
20日、サントス副大統領はプレス・リリースを通じ、FARCが埋設した地雷によりメタ県が緊急事態にあると表明した。同県では12日から20日の間にFARCの地雷により6人の市民と2人の軍人が被害を受け、4人が死亡、4人が重傷を負った。
(ロ)誘拐されているバジェ県議会議員の政治亡命申請
21日、2002年にFARCによって誘拐された12人のバジェ県議会議員のうち3人がベネズエラに対して政治亡命を求めるビデオが公開された。また、同県議会議員は人道的人質交換に関する国民投票を実施することも提案した。ウリベ大統領及びチャベス・ベネズエラ大統領はこれを支持する旨表明したが、これら提案の意図については不明のままである。
(ハ)「シモン・トリニダッド」の裁判
24日、米ワシントンで行われたFARC幹部「シモン・トリニダッド」に対する裁判において、2003年2月に飛行機の墜落によりFARCに誘拐された3人の米国人に関し、米政府当局は同航空機がゲリラにより撃墜されたことを初めて認めた。これまで米政府は技術的トラブルにより不時着したものとしていた。
Ⅲ.治安等
1.統計(<>内はボゴタ市。斜線右側は先月統計。)
(1)殺人:1399件<103件>/1576件<156件>
(2)集団殺人:3件13人<0件0人>/3件13人<2件9人>
(3)脅迫:23件<2件>/47件<5件>
(4)窃盗・強盗:5602件<1449件>/6010件<1958件>
(5)自動車盗難:1399件<378件>/1349件<309件>
(6)誘拐:22件<2件>/30件<0件>
(7)テロ:50件<2件>/54件<0件>
2.主な事件
(1)送電塔に対する破壊活動
6日、2005年には227基の送電塔が爆破され、2004年の121基に比し87%増となったと報じられた。月毎に見ると、憲法裁判所が大統領再選憲法改正法を承認した後の11月、12月には38基が破壊されている。地域ではバジェ県、アンティオキア県、プトゥマヨ県、ナリーニョ県、カウカ県で特に多くなっている。
(2)殺人率
6日、監察医務院は2005年報告書を発表し、昨年、コロンビアにおいて1万4503人の殺人(交通事故死を除く)があったことを報告した。しかし、警察犯罪捜査センターの最新の報告書では1万8096人となっており、両者の間で数値は大きく異なっている。警察は、監察医務院の数値がコロンビア全土をカバーしていないのではないかと疑問を呈している。
(3)武器・麻薬の密輸ネットワークの摘発
治安当局の調査により、FARC第58戦線のゲリラ、麻薬組織、一般犯罪者及び一部国軍関係者による武器・麻薬の密輸に関するネットワークがあることが判明した。これにより、当局は昨年10月及び11月に2人の下士官を含む7人を逮捕した。ゲリラが麻薬を調達し、メデジン市で武器と交換し、麻薬組織がその販売、流通を行っていた。一般犯罪者はそれを保管、輸送する役目を果たし、軍人が闇市場での武器、弾薬の購入のための橋渡しを行っていた。
(4)FARCの爆薬貯蔵庫の摘発
9日、陸軍及び海軍は、バジェ県ブエナベントゥーラ郊外のジャングル地帯において爆薬貯蔵のための地下施設を発見した。貯蔵されていた2トンのアンフォ爆薬と375キロの高性能爆薬は、通常規模の都市の3地区を破壊するのに十分な量であった。
(5)旅券偽造グループの逮捕
26日、国家検察庁と大統領治安局(DAS)は米国の関係機関の協力の下、国内各地で旅券偽造グループに対する一斉捜索を行い19名の容疑者を逮捕した。容疑者にはDAS職員3名、国民登録局職員1名及び外国人も含まれている。数名の容疑者は「アルカイーダ」及び「ハマス」との関係が疑われている。
Ⅳ.外交
1.要人往来
(1)パラシオ・エクアドル大統領のコロンビア訪問
15日、パラシオ・エクアドル大統領はコロンビアを訪問し、対米FTAにつきウリベ大統領と会談した。
(2)ウリベ大統領のグアテマラ訪問
18日~19日、ウリベ大統領はバルコ外相と共にグアテマラを訪問し、麻薬対策、エネルギー分野における協力等につきベルシェ・グアテマラ大統領と会合をもった。
(3)ウリベ大統領のエルサルバドル訪問
19日、ウリベ大統領はバルコ外相と共にエルサルバドルを訪問し、エネルギー分野における協力、小型武器密輸問題等につきサカ・エルサルバドル大統領と会談した。
(4)ブラジ仏外相のコロンビア訪問
26日、ブラジ仏外相はコロンビアを訪問し、FARCとの人道的人質交換交渉提案等につき会談した。
2.エクアドルとの領空侵犯を巡る軋轢
30日、エクアドル政府は、28日にコロンビア空軍のヘリコプター及び偵察機がエクアドルとの国境地帯においてFARCと交戦し、その際にエクアドルの領空を侵犯した上、エクアドル領域に対して攻撃を行ったとの抗議文書をコロンビア政府に発出した。
31日、レジェス筆頭外務次官は、二国間国境委員会及び本件調査の結果を待ってエクアドルに回答する旨述べた。その後、当国外務省は2日付当地エクアドル大使館宛口上書を公表し、コロンビア空軍機がFARC部隊を攻撃している間に過ってエクアドルの領空を侵犯したことを認めた。