コロンビア内政・外交等定期報告(2月)
Ⅰ.概要
内政:ウリベ大統領は3月12日の国会議員選挙を前に、6政党を「ウリベ派政党」と認めた。ELNとコロンビア政府の第2回直接対話がハバナで開催され、ELN代表者に政治的地位が付与された。FARCはコロンビア南部及び東部において武力封鎖を宣言し、車輌の放火等により移動の妨害をした他、市議会議員9人を殺害した。
外交:1月28日のコロンビア空軍によるエクアドル領空侵犯に端を発した両国の軋轢は、コロンビア政府の謝罪によりひとまずの解決をみた。米ブッシュ政権は、対コロンビア経済・軍事支援パッケージとして556.7百万ドルの予算を議会に提出した。
Ⅱ.内政
1.国会議員選挙関係
(1)パラミリタリーとの関連疑惑議員候補の除名
2日、ウリベ派のコロンビア民主党党首マリオ・ウリベは、同党から3月12日の国会議員選挙(上院)に出馬予定で、「パラ」との繋がりが深いとされるロシオ・アリアス下院議員及びエレオノラ・ピネダ下院議員を同党から除名した。本件に関しては、米国務省及び在コロンビア米国大使館が圧力をかけたと噂されたが、マリオ・ウリベは両議員除名の理由については説明しなかった(注:ロシオ・アリアスは「モレノを支持する」政党、エレオノラ・ピネダは市民集結党からそれぞれ上院選に出馬したが、両者共に落選した)。
(2)ブルム上院議長の次期選挙不出馬表明
6日、ウリベ派「急進改革党」のクラウディア・ブルム上院議長は、3月の国会議員選挙に出馬しない旨表明した。任期切れの後はカリ市長選或いはバジェ県知事選に出馬するとの見方、駐米大使、外務大臣を希望しているとの見方が出ている。
(3)ウリベ派政党の認定
16日、ウリベ大統領は、国会議員選挙を前に、保守党、全国統一社会党(U党)、急進改革党、アラス・エキーポ・コロンビア党、コロンビア民主党、「理想の国家のために」党が開催するフォーラムに出席すること等を表明し、事実上、これら6政党を「ウリベ派政党」と認めた。
2.非合法武装勢力
(1)パラミリタリーの武装放棄プロセス
(イ)タイロナ抵抗ブロックの武装放棄
3日、シエラネバダ・デ・サンタマルタにおいて、「パラ」リーダーのエルナン・ヒラルド及びタイロナ抵抗ブロックの1166人が武装放棄した。同ブロック構成員は以前150人(2004年の国軍の報告書)であったため、武装放棄による恩恵を得るために「パラ」に成り済ましている者が多数いるのではないかと報じられた。
(ロ)「パラ」リーダーのラモン・イササの武装放棄
7日、アンティオキア県プエルト・トゥリウンフォにおいて、「パラ」リーダーのラモン・イササが配下の989人と共に武装放棄した。
(ハ)3ブロックの武装放棄
15日、カケタ県バルバライソ市において、「パラ」の3ブロックの合計552人が武装放棄した。
(2)ELNとコロンビア政府の直接対話
17日から27日まで、ハバナにおいて第2回直接対話が開催された。今次会合において、コロンビア政府はELNの代表者に対して政治的地位を与え、これにより同代表者は当局の拘束を恐れずにコロンビア国内を移動することが可能となった。また、次回会合が4月にハバナで開催されることが決定されたが、具体的な和平プロセスの枠組み及び日程に関する進展はなかった(注:その後、5月に開催されることとなった)。
(3)FARC
(イ)武力封鎖
16日、FARCはコロンビア南部及び東部の6県における武力封鎖を宣言し、カケタ県、プトゥマヨ県、メタ県等で陸路及び水路による移動が困難となった。FARCはカケタ県で18日~19日の2日の間に10台の車輌を放火したほか、プトゥマヨ県でも8台のバスが炎上した。25日にはカケタ県をバスで移動していた市民が襲撃され、9人が死亡した。
(ロ)政治的人質の死亡
15日、共産党機関誌「VOZ」は、FARCからの情報として、1998年のFARCによるバウペス県ミトゥ市(県都)占拠の際に誘拐された警察官(少佐)が3週間前に死亡したことを明らかにした。これにより、FARCの手中にある政治的人質のうち解放されないまま死亡した人数は20人となった。
3.マカレナ国立公園におけるコカ伐採
(1)FARCによる最初の攻撃
1月19日、マカレナ国立公園のコカの伐採が929人の伐採者により開始された。2月6日、コカ伐採者及び警察官が伐採地点に移動中、FARCの待ち伏せ攻撃を受け、警察官6人が死亡し、8人が負傷した。これを受けてウリベ大統領は警護の増強を命じたが、7日に189人の伐採者が離脱し、これまでの離脱者数を差し引くと残りの伐採者は310人となった。約4600ヘクタールとされるコカ栽培地のうち、8日までに378ヘクタールの伐採が完了したにすぎない。
(2)FARCによる狙撃
15日、マカレナ国立公園において、パトロール中の警官6人がFARCの狙撃により殺害された。ワシントンに滞在中のウリベ大統領はこれに対し、マカレナ国立公園において爆撃を行う旨発言し、16日、コロンビア空軍はFARCのキャンプ等4カ所の爆撃を行った。
4.陸軍のスキャンダル
2月19日付週刊誌「セマナ」は、1月25日に陸軍内部において21人の兵士が集団暴行を受けたことを暴露し、国軍内部のスキャンダルが明らかになった。特に、陸軍司令部が1月27日に状況を把握していたにも拘わらず、国防相は2月17日、ウリベ大統領は18日まで情報を得ていなかったことも問題とされた。
21日、本件の責任をとりレイナルド・カステジャーノス陸軍総司令官が辞任し、後任としてマリオ・モントーヤ将軍が就任した。
Ⅲ.治安等
1.統計(<>内はボゴタ市。斜線右側は先月統計。)
(1)殺人:1241件<94件>/1399件<103件>
(2)集団殺人:5件34人<1件6人>/3件13人<0件0人>
(3)脅迫:46件<3件>/23件<2件>
(4)窃盗・強盗:5532件<1374件>/5602件<1449件>
(5)自動車盗難:1482件<362件>/1399件<378件>
(6)誘拐:29件<0件>/22件<2件>
(7)テロ:79件<0件>/50件<2件>
2.主な事件・事故
(1)集団殺人事件
12日、アンティオキア県サバナラルガ(メデジン市から149キロ)において、8歳の子供を含む家族6人が虐殺される事件が発生した。当局はFARCによる犯行との見方を強めているが、パラミリタリーの武装放棄者の可能性もあるとされている。
(2)ヘリコプター事故
24日、保守党の上院議員候補者のペドロ・フアン・モレノが選挙活動を行うためにヘリコプターでアンティオキア県を移動中、墜落事故により死亡した。モレノ候補は雑誌「ラ・オトラ・ベルダッド」において政治家、政府等に対する激しい批判を行うことで知られており、当選した場合には政府に対する最大の敵となると考えられていた。
(3)FARCによる市議会議員殺害
27日、ウイラ県リベラ市(県都ネイバ市より40キロ)の市会議員11人が、屋外レクリエーションクラブで市議会の審議を行っていたところ、FARCに襲撃されて9人の議員が殺害された。
Ⅳ.外交
1.要人往来
(1)ウリベ大統領の訪米
ウリベ大統領は15日~18日、FTA交渉のため訪米した。
(2)バルコ外相のパナマ訪問
7日、バルコ外相は、第11回パナマ・コロンビア二国間委員会会合出席のためパナマ・シティを訪問し、国境地域の開発等に関する合意文書に署名した。
2.エクアドルとの軋轢
1月28日にコロンビア空軍機がエクアドルの領空を侵犯したとして、30日、「エ」政府はコロンビア政府に本件を抗議した。
2月2日、「コ」外務省は「エ」大使館に対し、本件調査結果に基づき、1月28日にプトゥマヨ県南部において、コロンビア空軍がFARCと戦闘を行い、その際、過って、意図せずにコロンビア空軍機がエクアドル領空に侵入したことを認める書簡を送付した。これに対し、「エ」外務省はこの回答を不満とする声明を発表した。
6日、改めてウリベ大統領は領空侵犯について謝罪したが、他方でFARCがエクアドル領からコロンビアに対して攻撃を行っていると発言した。これに対し、エクアドル外務省は謝罪については受け入れたものの、エクアドル領から攻撃が行われているとのウリベ大統領の発言を批判した。
9日、シルバ駐コロンビア「エ」大使はパラシオ「エ」大統領と本件につき協議するため「エ」に帰国した。これを受けて、10日、「コ」外務省はエクアドル大使館に口上書を発出し、軋轢の解消に努めた。
13日、カルタヘナで開催されたメソアメリカ外相会合の機会に、コロンビア・エクアドル外相会合が開催され、麻薬、テロ及び国際犯罪対策に絡むコロンビア軍によるエクアドル領空侵犯問題等につき意見交換が行われた。同会合において、カリオン「エ」外相はシルバ大使に帰任するよう命じると発言し、15日、シルバ「エ」大使はコロンビアに戻った。
3.米国の支援
6日、ブッシュ政権は2007年の対コロンビア経済・軍事支援パッケージとして国務省向けの556.7百万ドルの予算を議会に提出した。この他、国防省の予算として150百万ドルが計上されており、、対コロンビア支援の合計は約700百万ドルとなる。この総額はコロンビア政府がFARC支配地域で行っている軍事作戦「愛国プラン」が開始された2001年以降の水準を維持しており、同軍事作戦支援の他、麻薬対策、軍事訓練、社会開発プログラム支援等に支出されることになっている。
4.その他
(1)メソアメリカ外相会合
13日、「第2回移民問題に関するメソアメリカ外相会合」がカルタヘナにおいて開催された。墨、中米各国、ドミニカ共和国、エクアドル外相等が参加した。昨年11月に開催された第4回米州サミット(於:亜マルデルプラタ)の第2回フォローアップ会合として開催され、次回会合は3月15日にグアテマラで開催されることとなった。
(2)EU議長国声明
23日、EU議長国のオーストリアは、FARCによる誘拐・人質行為に関し、コロンビア政府とFARCとの間で人道的合意に向けた交渉を行うこと、及び非合法武装勢力に対して即時の人質解放と誘拐の停止を求めるEU議長国宣言を発出した。